2022年06月22日
3D-cleaning and disinfection という重要な概念
(前回の記事の続き)
Ruddle先生よりご返信をいただいたので、私は卑近な症例のデンタル写真を送りつけることにした。その写真は根管充填後の写真で、根尖部で側枝にシーラーが流れ込んでいることが明らかなものである。すなわち、根管洗浄によって根尖部の三次元的な清掃と消毒が達成されているからこそ、根管充填後にそのような写真が得られるのである。肝心の根管洗浄時にはエンドアクティベーターを使用している。根管洗浄液は、ゴールドスタンダードであるEDTAとヒポクロだけである。
電子メールの送信が一瞬で終わるなら、Ruddle先生からの返信は電撃的で、しばらくしたらもう返信が届いているのであった。
Thanks for your kind words.
It was my pleasure seeing your endodontic treatment of the mandibular second molar.
Great shapes, and your 3D obturation reveals the importance of 3D cleaning and disinfection.
Great result!
やったぜ。
当然ながら多分に世辞的なものがあるのは当然でその点は差し引くが、それでも世界的に高名な先生からお褒めの言葉が貰えると感動してしまう。ここのところ、自分のエンドは漫然としたものがあって日々の臨床に停滞感があったが、ありがたいことに前向きな気持ちが湧いてきた。やはりエンドは楽しい。
さてエンドアクティベーターとEDDYであるが、使用しての根管洗浄の効果に有意差はないと思われるので扱いやすい方を選べばよいと思う。私は細い根管にはEDDY、そうでもない根管にはエンドアクティベーターを使用している。ただ、EDDYの方が(患者さんにとって決して愉快ではない)余計な振動がないし、根管という狭い空間を手早く洗浄するには向いている気がする。エアスケーラーに装着すればいいだけなのでEDDYの方が臨床医向きかもしれない。
2022年06月01日
これよりEndoActivatorの再評価を行う!
最近の私の根管洗浄の術式はルーチンで、シリンジでの陽圧洗浄基本に、EDDYによる超音波攪拌洗浄メインに据えている。洗浄液は、純水とヒポクロと17%EDTAのみ使用している。根管内に満たした溶液の除去と簡易な乾燥肌、ヨシダのクイックエンドを使用している。
根管洗浄液にこだわりの精神を発揮してクロルヘキシジンやMTAD、オキシドール、果てはQmixなども使ってみようと思ったことはあるものの、根尖部の三次元的な清掃が達成できることが重要なのであって洗浄液でどうこうするワケでない、と思い至って、というか、コストが増大することを嫌って昔ながらの、要するにゴールドスタンダードなEDTAとヒポクロに落ち着いている。器具や材料は、その目的を達成するために正しく使用できれば良いのである。低コストであれば、いうことはない。
さて今回の題目はエンドアクティベーターである。
これは、根管洗浄液を満たした根管内にポリマー製チップを挿入した状態で動作させ、根管内を音波攪拌洗浄するための器具である。シンプルな構造で、故障知らずで、ポリマー製チップは根管壁にいくら触れようが叩こうがスメア層を発生し得ないの。チップは当然フレキシブルなので、湾曲根管だろうが破折を心配することなく使用できる。まことにハンディな根管洗浄用器具なのである。
私が歯科医師になってエンドを始めたころは、先進的な根管洗浄といえば、金属製のエンドチップを用いた超音波洗浄であった。学生時代にレポートに書き連ねた記憶が蘇るけれども、これは確かにキャビテーション作用が期待できるし、いかにも根管内を徹底的に綺麗に洗い流してくれそうである。しかし臨床での実態は、シャープペンシルの芯の如くバキバキと根管内で破折させ、それをマイクロを使って除去するのを症例発表にするマッチポンプメーカーで、perの予防と治療であるはずの根管治療が、ただ病変を慢性化させて症状を薄くして「治療しました」と勘違いしているミゼラブルなレベルを底上げすることもなかった。いま振り返って考えれば、ネゴシエーションさせてPatencyを確保して根尖部の洗浄を可能にすることすら念頭にない「エンド」だったようなので、何を使用しようが臨床成績を向上させるはずもなかったのであるが。
私の個人的な思い出話などはどうでもよいのでさておいて、EDDYを使用した根管洗浄がルーチンになるまでは、私はエンドアクティベーターをルーチンに使用していたのだ。オモチャっぽい外観と安っぽい電動歯ブラシみたいな動作音はさておき、チップが振動して溶液を撹拌すると、たとえばヒポクロを満たしていれば残留有機質に反応して発砲してくるし、確かに綺麗に洗浄してくれるように思えた。考案者のRuddle先生のエンドアクティベーターの論文をウンウンと読みながら、根尖部の三次元的な根管洗浄による消毒を3D-disinfection と読んでいるのを格好いいなあ、と思ったものである。
さてそんなエンドアクティベーターも最近はあまり使用しなくなっていた。
EDDYと比べて、根管洗浄の効率や質に有意差があるとは思えないが、本当のところは分からない。テストチューブで思いつきな実験をしたらEDDYはパワフルだったので、EDDYを贔屓にした経緯はあるのだが。
こういう時は、ネット時代の恩恵を受ければいいわけで、私はRuddle先生が管理をされているサイトのメールフォームから質問を送ることにした。
根尖部における根管洗浄の3D-disinfectionの効果を考えた時、EDDYの方がエンドアクティベーターに比べてより良い成績を出すように思えます。一方で、ランニングコストや取り回しの面で、エンドアクティベーターはEDDYに比べより臨床医に有益な器具だと思います。先生の現在の根管洗浄に対するご見識、またエンドアクティベーターおよびEDDY対するご意見をお聞かせ下さい。
とまあ、こんな感じの厚かましい質問を英語に翻訳してsubmit。
すると速攻で返事がきました。
要約すると
・デンツプライシロナ社のエンドアクティベーターとVDW社のEDDYを比較した場合、明確なエビデンスに基づいた勝者は存在しない(参考までに、VDWはデンツプライシロナ(DS)の完全所有会社)。どちらの技術も、同等の音波エネルギーを使って、強く、柔軟で、切れないポリマーのチップを駆動するのですから、これは驚くことではない。
・私はエンドアクティベーター(EA)の共同発明者であるが、この技術は約15年前に発売され、その後、わずか数年前にVDWにコピーされた。その後、VDWがEAの特許を合法的に侵害していることが判明し、親会社(DS)が両方の装置を所有しているため、社内で和解が成立した。
・どちらの技術も「音波」エネルギーを使用する。EAの周波数は10,000cpmでEddyの周波数は6,000cpsと、より高い周波数を使用している。しかしながら、EAはより大きな振幅を持つために、根管形成後のスペース内でのポリマーチップの制約を考慮したとしても、より良い洗浄効果を予見することができる。
・EAは50以上の科学的な査読を受けた論文で臨床的な有効性が裏付けられており、査読を受けた論文の大半は、EddyよりもEAを支持している。
・液体を満たした試験管を使い、試験管内で様々な消毒技術を比較するYouTubeの動画に惑わされないように
このような内容であった。
臨床医がとらえるべき結論は、エンドアクティベーターもEDDYも根管および根尖部の三次元的な根管洗浄に有益である、という事実でよいと思われる。Ruddle先生のお立場的にはエンドアクティベーターを贔屓にしたい気持ちは当然ながらあると考えられよう。
日本の歯科医師にとっては、エンドアクティベーターの入手が困難である現状、EDDYを使用するのが現実的である。どちらが優れているかは気にしなくてよい。どちらにを用いるにせよ、根管洗浄の質を上げる確実な効果は期待できるからである。
-参考論文-
(PDF) Endodontic Disinfection 2022
2022年04月19日
韓国製NiTiファイルのAurum Blue T1(20/.04)
私の根管の攻略のルーチンは、今までにも繰り返し述べてきたとおりである。
ネゴシエーション
マニー12KでPatencyを確保
プログライダーでグライドパス形成
17/.04 または 20/.04 で予備拡大
25/05-07〜で根管の拡大と形成を仕上げていく
このようなものである。
NiTiファイルを用いた根管治療は、概ねネゴシエーションとグライドパスの形成までが終わればあとは単純作業化する側面がある。それだけ手技がシステマティックで安定した結果が得られやすくなったと言えるのである。これは、隔世の感がある。私は、歯科医師になりたての頃の、ハンドファイルしか使っていなかった時代の自分のエンドを思い出すことができない。時間ばかりかかり、ファイルは回転させることでピッチを伸ばしてしまい、恥ずかしいこととに根管内で何度も破折させていたものだ。そもそも手用ファイルで根管形成を達成することなど正気の沙汰ではないと思う。あの当時、我々学生に偉っそーに指導していたライターたちは、臨床でどれだけ立派なエンドをしていたと言うのだろうか。抜髄後に根充まで何回も根貼繰り返していたが……。
私の思い出話などどうでもよくて、今回の記事の眼目はグライドパス形成後の予備拡大に用いるファイルとして、オーラムブルーというNiTiファイルの 20/.04 を試用してみた、ということである。私の愛用していたEdgeTaoerEncoreのX1およびAF F-ONE の17/.04 の代替になるかの確認が目的だ。比較的安価で、手に馴染み、破折しにくそうなら、使いやすい予備拡大用NiTiファイルに相当するから、それで十分だ。
さて、結論から述べると、悪くない感触であった。
とりたててココがいいとか、お気に入りポイントがあるわけではない。ただ、少なくとも私のスタイルには合っている感じがする。手に馴染んでくれそうな感覚がある。
そんなわけでプログライダーでグライドパスを形成した後は、このファイルで予備拡大を行い、そこからBassiLogicの25/.05 やWaveoneGoldのPrimaryでの拡大形成に移行することができる。安定したパフォーマンスを発揮してくれることを祈るばかりだ。