2017年05月10日

リライエックスアルティメットセメント


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歯科材料ディーラーに「先生、いまセールス期間中の特価価格でコレが!」などと声をかけられるのは市井の開業医の日常の一コマであります。
昔と違って歯科医はケチだと周知された現状、歯科材料を扱う業者さんたちは並々ならぬ営業努力が要されるようになりました(多分)。

3Mのリライエックスアルティメットセメントのセールがありました。中身はアルティメットセメントとダイレクトクラウンと自費冠説明用ツールの三点セットのようです。それぞれの費用を合算すると別にさして安くもなかったのですが、1.5mLのスコッチボンドユニバーサルのおまけと基準価格から更にピ〜円引きの値段を設定され即購入。…売れてないのかコレ?



自費のジルコニア冠やセラミック冠のセットでは、リライエックスユニセムを単独かシランカップリング剤を併用の上、使用してきた。このたび、ガラスハイブリッドセラミックス冠やCAD/CAM冠のセットのことも考え、リライエックスアルティメットを用意しようと考えた次第である。

私の周囲の先生方がどのセメントを使用されているかは寡聞にして知らないし、ディーラーがいう「売れてます(だから、みんな使っているよ!)」もちょいと信用ならん。リライエックスアルティメットを選択した理由は、個人的に3Mの化学力は宇宙一だと信じているからである。


※「講習会を受けない人は購入できない」製品だったのだが、講習会を受けなくても購入できるよう解禁(?)されたようだ。ダイレクトクラウンとは、リライエックスの単独使用で合着できるTEC感覚のプチ自費冠みたいなヤツ。講習会に出席するために名古屋まで行った俺に謝れ!



CAD/CAM冠は脱離する?
保険導入されて以来、「どうも脱離しやすい」とのトラブルの声が目立った。
その正体は、一般的に使用されている合着用のレジン強化型GIC用いたことと接着システムの誤用にあったようだ。少なくとも使用するセメントは、CAD/CAM対応の接着性レジンセメントを選択しなくてはならない。

補綴物合着時の「接着」操作で重要なことの根本は、被着面処理と接着システムを指示通り正しく用いることである。湿度の高い口腔内でレジンを歯質に接着させるというのは、歯科理工学の専門家に言わせれば気が狂った行為とのことだが、だからと言って使用できないわけではない。徹底した吸湿と隔離、接着操作で臨床上問題のないレベルでの合着を実現させられるので、やるしかない。被着面処理の王道はいまでもサンドブラスト処理である。

ところで、リライエックスアルティメットの付属のテクニックガイドを眺めているとCAD/CAM冠セット時の支台歯にスコッチボンドユニバーサルを塗布・エア乾燥の項目に「この後、光照射することで最大の接着強さを得ることができる」との注釈があることに気づいた。被着面に塗布したスコッチボンドユニバーサルはエア乾燥後、光照射しないのではなかったのか?いつの間にか変わったのだろうか。CAD/CAM冠はセメントスペースが多めだから大丈夫なのか?怖くてとても実践できんぞ。



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2017年05月04日

HyFlex EDM GlidePath File


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結論:なかなか頼りになる(採用!)

ISO規格に基づいたNiTiファイルを用いて根管の拡大形成を行うということは、様々な形態にあるintact-canal を規格的な器の形に仕上げる役割を担う。ある程度の「決まった形」に落とし込むことまではできるが、それで充分なのかどうかは議論と考察の余地がある。おそらくは「不充分と言わざるを得ない」レベルなのだろうが、従前の手用ファイルのみに依存した形成に比べれば切削形成の面での確実な確保と予後不良因子となる根管走行を逸脱したエラーを起こしにくい面で圧倒的に有利なために、モダンエンドのスタンダードな術式に組み込まれたのではないかとおもう。様々である根管形態は承知の上で、一定の規格的な形態に落とし込んで行く形成スタイルは乱暴な話に違いないが、少なくとも抜髄根管では、ファイルメーカーの指示通りのこと(25/.08で根管を仕上げて根充)をすれば臨床的に問題は生じないのも確かである※1

そんなNiTiファイルは、ネゴシエーション後にグライドパスを形成してから適応するべきである。破折の防止の意味からは、「拡大」よりも「形成」として用いる姿勢が重要であり、その最低限の保障としてグライドパス形成の必要が挙げられる。ファイルへの負荷をなるべく回避し、NiTiファイルで手早く形成を終えようとする上で有効だからである。


このグライドパス形成、以前はデンツプライのプログライダー用いていたのだが、ゴボウのような虚弱さが気になっていた。これと似た感じの使い勝手で破折に強そうなものか、レシプロケーティング用のグライドパスファイルがないものかと思っていたところに出会ったのがHyFlexEDM GlidePath File である。

グライドパス形成用NiTiファイルであり、プログライダーと同じくロータリー・モーションで用いる。ファイルには形状記憶性があり、オートクレーブ滅菌で元の形に復元される性格がある。つまりは、繰り返しの使用を容認しているのであり、実際に破折抵抗性も高いようだ。これが本当なら、かなり頼もしい存在になると考えた。


さて入手したブツを確認すると、プログライダーに比べて僅かに肉厚な印象。曲げると、ファイルが曲がった状態となり、形状記憶嘘でないことがわかる。ロータリー・モーションで用いるファイルは、適当に扱うとレッジを形成してしまうが、根管の走行がファイルに反映されることになる形状記憶性はレッジを防止する上では有利と思われる。

実際に#10Kをネゴシエーションした根管に用いてみると、プログライダーよりも僅かに抵抗感があったものの、問題なく根尖まで穿通してグライドパスの形成を達成できた。テーパーがやや強いのかもしれないが、その後に用いるウェーブワンゴールド・スモールの使用感は同じであった※2。プログライダーから切り替えても大丈夫そうな手応えを得たので、これからしばらくはグライドパスの形成にこのHyFlexEDMを用いようと思う。

なお、HyFlexEDM GlidePath Fileは、三本セットで5800円ぐらいである。高いけど長持ちしてもらうことでよしとしよう。  いややっぱ高えわ…



※1
根尖部の拡大が25号で充分な洗浄ができているかは疑問だが、もし不充分でも臨床的に問題を生じないなら、生体の免疫力でカバーできる範囲に根尖の状態を落とし込めたことを意味する。抜髄処置とは、つまるところ感染させないことが至上であって最大の留意点なのだろう。余計な感染さえなければ、綿栓根充だろうがどアンダー根充だろうが別に問題なく経過したりする。しかし感染根管はこの限りではなく、それをして感染根管治療の難易度が極い理由になっている。

※2
グライドパスの形成後は、プロトコルではウェーブワンゴールド・プライマリを用いてよいことになっているが、それは切れ味の鋭い新品ファイル持ちいることが前提になっているからだ(新品なら、そうそう破折しない)。私はウェーブワン・スモールをプライマリの先に用いて根管形成の下準備をする。手間はかかるが、ファイルへの負荷を少しでも減らすための「急がば回れ」策である。素直な直線的な根管であればNEX20/.04で代用も可。今後はこのウェーブワンゴールド・スモールとNEX20/.04の統合を図ってHyFlexCMの20/.04を採用してみるつもり(ファイルの在庫が切れ次第)。

タグ:HyFlex
posted by ぎゅんた at 10:14| Comment(8) | TrackBack(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月02日

目の保護のためのアイガード(ゴーグル)


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研磨や口腔内金属物の切削を日常的に行う歯科医の目は、常に削片の飛び込みの脅威に晒されております。眼鏡を装着されている先生はまだしも、裸眼で診療を行っておられる先生はノーガード戦法この上ありません。カーボランダムポイントでメタルを削合したときに目に削片が飛び込んできてギャースとなった経験は、フレッシュマン時代に誰しもが経験することではないでしょうか。

目への危険は金属片だけではありません。即重の削片も、接着システムのプライマーも、根管治療時のヒポクロや水酸化カルシウムなど他にも多数あります。患者さんの唾液や血液が目に入ってくることも無視できません。

目には涙がありますので、少々のダメージは跳ね除けてくれる自衛力は備わっています。しかし、一時的には小さなダメージであったとしても、長い歯科医師人生においてはその重積が大きなダメージとなって跳ね返ってきます。目の保護は、あだや疎かにできません。最悪、失明のリスクがあるからです。

従って、目の保護のためのアイガード(ゴーグル)装着は欠かせません。そしてなるべく、作業域から目を離す診療を心がけることになります。気づくと猫背になって顔を近づける悪癖のある私は二流です。姿勢の悪い一流ドクターはいないはずであります

一般的に、目の保護のためにアイガードが用いられます。飛沫や削片の目への侵入を防ぐわけです。
オシャレな外観のものから無骨なものまで様々あり、値段も様々です。私見を述べれば、デザインよりも保護力を優先させるべきで、「曇り止め加工」は信用なりません。使用しているうちにバイザー部が傷ついて濁ってきて視界不良になってきます。モノによっては、バイザー部の曲面に沿った縦筋の濁りが出てきます。これはやはり、消耗品感覚で安いやつを使い捨てていけばよいのだと思います。目を保護するゴーグルに医療用もクソもないので、私はホームセンターで安いやつを買ってきて使うことがあります。意外に使用感が悪くないのが笑える。



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拡大鏡(ルーペ)にもバイザーがありますが、ここも使用するにつれて濁りがでてきます。
超円高時代に購入した台湾製ヘッドライト付き2.5倍ルーペ(記憶違いでなければ19.800円のバーゲンプライス品)も、使っているうちにバイザー部が曇って視界不良きたしました。腹が立ったのでバイザー部を切り落としたところ、クリアな視界と開放感が得られました。ルーペをしていたら、普通は作業域と一定の距離があるので、目の保護を考慮したとしても、許容されるのではないかと思います。

はよマイクロ買えや!というご指摘は甘んじて受けます。_(´ཀ`」




※研修医のとき「診療は常に正しい姿勢で行い、術者は凛とした態度を醸し出し、悪い姿勢で身体を傷めないようにしましょう」みたいな啓蒙ビデオを見る時間がありました。これをみせてくれた指導医の先生は「俺はもう癖が染み込んでしまって直せないけど、君たちはまだ染まってないから頑張って意識して、悪い姿勢をとるドクターにはならないでね!」と諧謔的に述べておられたのを思い出す。先生スミマセン私も染まってしまいました。

こういうのは最初が肝心だから、悪い診療姿勢を決してとらないよう、学生実習の頃から常に厳しく指導して身体に叩き込むべきかもしれない。マイクロを導入すると診療姿勢が正しくなるとまことしやかに語られるが、あれは本当である。

posted by ぎゅんた at 13:36| Comment(12) | TrackBack(0) | 根治(回想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月27日

HJC慕情


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#14にHJC試適時。シェードはA4 ヘボマージン


昨今の小臼歯の補綴は、CAD/CAM冠が導入されたことで金パラ冠の呪いから逸脱の流れができているようで嬉しい限り。「おかげで自費冠が減ったじゃねーか!」との怨嗟の声も一部に聞かるものの、削り出しのハイブリッドレジン冠ですから、金パラFMC同様にプラークの吸着を招く面でイマイチなのは「所詮、保険クオリティ」と言わざるを得ません。私の愛するゴールド冠も、プラークの付着の面では金パラ冠と同様にイマイチなようです。無念。


さてそんなCAD/CAM冠、ブロックから削り出しての歯冠色補綴といいながら、どうにも単色で生気のない無表情な外観が気にかかる。使用するブロックにも拠りましょうが、最安値グレードなジルコニア冠同様、どうにもプロビジョナル然としている。小臼歯は案外にシェードグラデーションが目立ちますから、咬頭〜歯頚部にかけてシェードの濃淡がないと人工物感が強くでます。そして、歯面の細かな隆線などまったく考慮されないノッペラボウであるところが無表情さに直結します。

「とりあえず金属でない白い冠を保険で」なら許容されるレベルでありましょうが、セットする立場からだと「白い冠が入ってよかったね」と手放しで患者と喜べないところがあります。


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#24にミルドクラウン(和田精密)試適時 シェードはA3.5


同じ保険で選べる「金属でない白い冠」であれば、HJCが存在します。総点数的に不利なのですが、私はこちらを選択することが多いです。

HJCを選択すると保険点数の面で大きな差が生じますが、なに、CAD/CAM冠を作ってもらう諸経費は意外に大きい(注:技工所による)ですから、HJCを選択してもさしたる差はないのであります。なによりHJCは「手作り」で、シェードグラデーションや歯面の流線を天然歯に似せて作ってくださることから技工士さんの顔が見えるのが嬉しいのです。タコな形成と印象・ヘボ模型だと、如実にセット時の術者にストレスとして跳ね返ってくるあたりも実に正直でよろしい。

プロの手にかかって仕上げれたHJCは、少なくともセット時の見た目はE-MAX冠とそれほど遜色がなかったりする(よく見ればもちろん違いますが、傍目からすれば)わけで、こうしちたとき、患者さんは喜んでくれます。 さしてなにも喜ばない人もいますが…


そんなわけで当院ではCAD/CAMをまったくしていません。
CAD/CAMは脱離しまくるとまことしやかな噂を耳にするし、支台歯形成がHJCに比べシビアさを増すし、レセプトの平均点数の上昇は抑えたいし…と、二流歯科医院特有の消極的理由も含まれます。でも外来環は算定してます。えへん。

ああ… つぎはカカリツケだ(その前に往診だ)


※松風のS-PRGフィラー配合のコンポジットレジン(ビューティフィルシリーズ)の表面にはプラークの付着を防ぐ効果があるとの報告があったの思い出す。あまりそのことは「売り」にされていないような気がする。
 
posted by ぎゅんた at 00:46| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月25日

し、仕事で iPad mini 4 使うもん!


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もう5年以上使用していた相棒であるiPad mini(初代)が、故障して死んだ。
というより私が引導を渡した(始末してしまった)のが正しいのであるが。

死因はゴーストタッチの嵐で操作不能になったからである。勝手にアプリを起動しまくってフリーズしたり画面の縮小拡大を繰り返してフリーズしている有様。そもそもこちらの入力を全て無視するのでメモで文章も打てなければメッセージの送信もできない。それどころか勝手に余計なことをするわけで、アプリは起動し続けるわデータは消すわ誤送信はするわの迷惑極まりない振る舞いしかしない。制御不能天衣無縫。起動したが最後、危害しか産まないのである。

メモに書きためた記事を消しまくっていく姿にブチ切れた私に引導を渡されこうなった。

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膝蹴りを一発かましただけでこうなるとは、iPadは虚弱体質に過ぎるぞ。


ゴーストタッチの主因は、画面ガラスの亀裂の長期放置のようである。購入して一年目のときに落下させた際にディスプレイガラスを割ってしまい、修理せず使い続けていたのだ。

これまでも稀にゴーストタッチと誤動作の片鱗はみせていたのだが、のび太ママに教えられた方法で窮地をしのいできたのである。それを4年間続けてきた。しかし、流石に今回の症状は終わりの始まりであった。ダメになるときはもう修理もなにも受け付けないのが機械というものか。パソコンと同じで電子デバイスの寿命はせいぜい5年だとか聞くが、概ね、間違いではありますまい。私のようなゴーストタッチ・ストームといった致命的状態には至らないまでも、レスポンスの著しい低下やボタン類の故障、ハードディスク容量の枯渇など、パフォーマンスが使用者の現実世界に追従しきれなくなったら、もう替え時のようだ。

ものは大切に、古いものも大切に、道具は良いものを末長く…、といった、人間が生きる上で大切にしなくてはならない理念は電子デバイスには通用しないようだ。ちょっと寂しい。やっぱアナログのが好きだわと行き過ぎたデジタル化と距離を置く人種がいても当然である。俺は地球最後の日までガラケーを使うぜ。


使い心地夢心地
さてiPad mini4であるが、すこぶる良好である。画質の著しい向上とハイ・レスポンスが心地よい。文章を打つときのキーボードの切り替えや変換時にモタつきが皆無になったのが嬉しい。文章を作成する作業の効率が300%増しである(良い文章が生み出されるわけではない)。
思えば、愛用していた初代iPad miniは動作がトロ過ぎたし画面が汚かった。進化を前にすると、過去の技術は残酷な評価を下される。

ブラウジングも素早いし、JavaスクリプトをOFFにしなくともサクサク観覧できる。容量も16GBから128GBに増えたのだから、一生涯かけても使いきれない安心感に包まれる。野外にて日照下にあっても画面がちゃんと見えるのも地味ながら驚きだ。カメラの画質も満足のいくレベルに向上している。こんなことならさっさと乗り換えておけばよかった。新しい畳と女房と電子デバイスは最高である。涙をのんで大枚を叩いたが、その価値はあった。



仕事への応用
モリタのデジタルエックス線システムである「i-VIEW」はiPadに画像の転送ができるので、iPadは院内の仕事で活用する余地がある。iPad上ではi-VIEWの機能も最低限で、パノラマやデンタル写真の一枚表示をする場面がほとんどであるが、チェアサイドで写真説明が簡単に行えるのは嬉しいところだ。当院では、私がむかし使っていたiPad2が使用されている。この程度の用途に限定すれば、古いiPad2といえど十分に活躍してくれるのである。
 
posted by ぎゅんた at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする