2025年10月29日

PEEKクラウン友の会(現在の会員数1名)


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PEEKへの深い愛を感じた論文♡

最近のお気に入りの補綴物がPEEKクラウン(PEEK冠)です。
大臼歯の単冠補綴がPEEKまみれになってます。こんな使いやすいクラウンが保険収載されて最高!厚労省に足を向けて寝ることができないぜって感じなんであります。

さはさりながら、私が仄聞したところ世の先生方にとってPEEKクラウンは人気がないようです。知人・友人の歯科医師も「なんどか試してみたけど今はもうやめた」なんて述べる。いつもお世話になってるラボの営業さんは「先生のところは異常に数が出てて困惑してます」と珍妙なコメント。

PEEKクラウンは不人気なのか?

考えつく限り、いくつかの理由が挙げられます。



まずは見た目
出た当初はTEK然としたアイボリーな見た目でしたが、今はヤケクソ・ホワイトというべき白色が選べるようになり幾分かマシな見た目になりました。保険CAD/CAMと同様、保険診療で大臼歯にメタルレスで単冠補綴できる選択は患者にとって福音でありましょう。とはいえ天然歯と比べるべくもない不自然な見た目ですから、審美性に優れているわけではありません。

しかし、保険CAD/CAMクラウンにしても正直「まあこんなもん」って水準ですから悲観するに及びません。

思うに、保険診療は機能回復、それも咬合支持の大臼歯なのですから割り切りが必要です。患者さんにしても「保険で白色の歯が入るんならそれで」と文句も言わない方が大半です。見た目的にアレな白色の歯ではありますが、概ね「銀歯じゃないなら良いよ!」と好意的であります。今の所、見た目が原因でリジェクト喰らったことはありません。

歯科補綴は保険/自費関係なく審美を追求する性格がありますから、PEEKの見た目に心理的な拒絶が出るのはやむを得ません。ただ、患者さんはその辺を案外に気にしないので、思い切ってやってみましょう。単純に述べれば、患者さんは「保険でさっさと白い歯を入れてくれる」歯医者さんを求めているので、それに付き合えば良いだけです。



次に物性
破折しないのか?脱離しないのか?

ハイブリッドレジンのそれと異なる感触があります。粘っこいわけではないが、硬質ではない。咬合調整しても、削っているというよりは捲っている感触というか、良く言えば今までにない独特さがあり、悪く言えば気色悪い感触です。靭性があって破断しにくそうに思える一方、クラウンにたわみが生じるなら脱離力に転化するかもしれない。PEEKクラウンはまだ超長期経過報告がないので予後に未知数の面を残します。

なお、私の臨床例ではいまだに脱離も破折もありません。支台歯が歯根破折や重度歯周炎に移行することで結果としてダメになった例はありますが、これはPEEKの物性とは特に関係はなく、単なる主治医の力量不足であります。

接着は松風のCADCAMレジン用アドヒーシブ用いた上で同社のビューティリンクSAで行っております。
光照射のステップが煩わしい先生はクルツァーのZENユニバーサルセメントでの接着が良いでしょう。



そして支台歯形成量
これは私のお気に入りポイント。なぜなら、PEEKクラウンの支台歯形成のクリアランスは、全部鋳造冠のそれ+αで達成できるからです。これは大きい。保険CAD/CAMの支台歯形成は、私みたいな小心者は気絶しそうなほどのクリアランスを求められるので、形成してて失禁してしまうからです。歯科理工学的に導かれる形成量であることはもちろん分かるのですが「まあこんなもん」の見た目のためにあれだけ削るのは……失活歯ならまだしも、生活歯では怖くてできません。デンチンエナメル・ノーリターンという格言を思い出します。



んでもって研磨性
ここは不満が残る点です。
いまのところ、満足のいくような滑沢な研磨面が得られないからです。どうしても、なんとなく研磨不足感が残ります。そういうモノのようです。しかし「こんな感じでいいのだろうか?」と後ろ髪を引かれる思いで接着操作に移るのは地味にストレスです。

PEEKクラウンは、納品の時点では輝いていますが、あれは仕上げの段階でコート剤(ラボに聞いた話ではヤマキンの『ヌールコートクリア』)を塗布しているためで、我々がチェアサイドで下手に真似をすると折角の咬合調整が台無しになります。咬合調整で触れた箇所は光沢がなくなるのはやむなしと割り切りましょう。

PEEKクラウンの修正と研磨は、私はいまも試行錯誤していますが、基本は
咬合調整:技工用ダイヤモンドポイント、カーボランダムポイント
咬合調整+研磨:松風シリコンポイントPタイプ
仕上げ研磨:CR研磨用のシリコンポイント
艶出し:レジンポリ

この方法がいいぜ!って情報をお持ちの先生のコメントをお待ちしております。



最後に補綴物としての精度の課題
現状、PEEKクラウンだけでなく保険CAD/CAM冠もチタンクラウンも連合印象で提供されていますが、これらは本来は光学印象を経て作製されるものです。光学印象のデータがラボに行き、そこからPC-ミリングマシンの工程で作製されるもののようです(現場を見たことがないので伝聞)。

換言すれば、我々が作成した石膏模型が指示書と共にラボに送られると、テクニシャンは石膏模型を光学印象して作製されるということです。適切な支台歯形成と印象採得が行われ、石膏模型の精度が高ければ問題は起きないでしょう。ただ、肝心のクラウンの精度を追求するなら支台歯形成後は光学印象を行うべき、ということになろうかと思います。なんだか間尺に合わない話ではあります。

今のところ光学印象で加算がつくのはCAD/CAMインレーだけであり、PEEKクラウンもチタンクラウンも保険CAD/CAMも加算がありません。とりあえずは適切な支台歯形成と印象採得と石膏模型作製が歯科医師側に課せられている状況と言えます。おそらく、次回の保険改定で「口腔内スキャナで印象採得して作成していいよ」と修正が入るのではないでしょうか。光学印象加算がつくかはわかりません。CAD/CAMインレーにはついているので付きそうな気がしますが、よしんば加算がついたとしても、連合印象の方の点数が削られるといういつものパターンになると思います。いい加減にしろクソ



今後の予想
金銀パラジウムの価格高騰で、保険金属としての金パラは今後は使用制限がかかりそうに思えます。メタルフリーの機運もあるので金パラの保険外しが起こりうるのではないでしょうか(もしくは、使用はできるが逆ザヤに近い点数にされる)。その場合は、PEEKクラウンとチタンクラウンの適応範囲の拡大ということを代替案にしてくると思われるので、補綴物の精度を追求する上でも光学印象ができる体制にしておいた方が良さそうです。でも、そういう流れになっても光学印象加算はつけなさそうな気がするんだよね。いい加減にしろクソ

ラベル:PEEK冠
posted by ぎゅんた at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年08月28日

ぼくの、最近のお気に入りはPEEKちゃん!

PEEK冠が保険収載されてから日が経った。2年ぐらい経った?時間感覚がなくて判然としない。

歯科技工所の人と話をすると、PEEK冠はチタン冠ほどではないが不人気だという。
私の周りでは、実際に不人気だ。昔ながらの鋳造冠や保険CADCAM冠が主流のようである。
ただこれは、地域差がありそうな気がする。算定数統計を取ったら面白い結果が出そうだ。


さて、私の中でのPEEK冠の評価は高い。鋳造冠やチタン冠をやるぐらいならPEEK冠じゃね?って感じである。そして保険CADCAMは嫌いである。あれを使うぐらいなら鋳造冠を選びたいのが本音だ。


保険診療における私の大臼歯の歯冠補綴ランキングは、

1位 PEEK冠
2位 鋳造冠
3位 チタン冠
4位 保険CADCAM冠

である。患者さんは概ねメタルフリーを希望されるので、畢竟、PEEK冠になることが多い。


見た目がアレだとか長期耐久性が不明とか形態修正と研磨のステップがワケワカメ(死語)とかPEEKには課題も多いのだが、術者が考えているよりは患者さんは喜んでくれる。私が最も嬉しく思うのはセーブできる歯質切削量である。PEEK冠は、保険CADCAM冠に比べて支台歯を大きく削らなくて済むのである。というか、保険CADCAM冠は材料の厚みを確保するためとはいえ支台歯を削合しすぎではないか。オールセラミック冠をいれるためならまだしも、保険CADCAMの、あの物性のモノのためにあそこまで歯牙を削合するのは割に合わないと思えてならない。

世相はメタルフリーだ金属アレルギーだと喧しいが、確かな技術で作成された鋳造冠は、まさに精密鋳造に相応しいパフォーマンスを叩き出す。とくにゴールド冠は本当に素晴らしい。人類の宝である。昨今の金の急激な高騰に伴って現実的な選択肢から外れ始めたのが残念でならない。

今のところPEEK冠は「大臼歯なら条件を問わずOK」という適応なので使いやすい。松風によればPEEK冠の耐用年数は2年とのことだが、おそらく5年でも10年でも保つだろう。ただ、外観の劣化や吸水に伴う不快変化は大きそうだ。保険で使う材料なんだから2年ぐらい持てばいい、とか2年以上経って劣化が目立ってきたら再補綴すればいい、と割り切っているのかもしれない。歯科医師としては「2度とやり直しをしなくて良いものを口の中にセットする」気持ちがあるから、釈然としない思いが残るが、その分、歯質切削をセーブしていたので再補綴に移行するのは難しくない。これが保険CADCAM冠なら、もうすでに大きく削られ過ぎているから融通が利かない。

PEEK冠はCADCAM冠やチタン冠と同様、その作製は光学印象ありきなので、口腔内スキャナの普及に伴って大臼歯から小臼歯に適応が広がっていくのではなかろうか。チタン冠も小臼歯に適応されそうな気がする。金パラ鋳造冠は無くなることはないが点数的に優遇措置がとられないことで算定数g減らされていく運命を辿るのではなかろうか。まあ、私のアテにならない予想などよりもPEEK冠の方が大切である。
 
posted by ぎゅんた at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年08月01日

精密触覚機能検査について

全国に数多おられる施設基準取得マニアの先生(個人主観)であっても取得率が低いのが「精密触覚(精密触覚機能検査)」でありましょう。

赤本を参照すると、
精密触覚機能検査(460点)
口腔、顎、顔面領域の手術等に伴う神経障害、帯状疱疹や骨髄炎等に起因する神経障害によって生じる神経症状(感覚の異常)を呈する患者に対して、当該検査に関する研修を受講したものが、Semmes-Weinstein monofilament setを用いて知覚機能(触覚)を定量的に測定した場合に1口腔につき月1回に限り算定する。

こんな感じの説明記載がある。

なんのこっちゃ分からないと思う。私も最初はそうだった。

「当該検査に関する講習」を、昨年12月に東京歯科大学本館で受講して、講義と実習を受け、数回の復習を経てようやくこの検査の「かたち」が少し理解できてきた。それでもまだ、正確に理解しきれているとは言えない。症例経験が全くないからである。

こんな立場の人間の発言に信憑性がないのは当然ではあるが、この精密触覚機能検査について私見を述べるなら、「取得すべき施設基準ではないし、まして増点を期待するなどもってのほか」ということである。

やや特殊な立ち位置にある検査だと思うし、フツーの個人開業医においては、この検査で増点を狙うこともできない。対象患者がいなさすぎる上に施術に時間を要するからだ。辛いのは、研修会に足を運んで勉強してきても、実際の臨床で施術機会がなければ忘れてしまう。専用の検査キットも8万円ぐらいする。

とりあえず口腔外科の先生が取得するのが良いと思う。下顎智歯抜歯後の神経障害のケースは少なからず存在するからである。三叉神経ニューロパチー(歯科保険病名)の疑い病名で検査と算定をすることは臨床的に意義がある。歯科でここまでの検査ができるのか、と患者も一抹の安堵を覚えると考えられるし、施術者側も、この定量感覚検査を実施するに際して神経内科的領域の勉強が不可欠であるから、それをして臨床医としての成長が望めるからである。

とりあえず点数目的にテキトウ算定することはできない内容である。やれと言われてハイとできるものではない。産業歯科検診(歯科特殊健康診断)と同じである。最初は基本に忠実に、しかし手探り状態で始めることになり、体験結果を評価・反省していくことでいつのまにか手技が洗練されていく。


もっとも、私はまだ経験の入り口にも立っていない。
精密触覚機能検査について私が学んできたことを偉そうに記事にすることができない。できる日が来ると嬉しいのだが。

この検査に興味がおありの先生は、講習会への参加をおすすめしたい。興味がないなら、知らなくても良い(そういう領域の検査なので)。

もし「この検査なら毎日のようにしていますよ。私の臨床経験数は530000です」みたいな猛者がおられたらジャンピング土下座で教えを乞いたいですのでメール相談させていただきたい(腕組み)。




余談
講習会会場だった東京歯科大学(本館)を訪れたら瀟洒なオフィスビルだったので仰天して失禁した。
エレベーターで12階とか向かわされるのが怖い田舎者だったので階段で移動した。俺は高いところも苦手なんだ。

実習は隣の人とペアになって進めたんだけど、俺みたいな暗い田舎のおっさん相手に優しくしてくれる若い先生で助かった。場の空気に慣れてきて冗談とか言ってみた時に「それ言っちゃまずいっスよwww」とか反応してくれて良かった。また若い先生に助けられた。ありがとうございました。
posted by ぎゅんた at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月10日

なにはともあれフロッシング

誰の発言なのかアメリカの歯周病学会?かどうかも忘れたが、”floss or die” なる文言が存在する。
フロッシングの重要さを説く訓示のようである。たしかに、歯間にフロスを通すとブラッシングで取り残した歯垢が存外に取れてきたりするから、取り残したままでいると死が近づいてきそうな気にはなる。隣接面う蝕も多発しそうである。


私は、歯学生になる前もなってからもフロッシングを習慣づけていたことはない。今も、フロッシングは真面目ではない。しかし、隣接面う蝕は生じたことがない。歯間乳頭歯肉の局所的な歯肉炎は生じるが(P急発経験)、アタッチメントロスを生じる歯周炎に移行してもいない。

結論:フロッシングは不要!


な、ワケはない。それは極論というものじゃ。

フロッシングはフロッシングで、口腔内のプラークバイオフィルムという、あのまことに厄介なバクテリアコロニーを物理的に除去するのであるから、口腔内の衛生的な環境を鑑みれば実に有益な行為である。

フロッシングの習慣は特にないが隣接面う蝕も歯周炎も生じていない、というのは、元来の運の良さも加わって安定した口腔内環境が成立しているにすぎないのだと思う。この辺は、どうにも個人差がある。ひょっとしたら、ブラッシングが極めて上手ならフロッシングを無視できるのだろうか。実のところ、私自身は己のブラッシングが上手だとは思っていない。でも、大丈夫なままだ。面倒なので「個人差がある」ということにしておこう。



なにはともあれフロッシング
とはいえフロッシングは無益なものではないのだから、ブラッシングの折に適切に行えば良い処置であることには疑いようがない。ただし、不用意乱雑に行えば歯間乳頭歯肉にデンタルフロスのダイレクト・アタックを決めて出血きたすから、フロスは歯面に沿わせて移動させるよう、慎重に操作したい。え、面倒くさい?実は俺もそう思うんだよね。ブラッシングと毒だしうがいで良くない?

私は思う。歯科医師の使命は国民の健康に寄与することであるので、テメエのことは二の次で患者さんに適切なフロッシングを提供すれば良いのである。診療中のわずかな隙間時間があれば、患者さんにフロッシングを施す歯科医師であれば良いのである。私は昔からこれを意識的ルーチンにしていて、余裕がある限り、全額全歯にフロスを通してからその日の処置に取り掛かることにしている。1分ほどで済む内容だが、このことが患者/術者にとって程よいウォーミングアップになる。風フロッシングは、それだけでも口腔内がスッキリする感じが得られるので、患者ウケも決して悪くない。術者は少なからず清掃を達成した口腔内で処置を開始できる。良いことずくめではなかろうか。

そもそもフロッシングは、最愛の彼女はおろか女房だってやってくれない(いないよな…?)。耳掃除ぐらいはしてもらうことはあろうとも、フロッシングもしてもらってるなんて、聞いたことがない。お相手さんが歯科衛生士さんなら話は別かもしれないが、その場合は「やり方を教えるから自分でやってね♡」と言われているに違いない。

話が変な方向に向かったが、要するに第三者にフロッシングをしてもらうと言うのは存外に貴重な体験なのだ。歯科医院に足を向けない限り、第三者にされる機会などないのではないか。

歯科医療従事者にとってフロッシングなど、さしたる行為にあたらないとは思う。さりとて、患者さんにとっては非日常的なサービスにあたる位置付けのものでもある。

フロッシングは、ちょっとした時間があればできる。派手ではない。地味な処置だ。でも、患者さんには有益な一手である。医療従事者の手洗いと一緒で、迷ったらやればいい。

そのうち、フロッシング操作に習熟して迅速正確にできる腕が身につく。
その一方、フロスがほつれたり通過しなかったりスッカスカで食片圧入をきたす部位が見えてきて対処を見出していけるようにもなる。

posted by ぎゅんた at 12:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年02月11日

オフィスホワイトニングはいまだに苦手意識


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オフィスでこんなに白くならないと思うのだが


歯の漂白は、私はオフィスホワイトニングから臨床経験を積み始めた。

私が研修医だった当時は、歯の漂白といえばWalking-Bleachingを指したし、それを超えたところにある術式としてのオフィスホワイトニングはといえば松風ハイライトが唯一存在していた頃だった。ホームホワイトニングは、メジャーではなかったはずだ(記憶にない)。

その松風ハイライトは、歯牙表面を脱灰させて白くしているだけで歯質へダメージを与えているだけだ(それに、思ったより白くならない)という臨床評価が定まっていた。Walking-Bleachingは安定した漂白効果を示すが、オフィスホワイトニングは結果が不安定なのだ。だから、人気がなかった。結果が出にくい処置を自費診療で行うのは心理的にストレスが大きく楽しくないものだ。

保存科に在籍していたこともあって、歯の漂白は周囲の人たちから確かなニーズがあったし、個人的な関心もあった。なんとか歯を白くしたい。そういう気持ちがあった。しかし、どうすればいいのか。ホワイトコートとかいう、歯塗る白いマニキュアみたいなアプローチはとりたくなかった。

その後、ピレーネという商品がモリタから発売されていた記憶がある。こちらは歯質ダメージを抑えつつ歯を漂白させる設計を謳っていた。欣喜雀躍、大期待のマインドで使ってみたが、全く漂白効果は得られなかった。私は胃が痛くなった。俺は臨床センスがないのではないか?

オフィスホワイトニングには、メーカーが指示する手順の中に、なにか臨床的なヒントが隠されており、それ見つけないと結果をだせないのではないか。私はそういう仮説をたてて、自身や同僚を被験者にしてオフィスホワイトニングを繰り返して施術経験を積むことにした。

ピレーネ10分x3回を1セットとして3日に分けて3セット行うと、歯はわずかに明度を上昇させる漂白効果(第三者の目見て白くなったことが分かる)を見せた。しかし、漂白効果の範囲は上下3-3に限られるし、なにより労力の割にこれではコストパフォーマンスが悪すぎる気がした。それもこれは、普通の光照射器ではなく、波長を紫外線領域に近づけた特注の光照射を用いての結果であった。得られた結論は、光照射の波長は紫外線領域に近づけた方が結果が出るということであった。ただし、皮膚にあたると日焼け効果がでるリスクがあったので取り扱いは慎重になる。

その後、漂白ジェルに触媒の二酸化チタンを加えたり、化学反応を増強させるために温度を上げる工夫をしてみたりしたものの、目立った改善効果の手応えがなく、落胆してしまった。

海外の歯科材サイトを利用して、高い効果が期待できるオフィスホワイトニング用材料(ブライトスマイルとかオパールエッセンス・エクストラブーストとか)を取り寄せる手もあったが、使用材料を海外製に変えて有意な改善を期待する熱意もなくなっていた。というか、オフィスホワイトニングに飽きてしまった。

そして、当時は入金しても商品が届かない悪質な詐欺サイトが横行していたので購入にはリスクが伴った。実際、私は数万円をフイにしてしまった経験がある。爾来、海外の歯科材料を買うのは信頼のおけるスマイルUSしか利用していない。


現在のところ私にとってオフィスホワイトニングは、ホームホワイトニング前の「助走」として用いるものになった。これは、短時間での歯の漂白を特に期待するものではない。漂白対象とする歯牙に過酸化水素の漂白効果を与えることで、ホームホワイトニングの効果発現を少しでも早くするためのものである。幸いして、これは効果がある。
 
posted by ぎゅんた at 09:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする