2018年01月16日

歯科医が望まない日常光景シリーズAあ、穴が開いている……!


1124_01.jpg
穴を広げてオートセーフリムーバーを引っ掛けて除去しようとしたが上手くいかず、スリットを掘ってわずかに抉って緩めて除去。見栄えは悪いが仮歯としては使用できる


4年前にセットしたジルコニア冠の咬合面に磨耗原因と思われる穴が空いていました。対合歯にはインレーが入っていますが、咬合接触は舌側咬頭の歯質なので、単純に支台歯形成時の咬合面のクリアランス不足が絶対的原因です。おいこらー


1124_03.jpg
これはセットして半年後の口腔内写真


ブツは和田精密の『ジルライトクラウン』になります。

『ジルライトクラウン』はコストを優先して審美性を犠牲にした、要するに「とりあえず金属じゃなければOK」な人向きのエントリーグレード・ジルコニア冠であります。

このジルコニア冠は、当時、和田精密が取り扱いを開始したばかりだったはずで、営業マンが「ジルコニアはとても硬いですから破折も磨耗もしませんよ」なんてことを言っていた覚えがある。もっともそれは誇大広告というもので、現実にそんなわけがない。真に受けた歯科医師はいないのであります。むしろ硬すぎて、対合天然歯の磨耗を懸念する声が大きかったと記憶しております。

1124_02.jpg
根充直後の写真


当時のカルテを見ると「ネゴシエーション後にMtwoファイルで形成」とあり、ラバー下でエンドシーラーを用いたラテラル根充を行なっている。 なんとなく直線的な気がするし、今の自分から見るとずいぶんと根尖を攻めてる印象を受ける。

1124_04.jpg
除冠後の写真。幸いにも根尖病変は否定できそうで安堵


その一方、黒柳徹子さんに「随分と縁上のマージンなのね」とか言われそうな支台歯が気にかかる。こんな写真をSJCDの症例発表プレゼンで提示したら消火器などの鈍器が飛んできそうです。ジルコニア冠の支台歯形成にビビっていた術者の心理がエックス線写真で分かってしまうというもの。


さてジルコニアは物性的に硬くて頼りになりますけれども、支台歯のクリアランスが不足していれば普通に穴が開きます。なに当たり前のこと言ってんだこの豚野郎と罵られても、現実にそうなのだから述べざるを得ない。

材料の物性に過度に依存するのは厳禁で、支台歯形成は、その原理原則から逸脱せぬように達成しなくてはなりません。脱離をきたさず長持ちさせられる形成かそうでないかは、支台歯形成いかんで瞭然と分かれます。

とりあえず「かたち」にはなるだろう、と適当な支台歯形成でヘボな作業用模型になったとしても、技工士さんが黙々と上手な冠を作ってくれているからこそなんとかなっている冠がどれほど多いのだろうと自省する日々です。そんな冠がセットされたとして、どれだけ口腔内で機能し続けてくれるだろうか?

根管治療で保存と延命が叶った歯を、破折や脱離をきたすことなく長期的に機能させ続けられる確かな腕が欲しいものです。
 
posted by ぎゅんた at 17:27| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月11日

支台歯とクリアランスと技工士さん


SS_ビジュアル・セミナー臨床咬合学入門.jpg
ペーペーの医局員時代に師匠に教えてもらった『ビジュアル・セミナー臨床咬合学入門』から。内容はちょっと古くて時代を感じます。


クリアランスの形成の不備が原因でセット時の咬合調整で穴を開けてしまうのは、新人歯科医師が必ずや経験するお約束であります(違ったらスマヌ)。下顎臼歯の咬合面で生じやすいものです。そしてまた、支台歯形成の手引書には、必ずや「咬合面中央は削除不足に陥りやすいので注意すること」と記載があるものです。

支台歯形成時のクリアランスの確認およびバイト材の厚みの確認不足が原因でありましょうが、支台歯形成時のクリアランス確認を目で行うと誤認しがちなことも見逃せません。それを予防するためのツールが存在するほどです(⇒ナビゲージ)。

そんなかんだで、支台歯形成に慣れないうちや苦手とする先生では、クリアランスが不足しがちになる傾向にあります。正直なところ、私も、その傾向があります。

補綴物の製作を依頼される立場である技工士さんは、おしなべて優しいですから、いくら歯科医師の支台歯形成(や印象)に不備があっても、黙して補綴物を仕上げてくれます。畢竟、セット時の咬合調整で冠が極度に菲薄化するか穴が開く事態に陥ります。この時、歯科医師は自身の力量のなさやクリアランスを誤認した現実に突きつけられます。こうしたとき、「技工士が悪い」と開き直る先生もいると仄聞しますが、それは天に唾する行為に他なりません。技工士さんもミスしないわけではないでしょうが、まず疑うべきは己の形成であり、印象であり、石膏模型でしょう。

少なからず自分でワックアップや鋳造などをしてきた先生は、決して技工士さんを責めません。まず、己のステップ内容のミスを疑い、原因を追求します。技工操作は、確かなステップの積み重ねであることを理解しているものだからです。

そういう意味では、歯科医師、とくに若手の先生は己で技工作業を(全てではないにせよ)行うべきですし、自分の形成から技工操作にいたるまでを技工士さんにチェックしてもらい、忌憚のない意見をもらうべきです。耳の痛い意見をズバズバもらうものですが、このときの有り難みは後になるほど生きてきますし、なにより若いうちにしか得られないものだからです。

臨床経験が長く慣ればなるほど、歯科医師は技工から遠ざかってしまうのはやむを得ない側面が多いのですが、技工士さんに丸投げする姿勢は色々な意味で勿体無いことだと思います。技工士さん不足も相まって、これからは歯科医師が技工士さんを奪い合う時代になりそうですし、技工士さんも歯科医師を選んで仕事をすることになりそうです。偉そうなのは旧態依然として歯科医師の思い上がりがのみ……と陰口を叩かれる悲劇は終わりにしたいものです。

posted by ぎゅんた at 12:06| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月20日

歯科医が望まない日常光景シリーズ@


2017_1220_01.jpg
アハーン...


やるせないけど抜歯せざるを得ないのが歯根破折歯であります。

歯根が破折すると、生体は手のひらを返すように異物扱いを始めるようで、直ぐに炎症反応起こすのが常です。畢竟、「歯がグラグラすると思ったら歯茎が腫れてきて……」と頰を抑えながら来院される患者さんが気の毒なことに生まれてしまうのであります。目下、この治療は抜歯しかありません(抜歯して口腔外で清掃して接着性レジンで復位させて再殖する手法もあると聞くが、そのテクニックが開業医に根付かないあたり、予後が悪いのだろう)。歯根破折に伴う抜歯→インプラントの流れが主流なのでないか。


歯根破折に至る原因は様々であるが、概ね失活歯で生じるものである。いうまでもなく、天然歯に比べ脆弱だからである。

1.ブラキシズム等による過度な咬合圧の存在
2.早期接触・バランシングコンタクトの存在
3.歯根象牙質と弾性係数の異なる異物の存在(主に銀合金メタルコア)
4.根管治療に伴う拡大形成により、根管の更なる脆弱化
5.根面う蝕の進行

とりあえず思いつくだけを挙げたが、これらが複合的に歯牙に作用して結果として歯根破折に至ると考えている。皆さんも、なんとなく、思い当たるだろう。

歯科医になって、よもやこれほど歯根破折に悩まされることになろうとは誰も思っていなかったであろうし、歯学生諸氏も想像していないに違いない。いかにして歯根破折を防いでいくかは、保存に努める市井の開業医に課せられた考究課題である。



卑近な臨床例
「昨日ぐらいから急に歯がグラグラして」と来院された患者さん。

#37の歯冠に、薪割りじゃあるまいし近遠心方向に走る亀裂が存在し、特に頬側歯冠に動揺を触れる。歯根に至る破折は疑いようがなく、デンタル写真を撮影。亀裂の程度にもよるが、抜歯になる可能性が極めて高いことを告げる。頬側歯頚部根面う蝕(充填物の脱落後放置とおもわれる)の進行による歯髄感染とから歯髄歯に至り、失活歯となり、亀裂に至ったのであろう。

2017_1220_02.jpg
シールみたいなのは、表面麻酔用のリドカインテープである


炎症はさして重篤ではなく、キシロカイン1.8mlで無痛的に抜歯が狙えるので伝達麻酔は施さず。

2017_1220_03.jpg

うーんこれはやっぱり……

果たして、スーパーボンドで破折を接着復位して再殖で保存できるのだろうか?
たとえ生着しても、その後、咬合させることを考えるとまた破折してしまうのでは……

posted by ぎゅんた at 12:17| Comment(5) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月01日

【保険導入】下顎第一大臼歯にCAD/CAM冠【条件付】


I can do it too.jpg


コメント欄で ちの先生に教えていただいたことなのですが、本日12/1より、

レジンブロックがGCのセラスマートで、
上下左右7がすべて存在し
過度な咬合圧がかからない場合の下顎第一大臼歯に限り

CAD/CAM冠が保険適応になったようです。

「保険改定を待たずジーシーから」というところが往時の支台築造-ファイバーポストの流れと同じです。つまりは、時間の経過とともに他社レジンブロックでも適応されるようになっていくと思われます。レジンブロックで儲けたくてウズウズしている業者ばかりでしょうから、仁義なき値段合戦がまた始まることになります。

算定する点数は据え置きだそうですから、補綴難易度が上がった形ですね。
クリアランス!マージン形成!印象!接着/合着操作!

なんか猛烈に悪い予感がしてきたのう…


【2017/12/5訂正】
請求点数は据え置きではなく、以下のようです。

技術料1200点+材料料523点

小臼歯CAD/CAMに比べて141点アップします。
トレーサビリティシールを診療録に貼り付けたりして保存管理する必要があります。ー
posted by ぎゅんた at 14:20| Comment(9) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月15日

【保険の白い歯】CAD/CAM冠の接着・合着操作【脱離しやすい?】


RelyXultimate.jpg
モンドセレクションみたいな権威?


この記事のまとめ
・今のところ、CAD/CAM冠が脱離しやすい印象は、幸いにしてない
・きっと内面のサンドブラスト処理が重要なんだわ!
・「キャドキャム」と発音するのが苦手で「カドキャム」と発音しており、失笑を買ったことがある。早口言葉苦手なんだよコノヤロー


小臼歯のHJCを愛し続けて10年。
これは真っ赤な大ウソ。
小臼歯に金パラ冠を合着することに嫌悪感があり続けていたことはホント。

このところ、小臼歯にはHJCではなくCAD/CAM冠を選択する症例が多い。HJCとCAD/CAM冠はどちらも健保適応であり、それぞれに特徴があるのだが、総合的な判断でCAD/CAMにメリットを感じているからである。

CAD/CAM冠を導入する前に懸念していた事項は以下のとおり。

1.早期の脱離
2.不適合による再製となった場合の費用
3.セメントをなにを用いるか?

幸いにして、今のところ早期脱離は経験していない。
CAD/CAM冠の脱離は、接着操作の不備に起因することが多いと思われる。接着操作をシステマティックに統一するとエラーが少なくなる面で有利だと考える。

私がセット前に行っていることに、なんら特別なことはない。内面にサンドブラスト処理をかけ、スチームクリーナーで吹き飛ばしてエア乾燥した後にセット操作に入るだけだ。

使用しているセメントならびに接着システムは、3Mの『リライエックス アルティメットレジンセメント』である。接着システムはこれだけで完結しているので、シランカップリング処理や、冠内面の化学的なクリーニング(「マルチエッチャント(ヤマキン)』や『イボクリーン(イボクラールビバデント)』など)は施していない。これらの役割を担うのが3Mのスコッチボンドユニバーサルアドヒーシブである。冠内面と支台歯にボンド液を塗布してエア乾燥させ、その後にセメントを塗布したCAD/CAM冠をセットするだけである。

デュアルキュア型であるから、支台歯に圧接直後に短時間の光照射を施すことです余剰セメントの除去操作に移れるものの、私は行っていない。「なんか浮きそう」な気がするからである。レジン強化型GICに代表される合着用セメントの場合と同様、化学重合が進行してある程度の硬化したタイミングで行っている。探針やデンタルフロスで余剰セメントを丁寧に残さず除去した後、最終重合の目的で光照射させている。

不適合で再製になった場合、ブロック代だけ負担しなくてはならない場合が多いようだ(考えてみれば、もっともである)。これを防ぐためには、適切な支台歯形成と印象採得、作業模型の変形を防ぐ石膏操作が重要である。
うーん教科書的。
 
posted by ぎゅんた at 15:41| Comment(10) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする