2017年11月15日

【保険の白い歯】CAD/CAM冠の接着・合着操作【脱離しやすい?】


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モンドセレクションみたいな権威?


この記事のまとめ
・今のところ、CAD/CAM冠が脱離しやすい印象は、幸いにしてない
・きっと内面のサンドブラスト処理が重要なんだわ!
・「キャドキャム」と発音するのが苦手で「カドキャム」と発音しており、失笑を買ったことがある。早口言葉苦手なんだよコノヤロー


小臼歯のHJCを愛し続けて10年。
これは真っ赤な大ウソ。
小臼歯に金パラ冠を合着することに嫌悪感があり続けていたことはホント。

このところ、小臼歯にはHJCではなくCAD/CAM冠を選択する症例が多い。HJCとCAD/CAM冠はどちらも健保適応であり、それぞれに特徴があるのだが、総合的な判断でCAD/CAMにメリットを感じているからである。

CAD/CAM冠を導入する前に懸念していた事項は以下のとおり。

1.早期の脱離
2.不適合による再製となった場合の費用
3.セメントをなにを用いるか?

幸いにして、今のところ早期脱離は経験していない。
CAD/CAM冠の脱離は、接着操作の不備に起因することが多いと思われる。接着操作をシステマティックに統一するとエラーが少なくなる面で有利だと考える。

私がセット前に行っていることに、なんら特別なことはない。内面にサンドブラスト処理をかけ、スチームクリーナーで吹き飛ばしてエア乾燥した後にセット操作に入るだけだ。

使用しているセメントならびに接着システムは、3Mの『リライエックス アルティメットレジンセメント』である。接着システムはこれだけで完結しているので、シランカップリング処理や、冠内面の化学的なクリーニング(「マルチエッチャント(ヤマキン)』や『イボクリーン(イボクラールビバデント)』など)は施していない。これらの役割を担うのが3Mのスコッチボンドユニバーサルアドヒーシブである。冠内面と支台歯にボンド液を塗布してエア乾燥させ、その後にセメントを塗布したCAD/CAM冠をセットするだけである。

デュアルキュア型であるから、支台歯に圧接直後に短時間の光照射を施すことです余剰セメントの除去操作に移れるものの、私は行っていない。「なんか浮きそう」な気がするからである。レジン強化型GICに代表される合着用セメントの場合と同様、化学重合が進行してある程度の硬化したタイミングで行っている。探針やデンタルフロスで余剰セメントを丁寧に残さず除去した後、最終重合の目的で光照射させている。

不適合で再製になった場合、ブロック代だけ負担しなくてはならない場合が多いようだ(考えてみれば、もっともである)。これを防ぐためには、適切な支台歯形成と印象採得、作業模型の変形を防ぐ石膏操作が重要である。
うーん教科書的。
 
posted by ぎゅんた at 15:41| Comment(2) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月26日

ポンティックのレジン前装部の修理に即重を


 臨床医なら誰しもが前装レジン(審美性の改善というよりは、金属使用量を減らすための苦肉の策)の脱離をきたしたポンティックの姿を目にしたことがあると思います。前歯部前装冠であればコンポジットレジン接着技法用いた前装部修理が認められています(とは言え、「60+102+11」点なので、除冠してやり直すことが圧倒的かも?)。しかし、臼歯部のポンティックで同様のこと行っても算定できません。この場合は、「ポンティック修理」が該当することになります。

 全国保険団体連合会の「赤本」である「歯科保険診療の研究」では、ポンティック修理の項でこう解説されています。
1.前歯部ポンティックの修理は、ポンティック1歯につき算定する
2.臼歯部レジン裏装ポンティック(咬合面は金属)のレジン前装が脱落し、即時重合レジンで修理した場合は、ポンティック1歯につき算定する
3.4.(略)

 これに従って、冒頭の写真のような大臼歯ポンティックのレジン前装が脱離しているものは、即重で修理した場合に70点を請求できます。前装冠修理のようにコンポジットレジンを用いたい気持ちがありますが、そうすると(「即時重合レジン」ではないことから、ひょっとして)算定できないかしれません。審美的にあまり気にしなくて良さそうな場所なので、気泡だらけの即重でも最低限のマスキングと審美的・形態的回復が可能ですから、まあ、そういうものだということだと理解しています。

 修理は極めて簡単で、被着面の清掃をして即重を筆積で盛り、形態を回復させ、研磨するだけです。

 ここで最大限に重要なことは、おそらく被着面のサンドブラスト処理でありましょう。ただ、これにはチェアサイドで用いることのできるようなコンパクトなサンドブラスターが必要ですし、口腔内で用いることに抵抗があります(ラバーダムも必須)。

 現実的には難しいので、カーボランダムポイントなどで新鮮面を出したりリン酸エッチングしたりの処理がせいぜいでしょう。メタルプライマーは、その後に用いる即重に機能性モノマーが含まれていないので不要だと思われます(不確かな知識。GCの「メタルプライマー」は、義歯修理:クラスプ修理で用いた記憶があるので、やはり効果がある?)。


丁寧にやるなら、

被着面のサンドブラスト処理 ⇒ メタルプライマー塗布・乾燥 ⇒ 最近の「なんでもOK」なボンディング材の塗布・重合 ⇒ 即重筆積み

の流れになるのでしょうか(接着歯学の界隈から離れると、この辺の知識が曖昧模糊になってしまって良くない)。無論、70点の処置にここまでやってられませんから、どこかで折り合いのつけた操作になるわけで、

被着面の清掃 ⇒ 即重筆積み

の流れになるものと思われます。

 それでも咬合圧に直接晒される場所でないことと、少ないながらも嵌合効果があって意外になんとかなってくれるものだったりします。下手に煩雑なステップを踏んでテクニカルエラーを犯すよりも、シンプル手法の方が安定しそうな感じです。



【チンケな臨床例】
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 「左下の詰め物が取れた」が主訴の方。みると左下臼歯部ブリッジのコンサバなポンティックの前装レジンが脱落している。食事のたびに食べ物がトラップして気になって仕方がないらしい。Brの再制作がベストと思われますが、そこまで希望せず主訴の解決のみを求める方であったので、修理で対応することになりました。バランシングコンタクトで脱離するか確証はありませんが、咬合接触の確認も行います(なかった)。

 被着面をスチールラウンドバーを用いて機械的清掃と新鮮面の露出を計り、気持ち程度3Mのスコッチボンドユニバーサルアドヒーシブを塗布・光重合させて即重を筆済み。

 重合後のレジンの形態修正や研磨がイマイチ難しいのが悩みどころです。形態修正をしなくて済むように、筆積みの時点で及第点の形態を付与しておくべきです。重合後は即重レジン用の研磨ポイント類でなるべく滑沢に仕上げておきましょう。


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 この記事でも書いた「シールインシャイン」が出番がなくていつもベンチを温めていたので久々に活躍してもらいました。「誤魔化しの艶っぽさ」が得られます。


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 一週間後に確認。「凹み」に物がはさまらなくなったと喜んでおられました。
即重はやっぱり即席解決用アイテムとして優秀です。おしまい。

posted by ぎゅんた at 22:31| Comment(2) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月20日

ガルバニー電流

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子どもの頃、アルミホイルを奥歯で噛む遊びが流行った。噛むと「ヴぃヴヴ」と変な味がするという。試してみたが、私はならなかった。あれはなんだったのだろう?それは歯学生になって、歯科理工学で「ガルバニー電流」を習うことで氷解した。当時の子どもたちの臼歯にはアマルガムやインレー修復がなされていたのである。幸いなことに私の奥歯には金属修復物がなかったのでなにも感じなかったのである。


ガルバニー電流
組成の異なる金属が接触すると電流が派生する。アルミホイルを噛んだときに金パラや銀合金が接触すると唾液の存在もあって接触部に電流がほとばしるのでそれが分かる。ジョークアイテムで、ノックしたときに微弱電流が流れてビックリさせるボールペンもどきがあるが、ああいう電流が口の中で発生するのである。

我々は金属を食べないからさして気にもとめないが、組成の異なる金属が咬合する関係にあった場合、咬合のたびに微弱電流を発生することになる。「電気が発生しても、なにも感じないならそれでいいじゃないか」と竹を割ったような解釈はしにくい。ただでさえ電磁波まみれの現代社会に生きる我々の口の中に、電気が発生する仕組みまで設けることはあるまい。

銀合金コアと金パラ冠が合着されることになる現行の保険診療の補綴は歯科医師を不安な気持ちにさせてくれる。昨今のメタルフリーへの転換への機運は、口腔内へのこうしたパッシブな悪影響を排除させたい気持ちが含まれているのである。


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除去冠を観察すると見られるススのような着色や鯖のような青い模様がみられるものだが、これこそがガルバニー電流による焦げ付きである(松本勝利先生に教わりました)。見つけようと思えば、結構、発見できるのである。

実際に実物を前にすると、金属冠なんて口の中に入れたくねえなあ(しかし、いままで数限りなく俺は入れてきた…)と暗澹たる気持ちになるのである。私の愛する金合金もガルバニックからは逃れられない。やっぱ天然歯が一番やで。

posted by ぎゅんた at 23:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月27日

HJC慕情


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#14にHJC試適時。シェードはA4 ヘボマージン


昨今の小臼歯の補綴は、CAD/CAM冠が導入されたことで金パラ冠の呪いから逸脱の流れができているようで嬉しい限り。「おかげで自費冠が減ったじゃねーか!」との怨嗟の声も一部に聞かるものの、削り出しのハイブリッドレジン冠ですから、金パラFMC同様にプラークの吸着を招く面でイマイチなのは「所詮、保険クオリティ」と言わざるを得ません。私の愛するゴールド冠も、プラークの付着の面では金パラ冠と同様にイマイチなようです。無念。


さてそんなCAD/CAM冠、ブロックから削り出しての歯冠色補綴といいながら、どうにも単色で生気のない無表情な外観が気にかかる。使用するブロックにも拠りましょうが、最安値グレードなジルコニア冠同様、どうにもプロビジョナル然としている。小臼歯は案外にシェードグラデーションが目立ちますから、咬頭〜歯頚部にかけてシェードの濃淡がないと人工物感が強くでます。そして、歯面の細かな隆線などまったく考慮されないノッペラボウであるところが無表情さに直結します。

「とりあえず金属でない白い冠を保険で」なら許容されるレベルでありましょうが、セットする立場からだと「白い冠が入ってよかったね」と手放しで患者と喜べないところがあります。


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#24にミルドクラウン(和田精密)試適時 シェードはA3.5


同じ保険で選べる「金属でない白い冠」であれば、HJCが存在します。総点数的に不利なのですが、私はこちらを選択することが多いです。

HJCを選択すると保険点数の面で大きな差が生じますが、なに、CAD/CAM冠を作ってもらう諸経費は意外に大きい(注:技工所による)ですから、HJCを選択してもさしたる差はないのであります。なによりHJCは「手作り」で、シェードグラデーションや歯面の流線を天然歯に似せて作ってくださることから技工士さんの顔が見えるのが嬉しいのです。タコな形成と印象・ヘボ模型だと、如実にセット時の術者にストレスとして跳ね返ってくるあたりも実に正直でよろしい。

プロの手にかかって仕上げれたHJCは、少なくともセット時の見た目はE-MAX冠とそれほど遜色がなかったりする(よく見ればもちろん違いますが、傍目からすれば)わけで、こうしちたとき、患者さんは喜んでくれます。 さしてなにも喜ばない人もいますが…


そんなわけで当院ではCAD/CAMをまったくしていません。
CAD/CAMは脱離しまくるとまことしやかな噂を耳にするし、支台歯形成がHJCに比べシビアさを増すし、レセプトの平均点数の上昇は抑えたいし…と、二流歯科医院特有の消極的理由も含まれます。でも外来環は算定してます。えへん。

ああ… つぎはカカリツケだ(その前に往診だ)


※松風のS-PRGフィラー配合のコンポジットレジン(ビューティフィルシリーズ)の表面にはプラークの付着を防ぐ効果があるとの報告があったの思い出す。あまりそのことは「売り」にされていないような気がする。
 
posted by ぎゅんた at 00:46| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月09日

前歯が欠けたのでCRで象牙質を保護して見た目を回復させましょう(上顎前歯部の直接法コンポジットレジン充填)


歯質にレジンを接着させられる技術が、どれほど人類に貢献しているものか正確な評価を下すことができない。私自身は、口の中のような水分まみれのところで、歯という無機質と有機質と水分とからなる複合生体組織に「油」であるレジンを接着させられる技術は、とんでもないことだと感じる。

接着歯学とコンポジットレジンの物性向上、充填テクニックの進歩により、信頼のできる接着はもとより審美的な充填すら可能になっている。とくに前歯が部分的に歯が欠けてしまったことによる審美不良を即日的に回復させることができるようになったことが大きい。ひと昔前は補綴に頼らざるをえなかったことに比べれば吉報である。接着歯学は、地味ながら着実に進歩してきた分野なのである。

保険診療のCRは使用する材料に一部制限があるものの、ソコソコの見た目を回復させられることはできる。健保適応で自分と相性のいい材料を揃えたら、あとは器具とテクニックと気合でなんとかするわけである。



卑近な例を紹介する。
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硬式野球の練習中にボールがぶつかって欠けた#21.23(#22は先欠)と来院した高校生。
外傷のアポなし来院であるから緊張が走ったが、患歯に動揺は認めず、打診痛もなく、EPTで正常反応をしめした。主訴は、歯が欠けたことによる審美障害に加えて風や冷たいものが歯にしみて痛いことであった。

固定を必要としない外傷とは運がいい。
外傷に継発する突然の歯髄死が心配なので経過を追う必要があるものの、形態の回復と誘発痛除去が応急処置で必要となる。露髄もしていないのでは素直にCR修復で対応すればよろしかろう。

保険で使用できるCRでソコソコの見た目を回復させるなら、透過性の異なるCRでレイヤリングすることになろう。例外的なのは咬合面1級や5級でこれは単一ペースト充填でも案外にイケる。しかし、光の透過を受ける3級や4級、切端のCR修復では透過性を考慮しないとどうしてもイマイチな仕上がりにならなりがちだ。

こうした修復時に私が愛用するCRは3Mのフィルティックシュープリームウルトラ(A2E、A3B・A3.5B・A4B、A4D)と松風のビューティフィル(BW)である。シュープリームウルトラは、ボディシェードをメインに充填し、表層をA2Eで仕上げるだけでなんとなく美しく仕上がってくれる。BWは「中に仕込む」ことで白斑や白帯を表現するために用いる。切端エナメル特有の表情を作り出すためのトランスルーセントや黄色ティント等は保険で使える材料がない(あるのかな?)し、そこまで拘って充填に時間をかけられないことから採用していない。これを組み込むのは、ダイレクトボンディング(自費)のできる'職人芸'ドクターに限られてこよう。私にはムリデス

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充填と当日研磨直後。犬歯尖頭にBWを仕込んである。水色の点は、艶出し目的で使用したジフィーハイシャイン(ウルトラデント)の欠片である。

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2w後
外傷-受傷後の歯髄失活などがないことの経過確認のため来院。EPT正常、自発痛、打診痛、歯牙動揺なし。充填が上手くいったかなと思ったら写真撮影するとよい。肉眼観察と違って不備なところが面白いように分かるからである。近心隅角に形態不良があるので修正する必要があることが分かる。



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たまにあるのが、レジン前装部の破折や脱落

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レジン前装はどうしても無表情な見た目になりがち(A4D+A3B+A2E使用)

応用的に硬質レジン前装冠のレジン剥離修理がある。バッキングメタル金属色を遮蔽させた上で接着と嵌合でCRを築成していかなくてはならない。これは難易度と点数的に手間暇に見合うものではないから、修理などせず冠を新製するのが一般的だ。ただ、規模の小さな部分破折程度なら修理の方がよかろう。即日修理ができた方が喜ばれるし、浸麻も要らず短時間で仕上げられることから点数的にペイできるからである。

オペークレジンが用意できない場面での裏技があるので紹介しよう。
それは、レジン練板に採ったCRペーストをプラスチックスパチュラで織り込むように練り込みまくり、気泡を混ぜることでオペーク性を付与するテクニックである。ペースト性状が水飴のように変化して操作性は低下するが、明度が上昇して不透過性が得られる。A4Dあたりを練りこんで使うと良いだろう。これにより、オペーク性の強くなったA3Dを得ることが出来る。

これは私のアイデアではなく、愛知学院大の冨士谷先生に教わったものである。ありがとうございます。
 
posted by ぎゅんた at 16:44| Comment(5) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする