11/3は文化の日だから俺はセミナーに行くぜ!
なんて逸る殊勝な考えがあったわけではありませんが、場所が金沢のADI金沢支店(いつもお世話になっております)ですし、こうみえて私も元々は保存修復-接着歯学の畑の出身。疎かになりつつある接着歯学の知識のアップデートを目的に参加してまいりました。接着技法は、とかく情報に振り回されて混乱をきたしがちだからです。
接着歯学といえば、私の中では、セルフエッチングプライマーが象牙質をマイルド脱灰していった後に、モノマーが含浸仕切ることなく残存する脱灰層(接着の最深部に存在する長期予後を考える上での弱点となると考えられるから)の問題が克服されたのかどうかが気になったままでした。
ヒタヒタと新製品が発売され続けている接着修復用材料(いわゆるボンド)は、ディーラーから情報提供やデンタルショーで確認できているわけですけれど、どうも刷新的な技術改革がみられないままのようです。なにか大切なものを見落としているのではないかという不安があります。そんなわけで、知識のアップデートが図れればと期待して向かった次第です。
結論:参加して良かった
結局のところ、現在の接着歯学では過去のそれと比べて際立った進歩や変化はないようでしたが、材料面の改良は着実に進んでいることが分かりました。
例えばボンディング材です。
ワンステップ・ボンドの最強の座は3M ESPEの『スコッチボンドユニバーサル』で一応の決着がついたかなと諦観の念にありましたが、ここにきてデンツプライがそれを超えるべく最新のワンステップ・ボンド『プライム&ボンドユニバーサル』を出してきました。
最近のデンツプライらしく、グレーを基調とした外観で無機質っぽいクールさがあります。肝心なのは中身ですが、デンツプライのような
他、『キャリブラセラム』という新型接着性レジンセメントもちょっと興味深い。接着性レジンセメントは、当院ではCRインレー/アンレー、ジルコニア冠、ハイブリッドCAD/CAM冠を主としたセットのため3Mの『リライエックス』『リライエックスアルティメット』を用意しています。巷間、脱離しやすいと評価を受けていた保険のCAD/CAM冠ですが、幸いにして明らかに接着不良に起因すると考えられるから脱離は経験していません。歯科材料は、結局は術者の相性の面も無視できません。揃える材料はシンプルに徹するべきであると私は考えるのでリライエックス・シリーズを愛用してきたわけですが、ひょっとしたら『キャリブラセラム』に変わるかもしれません。この辺もまた『プライム&ボンドユニバーサル』と同様、使用してみて評価してみたいと思っています。とはいえそれは、在庫が切れてからになるので、先の話になります。
やはり材料は使い方
最近の「接着界隈」では、接着修復の材料はさておき、審美修復についての情報の方が求められている機運にあると思います。それも面白くて重要なのですが、多くの市井の開業医にとってより重要なのは、本セミナーでも語られてたように、日常的に行なわれているCR修復で「エラーのない結果を出すこと」だと思います。詰めたそばから脱離したり、充填後に「しみる・痛い」という不快症状の発生は歯科医院の沽券に関わることです。
「たかが虫歯の治療だ」と我々は考えがちですし、CR充填にそれほど苦手意識や問題意識を持っていないものだったりします。けれども、本当に質の高いCR充填ができているかどうかを問われたときに、自信を持って首を縦に振ることができるでしょうか。確かに、CR充填は、歯科医の日常臨床の中ではベーシックな位置付けにある処置ですし「たかが虫歯の治療」でもあります。けれども、CR充填を受ける患者さんからすると、治療を受ける生身なのですから「たかが」では済みません。治療前は痛みがなかったのに治療後に痛くなったとしたら、それは歯科医への強い不満と不信感を生むことになります。術後の痛みに出現には色々と背景や理由があったりもしますが、患者さんにとっては関係ありません。
セミナー内容のネタバレになるので細かに述べるわけにはいきませんが、レジンは材料の進歩があってもなお、重合収縮からは逃れることはできない思いを新たにしました。臨床家は充填時に重合収縮について配慮が常に求められます。ボンディング操作後に、フロアブルレジンを一層敷く「ファンデーションレイヤー」は、今も変わらず通用するテクニックです。このあたり、私はSDRをルーチンに使用しているのですが、間違ってはいなかったのだろうと胸をなでおろしました。
ワンステップ・ボンドを使う際の留意点や乳歯CRの脱落防止に役立ちそうな一手、光重合のための照射について、管理型う蝕予防のヒントなどなど、改めて勉強するうえで貴重な知見が得られたと思っています。実は最近、GIC充填にハマってたりもするのですが、まずは保険のCRよね。
デンツプライからは逃れられないのか、やはり2級修復には『V4システム』が効果的で、購入を検討しなくてはならないようです。V4の前々モデルである『パロデント』が、まだ現役なんですけどね(2級充填ではプレカーブドマトリクス+『バイオクリアーダイヤモンドエッジ』の簡易隔壁でも結果が出せてたりするので在庫が減らないのです)。来るものは拒まないが去る者は決して許さないのがデンツプライです(偏見)。