2017年05月24日

検診後の「再診」


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母校の中学校で学校歯科医をやってます


検診業務で、自分自身が対応した人が患者さんとして来院された場合、保険診療では「初診」ではなく「再診(検診後)」扱いとなります。当然点数は下がる(234⇨45)ので、巷で耳にするに不人気なルールのようですが、私はこの「再診(検診後)」が好きです。算定できることが栄誉あることと思うからです。検診後のシームレスな受診が歯科への無言の信頼に思えますし、当院に来院してくれたご縁を感じるからです。

学校検診を終えて、歯科受診にきてくれる子どもたちの姿が目立ち始める今日この頃。

学校検診そのほかで感じるのですが、中学生の口の中は、ハテこんなに汚れているものだろうか?と不安になることがしばしばです。単に学校歯科医が不甲斐ないからというだけの気がしますが、それだけでもないような。

ガサツなのか不衛生でいることが硬派と勘違いしとるのかしらんが、男子で目立ちます。
異性が気になる思春期だというのに、これではいかんぞ。前歯に食渣とプラークがべっとり。口呼吸もやめておくれ。これでは女子と会話なぞできんし、キスもできんぞ。もっと歯を大事にせい馬鹿タレ!
…こんなことは口腔内診中に声にだせませんから、ポーカーフェイスで淡々と作業をこなします。

たまに前歯に破折やその治療痕跡がみられる子がいますが、確認すると、ほとんどが球技系の部活に所属しています。球技系は歯の外傷が際立って多いのです。練習中に歯の外傷予防のためのマウスガードの着用が推奨されていますが、まだまだ教育現場ではその意識が希薄なようです。学校歯科医が教員や生徒たちに啓蒙しなくてはならないでしょう。困ったちん。
 
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2017年04月25日

し、仕事で iPad mini 4 使うもん!


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もう5年以上使用していた相棒であるiPad mini(初代)が、故障して死んだ。
というより私が引導を渡した(始末してしまった)のが正しいのであるが。

死因はゴーストタッチの嵐で操作不能になったからである。勝手にアプリを起動しまくってフリーズしたり画面の縮小拡大を繰り返してフリーズしている有様。そもそもこちらの入力を全て無視するのでメモで文章も打てなければメッセージの送信もできない。それどころか勝手に余計なことをするわけで、アプリは起動し続けるわデータは消すわ誤送信はするわの迷惑極まりない振る舞いしかしない。制御不能天衣無縫。起動したが最後、危害しか産まないのである。

メモに書きためた記事を消しまくっていく姿にブチ切れた私に引導を渡されこうなった。

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膝蹴りを一発かましただけでこうなるとは、iPadは虚弱体質に過ぎるぞ。


ゴーストタッチの主因は、画面ガラスの亀裂の長期放置のようである。購入して一年目のときに落下させた際にディスプレイガラスを割ってしまい、修理せず使い続けていたのだ。

これまでも稀にゴーストタッチと誤動作の片鱗はみせていたのだが、のび太ママに教えられた方法で窮地をしのいできたのである。それを4年間続けてきた。しかし、流石に今回の症状は終わりの始まりであった。ダメになるときはもう修理もなにも受け付けないのが機械というものか。パソコンと同じで電子デバイスの寿命はせいぜい5年だとか聞くが、概ね、間違いではありますまい。私のようなゴーストタッチ・ストームといった致命的状態には至らないまでも、レスポンスの著しい低下やボタン類の故障、ハードディスク容量の枯渇など、パフォーマンスが使用者の現実世界に追従しきれなくなったら、もう替え時のようだ。

ものは大切に、古いものも大切に、道具は良いものを末長く…、といった、人間が生きる上で大切にしなくてはならない理念は電子デバイスには通用しないようだ。ちょっと寂しい。やっぱアナログのが好きだわと行き過ぎたデジタル化と距離を置く人種がいても当然である。俺は地球最後の日までガラケーを使うぜ。


使い心地夢心地
さてiPad mini4であるが、すこぶる良好である。画質の著しい向上とハイ・レスポンスが心地よい。文章を打つときのキーボードの切り替えや変換時にモタつきが皆無になったのが嬉しい。文章を作成する作業の効率が300%増しである(良い文章が生み出されるわけではない)。
思えば、愛用していた初代iPad miniは動作がトロ過ぎたし画面が汚かった。進化を前にすると、過去の技術は残酷な評価を下される。

ブラウジングも素早いし、JavaスクリプトをOFFにしなくともサクサク観覧できる。容量も16GBから128GBに増えたのだから、一生涯かけても使いきれない安心感に包まれる。野外にて日照下にあっても画面がちゃんと見えるのも地味ながら驚きだ。カメラの画質も満足のいくレベルに向上している。こんなことならさっさと乗り換えておけばよかった。新しい畳と女房と電子デバイスは最高である。涙をのんで大枚を叩いたが、その価値はあった。



仕事への応用
モリタのデジタルエックス線システムである「i-VIEW」はiPadに画像の転送ができるので、iPadは院内の仕事で活用する余地がある。iPad上ではi-VIEWの機能も最低限で、パノラマやデンタル写真の一枚表示をする場面がほとんどであるが、チェアサイドで写真説明が簡単に行えるのは嬉しいところだ。当院では、私がむかし使っていたiPad2が使用されている。この程度の用途に限定すれば、古いiPad2といえど十分に活躍してくれるのである。
 
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2017年03月13日

【痛み止めと化膿止め】なにを根拠に、どう投薬しますか


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歯科医は医師に比べ、薬とその処方に疎いことは疑いようがない。

解熱鎮痛消炎薬と抗菌薬の2つの領域の限られたものになるのが一般的であるから、処方する内容も定型的になりがちである。また、診察した都度なにかにつけ薬を処方する歯科医師がいないように、薬を処方しないことが普通である事情も考慮できる。歯科の日常的な診療の中で処方のウエイトは低いから、それをして、薬の処方が浅薄になりがちである。

歯科医が処方する薬は、解熱鎮痛消炎薬薬と抗菌薬の2つの領域の限られたものが主である。狭い領域だ。歯科医はこの2つの領域の薬には、「狭く深く」精通するべきであるし、できるはずだ。市井の開業医が、数多ある薬剤を細かく使い分ける必要はない(そもそも、そういう精緻な処方をするために必要な検査を歯科医はしていないし、できない)。重要なのは、薬剤を処方することのリスクを常に意識すること、推奨されない処方を漫然と行ったり相互作用を考慮しない処方をしたりプラセボ的処方をしないこと、副作用や相互作用のチェックを忘れない姿勢でいることである。

とりわけ抗菌薬は誤用と乱用を防がないと耐性菌の出現につながる点で恐ろしい。抗菌薬を漫然と投与し続けることほど危険な行為はない。もし歯科医が処方する抗菌薬の不適切さが原因で耐性菌を出しているなどとしたら。そして、その抗菌薬の処方がなんら知識の裏付けのない(漫然とした)ものであれば、歯科医の社会的地位は大きく損なわれることになる。



薬も逆さに読めばリスクなり
処方することで得られる恩恵が、処方しないリスクを上回る場合に限って、薬が使用される。

わけても鎮痛薬は、歯科医の意識が高いところだろう。
酸性Nsaidsの処方を第一選択として、基礎疾患を有する患者や小児・妊婦では鎮痛効果がマイルドながら安全を考慮してアセトアミノフェンを選択する。この程度の使い分けは誰だってしているものだ。

ここに加えて、ワルファリン服用者やニューキノロン系抗菌薬投与の際に酸性Nsaidsは禁忌とか、アスピリン喘息患者にアセトアミノフェンは無難なだけで安全ではない(喘息患者にはペントイルという塩基性Nsaidが処方できたが、発売中止でいまは使用できなくなった)とか、肝臓障害のある人にアセトアミノフェンは禁忌とか、もっと知っておくべき知識が追加されてくる。


当院で処方できる解熱鎮痛消炎薬は以下のとおりである。

1.ロキソニン(頓用)
2.カロナール(頓用)
3.ソランタール(服用)※アモキシシリンと一緒に処方することが多い
4.キョーリンAP2(服用)※小児、妊婦、基礎疾患があってカロナールを処方できないケース用

ジクロフェナクナトリウムや立効散エキスも用意したいところだが、これは処方箋要員になっている。


感染根管治療後、一過性の術後疼痛の対策に解熱鎮痛消炎薬を処方する場面は少なくない。抜髄にしろ感染根管治療薬にせよ、不快な術後疼痛に苛まれることがあるからである。

この場合、まず基礎疾患と服用薬剤をチェックし、問題がなければロキソニンを第一選択にしている。
妊婦・小児ではロキソニンは使用できない(妊娠後期の酸性Nsaidsは禁忌)。
高齢者も、服用薬剤にバイアスピリンやワルファリンがあればロキソニンは処方しない(出血傾向となるから)。



抗菌薬を処方する場面
初回の感染根管治療後に抗菌薬を処方することがしばしば行われているようだが、私は、これはただの慣例に過ぎないと思っている。出しておく「べき」だからとか、なんとなくみんな処方しているからとか、処方する方が無難だからとか、およそ地に足が付いていない処方にすぎない。ここには、治療後に生じうる術後疼痛を抑えたい意識も、あるだろう。しかし我々は、抗菌薬が根尖病変を治癒に導きはしないことを知っているし、抗菌薬で根尖病変を叩いて治そうという意志など欠片も持っていない。

治療後にフレアアップを起こしたり膿瘍形成をきたしたりすれば処方の必要性もでてこようが、根尖部のマネジメントに大きな誤りがなければフレアアップはおろか術後疼痛もさして出ないものである。卑近な例でいえば、私はクイックエンドを導入することで術後疼痛の発生が激減した(根管内のdebrisを積極的に排出することで、根尖への押し出しが結果的に少なくて済むようになったのだろうと思われる)し、フレアアップも発生せずにきている。根尖へ無用な感染源を押し出すことなく、根管から感染源を除去していけば、生体である根尖歯周組織が病変を治癒へと向かわせる。ここに抗菌薬の出番はない。

万が一、フレアアップや切開排膿を必要とする急性歯槽膿瘍をきたした場合は、消炎処置と共に抗菌薬を処方するであろう。その場合、まず私はアモキシシリン水和物250(サワシリン等)と解熱鎮痛消炎薬の処方をするだろう。アモキシシリンはグラム陰性桿菌まで抗菌スペクトラムが広がったペニシリン系抗菌薬である。口腔領域の急性炎症の起因菌は、通常はグラム陽性球菌やグラム陰性桿菌のいずれかの一種であって、アモキシシリンが程よくカバーしてくれるのである。つまり、完全にターゲット菌を絞り込んでの処方ではない。私にとってアモキシシリンは、一般開業医が遭遇しうる口腔内の急性炎症に対する、ファーストチョイスの抗菌薬としての存在である。フレアアップ、急性歯槽膿瘍、智歯周囲炎など、およそ臨床医が頻繁に遭遇するすべてのケースで第一選択になる。

これで効かない場合は、起因菌が抗菌スペクトラムより外れているか、炎症が後期に移行して嫌気性菌が台頭したかことを考えるし、自らが下した診断と行った消炎処置に誤りや不足があったのではないかと再考せねばならない。

起因菌の同定のための検査ができれば抗菌薬を絞り込めるが、歯科ではその保険評価がない(だから、誰もやらないしデータの蓄積もない)。いきおい、やむをえずで起因菌の同定検査なしに強力無比な抗菌薬が投与されることがある。アジスロマイシン(ジスロマック等)やシタフロキサシン(グレースビット)がそれである。これらは「幅広く焼き尽くすように」よく効く。だが、これは最後の切り札的存在であって、ファーストチョイスにはならないと思う。こんな強力な抗菌薬を処方することなど年に数回あるかないかであろう。「抗菌薬は、効かせたいときにガツっと効かせてスパッと終わらせる」使い方を重視するならファーストチョイスに良いかもしれないとも考えられるが、ビビりの私は処方を躊躇する。

私の抗菌薬の選択と処方は古典的で慎重すぎるところがあるはずだが、さりとてアモキシシリンの処方で困った経験もさしてない。あるとすればペニシリンアレルギーで処方できない場合(その場合はクリンダマイシン(ダラシン)を処方)か、消炎処置に誤謬があって感染症を進行させてこじらせてしまった場合である。

歯科治療は原因除去を根本に据えた外科処置が本体であって、抗菌薬で治療する内科的療法が優位に立つことはないと考える。解熱鎮痛消炎薬は痛くなければ服用せずに終わるが、抗菌薬は決まった回数と期間、服用して効かせなくてはならない。処方がより慎重でなくてはならないのは抗菌薬である。臨床所見からどの抗菌薬を選択するかを判断し、血中の薬効濃度の維持を考えた処方、患者のコンプライアンスが良好であることが求められるからである。
 
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2017年02月27日

人体解剖学実習と頭頸部


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学生時代の学部教育にあって、個人的に思い出深いのが人体解剖学実習であります。

カリキュラムは各校によって様々ですが、私の母校では二年生になってからすぐに行われました。座学で総論と各論をザッと終わらせてから実習が始まり、夏休み前に終わるスケジュールです。

人体解剖学の講座は厳しいことで有名でした。出欠席の確認が…ではなく、暗記する量が膨大で試験勉強が大変という意味とお情けで試験にパスすることは決してない厳格さの2つがその理由です。伝統的な留年科目と評判だったのであります。「適当」にやっていては進級もままならぬ専門課程に足を突っ込んだのだと意識せざるをえません。そして、解剖実習を前に我々は不安を隠せないでいる。我々の前に姿をみせた教官たちも強面で(意を決して教室に質問に行くとすごくフレンドリーな態度に驚いたものです)ありましたから尚更のこと、緊張感が高まったものでありました。

実習は1班6人、頭頸部・胸腹部・下肢部の領域をペアで担当する決まりでした。
我々は歯学部ですから、どうみても重要なのは頭頸部であります。ただ、この領域の担当は責任が極めて重く、また実習中の口頭試問が集中すると事前情報で評判でした。加えて解剖実習を前に不安を抱いているわけで、頭頸部領域の担当になることに尻込みする心理がありました。学生のくせに泣き言を、と思ってしまいますが、すぐ先に解剖実習を控えている学生の特殊な心境は、これは医学生と歯学生ぐらいしか分からない気がします。

実習班の名簿を見ると、ちょうどその頃、親しくしていた友人と同じ班でした。一歳年上で、根暗ではないがどことなく陰があり、協調生がないわけではないが、同期たちとは常に距離を置いているタイプ。人物のイメージとしては南木佳士「医学生」にでてくる新潟県郡部の旅館の次男坊(実際の彼は道民で歯科技工士の倅でしたが)が該当しましょうか。当時、そんな彼と私はウマが合って親しくしていましたから、同じ班になれたことに喜びました。そして、どうせなら頭頸部の担当になって精一杯頑張ろうと誓いました。


人体解剖学実習の緊張のピークは、ご遺体を包んでいる黒いビニール袋のジッパを開ける瞬間までです。それ以降は肚が座りまして、緊張感で飯が喉を通らないなんてことはなくなります。平常心でご遺体とに触れることが出来ます。文章にすると非人間的ですが、これはご遺体を生命の抜けた亡骸(物体)と冷徹に認識する始まりでもあり、体験しなくてはならないステップです。治療に際して患部を前にした術者が冷静に対処するためです。忘れてはならないのが、治療の対象は生命ある人間であることで、これを忘れると往々にして患者をマテリアル化する医者特有の病に振れるようです。

解剖学実習は常にご遺体と向かい合って黙々と進めます。誰しも様々に哲学しながら作業を進めたのではないでしょうか。


頭頸部担当の重責感(下手な手技で解剖所見をダメにすると班員に迷惑がかかる)と口頭試問で指名されることは確かに事前情報通りでしたが、幸運なことに、熱意あるペアと実習に打ち込めた私は充実した時間を過ごせました。鮮明な解剖所見を観察できる剖検を遂げた頭頸部の班は、実習の時間を使って同期らに説明する場を突発的に与えられたりするのですが、私とペアが指名されたこともあります。これは正直シンドイのですが、これ以上ない名誉ある機会でもあります。

実習中にいつ質問されるか分からないし、試験勉強の負担を減らしておこうとばかり、ふたりで実習室に居残って解剖部位、所見、名称の確認、知識のすり合わせをしていたものです。様々なことを互いに語り合いながら、作業をすすめていたものです。このときのことを、私は鮮明に覚えています。

いま、解剖学の教科書や実習所を紐解いてみても、当時に覚えていたはずの知識がごっそり抜けてしまっていることに情けなさに落胆します(知識の確認が必要なときは口腔解剖学サイドリーダーを用いています)が、解剖学実習を過ごしたあの時間を忘れることはありません。

体づくで覚えた知識の大半を失っていても、経験がいまの自分の礎になっておりますし、体験が生涯忘れることのない思い出になって残り続けています。ときおりふと、あの頃の自分は幸せな時間を過ごしていたのだなと思い出すのであります。
 
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2017年02月05日

自分も歳をとる〜老後の金銭的設計

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[はじめに]
ここ最近、やたら保険商品やら年金基金への加入を薦められることが続いた。

「そういえば老後の生活についての準備が真面目になされていない」ことに気づき、色々と調べみた。書物を渉猟し、元同僚・先輩歯科医師たちに意見を訊き、 自分なりに意見をまとめたのが今回の記事である。お金に関する話題はとかく荒れがちになるが、それは、お金は人の生活に直結するなによりも重要な存在だからだ。様々な考えがあることを承知の上で、私の見解を述べることにする。更に予防線を張っておこう。私はファイナンシャルプランナーでもないし特に金融に明るいわけでもない。付け焼刃的素人意見と思って差し支えない。間違っている箇所も、あるだろう。参考にしていただけるところがあれば幸いだが、鵜呑みにしないで欲しい。興味や関心が沸き立ったら、まずはご自身で調べて欲しい。その結果、納得や理解のできない制度や金融商品があったら、それには手を出すべきではない。悔いのない計画を立案して欲しい。


生涯現役か完全引退して第二の人生か
我々歯科医は「名誉ある自由業」であり、定年退職はない。大学や保健所などに勤務されている先生にはあるもかもしれないが、歯科医の大部分にとっては、定年退職は上の空の話に違いない。働けるなら、働ける気力はあるのなら、働きたい気持ちがあり続けるなら、我々はいつまでも歯科医師として第一線に立てるのである。生涯現役だもんでってなもんである。

歳をとった歯科医師にこそ診てもらおうと積極的に考える患者さんは少ないから、加齢とともに新患は減っていくのが普通である。従って、診療スタイルには変化が生ずる。医院の人的規模を減少する患者数に合わせて減らしていき、最小限のマンパワーで悠々とした診療をするよう変化していくのが通例のようだ。そして、義歯診療が主体になっていくのも普通である。

老いてなお、根管治療を追求する歯科医師は、残念ながらあまり聞かない。うちの親父のように「いやもう根気がなくてな」と丸投げしてくる様をみると、高齢時の根管治療は想像以上に過酷な仕事なのかもしれない。根治が連続で続くと精神的疲弊を感じるが、あれが常にあるような心境なのだろうか。さすれば、投げ出したくなるかもしれない。将来と老後については、自分の人生であるのに、鮮明な想像をすることができない。


老後の収入は、通常は年金に依存しますが
開業医は自由業なので、どノーマルなら国民年金(基礎年金)のみである。私が国民年金を受給するころは、その支給開始年齢が70歳に引き上げられているかもしれないし、月々にして一桁万円のままであろう。ひょっとしたら「ガラガラポン」されて年金制度(とそうした類の支給)がなくなっているかもしれない。もしくは、超低額支給になって「支給されているのだから年金制度は破綻していない」と真顔で開きなおられるかもしれない。おいこらー

世の中には、年金を納めず、いざとなったら生活保護で生きていこうと考える人種が一定数存在するようだが、彼らを非難することはできない。国民年金の保険料の納付のみならず国民健康保険料をも納めたら、生活が金銭的に立ち行かなくなるのであれば、いよいよダメになったら生活保護を受給しようと考え至って当然だからである。年金制度はもはや国民のモラルで支えられているとしか思えない。

本来、老後の生活においては国民年金のみに依存せず、財産・貯蓄を切り崩して老後生活を送るのが普通だったように思う。しかしそれは老後に蓄えを残すことが難しくない時代の話で、現在は、そのような過去の時代に比べ老後の貯蓄に回せる余力がないままの人が増えている。現実的な話、子ども2人の養育を抱える私は、将来の老後の経済的事情を憂うことしかできない。自慢できるほど経済的な余裕がないからである。非礼な話で恐縮だが、程度に差はあれ多くの先生方もそうではなかろうか。決して楽観はできないはずだ。将来に希望を持てない社会であることも、貯蓄への渇望感を扇動し、心理的に不安にさせられる要因となっている。介護も、どうなるかわからない。

結局のところ、「老後」は国を頼らず自衛に走らざるをえないことに変わりはない。先述の「いざとなったら生活保護作戦」は色々と失うものが多すぎるので、少なくとも歯科医でこのプランを考える先生はいないだろう(歯科医師免許を持っていると生活保護が受給できないと聞いたことがある。真偽のほどは不明)。晩節を汚すことは不名誉極まりないことである。

ここでいう自衛策とは、要するに、年金が支給されるような年齢になった時の金銭的余裕を確保するプランをさす。老後を心配なく看過なく過ごすために自衛するのである。実際、これはコンセンサスを得ていて、大多数の人が老後に備えた設計をして運用している。国民年金ひとつでは生活が立ち行かなくなることが自明だからだ。年金に関しては、国はちょっと頼りないのだ。

今を生きている我々の耳に、将来の不安を懸念せざるをえない囁きが色々と入ってくる。「下流老人」だとか「貧困苦に喘ぐ高齢者」だとか、「万引きなどの軽犯罪を犯し刑務所に入る高齢者」などなど。もはや、国民年金一本で老後は安心♡としている人は市役所で婚姻届の有効期限を尋ねるような楽観主義者ぐらいものであって、誰しもが、年金をアテにしないで済むぐらいのプランを持っているはずだ。そして、それは、どのようなものなのだろうか。



考える。訊いてみる
老後に充分な経済基盤を構えるためにできることはなんであろう。
また、年金の支給が始まる頃にできることはなんであろうか。

現時点で、私が考えつく案は以下のようである。

・第一線で働き続ける
・アルバイトなどで小銭を稼ぐ
・副業で小銭を稼ぐ
・歯科医師免許以外の資格を活かして稼ぐ
・付加年金も納付する
・国民年金基金に加入しておく
・確定拠出年金を利用する
・円貯金をしておく(定期預金)
・個人向け国債を買う
・円を外貨資産にしておく(外貨預金、外貨MMF、FX)
・純金を購入
・株や債券、投資信託で資産を増やしておく
・投信積立を決済する
・老後のための保険商品を用意しておく
・不労所得を得る仕組み(不動産や経営など)
・ヒモになる

最後は冗談として、重要なのは、「仕事で稼げる身体を用意しておくこと」と、「一定金額が毎月用意されること(年金や年金型インカム)」であろう。老後を穏やかに過ごすには、確保された安定収入と健康体があることが、精神衛生の観念上からも極めて重要である。これに異を唱える人は、いないだろう。

「確保された安定収入」が国民年金だけでは話にならないので、ここを補うこと考えると、自営業者はまず上乗せとして付加年金に加入し、余裕をみて年金基金にも加入するのが常道のようだ。実際に、歯科医師会の年金基金に加入している先生は多かった。これに加えて、投資を組み込む人もいた。積極的な資産の運用である。

本記事のテーマと少し違ってしまうので省略しているが、健康な体を維持する生活を送ることも相当に重要である。生活習慣病や慢性疾患に罹ることは、年間に必要な医療費が地味に確実に増加する点で大敵だからである。病気のせいで老後の生活に制限がかかることも、面白くない。生活習慣病を治すには生活習慣病に至る期間の3倍の期間を要すると聞いたことがある。金銭抜きで我々がいますぐ始められることは、健康な体を維持する生活(病気にかからない予防的な生活)を心がけることである。



資産の運用
株やFXの短期売買で利益を上げる先生はごく少数で、株式の現物買い(長期保有)と投信積立をしている先生が多かった。投信とは、投資信託のことだが、ノーロード型で、信託報酬低いもので、インデックスのものから選択するのが基本のようである。リスク分散の観念から、先進国の海外株式で運用するものやバランス型が人気のようで、リターン重視の途上国の株式を中心とした商品は人気がなかった。積立は最小月500円から開始できる時世であるから、始めようと思えばそのハードルは低い。この投信積立は、長期運用で複利を狙う貯金の感覚で行っているようだ。いざとなったら決済して現金化できるから貯金なのである。資産の運用には、「金持ち父さん貧乏父さん」ではないが、お金にも働いてもらおうという気持ちが存在している。先物取引をされている先生はいなかった。CFD取引も同様に、いなかった。


円資産ではなく外貨資産はどう?
金利がクソッタレな円を持っていても増えやしない。リスク管理の面からも外貨資産をポートフォリオに加えるべきである。

というわけで外貨だが、ドル資産を増やしてくパターンと、金利の高い通貨を増やすパターンが存在する。ドルとオーストラリアドルが人気。ユーロと南アフリカランド、トルコリラは不人気であった。

純粋に金利を追求するならレバレッジ1倍のFXでのスワップ運用が考えられるし、ベストであろう。しかしレバ1倍運用は、通貨にもよるが種銭を多く必要とする。私は昔、南アフリカランドをレバ3倍で運用していたことがある。1日に300円近いスワップが入ってニタニタしていたものであったが、昨年初頭のランド急落で痛い目にあったことがある。マイナスにはならなかったがロスカットで-30万の結果になった。スワップで積み重なっていた数年にわたる利益ごと昇天してしまった。

私が聞いて回った範囲では、FXをキャピタルゲイン目当てで利用している先生はいなかった。株式の短期売買と同様、デイトレしているほど歯科医は暇ではないのである。

為替手数料でぼったくられる外貨預金は不人気で誰も利用していなかった。外貨預金は、銀行員に勧められても決して買ってはいけない商品の代表選手である。

外貨建MMFは、例えば購入したアメリカ株式の配当金(ドルで受け取る)の余りを米ドル建MMFに回して利用とか、なんか聞いていて頭が回らなかったが、そういう風に利用するようである。円から買い付けると為替手数料で損をするからのようだ。元本割れすることを考えなくてよいほど安全な商品だが利回りがもうひとつであるし、為替手数料が無視できない点で使い辛い。

まとめると、外貨資産は、為替リスクを嫌う人は手を出さない方が良い。とはいえポートフォリオに海外資産を含めることでのリスク分散は推奨されるから、海外株式のETFを購入する方が良いだろう。配当金が期待できるし、経済が上向きならETFも値上がりするからである。


保険商品
万が一、自分の身に何かあったら…を考えるとこれは保険に頼らざるをえない。

本屋に行けば「無駄な保険商品はこれだ」とか「保険外交員が知られたくない保険の秘密」だの「加入している保険の内容を見直しましょう」だとか、センセーショナルなタイトルが本棚に並んでいる印象を受けるのも、この保険の分野である。保険会社ばかりが得をするボッタクリ商品が多いのかもしれないが、日本人の保険好きは異常で、必要以上に保険に加入しすぎ&支払い過ぎの人が多い実態を表してもいるのだろう。保険を削ることは安心を削ることでもあるが、加入内容の見直しはした方が良い。知らずして(騙されて)保険会社へお金を貢ぐ存在になっている人は少なくないはずだ。

加入する保険は先生方によって様々で、これはという意見を導くことはできなかった。
掛け捨て商品が不人気だろうかと思ったのだが、そうでもなかった。家族思いの先生が多く、自身に不幸が生じた場合、遺族にお金が多く出るように設定しているのが目立ったぐらいである。

ちょっと変わったところでは、外貨建てリタイヤメントインカムがある。プルデンシャル生命の米国ドル建リタイヤメントインカムが有名。私は、知人(プルデンシャル生命の保険外交員)の薦めで30の頃に加入している。月に158$を65歳まで支払う。保険なので死亡保障がつくのと、リタイヤメントインカムの名の通り、満期時に年金月額を受け取ることができる(満期時に一括で受け取ることも選択できる)。

真偽は不明だが、この米国ドル建リタイヤメントインカム、金融マンの大多数が加入しているらしい。保険の性格と金利を活かしたリターンと、満期時の受け取りに自由がある点で魅力的だが、為替リスクと為替手数料のことは懸念事項として残る。金融マンがなぜこぞってこの保険に加入しているのだろう?将来的に日本はドルに対して円安になると考えていること、外貨建て資産としてリスク分散しておきたい、保険にも加入しておきたい気持ちがあるがプルデンシャルはグローバル大手なんで信頼できると判断している、など考察できるが。プルデンシャル生命は広告を全然出さないことで、浮かした広告費を顧客に還元する姿勢があるようで、普段からボッタクリ商品にまみれている金融マンからすると魅力的に感じるのかもしれない。

加入した後に気づいたが、私は健康上の理由で65まで生きていられるか分からない(私がおっ死んだ時に葬式+αが出るはずなのでそれで許してやろう)。加えて、トランプのおっさんが無茶苦茶やらかせばドルどころか米国がすっ飛ぶかもしれないご時世だ。今更、解約することはできない段階なのでこのままいくが、保険の加入は是非とも慎重に行うべきである。というか、月並みなことしか言えない。


見えてくる共通項
今回の調査(というほど立派な内容ではないが)で、金融に明るい先生方には面白いように共通する考えや信念がみられた。私なりに気づいた点をまとめると、以下のようである。

・証券会社は、ネット証券を利用してネットで取引する
・ATMや振込手数料で損をしないためにネット銀行を利用する
・銀行や保険会社が購入を勧めてくる商品はボッタクリなので手をださない
・「付き合い保険」はありえない
・投資に私情を持ち込まない
・投資信託は、国内株式か海外株式のインデックスで、手数料の低いものを選ぶ
・長期運用が基本(短期売買など「投機」はしない)
・税金の控除が美味しいことを理解している
・自家用車や持ち家は、基本的に負債であり資産と考えない
・自分自身が成長することを含めて、投資である

手数料を取られること、税金でしょっぴかれることに容赦と妥協がない姿勢が見える。投資とは、損をしなければいいと考えられるから、これは、重要なことだ。どこかで聞いた話だが、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットの所有するアメックスカードはグリーンカードだという。ゴールドカードやプラチナカード、ブラックカードは年会費が高く、支出に見合ったリターンがないと考えているからだそうだ。必要以上に見栄を張った、対価のない支出は避けてその分を資産に回すのが鉄則である。


自家用車
開業医には、高級外車を経費に減価償却することで購入される先生が多いようだが、私はこれはどうかと思う。どうせ経費で落とすなら、院内設備に回した方が確実なリターンが得られよう。車は金を生まないからである。高級外車に乗ることで経営収入が上がる立場にある人は別だろうが、なんとも想像することができない。所有する自己満足が仕事への熱意に変換されることも考えられるが、これもまた、私には想像することができない。開業医は、院長だぞと威張ったところで、世間でいう中小企業の社長クラスに過ぎない。高級外車に乗るなとはいえないが、その分をもっと他に、仕事上の有益な投資に向けてみてはいかがだろうと思う。

自家用車を所有しない選択肢もある。想像以上に大きな維持費を浮かすことができるだけでなく、交通事故のリスク(怪我、生命の損失だけでなく、法的にドライバー側にとっても不利で理不尽なリスクが高い)を抑えることができる。お抱え運転手を抱える先生はいないが、タクシー会社と仲良くなることは可能である。なお、私の父親は全く運転しなかった。自家用車は一家に一台で、嫁(私のオカン)が乗り回していたからである。運転が得意ではないので無理をして乗らなかったのだが(父と一緒に出かけるときはタクシーやバス、電車で移動したものだ)、このおかげでソコソコお金が浮いたそうだ。しかし、不肖の息子の学費にスッ飛んでしまうことになったが…



APPENDIX
なお、現時点で私が用意しているのは以下のとおり。

・国民年金+付加年金
・米国ドル建リタイヤメントインカム(プルデンシャル)
・投信積立を月に2千円(500x4)
-三菱UFJ国際−eMAXISバランス(8資産均等型)
-ニッセイ日経225インデックスファンド
-ニッセイ外国株式インデックスファンド
-ニッセイJリートインデックスファンド

もう少し余裕がでたら投信積立を増額し、確定拠出年金に加入し、さらなる余剰金を歯科医師会の年金基金にいれる予定である。これでなんとかなるかな?あと多分、身体の自由がきく限り死ぬまで働きます。仕事は暇つぶしではないけれど、なんもしないとボケそうだからです。




色々読んだ中で、読みやすくわかりやすいと思った書籍はこちら
・難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!(文響社)
・良い保険ダメ保険の見分け方 第4版 (自由国民社)
どちらも売れたっぽい本なので、図書館に置いてあるんじゃないでしょうか。
 
posted by ぎゅんた at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする