2017年01月10日

【論文紹介】Patencyについてアレコレ述べられた論文その3


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タイトル:The Impact of Apical Patency in the Success of Endodontic Treatment of Necrotic Teeth with Apical Periodontitis : A Brief Review

論文のタイプ:総論(Review)

Authors: Machado R[1], Ferrari CH[2], Back E[3], Comparin D[4], Tomazinho LF[5], Vansan LP[6].

Affiliations
[1]Department of Multidisciplinary Clinic I and II and Supervised Stage in Multidisciplinary Clinic I (Endodontics), Paranaense University-UNIPAR, Francisco Beltrão, Paraná, Brazil;
[2]São Jose dos Campos Dental School, State University of São Paulo-UNESP, São Jose dos Campos, São Paulo, Brazil;
[3]Clinical Practice, Joinvile, Santa Catarina, Brazil;
[4]Clinical Practice, Cunha Porã, Santa Catarina, Brazil;
[5]Department of Multidisciplinary Clinic I and II and Supervised Stage in Multidisciplinary Clinic II (Endodontics), Paranaense University-UNIPAR, Francisco Beltrão, Paraná, Brazil;
[6]Department of Endodontics, Ribeirão Preto Dental School, University of São Paulo, Ribeirão Preto, São Paulo, Brazil.


【序論】
歯牙硬組織遺残や軟組織片の堆積による根管根尖部の閉塞は、根尖部のトランスポーテーションやレッジ、パーフォレーションのような(根管治療の手順上の)エラーを起こすだろう。(そして、そうした場合に根尖部に存在したままになっている)これらのdebrisはまた、根尖病変の維持や形成を可能とする細菌を含有しているはずだ。

こうした理由をして、「Apical Patency(根管が根尖孔まで穿通されていること)」が提唱されてきた。Apical Patencyを発揮させる手法で最も一般的なものは、根管形成をしている間、いわゆるpetancyファイルを用いることである。このファイルは弾性に富む細い号数のKファイルのことをいい、ファイル先端いプレカーブなどつけることなく、ストレートの形状のまま、根尖孔をそにまま素通りさせるように用いられる。Apical Patencyによって、先述のエラーを避けることができ、作業長喪失リスクの軽減化と根管洗浄の効果の増強、術者(の指)の触知感覚の時改善が得られる。

その一方、Apical Patencyは汚染されたdebrisを根尖外へ押し出したり、(穿通後に継発する)根尖歯周組織の炎症を招くものだとする報告も多い。

Apical Patencyに関する論文のほとんどは、それによるメリットとデメリットに関しての思索的な言及に過ぎないものばかりである。

この論文の目的は、根尖性歯周炎を有する壊死性歯髄の根管治療の成功を保証する術式の役割について簡潔な総論を導くことである。


【所感】
2016年の論文。多分、読みやすい類の論文。著者はブラジル人エンドドンティスト。UNESPって有名な大学なのかな。

根尖性歯周炎を伴う歯髄壊死をきたした患歯の根管治療の成功に関連する apical patency の役割についてのコンセンサスが存在しないので、(この論文では)根管の解剖と細菌学のふたつのキーポイントを考察に盛り込んで根尖性歯周炎を伴う歯髄壊死に至った歯の根管治療の成功を保証する apical patency の役割を簡潔に説明したくて書き上げたもの。のようです。

他の論文もそうでしたが、やたら'necrotic teeth'という表現が多いです。ブラジルでは歯髄壊死が流行っているのでしょうか。歯髄壊死ときくと、日本人歯科医師の多くは「Pulエソ」「Pulエシ」と保険病名が頭に浮かび、自動的に「感染根管治療」を想起するはずです。つまりは、「抜髄/感染根管」に慣れてしまった私にとってと違和感を覚えるところです。

壊死性歯髄ということで、その除去に麻酔を必要とする状態。いってみれば歯髄の細菌感染により抜髄を要するinitialな根管をNecrotic teeth と言っているものかどうかは私の英語力では読み取れませんでした。というか抜髄ならpulp-ecromyとか書きそうだし。'retreatment'は感染根管治療のことで間違いないと思うのですが。まあいいか(ダメです)。


technical terms
dental remnant   apical region   apical periodontitis   apical delta   lateral canals   prophylactic treatment   intraradicular infection   cervical   middle thirds


words
consensus   conduct   capable   whereas   merely   speculative   guarantee   robust   ensure   obtain   variation   harbor   consideration   essentially   prevailing   rationale   persistence   nutrient   disturbance   inflict   obliteration   solely   underestimate   elicit   postulation   perpetuation   inference   confirm   strictly


fixed phrase
The purpose of this paper(study) is to -   According to many other studies,-   it is clinically impossible to-   not only ... but also-

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2017年01月09日

【論文紹介】術後疼痛とフレアアップについて

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タイトル:Incidence of postoperative pain after intracanal procedures based on an antimicrobial strategy

論文のタイプ:臨床研究 Clinical Resarch

著者:Siqueira JF Jr[1], Rôças IN, Favieri A, Machado AG, Gahyva SM, Oliveira JC, Abad EC

[1]Department of Dentistry, Estácio de Sá University, Rio de Janeiro, RJ, Brazil.


「歯内療法の三種の神器」p.166 より『どんなに注意しても残念ながら数パーセントの弱率でフレアアップが生じる』で紹介されていた論文。2002年。ブラジル人のエンドドンティスト。

【所感】
15年前に発表された論文を「古い」と言っていいものかどうか、学術論文の時間の感覚を私は知らないが、現在のエンドに続いているセオリーの礎を述べている内容。術後疼痛とフレアアップについて述べられるときに、これからも引用されるであろう論文ではなかろうか。

私が読み間違えてなければ、術前に臨床症状を有するNecrotic pulpの治療後にフレアアップを起こした確率が3.8%と最も高かったこと、Treatment/Rereatmentでフレアアップを起こした確率に有意差はなかったこと、術前に臨床症状を有していた場合は術後疼痛が出やすかったなど述べられている。N数が多いので信頼に足る報告と思うが、細かな条件とその場合の結果報告についてはあまり重要視する必要まではないと思う。かなり乱暴な解釈だが、「根管治療後にフレアアップを起こす確率は、かなり大雑把に見積もって1.9%ぐらいである」と理解しても良さげ。なぜなら、術後疼痛とフレアアップについての眼目は、根管内の感染性有機物(いわゆるdebris)の根尖周囲組織への押し出しであり、それを可及的に少なくする術式を考えることが重要だからである。このことは'Discussion'の項で述べられている(詳細なところまで私には読み解くことができなかったが…)。


私がエンド畑に足を踏み入れたのは2006年ごろだと思うが、抜髄にしろ感染根管治療にしろ、術後に強い痛みが出ることは当たり前のことと誰も気にしていない風潮が確かにあったと記憶している。術後疼痛がないのは、真面目に根治をしていない/真面目に根治をやっているから術後疼痛が出るのだとなかば開き直った解釈がなされていた気さえする。そして、誰もPatencyの重要性を説いてもなかったし、NiTiファイルを使用している先生もいなかった。いたのかもしれないが、私は見ていない。

思えば、ここ数年で日本のエンドはかなりレベルアップしたのではないかと思う。先生方の根管治療の腕が上がったことよりも、根管治療に必要な知識や論拠、そしてテクニックが本邦の一流のエンドドンティストらにより周知されたという意味である。なんだかんだでエンドは、若い先生方もベテランの先生方も、いつでも関心を引く分野であり続けている気がしてならない。学問的にも臨床的にも、歯を保存することを強く意識させられる性格があるからだろう。

保険診療でグローバルスタンダードなエンドをやれば赤字路線であることは変わりのない事実。けれど、それはそれ。エンドは歯科医師にしかできない仕事だからと矜持を持って保険でエンドをしている先生方が変わらず活躍しているのもまた事実。趣味で好きでやっていることだからと思えば腹も立たない。腹がたつのは己の不勉強と診断不足と力量不足であり、己が手を出した結果は口の中に残した患歯がある限りいつでも評価できるし、評価される。

posted by ぎゅんた at 22:58| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月07日

【論文紹介】Patencyについてアレコレ述べられた論文その2

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タイトル:Important of patency in endodontics

論文のタイプ:総論(Review)

著者:KHATAVKAR. ROHEET. A. * HEGDE. VIVEK. S. **
* Post Graduate Student,** Professor & Head, Department of Conservative Dentistry and Endodontics, M.A.Rangoonwala Dental College, Pune.


2010年の論文。根管治療におけるPatencyの概念とその必要性について論じたもの。インド人のエンドドンティストが著者の様子。
Patencyの概念についてとエンド治療におけるその必要性についてがあれやこれや情熱的に記述されている。
個人的になんとなく読みにくい印象を受けたが、多くの人にとっては平易な英文であろうから読破は容易だろう。

全体を通じてベーシックな単語が程よく重複して用いられているので、論文でいかにも使用されそうな単語を覚えたり復習するのに手っ取り早い題材のように思える。練習用にどうぞ。



重要っぽく思えた箇所
根尖部のdebrisの重積をコントロールするひとつのアプローチが、Patency(根管が根尖まで穿通されていること)の概念である。

'apical patency'の概念は'apical cleaning'としばしば誤解されてきた。

Patencyの利点
1.グライドパスの確立とその維持
2.根尖部の湾曲の存在を術者に知らせる
3.長さの決定を容易にする
4.根尖部の根管洗浄の効果を改善する
5.根尖部の封鎖と作業長が短くなることを最小限に抑える
6.偶発症のリスク減少
7.象牙質粒や石灰化の除去
8.術後の感受性の減少
9.バイオフィルムの機械的崩壊
10.根尖の圧を除いて楽にする
11.根尖孔への根管充填をも可能とあうる



専門用語 technical terms
instrumentation   obturation   radiography   apical region   root curvature   exudate   iatrogenic complication   denticle   calcification   postoperative   necrotic pulpal tissue   periapical area   extrusion   priodontal ligament   pain on percussion   dentition   recurrence   clinical symptom   irreversible change


重要そうな単語
alike   presently   adequate   significance   controversy   carry out   concept   assure   predictably   passively   propose   literature   mention   merely   imply   meticulous   preclude   facilitate   determination   inadvertently   restrict   inorganic   minimize   precursor   paramount   comprise   microorganism   confine   simultaneous   eliminate   intensity   virulence   disruption   penetration   physical   precise   progression   noxious   depressurization   relive   modify   favorable   exert   definite   dormant   warrant   weigh   judiciously   variability   preconceive


定型表現
According to-   In addition to-   It is possible that-   A number of -
 
posted by ぎゅんた at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月04日

【論文紹介】Patency(ペイテンシー)についてアレコレ述べられたもの

おててつないで.jpg

タイトル:The Importance of Apical Patency and Cleaning of the Apical Foramen on Root Canal Preparation

論文のタイプ:総論(Review)

著者:Araújo Souza(I,II,III)
I)Discipline of Endodontics, Bahia State Dental School, Bahia State Foundation for Science Development (FBDC), Salvador, BA, Brazil
II)Department of Endodontics, Brazilian Dental Association (ABO), Salvador, BA, Brazil
III)Department of Endodontics, School of Dentistry, University of Ribeirão Preto (UNAERP), Ribeirão Preto


2006年の論文。ブラジル人のエンドドンティストがPatencyについての知見と考察を述べたもの。この先生のような、英語ネイティブでない人の論文は(まだ)読みやすいところがあって好き。

英語論文を読めるようになる秘訣は「とにかく読め」だという。
なにごとも最終的に練習量が勝敗を決するように、やはり数をこなすことは不可欠なのである(天才は別)。

一読した限りこの論文は練習にあつらえ向きに思えた。まずは専門用語、定型単語、定型表現に慣れることからである。英文を読むことに慣れるには、まず題材が貴方の興味を惹くものが良いに決まっている。そうした意味では、エンドの論文ならとっつきやすいだろう。貴方も私も、エンドが好きだからである。

上から目線で偉そうだが、実態は、私が今やっていることである。練習練習!なぜ俺は学生時代、あんな無駄な時間を…



重要っぽく思えた箇所

・Patencyのためのファイルは根尖孔に合致する号数の、できれば2サイズ下の号数のものであるべき。

・根尖孔よりも小さなサイズのファイルをPatencyに用いることは、根管内由来の有毒な産物や象牙質残渣を根尖周囲に出してしまうリスクを最小にできる点で効果的であろう。

・Patencyによって根管の交通性が確保されていることは、牙粉による根尖部の閉塞を避けることのみの意味があるだけで、根尖孔の清掃は意味しない。根尖孔は機械的に拡大されることで清掃されるはずである。

・根尖を穿通することは、根尖孔へのアクセスを維持する目的をして根管形成を行っている間中、確立される(機械的ゴール)が、重要なのは、根管形成後に根管の交通性が確保されているだけでなく、清掃されていることである(生物学的ゴール)。

・根管内で器具を操作している間は、小さな径のファイルで根管の交通性が確保されていることがベストであろうし、その小さなファイルが根尖孔を通過する際に(根尖孔の)壁に触れることで清掃されるのである。

・根尖を穿通して交通性を得ることは、牙粉が根尖方向に押し込まれて栓となり、作業長に干渉することを防ぐために意図されて行われているものである。



専門用語 technical terms

apical patency   apical foramen   endodontic treatment   pulp stump   periapical tissues   root canal preparation   working length   root apex   cemental canal   periapical disease   anaerobic bacteria   microorganism   apical third   root canal instrumentation   periapical lesion   debridement   dentin chips   intracanal   sodium hypochlorite   postoperative pain   connective tissue


重要そうな単語

polemic   aspect   advocate   tactile   trait   controversy   acceptation   definition   fragment   adequate   argument   embolus   inadvertently   preferably   axiom   equivocate   erroneously   exclusively   dispensable   considerable


定型表現

It is likely that-   According to-   Considering that-   take into account   It is known that-   It seems likely that-   intend to-

 
posted by ぎゅんた at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月27日

根充直後よりもその経過

根充後経過ヘボコア補綴.jpg

出来たハズだと思っていたテストの結果を知る直前の緊張感に、いつまでたっても慣れることができない。大学入試試験も、運転免許試験も、歯科医師国家試験も、その結果を知る直前まで言いようも言われぬ不安感に苛まれていた感覚をいまも鮮明に思い出すことができる。試験は出来たハズ、だが、「自分に限っては駄目」なのではないか?と最後まで失敗の疑いを払拭しきれない自分がいることを実感する。

根治・根充して数ヶ月〜数年経った患歯をX線写真で撮影することになった時も、現像される直前に不安混じりの緊張感をおぼえる。なんら一切の根尖病変の所見がない時には安堵のため息が漏れ、写真上で写っていた根尖病変が縮小ないし消失していた時には充足した達成感で満たされる

抜髄根管に限っては、根充がアンダーでも余計な感染がなければ根尖病変を形成もせず問題なく経過する。現代エンドでは嘲りの対象となる綿栓根充であっても、感染さえなければ良好な経過を辿るはずだ(試したことが無いので推測)。拡大した部分まで根充されておらず死腔になっていれば、根尖ギリギリまで根充されている像が理想と考えてしまう歯科医師の心理からして、アンダー根充になっていることへの心理的な抵抗はあるものの、拡大と洗浄・消毒された無菌に近い根管で根充されていたのであれば許容される臨床経過を辿る。

死腔説-死腔が体内に存在すること-の存在から、アンダー根充への潜在的な嫌悪感は払拭しきれない気持ちが残るが、根管という複雑怪奇なメイズを人間の手作業で全て綺麗に仕上げ封鎖できるものかどうかを考えれば、そもそも根管治療自体が極めて非科学的で不確実なものにすぎないと唾棄したくなる。

 しかし、歯科医は根管治療を等閑にしてよいと考えはしない。アンダーは適切な根管治療がなされていればそれが許容されるだけであって、アンダーにならぬよう全力を尽くすことは変わらない。重要なのは感染源の除去と清掃・消毒が達成された根管を無菌的に封鎖することである。たとえピッタリに根充されていても感染性有機debrisが存在していれば、根充後の確認写真がいかに立派で見栄えがよくとも泡沫の満足感にすぎないものとなる。優れたエンドドンティストは、根充直後の写真よりも根充後の経過確認写真を重視するものだが、その理由はこのようなところであろう。

 根充後の患歯がどのような経過をたどったか。良好な経過であれば、なぜか。期待した経過をたどらなかったのなら、なぜか。根管系という、あらゆる職業のなかで歯科医師しか触れることのできない聖域に手を突っ込んだその経過を、常に考察し続けることは歯科医師に課せられたひとつの責任であろう。


※写真上で根尖病変がなさそうに見えていても、根尖病変が皮質骨に及んでいないだけかもしれないことは留意せねばならない
 
posted by ぎゅんた at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする