2021年09月10日

嵌合メタルコアの除去には超音波振動!ってマジすか

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当院の除去用器具四天王

研修医の時分から今に至るも、結局のところ謎のまま納得できないままでいるのが「メタルコアに超音波振動を当ててセメントラインを破壊して除去する」テクニックである。商業誌や成書に、そのような記載があったから私は「そんな楽なことはねえぜありがてェ〜」とすぐに導入したが、メタルコアになんぼ振動を当ててもピクリともせず絶句したことを覚えている。以来、「超音波振動を当てること」でメタルコアを除去できたことはない。自分の手法が間違っているのか、あくまで除去の際の、補助的に作用させる程度のテクニックなのか?

根管内に破折したファイル片はエンドチップ+超音波振動で除去できていたので納得もできるが、メタルコアに関しては、今に至るも納得できていない。適切な操作で合着用セメントで嵌合されたメタルコアは、そもそも「絶対に脱落せず機能し続けること」を命題に適応されているはずで、そう簡単に除去できるものではないであろう。セメントラインを破壊すれば、コア試適時のように緩みがある状態になるから容易に除去ができそうに思えるが、そもそも、セメントラインの破壊を超音波振動で本当に破壊できるものかどうか確信が持てないでいる。コア除去用チップ+無注水ハイパワーで達成できるのだろうか?コアが嵌合された抜去歯牙で試して除去できなかった覚えがある。その結果は間違いで、確かにできるのなら嬉しいが…

セメントラインを破壊することでコアを緩ませて一塊で除去できる快感は魅力的であったが、それを高い確率で実現できるようになるのは、コア除去鉗子やオートセーフリムーバーのような頼りになる器具を知ってからのことだ。

目下、私はメタルコアの除去は、コア除去鉗子とオートセーフリムーバーに依存している。控えめなサイズのメタルコアであれば、支台歯の歯質とコアの境界のセメントラインに一文字の削合を入れてマイナスドライバー様のスリッターを挿入してテコ作用で除去している。


エンドの好きな先生は再根管治療(保険用語でいう感染根管治療)にも果敢に立ち向かわれる姿勢をお持ちであろうから、畢竟、メタルコアの除去に関して有効かつ秘蔵のテクニックを持っていそうな気がする。

私は除去に関しては苦手でもないが得意でもない(除去の場面ではとても緊張する)から、オススメの器具を紹介することぐらいしかできないのが情けないところだ。
posted by ぎゅんた at 22:27| Comment(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月17日

(論文紹介)"ENDODONTIC DISINFECTION THE SONIC ADVANTAGE"Clifford J.Ruddle,DDS


【要約】
「disinfection:消毒、殺菌」ということで、根管の消毒についてのReview論文。根管の消毒とは、つまるところは感染源の除去と洗浄であり、著者のラドル先生は可聴域振動(ソニック)根管内洗浄装置である『エンドアクティベーター』を考案し、それを用いた根管洗浄である"3D disinfection"を提唱し、長年にわたって実践されている。

根管は、解剖学的に湾曲や側枝などを有する複雑な「根管系」であり、それが理由で根管洗浄不足や側枝由来の病変が出現したりする。

本論文は、根管治療の良好な成績を獲得するために、これらの存在を考慮した三次元的な根管洗浄が必要であることを説くものである。



【感想】
読むとエンドアクティベーターが欲しくなる論文。いや、注文した

エンドアクティベーターは一昔前に登場した根管洗浄のための器具のひとつであるが、さしたる評価を得なかったようで、日本で購入するには輸入業者を頼らなくてはならない。

優れた根管洗浄とは、適切な根管洗浄行なった後に超音波吸引洗浄を行うべきであると思うが、今のところ簡便で安価な製品が登場しているとは言い難いままである。昔から効果的な根管洗浄として、エンドチップを用いる超音波洗浄があるが、私はこの手法は好きではない。

洗浄効果は、確かに高いであろう。しかし、術者として器具の用意が面倒であること、エンドチップの破折が怖いこと、チップ形状はストレートであるから、少なからず湾曲を有する根管根尖部を洗浄しようとすると根管壁にチップが接触して削ってしまう(無用な根管壁のダメージになりそうだし、スメア層だって生じるののでは)ことが気になるからである。

エンドアクティベーターのチップは医療用ポリマーから成り、弾力があり、少なくとも根管壁に切削的なダメージを与えるものではない。根管内の液体を振動させるだけが目的の非侵襲的なチップになっている。

エンドアクティベーターを用いるタイミングは、根管形成のステップが終わった後であり、本論文によれば、

1.6%のヒポクロで根管内を洗浄する
2.(そのヒポクロを)吸引して除去する
3.17%EDTA溶液を根管内に満たして、エンドアクティベーター60秒間作用させる
4.(そのEDTA溶液を)吸引して除去する
5.6%ヒポクロを根管内に満たして、エンドアクティベーターを30秒間作用させる

とある。

エンドアクティベーターを用いただけでスメア層は除去できないため、EDTA溶液を用いる。スメア層を除去した後にヒポクロを作用させて、三次元的な根管洗浄を終了させていることになる。

私は根管内感想と洗浄液吸引のためのクイックエンド(ヨシダ)を有しているし、根管洗浄に採用している Irrigants もヒポクロとEDTA溶液であるから、エンドアクティベーターの導入はまことに容易いのである。



はやく現物が届くのを待つばかりだ。
ちなみに購入にあたっては、スマイルUSを利用した。いつもお世話になってます。
 
posted by ぎゅんた at 16:41| Comment(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月10日

【論文紹介】Patencyについてアレコレ述べられた論文その3


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タイトル:The Impact of Apical Patency in the Success of Endodontic Treatment of Necrotic Teeth with Apical Periodontitis : A Brief Review

論文のタイプ:総論(Review)

Authors: Machado R[1], Ferrari CH[2], Back E[3], Comparin D[4], Tomazinho LF[5], Vansan LP[6].

Affiliations
[1]Department of Multidisciplinary Clinic I and II and Supervised Stage in Multidisciplinary Clinic I (Endodontics), Paranaense University-UNIPAR, Francisco Beltrão, Paraná, Brazil;
[2]São Jose dos Campos Dental School, State University of São Paulo-UNESP, São Jose dos Campos, São Paulo, Brazil;
[3]Clinical Practice, Joinvile, Santa Catarina, Brazil;
[4]Clinical Practice, Cunha Porã, Santa Catarina, Brazil;
[5]Department of Multidisciplinary Clinic I and II and Supervised Stage in Multidisciplinary Clinic II (Endodontics), Paranaense University-UNIPAR, Francisco Beltrão, Paraná, Brazil;
[6]Department of Endodontics, Ribeirão Preto Dental School, University of São Paulo, Ribeirão Preto, São Paulo, Brazil.


【序論】
歯牙硬組織遺残や軟組織片の堆積による根管根尖部の閉塞は、根尖部のトランスポーテーションやレッジ、パーフォレーションのような(根管治療の手順上の)エラーを起こすだろう。(そして、そうした場合に根尖部に存在したままになっている)これらのdebrisはまた、根尖病変の維持や形成を可能とする細菌を含有しているはずだ。

こうした理由をして、「Apical Patency(根管が根尖孔まで穿通されていること)」が提唱されてきた。Apical Patencyを発揮させる手法で最も一般的なものは、根管形成をしている間、いわゆるpetancyファイルを用いることである。このファイルは弾性に富む細い号数のKファイルのことをいい、ファイル先端いプレカーブなどつけることなく、ストレートの形状のまま、根尖孔をそにまま素通りさせるように用いられる。Apical Patencyによって、先述のエラーを避けることができ、作業長喪失リスクの軽減化と根管洗浄の効果の増強、術者(の指)の触知感覚の時改善が得られる。

その一方、Apical Patencyは汚染されたdebrisを根尖外へ押し出したり、(穿通後に継発する)根尖歯周組織の炎症を招くものだとする報告も多い。

Apical Patencyに関する論文のほとんどは、それによるメリットとデメリットに関しての思索的な言及に過ぎないものばかりである。

この論文の目的は、根尖性歯周炎を有する壊死性歯髄の根管治療の成功を保証する術式の役割について簡潔な総論を導くことである。


【所感】
2016年の論文。多分、読みやすい類の論文。著者はブラジル人エンドドンティスト。UNESPって有名な大学なのかな。

根尖性歯周炎を伴う歯髄壊死をきたした患歯の根管治療の成功に関連する apical patency の役割についてのコンセンサスが存在しないので、(この論文では)根管の解剖と細菌学のふたつのキーポイントを考察に盛り込んで根尖性歯周炎を伴う歯髄壊死に至った歯の根管治療の成功を保証する apical patency の役割を簡潔に説明したくて書き上げたもの。のようです。

他の論文もそうでしたが、やたら'necrotic teeth'という表現が多いです。ブラジルでは歯髄壊死が流行っているのでしょうか。歯髄壊死ときくと、日本人歯科医師の多くは「Pulエソ」「Pulエシ」と保険病名が頭に浮かび、自動的に「感染根管治療」を想起するはずです。つまりは、「抜髄/感染根管」に慣れてしまった私にとってと違和感を覚えるところです。

壊死性歯髄ということで、その除去に麻酔を必要とする状態。いってみれば歯髄の細菌感染により抜髄を要するinitialな根管をNecrotic teeth と言っているものかどうかは私の英語力では読み取れませんでした。というか抜髄ならpulp-ecromyとか書きそうだし。'retreatment'は感染根管治療のことで間違いないと思うのですが。まあいいか(ダメです)。


technical terms
dental remnant   apical region   apical periodontitis   apical delta   lateral canals   prophylactic treatment   intraradicular infection   cervical   middle thirds


words
consensus   conduct   capable   whereas   merely   speculative   guarantee   robust   ensure   obtain   variation   harbor   consideration   essentially   prevailing   rationale   persistence   nutrient   disturbance   inflict   obliteration   solely   underestimate   elicit   postulation   perpetuation   inference   confirm   strictly


fixed phrase
The purpose of this paper(study) is to -   According to many other studies,-   it is clinically impossible to-   not only ... but also-

ラベル:AF MAX 論文
posted by ぎゅんた at 23:37| Comment(2) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月09日

【論文紹介】術後疼痛とフレアアップについて

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タイトル:Incidence of postoperative pain after intracanal procedures based on an antimicrobial strategy

論文のタイプ:臨床研究 Clinical Resarch

著者:Siqueira JF Jr[1], Rôças IN, Favieri A, Machado AG, Gahyva SM, Oliveira JC, Abad EC

[1]Department of Dentistry, Estácio de Sá University, Rio de Janeiro, RJ, Brazil.


「歯内療法の三種の神器」p.166 より『どんなに注意しても残念ながら数パーセントの弱率でフレアアップが生じる』で紹介されていた論文。2002年。ブラジル人のエンドドンティスト。

【所感】
15年前に発表された論文を「古い」と言っていいものかどうか、学術論文の時間の感覚を私は知らないが、現在のエンドに続いているセオリーの礎を述べている内容。術後疼痛とフレアアップについて述べられるときに、これからも引用されるであろう論文ではなかろうか。

私が読み間違えてなければ、術前に臨床症状を有するNecrotic pulpの治療後にフレアアップを起こした確率が3.8%と最も高かったこと、Treatment/Rereatmentでフレアアップを起こした確率に有意差はなかったこと、術前に臨床症状を有していた場合は術後疼痛が出やすかったなど述べられている。N数が多いので信頼に足る報告と思うが、細かな条件とその場合の結果報告についてはあまり重要視する必要まではないと思う。かなり乱暴な解釈だが、「根管治療後にフレアアップを起こす確率は、かなり大雑把に見積もって1.9%ぐらいである」と理解しても良さげ。なぜなら、術後疼痛とフレアアップについての眼目は、根管内の感染性有機物(いわゆるdebris)の根尖周囲組織への押し出しであり、それを可及的に少なくする術式を考えることが重要だからである。このことは'Discussion'の項で述べられている(詳細なところまで私には読み解くことができなかったが…)。


私がエンド畑に足を踏み入れたのは2006年ごろだと思うが、抜髄にしろ感染根管治療にしろ、術後に強い痛みが出ることは当たり前のことと誰も気にしていない風潮が確かにあったと記憶している。術後疼痛がないのは、真面目に根治をしていない/真面目に根治をやっているから術後疼痛が出るのだとなかば開き直った解釈がなされていた気さえする。そして、誰もPatencyの重要性を説いてもなかったし、NiTiファイルを使用している先生もいなかった。いたのかもしれないが、私は見ていない。

思えば、ここ数年で日本のエンドはかなりレベルアップしたのではないかと思う。先生方の根管治療の腕が上がったことよりも、根管治療に必要な知識や論拠、そしてテクニックが本邦の一流のエンドドンティストらにより周知されたという意味である。なんだかんだでエンドは、若い先生方もベテランの先生方も、いつでも関心を引く分野であり続けている気がしてならない。学問的にも臨床的にも、歯を保存することを強く意識させられる性格があるからだろう。

保険診療でグローバルスタンダードなエンドをやれば赤字路線であることは変わりのない事実。けれど、それはそれ。エンドは歯科医師にしかできない仕事だからと矜持を持って保険でエンドをしている先生方が変わらず活躍しているのもまた事実。趣味で好きでやっていることだからと思えば腹も立たない。腹がたつのは己の不勉強と診断不足と力量不足であり、己が手を出した結果は口の中に残した患歯がある限りいつでも評価できるし、評価される。

ラベル:論文
posted by ぎゅんた at 22:58| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月07日

【論文紹介】Patencyについてアレコレ述べられた論文その2

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タイトル:Important of patency in endodontics

論文のタイプ:総論(Review)

著者:KHATAVKAR. ROHEET. A. * HEGDE. VIVEK. S. **
* Post Graduate Student,** Professor & Head, Department of Conservative Dentistry and Endodontics, M.A.Rangoonwala Dental College, Pune.


2010年の論文。根管治療におけるPatencyの概念とその必要性について論じたもの。インド人のエンドドンティストが著者の様子。
Patencyの概念についてとエンド治療におけるその必要性についてがあれやこれや情熱的に記述されている。
個人的になんとなく読みにくい印象を受けたが、多くの人にとっては平易な英文であろうから読破は容易だろう。

全体を通じてベーシックな単語が程よく重複して用いられているので、論文でいかにも使用されそうな単語を覚えたり復習するのに手っ取り早い題材のように思える。練習用にどうぞ。



重要っぽく思えた箇所
根尖部のdebrisの重積をコントロールするひとつのアプローチが、Patency(根管が根尖まで穿通されていること)の概念である。

'apical patency'の概念は'apical cleaning'としばしば誤解されてきた。

Patencyの利点
1.グライドパスの確立とその維持
2.根尖部の湾曲の存在を術者に知らせる
3.長さの決定を容易にする
4.根尖部の根管洗浄の効果を改善する
5.根尖部の封鎖と作業長が短くなることを最小限に抑える
6.偶発症のリスク減少
7.象牙質粒や石灰化の除去
8.術後の感受性の減少
9.バイオフィルムの機械的崩壊
10.根尖の圧を除いて楽にする
11.根尖孔への根管充填をも可能とあうる



専門用語 technical terms
instrumentation   obturation   radiography   apical region   root curvature   exudate   iatrogenic complication   denticle   calcification   postoperative   necrotic pulpal tissue   periapical area   extrusion   priodontal ligament   pain on percussion   dentition   recurrence   clinical symptom   irreversible change


重要そうな単語
alike   presently   adequate   significance   controversy   carry out   concept   assure   predictably   passively   propose   literature   mention   merely   imply   meticulous   preclude   facilitate   determination   inadvertently   restrict   inorganic   minimize   precursor   paramount   comprise   microorganism   confine   simultaneous   eliminate   intensity   virulence   disruption   penetration   physical   precise   progression   noxious   depressurization   relive   modify   favorable   exert   definite   dormant   warrant   weigh   judiciously   variability   preconceive


定型表現
According to-   In addition to-   It is possible that-   A number of -
 
ラベル:論文
posted by ぎゅんた at 00:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治(未分類) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする