2018年02月22日

Retreatment canal のGPの除去は、どう攻めるか?


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※メールでご質問があったので、その返信を兼ねた記事になります


再根管治療において、ガッタパーチャの除去は難渋する局面であります。

根管内に存在するガッタパーチャは「感染源」に相当することから完全除去しなくてはならないわけですが、根尖部の緊密な封鎖を目的として充填されているそれは、除去が単純に困難だからです。

そしてまた、根尖にガッタパーチャを押し出してしまうリスクと戦いながら、根管のネゴシエーションを達成しなくてはなりません。



根管内のガッタパーチャをどう除去するか?は、昔から様々な方法が存在します。

エンジンリーマー
ピーソーリーマー
ゲイツドリル
GP除去用NiTiファイル
GP溶解剤
GP除去用手用インスツルメント

……etc

基本的には、大まかに根管の歯冠側2/3のGPを機会的に除去して、その後は手用ファイルでネゴシエーションを狙うものになると思います。何をどう使うかは、術者の好みが出るところでしょうし、絶対的な正解もなさそうです。



あくまで最近の私が採っている方法ですが、と前置きをした上で話を進めます。

根管の攻略に入る前に(見つけた根管にファイルを突っ込みたくなる衝動を抑えながら)、作業域となる髄腔内の軟化象牙質をスチールラウンドバーで取り除きます。根管口より姿をのぞかせるGPは、ロングネックの号数の小さいスチールラウンドバーを用いてモソモソと大まかに除去します。GPの除去が確認できたら、柔らかなGPにアクセスできること状態と判断して#20のエンジンリーマーを用いて気持ち臆病にGPを除去します。うまくいくと、リーマーが根尖方向に沈むようにGPを絡め取ってくれます。エンジンリーマーで攻めすぎると破折や人工根管を生じるだけなので、ほどほどに留めます。それから、SEC1-0にマニー#10Kを装着してネゴシエーションを狙います。

元々が人工根管であれば「不自然なほどの直線」なのですんなりネゴシエーションは達成できます(しかしこれは、本来の根管ではないので、単純に喜ばしい事態ではないことに注意が必要です)。

本来の根管の走行から逸脱していなかった場合は、多少の粘りや抵抗があるものです。

#10Kでネゴシエーションを達成したら、#12KをSEC1-0に装着して再度ネゴシエーションさせ、交通を確実にします。根管口を覗いて、手用インスツルメントで除去できそうなGPがあれば除去しておき、30Gのイリゲーションニードルで根管内を洗浄し、クイックエンドで吸引します。

その後、グライドパス形成用NiTiファイルであるプログライダーでグライドパスを形成します。そして、プロテーパーネクストのX1でもグライドパスを形成します。プログライダープロテーパーネクストも、その動作はロータリー・モーションであり、根管壁から剥離させたGPを歯冠側に移動させてくれることが期待できるので、根尖から先へのGP押し出しや溢出を防止できるかもしれないという期待を寄せてのことです。GP溶解剤は使用していません。

この後は、ウェーブワンゴールド:プライマリに切り替え、必要な拡大形成を行なっていくことになります。
 

※マイクロで根管を除きながら除去用インストゥルメントでGPを除去する作業は、まるで異物である鮭フレークを根管内より剥離除去するかのような独特さがある。この作業は一度始めると時を忘れて熱中してしまう悪魔的魅力に満ちている。

掛かる時間はともかく、正確に満足のいく除去を達成できるのであるが、当然、保険のエンドでこれをやることは難しい「もう知らん」と開き直れば可)。
posted by ぎゅんた at 08:42| Comment(6) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年01月29日

MTA(Mineral Trioxide Aggregate)セメントで根充してみる


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根管が大きく拡大されているだけでなく、根尖部が大きく破壊されているRetreatment根管の根管充填をどうするか。ゴムの棘みたいな太いマスターポイントを用いた側方加圧充填か、FP-コアキャリア法か、MTA根充かのいずれかを選択せざるを得ないのではないか。

根管が過度に拡大されていたり、根尖が大きく破壊されている根管は、エンドによる感染源除去と消毒が功をなし保存が叶ったとしても、歯根破折から逃れられるかどうかの不安から逃れることはできない。エンドで保存した歯を補綴せず根面板のかたちで保存していく方が安全かどうかについて私は確たる意見を持たないけれども、最終拡大号数が大きい根管や根尖部が大きく壊れた根管の根充にMTAセメント用いるのは具合が良いであろうことは知っている。

FP-コアキャリア法は、簡易サーマフィルのような根充法である。根尖部が太い根管もオブチュレーションガッタソフトをコーティングしたフレックスポイントネオを作業長に合わせて根管に挿入する方法であり、材料さえあれば簡便に行える。ただし、個人的な臨床成績は芳しくない(悪いと断ずることはできないが、良いと太鼓判も押せない)。根尖病巣が消えなかったり、シーラーとオブチュレーションガッタを根尖から押し出しすぎるきらいがあるのである。「そんなもん、根充法が悪いのではなくお前の(根管からの)感染源除去と消毒が不十分だからじゃね?」と指摘されればハイそうです……と言わざるをえないものの、目下、私はFP-コアキャリア法を行なっていない。



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「差し歯がとれた」と来院された患者さん。隣の中切歯もやられてまんがな……というツッコミは「この歯だけの治療を希望」を前に雲散霧消。ひとまず前歯がないわけですから、その審美性の回復こそが喫緊の課題であり主訴でもある。「症状もなにもない歯の治療の必要性なんて知らん」が患者さんの実情であります。

さてこの#12、写真で見るとワケが悪いが自発痛も打診痛も訴えない。

写真をパッと見て予想されることは、何回も根管治療を受け、アマルガムを用いた逆根管充填の既往がありそうであること。根尖部は慢性的に病変が存在することで吸収を受けたかで大きく壊れていること。歯根に亀裂はなさそうであること、の3つであります。

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初回はガッタパーチャの徹底除去を行なったが、果たして、術後にその確認写真をみると根尖部のデルタ地帯に亀裂があるように見える。根管内から逆根管充填材が除去できれば胸を張れる実績となるがそれは叶いそうもなかった。となると、再び外科的歯内療法で……となるが、患者さんは「いや、アレは嫌です」という。過去になにかあったのか。

根尖のアマルガム(多分)ごと、外科的に除去するべきであろうとは思うが、仕方がない。そもそも、このような場合の根切と逆根充を上手くやり遂げられるものかどうか、私に確たる自信がない。

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畢竟、お定まりの「根管からのアプローチのみ」での対応となったわけだが、根尖は120-130号の、ホームセンターで売ってる細ネジみたいなファイルが素通りで通過するかしないかぐらいに壊れきっている。経過が良ければ根充していくことになるが、破折のリスクもあるし、これ以上の拡大形成は実質的に自殺行為でもある。崖っぷち根管である。さすれば、根充はMTAセメントを用いても差し支えあるまい。

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ヒポクロが根尖から漏れないよう注意しながらクイックエンドで吸引乾燥を交えた根管洗浄を行ってから、MTA根充を行なった。MTA根充の手順やその手法は、寺内先生の『ビジュアライズド イラストレーションズ How to Endodontics(p.158-)』に記載されている内容をそっくり真似ている。使用したMTAセメントは、YAMAKINのTMR-MTAセメント(アイボリー)である。初症例にしては致命的な「やらかし」はないはず(と信じたい)。

今のところ違和感や自発通など訴えてはいない。
それは良いのだが、さてどこまで歯根破折せず長持ちしてくれるだろうか懸念は尽きない。
 
posted by ぎゅんた at 18:18| Comment(4) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月09日

新品の、よく切れるスチールラウンドバーで軟化象牙質を駆逐してやろう

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用心棒のことを英語でバウンサーと言いますが、歯医者の用心棒ならぬ相棒はスチールのラウンドバーではないかと私なんかは思うわけです。

歯科治療は感染源を除去する外科的な側面があり、歯牙に限定すれば軟化象牙質が相当します。エンドは、生体の治癒力が期待できない根管内を舞台とした治療であり、やはり、感染源の除去が求められます。通常の虫歯の処置と違い、見えないところで、象牙細管の存在する(細菌たちにとっては隠れ家パラダイスである)領域から炎症を起因する存在を除去していくことになります。そして、そのプロセスの前に不可欠であるのが、入り口である歯冠部の軟化象牙質の徹底除去です。

こうした時、頼りになるのはスチールラウンドバーではないかと思います。注水下で軟化象牙質を切るようにモリモリと除去していく頼もしさは、臨床歴が長くなればなるほどに高まっている気がいたします。エアタービンや5倍速を用いても構わない向きがありますが、どうも小回りが利かないというか神経質で疲れるというか不本意な切削をしてしまうというか、私が求める操作と相性が悪いところがあります。スプーンエキスカは小回りが利きますが、イマイチ能率的とは言い難い。

大学院生で臨床が駄目駄目駄目星人のペーペー(死語)だった時分、バイト先の院長に「う蝕検知液やらラウンドバー、スプンエキスカなんぞ時間の無駄だから使うな。エアタービン越しの感覚で軟化象牙質の除去を認識しろ」と教わったことがありました。これは乱暴なようですが、しかしまあ、当然のことなのです。いないよりはマシかもしれない素人に毛が生えたバイト医にチンタラやられてはたまったものではありませんから、ハッパをかける意味もあったでしょうし、市井の開業医にとって処置は短時間に手際よく終えていかなくてはならないからです。その歯科医院は日曜診療をされておりまして「とにかく手が足らないから誰かきてちょうだい」的求人であり、あまつさえ隣の医局から私の在籍していた医局に壁を超えてオファーが来ていたのでした。その結果、私なんぞがいくことになってさぞ迷惑であったことでしょう。いま思い出しても恥ずかしいというか黒歴史というか、北海道に行ったらお詫び行脚に訪れなくてはならない歯科医院リスト上位にランクインしています。

目下、軟化象牙質除去に際して 、スプンエキスカとう蝕検知液は使用したりしなかったりするのの、ラウンドバーは必ず用いています。エアタービンは、外科医がメスを迷いなく一気に入れるような格好いいイメージで齲窩の開拡時にザッと使用してほぼ終わりです。すぐにラウンドバーに持ち替えて軟化象牙質徹底追及に切り替えます。ラウンドバーはすぐに切れなくなりますから、新品か準新品を用います。切れないラウンドバーを使用するのは時間の無駄だからです。

軟化象牙質除去だけでなく、目についた縁下歯石を弾き飛ばすように除去することもできます。根管治療のために修復物を除去して軟化象牙質を除去している際に、マージン部や縁下根面に歯石の存在を認めることがあります。Er:Yagレーザーやスケーラー類を使用しての除去が丁寧ですが、量が少ないなら、ラウンドバーでそのまま除去することは構わないでしょう。吹っ飛ばすように除去できて綺麗な根面象牙質が見えると快感です。

エンドの領域では髄腔内の整理の際に無類の力を発揮します。根管治療の際の軟化象牙質除去は、いってみれば無菌的治療のための作業場作りであります。作業場なのに、そこに軟化象牙質があっては(しばしば、見逃しがちなのですが)台無しになってしまいます。根管にファイルを挿入する前に、徹底して「入り口エリア」の軟化象牙質を徹底除去し、ヒポクロで綺麗にすることを心がけると良いと思われます。根管を前にした歯科医は矢も盾もたまらずファイルを挿入したくなる病を患っています(偏見)が、まずこの病を治すことが良質な根管治療を約束します。「作業場」を綺麗な象牙質に囲まれた場所にすることが肝要ですし、スチールラウンドバーはとてもハンディです。
 
posted by ぎゅんた at 22:49| Comment(8) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月02日

下顎前歯の二根管症例(Weine3型)

下顎前歯の根管治療に遭遇する頻度はさほど高くはない。
全ての歯科医師が周知しているように、下顎前歯部は唾液腺の開口部領域にあることからう蝕になりにくく、寿命が長い歯だからである。

と思いきや、昨今の高齢化社会では老人の根面う蝕の発生に伴って、下顎前歯もその猛威に晒され、歯髄炎や歯髄死に継発する感染根管、また歯冠破折による露髄残根に陥っている場面に遭遇することがある。統計がとられているかは知らないが、増えているのではないか。虫歯の治療の経験がなく歯に自信をもつ高齢者の歯が根面う蝕に刈り取られている姿が眼に浮かぶ。

う蝕になりにくい下顎前歯部根面う蝕をきたすのは、咀嚼能力が落ちてくることで食べやすい加工食品(ことに菓子パン)を食べるようになることのプラーク付着や、唾液分泌量低下の影響があるものと思われる。不思議と菓子パンを好む高齢者は多い。彼らにとって甘いものは「蜜」であり、贅沢品であり、耽溺したい対象になっているのか。油と糖質の塊は、確かにパンチの効いた美味を提供してくれるものであることは分かるのだが。こうしたものは嗜好品の範疇なので常食すべきではあるまい。


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そんなかんだで、下顎前歯部の根管治療の依頼を受けたケース。術前写真で2根管性であることは明らか。

下顎前歯がいかなる場合であれ単根管であると考えるのは軽率で、実のところ、低い確率ながら複根管であることを忘れてはならない。下顎前歯の歯の解剖に関しては、その昔に先人たちが報告した通りである。下顎前歯では、歯根が唇舌的に広く近遠心的に狭いが、約半分の根で2根管性である。その場合の大半は根尖1/3で融合して根尖部で単根管となる(Weine分類1 でいう2型)。根尖部で合流しない、純粋な2根管性(Weine分類でいう3型)は1.3%程度の出現率とされている2.3

上顎大臼歯の根管治療でMB2の存在を常に意識するように、下顎前歯の根管治療に際して我々は、複根管の存在を意識しなくてはならない。根尖部で合流するタイプのものが多いとはいえ、根管の見落としは除去すべき有機質を見逃すことに他ならないからである。2根管性の場合、舌側が発見しづらいことが多いため、アクセス窩洞のアウトラインを唇舌方向に大きくとらざるを得ない。不必要な歯質削除は常に慎まなくてはならないが、発見すべき根管を見落とす可能性が高いのであれば、拡大的切削は許容されるだろう。どのみち複根管が発見された場合、円滑な根管治療のために更に窩洞が削除されることになる。レアなケースと思われるが、Tzvetelina G. Gueorgieva4 ら は3根管の下顎側切歯の症例を報告している。しかしこれすらも、アクセス窩洞を大きく確保することで解決されるものである。

術前写真でお分かりのように、根面う蝕を除去していけば残根に近い状態となり、結果として根管口はモロ見えとなるわけであるから根管は簡単に発見できた。スタート地点が恵まれていただけで、もしインタクトなケースであったら労を要することだろう。

10Kでネゴシエーションし、プログライダーでグライドパス形成を行ってからNEX20/.04⇨ウェーブワンゴールド:プライマリで拡大形成を行なった。根管洗浄は17%EDTAとヒポクロをクイックエンドを用いて頻繁に行なっている。クイックエンドと滅菌ペーパーポイントで根管の乾燥を得てレシプロックガッタパーチャR25をAHプラスを用いてCWCTで根管充填を終えた。

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下顎前歯部の根管治療をする際は、術前のレントゲン写真を正放線に加えて偏心投影でも撮影するべきだろう。髄腔開拡に際しては、見落としを防ぐために唇舌方向に大きくとることも必要となる。マイクロを所有されている先生であれば、複根管を目で確認できる面でいよいよ有利である(羨望)



1.Franklin S. Weine. Endodontic Therapy, 5e 5th Edition,1996:243-244
2.Vertucci FJ. Root canal anatomy of the human permanent teeth. Oral Surgery 1984;58:589-599
3.Benjamin KA, Dowson J. Incidence of two root canals in human mandibular incisor teeth.
Oral Surgery 197438:122-126
4.Tzvetelina G. Gueorgieva , Rahaf A. Mohamed ENDODONTIC TREATMENT OF LOWER LATERAL INCISOR WITH THREE ROOT CANALS – CASE REPORT. Journal of IMAB - Annual Proceeding (Scientific Papers) 2013, vol. 19, book 2
posted by ぎゅんた at 22:55| Comment(3) | TrackBack(0) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月17日

SEC1-0は、「開かない根管」をあけるか?


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答え
信頼に足る「あけっぷり」披露してくれます


買ってよかったSEC1-0。今となっては注水機能があるKAVO製の方を買えばよかったと思わないでもない。しかし、それは予算が許さなかった。購入したのは、等速コントラVM-YとEC-30で、ナカニシ(NSK)製である。

ここのところ色々と使ってみて「この場面で使えるなあ」と分かってきたところがある。
私見混じりではあるが記事にしてみようと思う。


根管を「あける」とは
根管本来の走行から逸脱せず、手用ファイルを根尖まで到達させることと理解している。エンジンリーマーや、ウォッチワインディングで人工根管をこしらえてしまう行為は「開ける」とは言わない。根管もどきをこしらえた穿孔に過ぎないからである。一見してEMRでアピカルロケート反応を示すようになるのでネゴシエーションができたと勘違いしやすいだけだ。こうした根管は、根充の確認デンタルで、やたらストレートで不自然に根充材が充填されているので、すぐにそれと分かる。根尖を触っているにしても、無菌的なところを穿っているだけなので、本来の病変が治癒に向かうことはない。その後の再根管治療も絶望的になる。


そんなわけで、「開ける」のは、

@抜髄や歯髄死などのイニシャルトリートメントにおける、ネゴシエーション
A手用ファイルで根尖までファイルを到達させられない「閉鎖疑惑」のある根管のネゴシエーション

の場面を言う。

@は手用ファイルでも達成するのが一般的だが、その際のファイルの動かし方は、回すのではなく上下に細かく動かして(ファイルを抜き差しするような動かし方)根尖までファイルを送るものである。ネゴシエーション後にファイル先端を根尖に出した状態で、更に上下に30回以上小刻みに動かして根管の交通を確実にする操作があるから、手早く楽に終えられる意味でSEC1-0を用いた方が楽なのである。

Aは想像しただけでファイルを把持する指先が痛くなってきそうなシンドイ仕事で、エンド中の歯科医師の気力をゴリゴリと削ぐ大敵でもある。しかしこれをSEC1-0で達成できるとすればどうだろう?SEC1-0は手用ファイルに上下0.4mmの往復運動を与えるものであって、基本的に本来の根管から逸脱して「あける」ことが予防される。疲労軽軽減と併せて、ありがたいことが分かるだろう。

このふたつの「開ける操作」を、SEC1-0を用いることで高確率で達成できることを私はお伝えしたい。


解説
@:マニー08Kファイルがファーストチョイス。根管内は湿潤した状態で、ファイルにRC-Prepのような潤滑剤をつけて操作することが望まれる。乾燥した状態だと、根管壁から余計な削片が生じて根尖に押し出してしまい、術後疼痛につながるからである。

抜髄時を例に具体的な使い方を述べると、根管口を発見したら、即座にマニー08KをSEC1-0に装着してネゴシエーションを狙う。パワーは小→大と適宜変化させながら用いる。最初からフルパワーだと患者さんがびっくりするので、根管口よりファイルを挿入して小さなパワーで動作させ、ファイルが食い込むような感じで「根管を捉えた」ら、徐々に強くしていくと良い。次第にファイルが根尖方向に沈んでいくようにして穿通を達成できるはずだ。

EMRと連動させたいなら、エンドミニ(FEEDで購入可)を用いると良い。感覚が鋭敏な先生であれば、EMRと連動させなくてもネゴシエーションできた「瞬間」が感触で分かる。私は感覚がどうにもdullなのでエンドミニとの併用がほとんどである。

ネゴシエーションして、ファイル先端を根尖より突き出した状態で、しばらく動作させ続けて根管の交通を確実にする。この後は、手用10Kで穿通させるもよし、SEC1-0に10Kを装着して同様の操作をするもよしである。

最近のNitiファイルを用いた根管形成のプロトコルでは、10Kでネゴシエーションできたら即座にグライドパス形成用NiTiでグライドパス形成を行うことになっているので、それに倣うのも良い。個人的には10Kでネゴシエーションした後にグライドパス形成用NiTiファイルでグライドパス形成に移るのは、根管とファイルとの干渉がまだ大きすぎると考えているため、手用15Kを根尖まで到達させた後に行うようにしている。10Kでネゴシエーションした後に、ゲイツドリルや35/.08用いて根管口を明示し、15Kを少しでも抵抗なく根尖到達できるよう整理するのである。時間はかかってしまうが、グライドパス形成用NiTiファイルの破折を予防したいことと、ロータリー運動をするグライドパス形成用NiTiファイルをレッジ防止の観点から、とにかくスムースに根尖に達して欲しいと願うからである。グライドパス形成用NiTiファイルがスムースに根尖まで達することができれば、その後の拡大形成はほとんど成功を約束されたものになる。


A:閉鎖根管とは、ファイル本来の根管に到達させられない場合や、石灰化物等で根管が閉塞してファイルを根尖に到達させられない場合をいう。

前者の場合は、基本的に根尖までファイルを到達させられないと根尖へ通じる通路内の感染源を取り残してしまうことを意味する。事実、予後を悪くする。どうしても根尖までファイルを到達させられず、根尖病変の活動を削ぐことができないなら、それは根管内からのアプローチの限界を意味するから、外科的に根尖を除去するステージに移行することになる。

後者の場合、EMRが3.0以下に触れていかないことから、ある程度の信頼性の元に診断が可能である。また、こうした閉鎖根管はたとえ開かなくても予後は悪くなかったりする(触れられる範囲の感染源を徹底除去すれば良い)。閉塞根管であったとしても、一方的なマイナスを意味しない点では安堵の余地がある。断定することはできないが、閉鎖根管を無理に開ける必要性はないのかもしれない。それでも、開けられるなら開けたいと思うのがエンドに挑戦する歯科医師の心理であろう。実際、開けられるなら、開けた方が根管の無菌性獲得の可能性の面で良いはずである。開けられる可能性があるなら、開けることに挑戦して良さそうだ。ただ、これを自分の手指で達成しようとすると手間である。シンドイ思いをして時間を要して、ようやく開いたと思ったら人工根管であったとしたら泣くに泣けない。

SEC1-0は、繰り返して述べるが、基本的に上下0.4mmの運動を手用ファイルに与えるものである。閉鎖根管を開けるために手用ファイルを根管内で回転させても、ファイルはジップ形成するのが関の山である。開けるためには、ファイルに与える運動を上下運動だけに絞り、本来の根管に落とし込まなくてはならない。落とし込んだあとなら、ファイル根尖方向に移動させる意味でファイルを回すリーミングは許容されるが、ウォッチワインディングやバランスドフォースの方が無難である。このために、我々はファイル先端にプレカーブを付与することがあるのである。これは想像するだけで気が滅入るシンドイ仕事なのであるが、SEC1-0を用いることで楽に実現できる。

本来の根管を捉えた、純然の閉鎖根管であればストレートの08Kで攻めると開けられること多い。SEC1-0でKファイルを上下運動させているうちにファイルが少しずつ根尖側に移動して行き、穿通する感じだ。穿通したら、抜髄の時と同様、穿通させた状態でしばらく動作させ続けて根管の交通を確実にすると良い。その後はさしたる労力もなく10Kで穿通させられるはずである。

本来の根管を捉えているか分からない場合は、プレカーブを付与した08Kか10Kで穿通を狙う。
SEC1-0は、ハイパワー時にファイルが上下運動振動によってトルクのない自然な回転をする。これは、手用ファイルになんら規制する力が加わっていない場合に見られる現象で、回転はラバーストッパーをみれば確認できる。プレカーブを付与したファイルを用いるのは、この自然な回転と上下運動の組み合わせで本来の根管にファイルを落とし込ませて一気に根尖まで穿通させるためである。己の手指でこの作業をしようものなら術者が発狂しかねないが、SEC1-0があれば極めて早く正確にこれを達成しようとしてくれるのである。なお、エンドミニを装着しているとファイルに把持力が加わるためか、この自然な回転が見られなくなることが多い(なので、エンドミニを外した状態で行うほうが確実だ)。

08Kや10Kを用いても開かなかったら、多少の根尖部の破壊を犠牲に、僅かにプレカーブを付与した15Hで穿通を狙ってもよい。うまくいくことがあるからである。しかし、これで開けると根尖部の破壊を伴うために根尖部からの出血を覚悟しなくてはならない。術後疼痛も大きく出やすいようだ。そこまでして開けて良い予後に繋げられるものかどうか、一考の余地が残される。

これらの一連の操作で開かなかったら、「もうこれは開けることはできない閉鎖根管である」と診断すればよい。触れる範囲までを徹底的に清掃すればよいのである。



エンドにおいては、「開かない根管を開けられるようになりたい!」と誰しもが強く願うものではなかろうか。歯医者になりたてぺーぺーの頃の私は、その念に強くとらわれていたことを思い出す。エンドは好きだけど苦手で、藁をもすがる思いで、東海林芳朗先生のエンドセミナーに参加を決意したことも昨日のように思い出す。それから更に数年を経ていま私はSEC1-0を手にするようになった。ほんとうに、感慨深いものがある。

ラベル:SEC1-0
posted by ぎゅんた at 22:32| Comment(13) | TrackBack(0) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする