2017年03月23日

サーモメカニカル根充経過2年モノ

デンタル写真を撮影するとき、過去の根充した歯が視野に収まることがある。
過去の写真と比較すれば、根充経過と根尖の治癒の経時的変化をエックス線写真上で観察することができる。


最近遭遇したふたつの例
IntraOral_20150120092725.jpg
method:パックマックを用いたサーモメカニカル法
シーラー:AHプラス
GP:東洋オブチュレーションガッタソフト



IntraOral_20141216110350.jpg
method:パックマックを用いたサーモメカニカル法
シーラー:AHプラス
GP:東洋オブチュレーションガッタソフト




考えられること
・AHプラスによるシーラーパフは吸収を受けるのか造影性が失われるのか、見えなくなる
・側枝や根管内にとどまるシーラーは吸収されないようだ
・良好な成績を考える上で、根充法の選択にたいしたウエイトはなさそう
・根尖部の感染源の除去ならびに清掃が、根尖周囲組織の治癒に直結する最重要因子
・ヘボ補綴は罪


根尖部の感染源を除去し、物理的・化学的に清掃し、根管内を乾燥させて速やかに根管充填を終え、コロナルリーケージを防ぐ歯冠修復をして、咬合と歯周状態に問題がなければ根尖の病変は素直に治癒に向かうようである。

このことを自分の臨床を通じて数年越しに経験すると、頭の中の知識が確信となる。自分の根管治療の行く末を信じることができるし、予後も予想がつくようになる。エンドがもっと好きになっていくキッカケは、ここにあるのではないか。

根充は、明らかなどアンダーやポイントの溢出がなければ、側方加圧にしろ垂直加圧にしろ、良好な結果を示す。専門書や高名な先生方は垂直加圧をしておられるのを見て垂直加圧がいかにも優れていそうに感じるものだが、実際には優位差はない。根管内の感染源を除去し、清掃がなされ、乾燥を得た根管を過不足なく充填できれば良いのである。オーバーよりはアンダーが「マシ」という意味でアンダー根充は許容されるが、アンダーが過ぎるとコロナルリーケージに脆弱性を示すことになる。

私はレシプロック用のGPコーンを用いたCWCTを第一選択にしているが、ラテラルや根充やFPコアキャリア法を用いたりと一応の使い分けはしている。ただ、この使い分けが良好な結果につながっているかと尋ねられたら、そんなことはないと答える。サーモメカニカル法は、根尖部への溢出のコントロールの面で不安定なことから今は行っていない(NTコンデンサーやパックマックで、GPを単純に根管内に押し込むだけの場合に使用することがある程度)。

ラテラルに慣れた先生は、ラテラルの達人になればいいと思う。
適切で理想的なラテラル根充は、実は難しい。良好なラテラル根充ができるということは、適切な根管形成ができるということと、狭い口腔内で術者の器具操作が精緻で手早いことを証明しているようなものだ。ガッターカット代わりに電熱式プラガーを用いれば、その後にダウンパックも可能である。こうしたやり方を実践されている先生も、多いだろう。それで特に問題は起きていないはずだ。



…と、こんな偉そうなことを述べている私は、根充に対する苦手意識を払拭しきれないままである。
難しい一発勝負の性格が強い処置って嫌い! 
 



just do.jpg

こんなことを言って果敢にチャレンジできるキャラクターになりたいものである。
 
ラベル:根充
posted by ぎゅんた at 22:40| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月10日

感染根管治療と細菌簡易培養検査(S培)、そして根管充填

prd_b_pk.jpg

ラバーダムは10点を算定できる時代があった。しかし、保険改定でなくなった(初診料・再診料に包括化された)。そりゃラバーダムかけてないのにみんな算定だけはするんだもの。この改定により、ラバーダムを診療に取り入れていた先生は涙目。ラバーダムシートの費用が持ち出しになったからである。

ラバーダム(10点)は包括化され消滅したが、感染根管治療後の根貼時に算定できる細菌簡易培養検査(S培・60点)は未だに残っている。あまり算定されないためか忘れ去られているのかは定かではない。孵卵器や培地を用意しなくてはならないので開業医向けでない側面が算定数に結びつかないのかもしれないし、根管の細菌簡易培養に価値を見出さない先生が多いのかもしれない。

大学にいた頃は歯科診療フロアにプラディアが用意されていたので、根充前の確認に利用したことがある。封を切ったプラディアの試験管の口をアルコールランプの火焔にかざし、根管に挿入していたペーパーポイントをフッと中に放り込み、栓をして、コントロールを含めた2本のプラディア試験管を検査依頼用紙とともに検査中央室へ持っていったものであった。当時の私のエンド内容は犯罪的ミゼラブルさであり、毎度「陽性」の結果が返ってきたものである。見に行くと、培養液の中のペーパーポイント周りに禍々しい存在が付着していた。

今の私は感染根管を治療で完全無菌にすることは不可能だと考えている。不可能なのだが、生体の免疫力の庇護に参加できる範疇にまで根管内を清掃し感染源を除去させられれば(あたかも根管を無毒化させるようにすれば)、それは生体が感染根管を自身の一部と認識してくれることで保存を実現できる。感染根管を、生体の治癒力を発揮できる環境にまで整えることがエンドの要諦である。患者の生体の治癒力を間近に感じられる歯科治療でもある(ここが魅力で、エンドが好きだという先生もいるだろう)。

また、根管は治療で弄くり回せば良い結果につながるものではないし、ましてや治療回数が多ければ良いわけでもない。感染が敵なのだから、感染源を速やかに除去したら速やかに封鎖して感染から保護するのが理にかなっている。抜髄根管も感染根管も、エンドの感染コントロールの見地から言えば、即根充が望ましいのである。とはいえ、時間や諸々の制約があって現実的でないのも事実である。私は、単根管で平易な難易度のバージンキャナルであれば即根充をすることもある。ただ、GPが充溢した複雑な感染根管を即根充するのは時間的にも難易度的にも容易ではないので即根充は考えない。経過でもって、感染源の除去を推察することもある。

いずれにせよ、私はS培にエンド的臨床的価値はさほど見出すことはない。根充前に根管をヒポクロで満たして、発泡がなければ無菌的根管と判断して差し支えないのでないかと考える。試していないのでなんとも言えないが、この状態ならS培にかけても陰性かそれに近い結果(判定困難)になるのではないか。

患歯に違和感や自発痛を覚えず、打診痛が存在しないかごく軽度で、EDTAによる根管洗浄→EDTA除去→根管にヒポクロを満たす→発泡しないなら、私は根充に踏み切っている。エンピリカルな治療といえばそれまでだが、私なりの根充への判断基準がここにあるので、これを信望しないなら根充に踏み切れないのである。
 
posted by ぎゅんた at 11:12| Comment(9) | TrackBack(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月27日

初回の感染根管治療で抗菌薬を処方するべきか?


Dr.mario.gif


根管治後には抗菌薬を処方するもの?
 感染根管治療後に、臨床医がちょっとばかり恐れる存在がフレアアップである。この恐れの感覚は、抜歯後のドライソケットを恐れるそれに似ている。ドライソケットは、血餅が脱落することによる抜歯窩歯槽骨の露出(創面湿潤状態の喪失)が原因にあり、これは血餅を確保すれば良いわけで術者と患者の注意次第でかなり予防できる。一方フレアアップは、これは患者の免疫力や根尖病変の悪性度(こんな表現は普通はしませんが、ニュアンスでご理解下さい)に影響される側面よりも、はるかに術者側に影響される。フレアアップは、術後疼痛の問題も含め、まず違いなく、その原因は、根管から根尖歯周組織へのdebris(根管内の好ましくない感染有機質残渣)の押し出しや漏れにあるからである。

 根管治療にあたっては、閉鎖根管でもなければ、ネゴシエーションを通じて、根管は根尖まで穿通され交通が確保されなくてはならない。その際、器具の先端は少なくとも1度は根尖孔外に出るはずであるから、根管内を移動してきたファイル先端に付着したdebrisの根尖孔への押し出しはゼロにできないと考えられる。しかし、このときに押し出されるdebrisを最小限に抑えられれば、生体の免疫力による庇護の元、臨床上、問題なく経過する。従って、エンドドンティストは、感染が疑われる根管を攻略する際は、まずタッチャブルな歯冠側ー根管口部の食渣・プラーク、軟化象牙質などを徹底的に除去するところから始める。肝心のネゴシエーション直後まで、とにかく根管内の走行を逸脱しない範囲で清掃することを怠らない。ネゴシエーションはこの後に行い、根尖歯周組織に押し出してしまう、避けられ得ぬdebrisの押し出し(コラテラル・ダメージ)を最小限にする。これにより、フレアアップはもとより術後疼痛を可及的に予防するのである※1

 こうした中にあって、初回の感染根管治療を終えた患者に抗菌薬を処方すべきかどうかを考えてみたい。
ルーチンに「感根処後には鎮痛剤と抗菌薬はセットで出す」と考えておられる先生は少なくないのではないかと私は邪推するのだが、これは、感染根管治療後の術後疼痛対策とフレアアップの予防を考慮した姿勢だと考察する。もしかしたら、根管治療後に抗菌薬を投与することに厳然としたルールがあるのかもしれないが、私はその教育を受けた記憶がない※2し、知らない。

 意地悪く考えると、ここには「感根処したら痛みや腫れは出るものだし、不幸にしてそうなっても鎮痛剤と抗菌薬を処方しているから患者さんは納得するだろう」という見地と、「医者にかかってクスリが処方されると患者に評価される(特に年配の患者さん)」日本医療の歪な側面も顔を出している。処方しなかった場合に腫れと痛みが起きて、患者にヤブ医者扱いされたくない心理が働いているのは事実であろう。と、偉そうにこのような記述をする私は、感染根管治療後に抗菌薬をあまり処方しない。鎮痛剤は出す。

 昔は感染根管治療後に抗菌薬をルーチンに処方していたが、それは先輩ドクターの真似であったし、勤務先の医院の方針に従っていただけであった。感染根管治療後に痛みや腫れが出るのは、真面目に根治をやった証拠だとすら考えていたように思う。いずれにせよ、自分の頭で「感染根管治療に抗菌薬を処方すること」について真摯に向き合っていなかった。術後疼痛とフレアアップを予防するための効果あるものと信じて、処方していたに過ぎない。繰り返すが、術後疼痛もフレアアップも、根管治療時のdebrisの根尖歯周組織への押し出しが原因である。

 抗菌薬は、ことに乱用される趨勢にあることを常に批判されてきた。術者は、「この場合は必要ないから処方しない」と判断できる目を持たなくてはならないし、自信ある判断基準を有しておらねばならない。


薬は根尖病変を治せない。人の手によって、宿主の治癒力が発揮されることで治っていく
 根尖病変があるからといって、抗菌薬を服用させて病変が消失することはない。これは周知の事実である。歯が感染源として存在しているなら、感染除去療法として根管治療が必要となる。根管内は生体の免疫力が及ばない隔離された閉鎖空間であるからだ。歯科医師の手によるデブライドメントが必要なのである。抗菌薬の処方は、例えば、初回の感染根管治療後に処方する抗菌薬が、根管治療による感染源除去との相乗効果によって根尖歯周組織の治癒を促進する可能性は考えられる。しかし、処方しなくてもこの治癒機転は根管治療により導くことができる。導けない場合は、感染源の除去不足であるか、根管を見落としているか、攻略不能なほどに根管系が破壊されているか、根尖孔外バイオフィルムによる難治性根管か、なんらかの原因を示唆することになる。根管内からのアプローチで解決できない場合は、外科処置に踏み切るか抜歯になる。これも感染源除去を目的とした処置である。

 この論文では、術前症状を訴えていた場合では術後疼痛やフレアアップが生じやすかったとしている。だからと言って、術後に抗菌薬を投与する判断材料にはならない。

 投与を考えるのは、粗雑な器具操作によって根管内debrisを根尖孔外に多量に押し出してしまったことを確信したケースであろう。この場合は、術後に患歯根尖部が急性炎症をきたす可能性が高いこと、その場合に起こりうることを説明しておかなくてはならない。高い確率でフレアアップを起こすことになるからである。

 こうした場合で、術前症状があった患者さんで、翌日来院ができない患者さんに限って、私は抗菌薬を投与することを決める。正直なところ、それでも抗菌薬が必要ないものか、フレアアップを防ぐか軽減する上で意味があるのかないのものか、明確に答えることができない。抗菌薬はフレアアップを起こしたことを確認した上で、処方するべきなのかもしれない。また、フレアアップを起こしたら抗菌薬ではなくステロイド剤を処方して腫脹と炎症を抑えるべきと聞いたこともある。


歯科薬理学の講義を受けなおしたい…
 ここまで述べてきた内容は、あまり成書で述べられないはずで、私は知識が疎いままである。だから、こんな好き勝手な文章を書いている。世の臨床医たちが(根管治療後の)抗菌薬の処方をどのように考えているものか、興味のあるところだ。

 なお、私が処方する抗菌薬の第一選択はアモキシシリン水和物250mg(サワシリンカプセル)である。鎮痛剤はキョーリンAP2、カロナール、ソランタール、ロキソニンを、治療の程度と患者の既往、全身状態から総合判断して処方する。
 

※1
根尖孔外に出たファイルの先端が根尖歯周組織にスタンプのように押し付けた機械的損傷自体は、これは術後疼痛にはつながらない。術後疼痛につながるのは、debrisの押し出しにあるのであって、細菌による修飾が必ずある。

※2
根管治貼薬剤に抗菌薬を使用する話ならうるさく耳にしたものだが、明確に覚えてるのは「クロラムフェニコールの副作用が再生不良貧血」ぐらいのものだ。3-mix療法が流行っていたのも思い出す。そういえば3-mixはいまはどうなった? 
posted by ぎゅんた at 19:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月28日

吸引によって根管内が乾燥され清掃され

掃除機をかけるとき.jpg

根管に吸引作用を与することは、元来、根管の乾燥のみを目的に行われてきたようだ。
世には排唾管に吸引チップを装着することで根管の乾燥を狙う器具(ネオ製薬の「マルチサクション」※1)が存在するが、この器具の目的は「根管の乾燥」あってdebrisを吸引で積極的に排出させることは意図していなかったのではないか。

根管の乾燥はブローチ綿栓で行うものと思考停止的に慣行していた私には、とくに食指が動く器具ではなかった。暴露すれば、根管内を乾燥させることに無頓着であった。仮封材が充填できる程度に水分が徐々されていればそれでよかったのだ。根管内の水分?いんだよ細けぇことはってなもんである。この意識の根底には、「感染源の除去こそがエンドの主目的なんだから貼薬仮封時に水分があってもへーきへーき」が存在する。間違っているのはいうまでもない。根管内を乾燥させることは重要なステップなのである。


吸引でdebrisをできる限り除去したい
さて、吸引によってdebrisを排出する概念を本邦で打ち立てたのは小林千尋先生ではないかと思う。先生が「根尖部の清掃は全くできていない。どうしたらよいのだろう?」と思惟懊悩されていた末の閃きなのか、「吸引で根尖部を清掃してみたらことのほか成績が良くてワロタ」と、トライアル魂と経過を見逃さない慧眼を持っておられたのか。どちらも考えられるけれども、いずれにせよ、根管内の(ことに根尖部の)debrisを除去することこそが、エンドの良好な成績求める上で欠くべからざる秘訣なのである。私はそう信じている。

根尖部のdebrisを吸引して排出するには、根尖部に存在するdebrisを根管壁から浮かせなくてはならない。洗浄液を併用して、洗浄液の中に浮かせ漂うdebrisを、吸引によって根管外に排出するわけである。理想的には、根尖部を超音波で撹拌させた側から吸引していくことであろう。しかし、現実的にそれは難しい。細いイリゲーション・ニードルを用いたポジティブプレッシャーイリゲーションなりエンドチップによるパッシブウルトラソニックイリゲーションなり、根管洗浄したそばから間髪入れず吸引するのである。根尖よりdebrisを押し出さないよう注意しながら、頻繁に洗浄して吸引することになる。超音波で撹拌する側から吸引する超音波吸引洗浄が理論的に最も優れた根管洗浄法であろう。

目下、私が用いている吸引用器具はヨシダのクイックエンドである。エアタービン回路を用いて、注水洗浄と吸引を同時に行う器具である。撹拌効果は期待されない。注水をカットすると吸引効果だけを得ることができる設計になっている。注水させて用いても悪くないが、排膿や出血を吸引チューブ越しに確認できなくなる。私がこの器具を使用する目的はdebrisの吸引なので、殆どの場面で非注水で用いている。

クイックエンド(の非注水使用)によって、根管の乾燥だけでなく根管内debrisの排出効果も得られているようだ。個人的な感想の域を出ないし客観的なデータを立証できるものではないが、術後疼痛の出現と程度が、使用する前に比べて明らかに目立たなくなったからである。


吸引で根管内をできる限り乾燥させたい
根充前にしろ根貼にしろ、根管内は徹底的に乾燥させるべきと考える。
根充は、通常、疎水性であるシーラーを併用するものだから、当然のことながら期待される物性の発揮のために根尖部までの水分を除去しなくてはならない。そして、根充により、得られた根管の乾燥状態がガッタパーチャ(とシーラー)によって維持されることになる。

根貼は、次の治療までの期間、治療途中の状態が悪化せぬよう(細菌の繁殖を抑えるよう)仮封する行為と考えられるが、やはり乾燥が不可欠である。水分があれば仮封材による封鎖が不十分でリーケージの原因になるだけでなく、湿潤環境では細菌の繁殖を抑えることができないからである。根管という閉鎖的な空間は、清掃されて乾燥された状態に整えなくてはならない※2。これは、歯科医師にしかできない。

根貼時の根管の乾燥に関しては、手持ちの成書を渉猟するに、さしたる記述がない。火で炙ったブローチ綿栓に貼薬剤をつけて根管に挿入て仮封する、とか貼薬剤を染み込ませた綿球を髄腔に位置させた状態で仮封する、とか、根管を乾燥するステップは記述が省略されている例ばかりである。行われることがあまりに当然過ぎることが理由で記述が省略されているのだろうか。

強調しておきたいが、仮封と根充前の根管の乾燥こそが良好な結果に結びつく鍵である。
貼薬剤が根尖部を治すことがないのと同様、水分まみれの根管で根尖の治癒が促されることはあるまい。
クイックエンドで手早く髄腔と根管口〜根管中央あたりまでを吸引乾燥し、根尖部をアピカルサイズ以上の滅菌ペーパーポイントで吸湿すると手早く終えられる。その後は長さをカットした滅菌ペーパーポイントを根管に挿入して仮封(ドライコットン仮封)するか、綿球にFGやクレオドンなどを少し湿らせた髄腔貼薬を行えば良いだろう。ポイントに貼薬剤をつける場合は、ポイントの先端にはつけないほうが良い。根尖歯周組織から浸出液や出血があった際にそれを受け入れる空間を確保するためと、貼薬剤の根尖への漏れを防ぐためである。

debrisの根尖への押し出しをできる限り防ぐことを目的に、根管洗浄のステップに「吸引」を採り入れると良い治療成績が得られるだろう。「吸引」は乾燥も同時に行うので、根貼や根充前の根管の乾燥にも有益である。



※1.この記事を書くにあたって購入してみたが、想像以上に吸引しない様に愕然涙目。バキュームの吸引力が強いユニットであれば及第点が下りるかもしれないが、少なくとも当院では使用に相応する吸引力を発揮してくれない。おのれネオ製薬。欲しい人いたらあげます…

※2.しばしば「根管治療の途中で来院が長期間途絶えていた患者の患歯を際来院時に確認したところ、存在していた根尖病変が縮小してほぼ消失していた(=「根管内の感染源を除去すれば、根尖歯周組織は素直に治癒に向かう」」という報告を耳にする。著名なエンドドンティストなら誰でも有している症例であろう。この報告の真意は、感染源の除去だけにあるのではない。綺麗に清掃された根管を充分に根管乾燥された状態で緊密に仮封してしまえば根尖歯周組織は速やかに治癒に向かうことにある。
 
ラベル:根管洗浄
posted by ぎゅんた at 22:34| Comment(6) | TrackBack(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月18日

根管洗浄と術後疼痛〜その予防について考える

押すなよ絶対に押すなよ.jpg

根管の機械的拡大では、水平的な拡大を徹底したとしてもアンタッチ箇所が生じる。また、発生した牙粉やdebrisで目詰まりを起こすリスクも発生する。根管壁に形成されるスメア層も無視できない。この克服のために、根管内に洗浄液(Irrigants)を作用させることになる。化学的清掃である。

根管洗浄剤には様々あるが、現在のゴールドスタンダードはEDTAとNaOClである。この2つを基本に根管の化学的清掃を行う。EDTAはともかく、ヒポクロが根尖歯周組織に漏れると重大な事故を引き起こすので取り扱いには注意を要する。物理的な洗浄のみを期待する簡易な根管洗浄を行うのであれば水や生理食塩水を用いると安全だ。

根貼にしろ根管充填にしろ、根管洗浄後は乾燥した根管内環境を維持することを目的に、根管内に存在する水分を除去することに努める。従前、ブローチ綿栓がこれを担っていたが、昨今では滅菌ペーパーポイントが用いられる。汚れた指先でワッテを巻いたものが清潔なわけがないという懸念からである。

滅菌ペーパーポイントを用いる上での課題はコストと、根尖への押し出しリスクである。

コストはさておき、根尖への押し出しリスクとはなにか。
根尖部のdebrisをポイント先端に付着させて根尖孔から飛び出せば、それが術後疼痛の原因となるという意味である。これを防止するには、根尖孔の径の把握と根尖孔を破壊しないことが重要となる。感染根管で既に大きく破壊されていたり根尖部の吸収が起きていたり意図的に拡大した場合などはペーパーポイントの突き出しリスクが高まることになる。根尖部のdebrisが除去され尽くされていれば、ペーパーポイントを押し出してもさしたる心配はないだろう。しかし、ご存知の通り根尖部のdebrisの除去は想像以上に困難なタスクであるから油断ならない。

私は根管洗浄をディスポシリンジとイリゲーションニードル(ラウンドエンド処理・側方ホールタイプ)を用いている。これを使い始めた当初は、根尖まで到達させてゆっくり洗浄液を出すことでdebrisと思しき削片が液体内にフワッと浮いてくる様が観察できて悦に浸っていたものだった。ただ、その状態で吸引しないと、debrisと思しき削片は根管内に沈降していくのである。そしてまた、漫然とイリゲーションニードルを操作していと根尖にこれらを押し出すことになる。実際、この方法で根管洗浄をすることで、術後疼痛が有位に減少することはなかった。フレアアップに遭遇することもあった。丁寧な根管洗浄をしていると術者は信じているものの、皮肉にも、その実態はdebrisの根尖への押し出しに他ならなければ、術後疼痛やフレアアップを引き起こす。

術後疼痛を訴えないケースももちろんあるが、根尖の拡大がまだ及ばずイリゲーションニードルが根尖部まで到達しえないようなケースばかりである。

術後疼痛といえば、根尖歯周組織への機械的損傷もその一因に考えられるが、これはたいした痛みにはならないようだ。ネゴシエーションやリカピチュレーションといった、根管の交通性の確保と引き換えに根尖歯周組織に機械的損傷を与えてしまうわけだが、debrisを押し出さなければ術後疼痛を引き起こすことはない。現実的に、微量ながらdebrisを根尖に出してしまう事態は避けられえないので、いかにも「根尖を突くと痛みを生じる」ように感じているだけだ。ファイルの先端のようなチンケな突起がちょいと生体を突いた程度の傷が痛みを訴えはしない。

要するに根尖にdebrisを押し出しさえしなければ術後疼痛に怯えなくてすむ。

debrisを押し出すぐらいならと、多少の残存は止むを得ぬことを承知で根管洗浄をホドホドにとどめても達成できるし、吸引によってdebrisを積極的に根管から排出する洗浄を行っても達成できよう。

吸引することでdebrisの積極的な排出と根管の乾燥が得られるが、これについては別に記事にしたいと思う。
 

iPadから転送
ラベル:根管洗浄
posted by ぎゅんた at 23:33| Comment(8) | TrackBack(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする