2022年06月01日
これよりEndoActivatorの再評価を行う!
最近の私の根管洗浄の術式はルーチンで、シリンジでの陽圧洗浄基本に、EDDYによる超音波攪拌洗浄メインに据えている。洗浄液は、純水とヒポクロと17%EDTAのみ使用している。根管内に満たした溶液の除去と簡易な乾燥肌、ヨシダのクイックエンドを使用している。
根管洗浄液にこだわりの精神を発揮してクロルヘキシジンやMTAD、オキシドール、果てはQmixなども使ってみようと思ったことはあるものの、根尖部の三次元的な清掃が達成できることが重要なのであって洗浄液でどうこうするワケでない、と思い至って、というか、コストが増大することを嫌って昔ながらの、要するにゴールドスタンダードなEDTAとヒポクロに落ち着いている。器具や材料は、その目的を達成するために正しく使用できれば良いのである。低コストであれば、いうことはない。
さて今回の題目はエンドアクティベーターである。
これは、根管洗浄液を満たした根管内にポリマー製チップを挿入した状態で動作させ、根管内を音波攪拌洗浄するための器具である。シンプルな構造で、故障知らずで、ポリマー製チップは根管壁にいくら触れようが叩こうがスメア層を発生し得ないの。チップは当然フレキシブルなので、湾曲根管だろうが破折を心配することなく使用できる。まことにハンディな根管洗浄用器具なのである。
私が歯科医師になってエンドを始めたころは、先進的な根管洗浄といえば、金属製のエンドチップを用いた超音波洗浄であった。学生時代にレポートに書き連ねた記憶が蘇るけれども、これは確かにキャビテーション作用が期待できるし、いかにも根管内を徹底的に綺麗に洗い流してくれそうである。しかし臨床での実態は、シャープペンシルの芯の如くバキバキと根管内で破折させ、それをマイクロを使って除去するのを症例発表にするマッチポンプメーカーで、perの予防と治療であるはずの根管治療が、ただ病変を慢性化させて症状を薄くして「治療しました」と勘違いしているミゼラブルなレベルを底上げすることもなかった。いま振り返って考えれば、ネゴシエーションさせてPatencyを確保して根尖部の洗浄を可能にすることすら念頭にない「エンド」だったようなので、何を使用しようが臨床成績を向上させるはずもなかったのであるが。
私の個人的な思い出話などはどうでもよいのでさておいて、EDDYを使用した根管洗浄がルーチンになるまでは、私はエンドアクティベーターをルーチンに使用していたのだ。オモチャっぽい外観と安っぽい電動歯ブラシみたいな動作音はさておき、チップが振動して溶液を撹拌すると、たとえばヒポクロを満たしていれば残留有機質に反応して発砲してくるし、確かに綺麗に洗浄してくれるように思えた。考案者のRuddle先生のエンドアクティベーターの論文をウンウンと読みながら、根尖部の三次元的な根管洗浄による消毒を3D-disinfection と読んでいるのを格好いいなあ、と思ったものである。
さてそんなエンドアクティベーターも最近はあまり使用しなくなっていた。
EDDYと比べて、根管洗浄の効率や質に有意差があるとは思えないが、本当のところは分からない。テストチューブで思いつきな実験をしたらEDDYはパワフルだったので、EDDYを贔屓にした経緯はあるのだが。
こういう時は、ネット時代の恩恵を受ければいいわけで、私はRuddle先生が管理をされているサイトのメールフォームから質問を送ることにした。
根尖部における根管洗浄の3D-disinfectionの効果を考えた時、EDDYの方がエンドアクティベーターに比べてより良い成績を出すように思えます。一方で、ランニングコストや取り回しの面で、エンドアクティベーターはEDDYに比べより臨床医に有益な器具だと思います。先生の現在の根管洗浄に対するご見識、またエンドアクティベーターおよびEDDY対するご意見をお聞かせ下さい。
とまあ、こんな感じの厚かましい質問を英語に翻訳してsubmit。
すると速攻で返事がきました。
要約すると
・デンツプライシロナ社のエンドアクティベーターとVDW社のEDDYを比較した場合、明確なエビデンスに基づいた勝者は存在しない(参考までに、VDWはデンツプライシロナ(DS)の完全所有会社)。どちらの技術も、同等の音波エネルギーを使って、強く、柔軟で、切れないポリマーのチップを駆動するのですから、これは驚くことではない。
・私はエンドアクティベーター(EA)の共同発明者であるが、この技術は約15年前に発売され、その後、わずか数年前にVDWにコピーされた。その後、VDWがEAの特許を合法的に侵害していることが判明し、親会社(DS)が両方の装置を所有しているため、社内で和解が成立した。
・どちらの技術も「音波」エネルギーを使用する。EAの周波数は10,000cpmでEddyの周波数は6,000cpsと、より高い周波数を使用している。しかしながら、EAはより大きな振幅を持つために、根管形成後のスペース内でのポリマーチップの制約を考慮したとしても、より良い洗浄効果を予見することができる。
・EAは50以上の科学的な査読を受けた論文で臨床的な有効性が裏付けられており、査読を受けた論文の大半は、EddyよりもEAを支持している。
・液体を満たした試験管を使い、試験管内で様々な消毒技術を比較するYouTubeの動画に惑わされないように
このような内容であった。
臨床医がとらえるべき結論は、エンドアクティベーターもEDDYも根管および根尖部の三次元的な根管洗浄に有益である、という事実でよいと思われる。Ruddle先生のお立場的にはエンドアクティベーターを贔屓にしたい気持ちは当然ながらあると考えられよう。
日本の歯科医師にとっては、エンドアクティベーターの入手が困難である現状、EDDYを使用するのが現実的である。どちらが優れているかは気にしなくてよい。どちらにを用いるにせよ、根管洗浄の質を上げる確実な効果は期待できるからである。
-参考論文-
(PDF) Endodontic Disinfection 2022
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