根管治療を開始するに際して、ネゴシエーションは誠に重要なステップである。それはとりもなおさず、Patencyを確保したいからである。
解剖学的に本来的な根管が大きめであったり、歯髄腔に二次的な変化がない根管なら、通常は根管に挿入された12号程度のストレートのSSファイルは自然に根尖まで到達する。この操作は、とにかく指で把持しているファイルを「回転させない」ことを強く意識して落ち着いて行えばそう難しいものではない。挿入したSSファイルは、根管壁をガイドに導かれるように根尖孔にまで到達するようなっているからである。ファイルに与えられるのは上下の「抜き差し」的な運動だけであり、回転させる必要性はないのである。
もし先生がファイルを回転させてネゴシエーションを行っているのが癖になってしまっている場合は矯正が必要である(私も最初はそうだった)。したがって、最初は違和感を覚えるかもしれない。けれども、ファイルを回転せずにネゴシエーションするのはそう難しい手技ではない。抜去歯牙で試してみれば、すぐに納得できよう。
ただ、我々が臨床で相手をする根管の大部分は、そう簡単ではない。再根管治療のケースのみならず、加齢や咬合の影響を受けて狭窄した根管であることが殆どだからである。いきおい、ネゴシエーションの難易度は高くなる。
高齢者でよく見られる、前歯部根面齲蝕を原因とする歯髄炎の根管治療では、処置前のデンタル写真上で歯髄腔が既に埋まってしまっているような所見を確認することが少なくない。場合によっては根管口を見つけることに難渋したりもするし、根管自体、完全に閉塞して消失してしまっているのではないか?と思わされることもある。私の経験上では、根管口はなんとか見つかることが多い。ただし、著しい狭窄根管であることからネゴシエーションの難易度が高いことがセットであることも多い。
この場合、指でネゴシエーションを行うのは骨が折れるチャレンジになる。#08Kのような細いファイルは、不用意な力加減や指の操作で容易にへしゃげてしまう。ファイルも、抵抗があってなかなか先に進まない。
上下の抜き差し運動のみでネゴシエーションを狙うわけであるが、著しい狭窄根管では、不安になるほどファイルが先に進まなかったりするので、いきおい、ファイルを回転させてリーミングの力でファイルを根尖に送り込みたくなる気持ちが術者に湧く。
その場合もバランスドフォースのような繊細な操作をすればレッジを形成することは避けられるが、いずれにせよネゴシエーションにかかる時間と労力は大きなものとなる。
本記事のタイトルのは、このシチュエーションに対する私の解答である。きっつい狭窄根管のネゴシエーションも、器械の力で楽に達成できるからである。ネゴシエーション自体の成功率も、手技の場合よりも遥かに高く期待値が高いことを確信している。SEC1-0が使えなくなったら、私はエンドができないかもしれない。
さてそのネゴシエーションのための使用法はシンプルである。
・根管を見つける
・新品の♯08KファイルをSEC1-0に装着する
・♯08Kファイルにエンドミニを噛ませてEMRと接続させる
・RCプレップ等の潤滑剤を付けて根管に挿入
・ペダルを踏んでSEC1-0を動作させつつ、ファイルが根尖に向かうようにゆっくり動かす
・ファイルは自然に根尖に到達して穿通してEMRが鳴る(ネゴシエーション達成)
・新品♯10Kに替えて同様の操作を行う
この後は♯12Kを指で操作してPatencyが得られていることを確認してからプログライダーでグライドパスの形成を行なっている。これらの手順は、慣れれば小さな労力であっという間に達成できる。
極端に強く狭窄している根管では、08Kであってもネゴシエーションに苦戦することがある。その場合は、ファイルが根管に食い込んでいる感触があることを前提に、根尖方向に押してファイルを強制的に進めることもある。おそらく、推奨されない使用方法であると思うのでここは術者の判断が問われる。
SEC1-0用いたネゴシエーションは確実性が高いが、調子に乗ってウェーイwwと乱暴な操作をすればファイルをへしゃげさせて無駄にしてしまったりファイル先端を折れ曲がらせtr破断させたりレッジを作ったりするので、過信は禁物である。色々な手用ファイルで試してきたが、マニーのKファイルが最も精度が高くファイル先端の靭性に優れてバランスが良い。ここは術者の好みもあると思うが、少なくとも私は手用ファイルはマニー製だけを愛用し続けている。
ダウンロードは🎥こちら
SEC1-0はこんな風に動作します。
パワーの細かな調整はあまり必要としません。ベタ踏みフルパワーで可。
そのかわり、独特の音と振動が出るので患者さんには予め説明しておこう。
ラベル:SEC1-0
SEC1-0が動いているところを初めて拝見いたしました。アップしていただきありがとうございました。回転運動がNGであると知り学ばせていただきました。ファイルの先端部などがかなりしなっていましたが、「アタリ」をつけてからのRCプレップ→ファイルの先端部を根管口に少し挿入→SEC1-0作動の流れで解釈として間違ってはいないでしょうか?。
SEC1-0は、根管を見つけたらファイルにRCプレップをつけて挿入して、作動させていけば良いです。抜去歯牙で試すとすぐに感覚が掴めます。
現状の私はマニーのKファイルのみを使用しています。Hファイルを使う場面はほとんどありません。「根管口付近にGPが取れてきたのが引っかかっているのを除去したい」ような場面でHファイルを使うことがあるかないかです。いずれにせよ、Hファイルを根管に挿入してファイリングのような操作は一切していません。
本来のSEC1-0は、Hファイルを使用するものだったようですから、HファイルとSEC1-0の組み合わせでエンドをされている先生もおられると思います。
VM-Yに装着するシャンクを探していてこちらのページにたどり着きました。
先生はシャンクはEC-30の使用されているようですが回転数はどの程度までで使用されていますか?
•VM-Yがカタログ上 最高許容回転速度:8,000 min-1 •
と書いてありシャンク選びで困っております。
いつも大変興味深いお話を聞かせていただき
ありがとうございます
先生のページを拝見して
SEC1を入手して使用しています
ところで
マニーにはSEC1用の
SEC-kファイルというものが存在しますが
通常のkファイルの方が適しているのでしょうか?
よろしければお教えください
コメントをありがとうございます。
返信が遅れてしまい申し訳ありません。
SEC1-0は相変わらず日常臨床でルーチンに使用していますが、回転数に関しては特に意識していません。回転というより上下運動なので、もうよう分からん、というのが正直なところです。
当院のデンタルチェアはモリタにスペースラインチェアなのですが、マイクロモーターのパワー設定をMAXにして使用しています。ペダルの踏み加減で動作の強弱をつけることはありますが、基本的にはベタ踏み使用です。
シャンクはNSK製のEC-30です。
購入してからもう長いこと使用していますが故障知らずです。
SEC1-0は使用するにしても数秒〜十数秒と極めて短時間なので、蓄積ダメージが小さいのかも
マニーのカタログみるとSEC用のファイルとして「エス・イー・シー・Oファイル・K」があります。
あぐちん先生のおっしゃるSEC-kファイルは、これに該当するものとおもいます。先端が丸みを帯びている形状になっているはずです。
このファイルに関しては、私は正直、使用したことがありません。使ってみようかなと思って注文しようとしたときに価格が高くてやめた記憶があります。マニーが今もこのファイルを販売しているということは、需要があるのでしょうし、実際に使用されているして先生がおられるのだと思うのですが
SEC1-0をなぜ使用するかといえば、根管のネゴシエーションを達成するためであって、この手用ファイルを上下0.5mmストロークで動作させる機器を私は根管形成のための機器として使用していません。もしSEC1-0を、Hファイルも交えて根管形成に使用するかのであれば、丸みのあるファイル先端がレッジの形成を軽減する意味で有用なのだろと思います。
結論として、私が使用している手用ファイルはマニーの、ノーマル仕様のKファイルです。そのうち、08K、10k、12Kが90%以上に使用率です。根管形成は手用ファイルでもSEC1-0でもなく、NiTiファイルに任せてます。
ご参考になるところがあれば幸いです。
よろしくお願いします。
早速先生と同じ組み合わせで注文させていただきました。
ご回答ありがとうございました
SEC kファイルはセールもないし高いですね
kファイル08の新品を使うことが重要そうですね
精進したいと思います
ありがとうございました
secの回転数どれくらいで使用されてますか?