2019年04月25日

レッジ修正には、やはり役にたつAF CL


pre_RCF.Jpg
#45 根管治療の依頼。根尖部にレッジがありそうとのことである。


レッジがあるということは、ネゴシエーションができなかったか、レッジの存在が円滑なネゴシエーションを妨げていたかを前医に知らせていたことを裏付けるものである。

仮封を除去して根管に触れてみると、果たしてネゴシエーションはレッジの存在がゆえにスムーズにいかなかった。ストレートの10Kが根尖で引っかかってしまうのである。手用ファイル先端に僅かなプレカーブを付与して根尖部を攻略すると、特定の方向であればスッと通過する感覚があってネゴシエーションできるのだった。

これはレッジの修正を行いたい局面である。もしくは、プレカーブ付与のHファイルでファイリングしてアペックスの機械的清掃と根管形成を達成するかである。

NiTiファイルに習熟する前は後者の方法を採っていたが、労力の割に結果が芳しくないので、かなりテクニックセンシティブ(エンドは職人芸!の領域)であると考えられた。効率の良いレッジ解消の手段はないものかと切望していた折、寺内先生の「ビジュアライズドイラストレーションズ How to Endodontics The State of The Art」の116Pにプレカーブを付与した手用GTファイルを用いたレッジ修正法についての記載があった。それをヒントに、手持ちのプロテーパーのF1だったかの先端プレカーブを付与して、それを手用NiTiファイル代わりに転用した。テーパーが付いているので、ある程度の拡大が達成された状態の根管でなければ根尖まで到達させられなかったが、そうでもなければプレカーブ付与された太ましい手用SSファイルを用いる感覚でレッジを超えて根尖まで到達させることができた。その状態でファイルを、カーブの外湾に当て擦るようにして上下させてレッジの解消を狙った。うまくいくと、ストレートの手用SS10Kが根管壁に沿って根尖まで到達させられる状態に修正できた。

根管の本来の走行に沿った根管形成の観念からすると、この方法でレッジを克服できたとしても、余計な切削に他ならないであろうから快哉をあげるわけにもいかないのだが、レッジを修正してしまえばその後のNiTiファイルによるシーケンシャルなプロセスを達成できる機運を掴むことになる。それはそれで根管治療に遂行上、許される振る舞いであろう。

さて実際のレッジの解消を狙ってみよう。最近の私はレッジ除去専用NiTiファイルであるFANTAの『AF CL files』の 10/.06 を使用しているので、そのことについて述べることにする。

とは言っても「これでレッジ修正は万事解決!やったぜ」と誇れるような信頼性はまだない。経験症例数の重畳がなく発展途上だからである。ひょっとしたら「たまたま」上手くいっているだけで、誤りである可能性すらある。ここには注意を要する。

AF-CL files.Jpg
本来は左のパッケージで売られているようだが、スマイルUSで購入すると右のパッケージで届く


ストレートのSS10〜15Kファイルを根管に挿入したときに、レッジの存在が原因でスムーズに根尖まで到達しないケースでは、まずプレカーブを付与した手用SS10Kで穿通を果たせるかを確認する。感覚的な話であるが、それが比較的容易にできた場合、レッジの修正が可能であろうと考え、AF CLを使用する。

AF CLの使用方法については、SmileUSの製品紹介ページにいつのまにか記載されているが、私の使用方法とは異なる。

以前にこのファイルのメーカーに使用方法について質問したことがある。そもそもロータリーで用いるのかレシプロで用いるのか。レシプロで用いるなら、その設定アングルがあるのか(ウェーブワンやれしプロックに採用されている150/-30でよいのか)?

果たして返答は、「どちらでも使えます」であった。そうですか。

とはいえ心理的にはプレカーブを先端に付与したNiTiファイルをロータリーで用いるには抵抗がある。加えて、ファイル先端がレッジを乗り越えて落とし込めたい根管に進めたいことから私はレシプロで用いることにしている。設定アングルは、過去に寺内先生がFacebookのポストにて90/-30での使用を報告されていたのでそれに習ってE-CONNECT Sでその角度で動作するよう設定して用いたことがある。設定角度的にも、そちらの方が丁寧で安全な気がする。

ただ、エンドモーターにプリセットされている150/-30のレシプロで用いた場合と比べても、少なくとも私の場合は差を感じなかったので現在はプリセットの方で用いている。うまくいかない感触の場合に90/-30に切り替えることもあるかもしれない。この辺は今後の経験と検証が必要になりそうだ。

さてAF CLの出番が来たとしよう。
プリセットされたレシプロモーションで使用することにして、実際にどう適応するか。

通常のNiTiファイルを扱う時と同様、根管に挿入してからスイッチを入れて根尖を目指す。西蓮寺トレーディングの『エンドミニ』(FEED取り扱い)などを用いてエンドモーターに装着したNiTiファイルとEMRとを連動させておくと良い。レッジを乗り越えるとメーターがAPEX方向に振れることになるので、それをガイドにAF CLを根尖まで到達させることになる。

レッジの方向があらかじめ分かっていれば、AF CLのプレカーブの方向を大まかに一致させて動作させれば良いだろう。わからない場合は把持するエンドモーターを回転させるようにしてレッジの乗り越えを狙うことになるのではないか。

作業するスペースの確保のために根管が大まかに拡大されていなくてはならないとしても、それなりの確率でレッジを乗り越えられるのではないだろうか。

乗り越えたて根尖まで到達したら、根管の外湾ファイルの腰を擦り付けるように圧を当てながら上下運動させてレッジの解消を狙う。上下のストローク幅が大きいとファイル先端がレッジより手間に戻ってしまったり根尖外にオーバーしたりするので慎重な操作が要求される。これを時間にして2、3秒行ったらファイルを抜いて、ストレートの10Kファイルを挿入して根尖までスムーズに到達できるようになったかを確認しよう。うまくいくとレッジが修正されてPatencyが回復する。


post_RCF.Jpg

GPの除去、切削片の汚れから最終拡大号ファイルはレシプロックのR50であった
先端を#50にアジャストしたウェーブワンゴールドGPとアクセサリポイント、シーラーにMTAフィラペックスを使用してCWCT。

この後は566Brになると考えられる。
 
ラベル:AF CL
posted by ぎゅんた at 10:23| Comment(4) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
46Dでは?
Posted by at 2019年05月02日 20:13
ご指摘をありがとうございます。

46Dはヘミセクで残してる根管ですね。
本ケースで再根管治療したのは#45になります

注意散漫に記事を書いているのがバレますね
Posted by ぎゅんた at 2019年05月02日 21:49
ぎゅんた先生

先生のおかげで、NITI+Sec1-0にどっぷりつかってエンドを楽しんでます。

ジェネリックファイルであるEdgeCoilをsmileさんから買って使ってみました。このファイルは固めでうねうね曲がっているので、抜去歯の練習ではありますが、レッジの攻略に使えそうでした。

柔軟さがなくカーブしている為か、GPを引っこ抜くような動きをしてくれます。ただし、どうも正回転では押し込んでしまうので、逆回転で使ってます(そんなのDFUで書いてなかったと思うのですが)
Posted by hys at 2019年10月28日 10:14
hys先生 コメントをありがとうございます

EdgeCoilは、XP-ENDO SHAPER のジェネリックかな?と予想します。まだ触ったことがないので、次の注文のタイミングで買ってみようかな……

先生のおっしゃる通り、このファイル(というかXP-ENDO SHAPER)はGP除去能が高いです。レッジの攻略に用いることができるかは、私は試したことがないので未知数の話ですが面白い観点ですね。

これを逆回転させることで用いるテクニックと合わせて、少し試してみたいところです。
Posted by ぎゅんた at 2019年11月05日 11:02
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: