萌出時期の上顎中切歯において、分厚い歯肉に萌出を阻まれているのか、なかなか顔を出さないことがある。保護者の方が「本当にはえてくるのでしょうか?」と心配される。
X線写真を撮影すると、萌出直前を予見させる、歯肉の中に埋まっている萌出直前の所見が得られる。萌出力が弱いためか歯肉が分厚く硬いためか。原因はなんとも言えない(知っている先生は是非とも教えて下さい)。個人差、という便利な言葉で片付けられているように思われる。
こういう場合、我々は開窓によって萌出を促すことができる。浸麻下で、切縁の頭が見える程度に歯肉を除去するのである。そうするとスルスルと萌出するようになる。
この開窓を行わなくともいずれ必ず萌出するのであろうが、介入した方が萌出が明らかに早いし、保護者に喜ばれる。厚みにして1mm以下であろう歯肉をちょっと取り除くだけで(窓を開いて)、永久歯はスルスルと萌出するのである。生命力を垣間見る、ちょっとしたいい気分。
術式は簡単で、浸麻して電メス等で切縁直上の歯肉を除去するだけ。歯肉に埋まっていた切縁の姿が確認できたらそれで終わって良い。出血もそれほどしない。術後疼痛もたいしたことはない。
萌出不全の開窓の保険算定は歯肉切除の点数を準用して120点となる(負担金も少ないので保護者の方にたいへん喜ばれます)。