2017年09月02日

ウェーブワンゴールドに付着する削片の除去について

ネットからパクってきたWG画像.jpg

根管内から取り出したファイルを食器用スポンジに突き刺して削片を除去していたが、Gambarini先生の「MIMERACI」に関する論文【1】を読んで思うところがあった。そこで、ファイルに付着してくる削片の除去について見直すことにした。この論文では使用するNiTiファイルがTFアダプティブであるが、およそ全てのNiTiファイルを使用する際に応用が可能な考えであろう。

こういう場合、手技を増やしたり内容に変更を加える前に「実際に発生している」削片を目で確認して現実を認識することから始めるべきである、と考え、根管から抜き出してきたファイルを水を満たしたボトルに浸けてみることにした。ちっぽけな単根の形成拡大に用いたウェーブワンゴールドのスモールとプライマリを、根管から取り出すたびに水に浸けてシャバシャバと洗ってみた。すると如実にファイルに付着した削片が水の中を舞う姿が認められるのであった。

file with debris.jpg

クソ写真で分かりにくいが、白い削片が沈殿している。この削片は根管内より取り出せたもの相当するが、当然、根管内に取り残された削片や根尖から押し出されてしまった削片が少なからず存在するはずである。

NiTiファイルを根管より引き抜いてから根管口を2.5x程度の拡大ルーペで観察すると、根管壁に湿潤して泥のようになった debris が確認できたりするものであるが、少なくともこれらを根管内より洗い流さないとNiTiファイルを再び根管に挿入することは根尖への debris の押し出しの要因となる。NiTiファイルでの拡大形成時にRC-Prep等のEDTA含有潤滑剤を用いているのであれば、ヒポクロとの接触で発泡するので根管内の debris の排出に有効かもしれない

根管洗浄のステップでは様々な手法が考えられるが、最近の私はヨシダのクイックエンドで注水洗浄してからイリゲーション・ニードルを根尖部に運び、根管壁に接触させない状態でヒポクロを滴下するように出し、クイックエンドで注水洗浄、そして手用10Kでリカピチュレーションすることをルーチンに行っている。エンドチップ等を用いた超音波洗浄はしていない(根管壁に接触したら削ってしまうハズだから)。これでも根尖部の側枝が綺麗になるのか、根充後の確認写真で根尖側枝にシーラーが入り込んでいる像が得られる。

apex_delta.jpg
バックフィリングを失敗しているので気泡がある(AHプラスとウェーブワンゴールドGPプライマリのコンビ)



まとめ
NiTiファイルに付着してくる削片を除去することは、根尖部への debris の溢出(術後疼痛の原因)の面から徒や疎かにしない方が良いようである。スポンジへの抜き差しだけで除去しきれるかは分からないので、
水で洗い流す⇨スポンジ抜き差し⇨アルコールガーゼ清拭
ぐらい徹底しても良いかもしれない。




古典的手法であるオキシドールヒポクロの交互洗浄による相乗的化学効果ならびに発泡効果による削片の物理的除去能は現在は疑問視されている【2】。一方、RC-Prep等のEDTA含有根管清掃補助剤はジェル内部に削片を溜め込む形になるので、ヒポクロとの反応で発泡すれば debris の物理的除去に有効かもしれない、とも考える(過度の期待はできない)。根管洗浄をテーマにした論文はままあるが、EDTA含有根管清掃補助剤とヒポクロとの反応について詳述する論文はまだ探し当てられていない。スメア層除去のための17%EDTA溶液とヒポクロは混ざったら効果がないので、それぞれを用いる際はキッチリ洗い流してから用いることが絶対か、混合すると化学的効果がないばかりか有毒ガスを出すとか、そうした報告はあるので(仄聞)、きっと存在するはずなのだが。

余談だが、RC-Prepとヒポクロで根管洗浄した直後はレジンの接着強さが有意に低下することが知られている(次亜塩素酸の酸素が重合阻害をおこすから、だったような)。とはいえヒポクロを用いない根管洗浄は現実的ではないので、根管充填後に接着操作を行う場合は還元剤としてアスコルビン酸水溶液(サンメディカルの「アクセル」)の適応が推奨される。




【1】Gambarini G,Di Nardo D,Miccoli G,Guerra F,Di Giorgio R,Di Giorgio G,Glassman G,Piasecki L, Testarelli L. The influence of a new clinical motion for endodontic instruments on the incidence of postoperative pain. Clin Ter 2017; 168 (1):e23-27.
【2】Schäfer Edgar.Irrigation of the root canal. ENDO 2007;1(1):11-27
 
posted by ぎゅんた at 08:36| Comment(7) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
このあたり、先生によって手技も主義も違うので悩ましいとこですが・・・。
やはり基本は感染除去ですね。


H2O2との交互洗浄に関してはもう論外でいいと思います。
(ただこの前の大学見学でエンド専門でない一般医はまだこれ使ってたのは驚きでした)
自身の方針は、「混ぜるな危険」です。EDTAと次亜塩素酸ナトリウムが接触することにより塩素ガスが発生すると言う文献も見たことありますし、混ぜると効果が落ちると考えられます。
ただそれで事故が起きた報告はまだなさそうです。

次亜塩素酸ナトリウムの効果を高めるには、振動やら温度やら量やら時間やら水酸化Caとの相互作用やらいろいろありますが、振動・攪拌が効果高いかもしれません。
Posted by ShinyaM at 2017年09月04日 11:51
ShinyaM先生 コメントをありがとうございます。

根管洗浄液には色々ありますが、なんだかんだ次亜塩素酸ナトリウム水溶液が主役なんですよね。フェカーリスはさておき安価で強力ですし。昔からの論争「濃度はどうする?」は今は0.5-1.0%で用いる先生が多いとか論文にありましたが、2010年前後の情報なのでなんとも。私は10%であるネオクリーナーを適当希釈2.5%で用いてます。

根管洗浄ではエンドチップは使っていませんが、洗浄液の撹拌はさせたいので「エンドアクティベーター」あたりが欲しいなあと思ってます。SEC1-0を応用しての撹拌は無理だろうし、なんだかんだで相性の良いデンツプライのプロダクツだからです。撹拌してクイックエンドで吸い上げたら綺麗にできそう。

考案したラドル先生はエンドアクティベーターの紹介論文(コマーシャル・ペーパーっぽいですが)を発表していて、読んでると欲しくなりました。マイナーな器具なのかな。
Posted by ぎゅんた at 2017年09月04日 18:20
ぎゅんた先生の記事で色々勉強させていただいて、根管洗浄がいかに大切か、という事を理解させていただきました。 色々検索したところPiezo Flow という洗浄機器にひじょうに興味を待っています。smile usだとセットで30万円超えるし、壊れた時の修理の問題もあるし、ちょっと厳しいかなと思っています。
ところで話は変わりますが、イリゲーションシリンジにヒポクロを入れる時、皆さんはどのようにされていますか?
ネオクリナーの容器から、学生の時習ったシリンジの後ろから入れるというのも、中蓋のちっちゃいホールからこぼさず移すのも難しいし、中蓋取ってキャップをすると、保管の時漏れるし、細いイリゲーションのノズルを突っ込んで吸うのも時間がかかるし、不潔だし。レベルの低い質問で恐縮です。よろしくご教示下さい。
Posted by トリ at 2017年09月04日 18:53
トリ先生 コメントをありがとうございます。

ピエゾフローはいいですね。複雑で精密で効果な器具ですが、根管洗浄に関する論文で目にすることがあります。結果を信じれば、根尖部の清掃効果が高いようです。根尖部の除去したいバクテリア除去が有意に達成できることが細菌培養試験で立証していた(多分)ペーパーもありました。しかしまあ、買わないと思います。その前に注水機能がついたKavo版SEC1-0が欲しい……


〉イリゲーション・シリンジにヒポクロ
ダッペングラスに希釈用の水を張り、ネオクリーナーを滴下して、ディスポのイリゲーション・ニードルのニードル側の方から使用分を吸い上げ、拭いて、イリゲーション・ニードル装着しています。

冷暗所か遮光容器に作り置きでもいいかもしれませんが、自作水酸化カルシウムペーストと同様、こまめに調剤するべきだと思います。化学劣等生なんで細かな説明はできません涙
Posted by ぎゅんた at 2017年09月05日 09:33
さすがぎゅんた先生、エンドアクティベーターは清水藤太先生も使われていて、例えるなら電動歯間ブラシだそうですが、削れず攪拌できるのでいいものと聞いています。・・・約7万と値段が高くまだ買えてないですが。

>シリンジに次亜塩素酸ナトリウム
自身はウルトラデントの製品を使っています。
ネジを切っており、シリンジと薬液の容器が接続できるため比較的清潔かなと考えています。
コストがかかるのが欠点ですがご参考になれば。
Posted by ShinyaM at 2017年09月05日 09:46
ShinyaM先生 コメントをありがとうございます。

エンドアクティベータは超音波振動ではなく可聴域振動ですから確かに電動歯間ブラシですね。根管を無用に切削しない、機器が単純シンプルコンパクトな構造、肝心のチップ部分は取り替えができる、と魅力的なものですから「いつか買うリスト」入りをしています。

それまではヒポクロを満たした根管にガッタパーチャポイントを上下させる手法で撹拌させる手法やブローチ綿栓で根管壁を拭くようにして清掃する手法で頑張ります。
Posted by ぎゅんた at 2017年09月05日 12:29
ぎゅんた先生ありがとうございます。
文献的もピエゾフロー有効なのですね。ますます欲しくなりますが、お金がないのでやめときます。エアースケーラーに取り付けるuファイル用のホルダーは上部まで貫通しているので、ここにニードルを通してシリンジを取り付けて、、、、と頭の中でピエゾフローと同じようなものが作れないか妄想を膨らませています。
ヒポクロをその都度薄めてシリンジに吸わせているのですね。私もその方法で真似してみます。床にこぼすとえらいことになるので注意が必要ですね。

ShinyaM先生ありがとうございます。
確かクロルシッドJとかいうやつですね。ちょっと気になって調べてみたのですが、確かに具合が良さそうです。ただ値段を見てびっくり30ml定価1300円。仮に1根管1mlとすると、約43円。うちでは厳しいです。どこかに逆ルワーロックの大容量のシリンジが売って入れば良いのですが。そうか、一度だけクロルシッドを買って、後は詰め替える方法もありますね。
Posted by トリ at 2017年09月05日 20:46
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