2017年08月27日

グライドパス形成用NiTiファイルをどうするか


ProGlider_Graphic.jpg

「プログライダー」と「HyFlexEDM Glidepath File」は、グライドパス形成用NiTiファイルである。私は手用マニー10Kでネゴシエーションした後に、このふたつのどちらかのファイルを用いてグライドパスを形成してきたが、ふたつの不満を漫然と抱いていた。

1.コストが高くつく
2.破折が怖い

ことである。



コストはともかく、破折が怖いとはどういうことか?
手用10Kをマニピュレーションでネゴシエーションさせた程度では根管はまだ狭く細い。元々が太い根管であれば別だが、テーパーのついたグライドパス用NiTiファイルを用いると、抵抗が強いために一発で根尖まで達しないことがある。グライドパス用ファイルはなるべくスムースに、一発で根尖まで運びたいところだ。湾曲根管で根尖部付近でモタつくとレッジを作ってしまいそうで不安だからである。

そもそもNiTiファイルは、その最大の弱点である破折を防止するために、用いる際は拡大ではなく形成で用いるべきものである。キツキツな根管を削りまくって使用するのは、そりゃ最近のNiTiは破折防止を第一に謳うほど破折しにくい設計にはなってきているし、実際に、シングルユースで使う分にはまず破折はすまい。この場合のNiTiファイルは新品なのだから切れ味も抜群で、拡大+形成を破折しないまま同時に達成できる設計通りの働きをみせるだろう。しかし、破折しにくい材質になったのなら、滅菌して再び使用しようと考えるのは当然のことである。NiTiファイルは刃物だが、刃を研ぐことはできず、切れ味が鈍くなったら破棄するほかないが、それでも、数回の繰り返し使用はできるものだ(再根管治療用に「2軍落ち」させてもよい)。

また、NiTiファイルはグライドパスが形成された後に使用することが原則となっているので、グライドパス形成用NiTiファイルが適応された根管であれば、おおよその拡大がすでに確保された誘導路が用意されていることもあって、ファイルにかかる負荷が小さくて済む。セーフティメモディスクを用いて厳密な使用回数を遵守することは、破折防止により有効である。

グライドパス用NiTiファイルも同様であるはずだが、狭く細い根管に使用せざるを得ない立場上、破折防止を見越して早期破棄せざるをえない。



10KのネゴシエーションをSEC1-0で行うように切り替えてから
手でネゴシエーションを達成させていた頃に比べて余裕をもったPatencyが得られるようになった。従前、手用10Kでネゴシエーションしたあとに根尖より10Kを1mmほど出した状態でファイルを上下運動させてPatencyを確保していた。これと同様の操作を機械(SEC1-0)で行うようにしただけなのであるが、実に手早く楽に確実に達成してくれるようになった。場合によっては良好なグライドパスの目安である、「15Kが根尖までスーッと到達する」がほぼ達成される寸前までの状態になっている。ここまでくれば、グライドパス用NiTiファイルのサイズとテーパーにもよるが、一発で根尖まで到達させる理想的なグライドパス形成が容易になる。

プログライダーやHyFlexEDM_GlidepathFileの他に代替となるNiTiファイル候補は様々あるが、ひとまずGCのNEX 10/.04を用いている。これをROOT ZXと連動させて、メーター値0のところを超えて到達させ、クイックエンドで注水吸引洗浄し、センシアスフレクソファイル10Kでリカピチュレーションしてグライドパス形成を終える。そして15Kがスムースに根尖まで達するかをチェックする。



先端径(D0)とテーパー
プログライダーは16/02-08.5であり、HyFlexEDM_GlidepathFileは10/.05である。狭窄根管の場合、プログライダーの方がスムースに根尖に到達する感じがするが、これはテーパーの関係と思われる。プログライダーは可変テーパーで先端付近は細くしなやかである。GCのNEX10/.04は折衷案といえなくもない。

プログライダーのD0は16号であるから、根尖から通過させると、根尖孔を15号以上に拡大することになる。Patencyの号数はどうあるべきかについて定まった統一見解はないようだが、15号が根尖を通過する程度の侵襲は根管治療にさしたる影響を与えるものではないとPatencyやGlidepathに関する論文で述べられている。別に問題はないとしても根尖孔はなるべく触らないようにしようと考えることもできるわけであるから、D0が15号以上のグライドパス形成用ファイルを用いる場合は根尖から出さない方が良いだろう。根尖の拡大号数が大きなグライドパスである方がその後の拡大形成に用いられるNiTiファイルが根管の走行から逸脱しにくいメリットが得られるようだが、さりとて20号以上のPatencyはやりすぎの感がある。15号のグライドパス形成でさしたる不都合がないなら15号にとどめるべきであろう。根尖部を大きく拡大した場合、根尖部のdebrisの目詰まり防止や根尖部の洗浄効率の向上のメリットが得られるにせよ、形成用NiTiファイルを根尖から突き出してしまう不慮の事故が起こりやすくなる。こうなると根管の拡大修正が追加で必要となってくる。仮に25号以上のPatencyがあったとしても根管治療が失敗に終わるわけではないが、根尖付近のマネジメントがセンシティブさを増すだけなので、根尖部のバイオフィルムを感染象牙質の意図的拡大除去を必要とする場面を除いて、根尖孔を15号以上に大きくしない方が良いであろう。



拡大形成のステップへ
グライドパスが形成できれば、この後の拡大形成シークエンスはそう難しいものではない。やることは決まっており、やるだけの準備が整ったからである。慣れてくるとグライドパスの形成が終わったタイミングで気持ちが楽になり、緊張感から少し解放されて楽になることに気づくようになる。

拡大形成時に特に気を配るべきであろうことは、

根尖からNiTiファイルを押し出す誤操作を起こさないこと、
根尖部のdebrisを吸引を加味した根管洗浄積極的に排出根管より排出させること、
ファイルの交換の合間には10Kでリカピチュレーションをすること、
根管形成はヒポクロを満たすための器作りの側面があるが、そのヒポクロを十分に作用させる時間を確保すること、

ぐらいのものである。



※個人的な好みでリカピチュレーション用ファイルとして使用しているだけで特別な意味はない。センシアスフレクソファイルのヘッドのハンドルは大きめのシリコン製であり、SEC1-0に使用するころはできない。COOLな外見、シリコンハンドルのさわり心地の良さ、ファイルで煩雑になりがな作業スペース域で発見しやすい点がお気に入り。グライドパス確認用としての15Kを購入しようか思案中。


【参考文献】
Luciana Silva,Rodrigo Vance,Carlos Santos,Felipe Anacleto. Effect of apical expansion in decreasing micro organisms:a literature review.
I Cassim,P J van der Vyver. The importance of glide path preparation in endodontics:a consideration of instruments and literature.
Clifford J. Ruddle, Pierre Machtou,John D. West. Endodontic canal preparation:innovations in glide path management and shaping canals.
ラベル:HyFlex
posted by ぎゅんた at 22:07| Comment(4) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ぎゅんた先生の記事を見て、HyFlexEDM Glidepath Fileをこのところずっと使っています。確かにプラグライダーに比べ、キチキチとやや抵抗を持って入っていくので、怖い部分もあります。根管口を広げてから使っても、やはりキチキチ感はあります。一方、HyFlexEDMはメーカーが滅菌再使用を見認めているので、この部分の安心感はあります。今の所、一本20根管以上は使用しても折れていないので、メーカーのコマーシャル通り、破折抵抗性はかなりあるのかな?と思ってビビりながら使っています。
あと、やっぱりモリタのトライオートとメーターを連動できるのは便利ですね。
と言うことで、HyFlexEDM25/.08〜.04(One File)も一度使ってみようかと、購入だけはしてあるのですが、ウェーブワンゴールドが素晴らしすぎるので、毎日眺めているだけです。
Posted by トリ at 2017年08月28日 09:35
良い記事と思います。
やはりNiTiを使うにはかなりの下準備が重要ですね。逆に下準備と手順をしっかりしておけばそうそう破折するものでも無いかなと思います。

patencyに関しては#10で十分か#15まで通すか悩んでいる所です。意外と#10までで十分でないかなと試しています。

根尖とpatencyに関しては書かれている通りです。根尖の径は約#30弱(300μm)あるんですが、apical patencyの定義としてsmall fileを使用してとあります。
明確な定義としては無さそうですが、#25以上のステンレススチールファイルは追従されないと言う文献もあり、#15にとどめる(#20はぎりぎり?)と言うのは的を射ていると思います。
Posted by ShinyaM at 2017年08月28日 10:50
トリ先生 コメントをありがとうございます。

HyFlexEDM-Glidepathファイルは、滅菌前提で、形状記憶性があるのがいいですね。抜去歯牙で試した限り、正確なデータとは言えませんが折れにくい印象を受けます。抜去歯牙のさして根尖湾曲を認めない根管で折れるまで何回グライドパス形成ができるかをN数の多い実験データが集まったら重宝される論文が一本仕上がるのではないかとグライドパスの論文を読んでて思いました。

ウェーブワンゴールドのようなレシプロケーション型は、根尖へdebrisを押し出す量が有意に多いのではないか疑惑があり、それに関する論文を読んだりしているところです。なんとか記事に仕上がったらアップしたいと思っています。

トライオートZXは2が出てましたね。根尖部で自動ストップする機能があるのが羨ましいです。
Xスマートプラスの購入を見送ったけれどもNiTiファイルの導入を決断せざるを得ない先生への救世主になる…かも?
Posted by ぎゅんた at 2017年08月28日 16:34
ShinyaM先生 コメントをありがとうございます。

ペイテンシーは10-15の間にとどめるのがいいのではないかと思います。最近の私はNEX10/.04を根尖から通しているので、12号ぐらいのペイテンシーから根治がスタートしている感じです。

ペイテンシーの話題で避けられないのが根尖部の意図的な拡大でしょうか。
感染根管治療で根尖孔のバイオフィルムを除去しちゃる!と考えたら、拡大を考えます。ただ、拡大したところでバイオフィルムの除去がどこまで達成できるか分かりません。知りたいのはやる意味があるのかないのかどちらなんや!という点ですが、調べた限り「拡大しなくても治癒に導ける」とする考えと「拡大した方が治癒に導く上で有効だと思う」にふたつに分かれる印象です。リクッチ先生は拡大しない方がいいとしていた気がします。私は拡大すべきと考える人間なのですが、最近はそこまで気張らなくても器を作ってスメア層を除去してヒポクロを満たして根管洗浄をやりまくれば拡大せずに治癒に導ける根尖にできるのではないかと考え始めているところです。
Posted by ぎゅんた at 2017年08月28日 20:50
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