2017年06月13日

骨粗鬆症エキスパートセミナーとポジションペーパー2016

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ビスホスホネート製剤「ボナロン」の製薬会社である帝人ファーマ主催のセミナー。骨粗鬆症治療の現在の解説とボナロンがいかに優れた製剤であるかのポジショントークが混じった講演になるのかと思って参加したが、それは杞憂であった。参加して良かった。現状が知れたからである。また、デノスマブ(骨粗鬆症治療で「プラリア」、悪性腫瘍で「ランマーク」)でもBRONJと同様の顎骨壊死(DRONJ)を起こすことも明らかされた。なお、BRONJもDRONJ も破骨細胞による骨吸収抑制をターゲットとした薬剤に起因することから、両者を総称してARONJと呼称するようです。


BRONJが歯科界で報告されトピックとなった時の歯科医たちの間走った戦慄を今も覚えている。「ビスホスホネート製剤(以下、BP製剤)を服用している患者さんの歯を抜歯すると顎骨壊死を起こす」との報告によって歯科界がパニック状態に陥ったのである。当時の歯科医のほとんどは骨粗鬆症の治療についても明るくないしBP製剤ってなによ?みたいな状況でしたから、「抜歯によって顎骨壊死が生じる」激烈なインパクトもあってパニックに拍車をかけた。

その後、BRONJに関する報告と周知の徹底によって自体は沈静化し、現在に至っております。

私を含めて、市井の開業医のBRONJへの対策はどのようなものかを考察いたしますと、以下に述べる点でまとまっているのではないでしょうか。

1.BP製剤を三年以上服用している患者さんでは、抜歯をしない(保存処置で対応)
2.抜歯する場合は、3ヶ月の休薬を行う
3.ビスホスホネートの注射を受けている患者さんは年数に関係なく抜歯できない

頷かれる方もおられましょうし、否定される方もおられましょう。
結論から述べると、三年以上の服用既往があっても抜歯できますし、休薬させる必要性もありません。感染に充分に配慮して抜歯し、創部を縫合で閉鎖させればBRONJを予防できることが確立されたからです。



本態的には感染による骨髄炎が主体
そもそも「顎骨壊死」の言葉が一人歩きしたばっかりに、歯科医が抜歯に及び腰になってしまっているのが実情のようです。実際は外科処置後の創部の感染修飾による骨髄炎が主体で、その結果、腐骨形成といった顎骨壊死が生じるのです。ここまで「広まってしまった」以上の、いまさら名称の変更はできないそうです。

結局のところ、抜歯など観血処置の後に感染させなければ良いようです。
口腔ケアを含めた口腔内の清掃の徹底と、術前の抗菌薬投与、抜歯直前に患歯周囲の歯石除去を行い、抜歯創を縫合によって閉鎖させることで、たとえBP製剤を三年以上にわたって服用している患者さんであろうがBRONJを確実に予防できることが分かっているようです(N数の多い信頼できるデータが集積されている)。休薬によって骨粗鬆症の人が骨折するリスクと不利益を無視できないことと、休薬によるBRONJを予防できる確たるエビデンスがないことがこれを後押しします。

勿論、すべての場合でこのような単独対応ができるわけではありません。医科-歯科連携の上での対処が求められます。抜かなくてはならない歯があれば、抜かなくてはならないのです。

10年以上の経過の中で集積されたデータを元に明らかにされた事実の蓄積が、BP製剤に対する現場の恐怖と混乱を払拭しはじめています。口腔外科医であれば、ARONJの知識は最新のものにアップデートされているので、自院での対応に不安があれば、口腔外科に紹介することなるでしょう。だからと言って、最新の知識を知らずにいてよい道理はありません。少なくともポジションパーペーを一読しておくべきです。極めてコンパクトにまとまっていると思います。

ポジションペーパーはここでPDFで読めます。ええ時代やで
顎骨壊死に関するポジションペーパー(日本口腔外科学会)
『骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016』
 
posted by ぎゅんた at 14:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 勉強会・セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
良い記事と思います。ポジションペーパーやガイドラインの確認はやはり重要です。顎骨壊死は起こすと長期にわたるため起こさない事が重要です。

自身が東京の柴原先生の講演で聞いたこととしては、
抜歯をしないからと言ってARONJを起こさないわけではない、抜歯しないことは問題を先延ばしにしているだけであり、感染が残ることでARONJは起きる。
patency filingについても開放創でない場合おそらく問題ないとの回答も得ました。

あとBP製剤の問題点としては、長期に投与されすぎている事も指摘されていました。
どうも4年を越えて投与するとリスクだけ高まり効果が薄いとの事。最新の情報にアップデートすることも重要です。
Posted by ShinyaM at 2017年06月14日 10:18
ShinyaM先生 コメントをありがとうございます。

抜歯しなくてはならない歯は、もうそれが生体にとっての大きな感染源ですから、残すなんてとんでもない!ということですね。大きな根尖病変を伴う場合は感根処か抜歯か悩む場面が出そうです。普通はエンドで保存を図るけれど、抜歯した方が無難なら、そちらを選択した方がよい場面もあるはず。

ドイツでは医科歯科連携とそのシステム化が構築された結果、ARONJの発生がほとんどなくなったそうです。おそらく、そのシステムがこれから世界にモデルケースとして導入されていくのではないかと思われます。

いずれにせよ骨粗鬆症や癌治療で破骨細胞を抑制させる薬剤が使用され続ける現状は変わりませんから、知識のアップデートは必須ですね。

骨粗鬆症による骨折が、要介護の人を増やしている目立たない原因であることをを恥ずかしながら今回の勉強で初めて知った次第です。糖尿病に加えて、骨粗鬆症の方も知識を整理して患者さんに伝えられることを増やしていきたいです。
Posted by ぎゅんた at 2017年06月14日 13:49
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