2017年04月09日

前歯が欠けたのでCRで象牙質を保護して見た目を回復させましょう(上顎前歯部の直接法コンポジットレジン充填)


歯質にレジンを接着させられる技術が、どれほど人類に貢献しているものか正確な評価を下すことができない。私自身は、口の中のような水分まみれのところで、歯という無機質と有機質と水分とからなる複合生体組織に「油」であるレジンを接着させられる技術は、とんでもないことだと感じる。

接着歯学とコンポジットレジンの物性向上、充填テクニックの進歩により、信頼のできる接着はもとより審美的な充填すら可能になっている。とくに前歯が部分的に歯が欠けてしまったことによる審美不良を即日的に回復させることができるようになったことが大きい。ひと昔前は補綴に頼らざるをえなかったことに比べれば吉報である。接着歯学は、地味ながら着実に進歩してきた分野なのである。

保険診療のCRは使用する材料に一部制限があるものの、ソコソコの見た目を回復させられることはできる。健保適応で自分と相性のいい材料を揃えたら、あとは器具とテクニックと気合でなんとかするわけである。



卑近な例を紹介する。
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硬式野球の練習中にボールがぶつかって欠けた#21.23(#22は先欠)と来院した高校生。
外傷のアポなし来院であるから緊張が走ったが、患歯に動揺は認めず、打診痛もなく、EPTで正常反応をしめした。主訴は、歯が欠けたことによる審美障害に加えて風や冷たいものが歯にしみて痛いことであった。

固定を必要としない外傷とは運がいい。
外傷に継発する突然の歯髄死が心配なので経過を追う必要があるものの、形態の回復と誘発痛除去が応急処置で必要となる。露髄もしていないのでは素直にCR修復で対応すればよろしかろう。

保険で使用できるCRでソコソコの見た目を回復させるなら、透過性の異なるCRでレイヤリングすることになろう。例外的なのは咬合面1級や5級でこれは単一ペースト充填でも案外にイケる。しかし、光の透過を受ける3級や4級、切端のCR修復では透過性を考慮しないとどうしてもイマイチな仕上がりにならなりがちだ。

こうした修復時に私が愛用するCRは3Mのフィルティックシュープリームウルトラ(A2E、A3B・A3.5B・A4B、A4D)と松風のビューティフィル(BW)である。シュープリームウルトラは、ボディシェードをメインに充填し、表層をA2Eで仕上げるだけでなんとなく美しく仕上がってくれる。BWは「中に仕込む」ことで白斑や白帯を表現するために用いる。切端エナメル特有の表情を作り出すためのトランスルーセントや黄色ティント等は保険で使える材料がない(あるのかな?)し、そこまで拘って充填に時間をかけられないことから採用していない。これを組み込むのは、ダイレクトボンディング(自費)のできる'職人芸'ドクターに限られてこよう。私にはムリデス

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充填と当日研磨直後。犬歯尖頭にBWを仕込んである。水色の点は、艶出し目的で使用したジフィーハイシャイン(ウルトラデント)の欠片である。

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2w後
外傷-受傷後の歯髄失活などがないことの経過確認のため来院。EPT正常、自発痛、打診痛、歯牙動揺なし。充填が上手くいったかなと思ったら写真撮影するとよい。肉眼観察と違って不備なところが面白いように分かるからである。近心隅角に形態不良があるので修正する必要があることが分かる。



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たまにあるのが、レジン前装部の破折や脱落

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レジン前装はどうしても無表情な見た目になりがち(A4D+A3B+A2E使用)

応用的に硬質レジン前装冠のレジン剥離修理がある。バッキングメタル金属色を遮蔽させた上で接着と嵌合でCRを築成していかなくてはならない。これは難易度と点数的に手間暇に見合うものではないから、修理などせず冠を新製するのが一般的だ。ただ、規模の小さな部分破折程度なら修理の方がよかろう。即日修理ができた方が喜ばれるし、浸麻も要らず短時間で仕上げられることから点数的にペイできるからである。

オペークレジンが用意できない場面での裏技があるので紹介しよう。
それは、レジン練板に採ったCRペーストをプラスチックスパチュラで織り込むように練り込みまくり、気泡を混ぜることでオペーク性を付与するテクニックである。ペースト性状が水飴のように変化して操作性は低下するが、明度が上昇して不透過性が得られる。A4Dあたりを練りこんで使うと良いだろう。これにより、オペーク性の強くなったA3Dを得ることが出来る。

これは私のアイデアではなく、愛知学院大の冨士谷先生に教わったものである。ありがとうございます。
 
posted by ぎゅんた at 16:44| Comment(5) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
即日修理ってのはやはりいい利点ですね。昔に比べると接着性も増してきた気もしますし。
ただ個人的に審美ってのは苦手で・・・エンドの方がまだ簡単と思っています(苦笑

気泡を混ぜるでオペーク性を上げるテクニックは聞いた事ありますが、強度や性状的には問題ないでしょうか?もしご存知であれば、お教えいただけると助かります。
Posted by ShinyaM at 2017年04月10日 11:28
ShinaM 先生 コメントをありがとうございます。

ご指摘のとおり、気泡を混ぜることで当然ながらCRの物性や研磨性が低下します。

ただ、一層のオペークで使うものであり、その後の表層に通常のCRをレイヤリングすれば研磨性は克服でき、物性の低下はショックアブソーバーの層として作用することが考えられるから気にしなくてよいようです。

なお、もっと切羽詰まった前装破折に対しては、機械的嵌合に依存しますが、即重を筆済みで破折部位に盛るテクニックがあります。PMMAは気泡まみれなんで、意外にバッキングメタルを遮蔽してくれます。
Posted by ぎゅんた at 2017年04月10日 17:56
ダイレクトはとっても楽しいのに(笑)
やる気になったらいつでも言ってくださいね。てんこ盛りアドバイスしますから(余計なお世話)グフフ。
Posted by 奈良の変態紳士 at 2017年04月11日 01:46
変態先生 コメントをありがとうございます。

保険のCRでどれだけ格好いい充填が実現できる腕を磨きあげられるか?が最近の密かなマイブームです。

CRは腕の差が簡単に形に出るところですから、めっちゃダイレクトですね。
Posted by ぎゅんた at 2017年04月11日 10:44
なるほど、ありがとうございます。
Posted by ShinyaM at 2017年04月11日 11:58
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