2017年04月05日

エアスケーラーとスケーラーブラシでプラーク除去をしよう


sonic-brush.jpg

パワー調整が出来ないのでエンドチップをシャーペンの芯のごとくバキバキ折りまくった初期型のソニックフレックス(Kavo)。エンドチップが使えないなら、スケーリングチップで除石に使うほかないわけですが、その加減知らずのパワーは使用を躊躇させるレベル。絶対に歯面にダメージを与えるからであります。怖くて使えません。脳筋パワー系じゃあるまいし、なぜにこんなハイパワーなのか。せめて出力調整ができれば文句もないというのに。ドイツ人の考えることはわからん。

そんな初期型ソニックフレックス、目視できる縁下歯石の除去か微細な超音波切削ぐらいしか出番がない。このうち縁下歯石の除去はキャビトロンで事足りる。歯質の超音波切削にしても、最近ではカーバイドのラウンドバーの方がコントロールが容易で馴染んでしまった。使わなくなるとサッパリ使わないのが歯科機器の常でありまして、畢竟、最近は埃をかぶっていたのであります。


ちょっと話が横道にそれますが、当院では歯石除去やSRPの前にP-MAX:イリゲーションチップを用いて全顎ポケットイリゲーションを行っていました。これは予めプラークを除去しておくことで、歯肉出血時の菌血症の程度を抑えたいと考えたからです。

どれほどの効果があるかもうひとつ不明ですが、殺菌力を有する機能水を用いてポケットイリゲーションをすると、ポケット内の細菌叢を静的なものに変えることができます(位相差顕微鏡で確認できる)。その静的な細菌叢も時間が経つとまた元の状態に戻っていくので、ただ「リセットボタンを押す」ような感じではあるのですが、短期間でこれを繰り返すと、トレポネーマ・デンチコーラの数が明らかに減った菌叢程度には変化させられます。減ったから歯周病が治るほどバカ単純な世界ではないことは自明ですが、多いよりは減ってる方がマシであることは確かです。なぜなら、ブラッシングや歯周治療に伴って歯肉出血をきたした際に血管内になだれ込む細菌、とくにトレポネーマ・デンチコーラの数を抑えられるからです。

イリゲーションチップを用いた全顎ポケットイリゲーションを行う主目的はプラーク除去です。しかしこの処置は出血をきたしやすいのが欠点です。そりゃ炎症をきたしているのだから、チップの物理的な接触のみならず水圧でも出血してしまうことが考えられます。このときに殺菌力を有する機能水を使っているから菌血症は予防されているヘーキヘーキと考えるのは早計で、やはり、出血はさせないに越したことはない。そうすると、毛の柔らかい歯ブラシでプラーク除去を行うべきかもしれない。けれどもそれは、たいそうな労力と時間を要する。自費ならいざ知らず保険のP処置でこれは厳しい。加えて、イリゲーションチップを用いた全顎ポケット洗浄は、予想していたほどプラークを除去しやすいわけでもないし、できていない(プラークが洗い流されていくのを期待するのだが、流石はバイオフィルムで、水流で洗い流せるほどヤワでないのだ)。いきおい、時間がかかっているばかりでなく、歯肉出血を招いているだけの行為かもやしれないとの疑念もわく。なんだかわけがわからなくなってくるのは、結局は、自分自身が物事を正確に把握した治療をしていない証拠です。


ひとまず、出血をさせることなくプラーク除去を手早く終えられる手段が求められることになりました。徹底したプラーク除去で遊離歯肉部の炎症を消退させることを第一に考えても悪くないのではないかと考えたからであります。「あれだけ説明と指導をしたのに、ベットリ(プラークを)つけてきてやがる!」は日本全国どこの歯科医院でも毎日起こっているのが現実です。患者さんは、こっちが期待するほど口腔内に意識を割いてくれません。これは「歯科医院側の手ぬかり」と言えばそれまでですが、やってくれない人は本当にやってくれない。行動に移してもらうのは、いうほど優しくはない。だからいまでも、歯周病の教科書には、患者さんモチベーションについて頁が割かれているのです。

医患共同で二人三脚のように歯周病治療を進められるのが望ましいのは言うまでもないのですが、現実的には医療者側が患者さんを牽引・鼓舞する役回りが多いものです。なれば、来院の都度、その患者さんに必要な事項や当座の留意点を説明しつつ、手早く出血のないプラーク除去をルーチンに行えば良いものと考えます。

そんなかんだで、器具を探し求めたところ、ヨシダのユリーがハンディで良さそうに思われました。

デモ機を貸してくれないものかと、材料屋を通じて交渉したものの、デモ機が存在しないの一言で断られました。デモ機がないから貸せないとか、果たして売る気があるものかと企業姿勢を疑ってしまう。

歯科材料にせよ機材にせよ、決して安いものではありません。少なくともユリーは、10万円越えの器具だし、なによりこれをメインで使用するのは当院の衛生士たちです。そして、彼女らには彼女らの道具の扱い方やペースが確立されているわけで、いかに上の立場からとはいえ「これを使え(その方がいいと俺が思うから)!」と導入するわけにはいかないのです。結局使われない結果になるからであります。実際に使ってみて、当院の診療スタイルにストレスなく組み込めるかどうかは、実物を使用してみないことには決してわからないのです。

困ったときは代替案を考えて打開を図ります。
埃をかぶっていたソニックフレックスに着用できるソニックブラシがあることが分かりました。Ciのカタログに廉価品(「クリーンアップブラシ ブラシホルダー」と「スケーラーブラシ」)があったのでいざ購入。

結論を述べると、痛みなくて早くプラーク除去ができると衛生士たちに好評で、処置前や歯清や合着前の被着面清掃と八面六臂の活躍ぶり。染め出しした後に使うとその男らしい除去っぷりに惚れ惚れします。パワー調整のできない脳筋エアスケーラーですから、痛みや出血を心配していましたが、派手な作動音とは裏腹にその心配は杞憂でした。埃をかぶっている暇もない人気者っぷりで、閑職に追いやられていたおっさんが第一線に復帰したかのごとくであります。

当面はこれで食いつないで、余裕がでたらユリーかなと考えましたが、エンドチップを装着できるパワー調整のできるエアスケーラーを購入することが先決の気がします。クリーンアップブラシを装着できるやつが購入できればユリーの代替品になるからです。あと、ユリーはヨシダなんで、当院のモリタのユニットとジョイント部での相性が悪いのもマイナス。いえ、クイックエンドでジョイント代が余計にかかったことに対する恨み節ではありませんよ。


※いまだに自分の中でプラークを位相差顕微鏡でみたところの細菌叢の扱いの定礎がないのですが、減らせられる機会があるなら積極的に減らすべきであろうと考えています。
 
この記事へのコメント
過去のブログ読ませていただきました。大変勉強になります。今回の内容と関係なくて申し訳ないのですが、コスモデンタルサージはまだ使われてますか?もしまだ使われているなら抜髄時の残髄予防にはどれ程効果があったと思われますか?
Posted by ttt at 2017年04月08日 04:33
ttt先生 コメントをありがとうございます。

コスモは抜髄時の残髄予防の効果を期待できる機器だと思います。

コスモはいまも使用しています。
エンド診療時の一式を載せたカートがあるのですが、コスモは一等地に鎮座し続けたままです。

コスモをエンドで用いる場面は、おおよそ以下の通りです。
1.根管内の熱殺菌と乾燥を目的とした通電(手用ファイルを媒体)
2.根管内消毒液の加温させることで積極的な殺菌を目指す(ヒポクロを満たした状態で手用ファイルを媒体に通電)
3.歯髄を変性させて残髄予防


3.が、先生のご質問に相当する内容かと思います。

抜髄根管で、どのタイミングでコスモで通電するべきかは、定型意見はないようです。根管口を明示したら通電するのか、ネゴシエーションの後にするのか?

理論的には、根管口明示おタイミングで通電をして、側枝を含めた狭窄部の歯髄を熱変性切断させて残髄を予防するものだと思います。が、抜髄で歯髄を熱変性させるほどの通電は、浸麻をしていても痛いし、どうも術後お疼痛がしつこく出る経験が多い。

そこで私は、ネゴシエーションしたタイミングで通電あいています。具体的には、

ネゴシエーション成功→根尖よりオーバーしたファイルを根管内に戻す(ROOT ZXでいうところの「0.5」の位置)→ファイルが動かないよう注意しながら、一回、通電「歯髄焼灼」

通電直後、水蒸気が上がることがありますが、それが確認できれば充分です。同じことをしているのに水蒸気が上がらないこともありますが、その場合は、もう一度、通電します。この程度のことでも、残髄の予防につながっているようで、次回来院時に根尖付近を触っても痛みは訴えられません。

この後、グライドパスを形成して、NiTi…と続きます。

コスモがないとエンドができない!なんてことはありませんが、やはりあってくれないと心許ないというか、私のエンド臨床に必要としている機器であり続けています。

ご参考になるところがあれば幸いです。
Posted by ぎゅんた at 2017年04月08日 11:59
返信ありがとうございます。
コスモ買ってみようと思います。ブログの更新楽しみにしていますので、これからも頑張ってください。
Posted by ttt at 2017年04月08日 14:47
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