2017年03月31日

【所感】沈みゆく大国アメリカ〈逃げ切れ!日本の医療〉


「アメリカがクシャミをすると日本が風邪をひく」という有名な言葉がある。日本はアメリカ経済の影響を常に受けるモノという、元々は経済的なニュアンスを含む言葉であったかに思う。個人的には、「アメリカのあらゆるスタイルは、あたかも潜伏期のように、一定の期間を経て日本にも導入される」ことと同義だと考えている。要するに日本はアメリカ様に服従している属国だということだ。この辺の考察を始めると多分に政治的な話題となってしまうが、事実であろうことに疑いを持つ人もおるまい。

政治と宗教の話題はタブーであり避けるべき題材だが、この際に述べておくと、私は消極的自民党支持者である。自民党というのは、平均以上の能力を有する人材が「国家国民のために働く」ことを最低限の信条として、民主主義の申し子のツラをして雑多様々な理念とそれに基づく政策を推し進める手練手管に長けた老獪な政治集団であるように思う。ガチガチの保守政党と思ったら大間違いで、意外にもリベラルな考えの議員も多数いて、それをグループとして上手に包括している(ある程度、互いの思想理念信条を容認している)ところがある。

現政権は保守色が強いが、その正体はアメリカ仕込みの新自由主義が幅を利かせている。私はこの新自由主義が嫌いである。政治というのはベストではなくベターを選択するものであり、最もマシなバカに任せざるをえず、そして選挙とは「薬に化けるかもしれない毒を選ぶ行為」に他ならない。新自由主義を前面に出したいまの自民党が最もマシなバカなのであって、野党はそれ以下なのである。なんと悲しい現実であろうか。


さてアメリカであるが、これほど極端で反面教師に適した国家はない。日本にとって参考になる政策など皆無であろう。もうほんと問題点だらけで、なにが自由の国かといえば、民間企業が営利追求のためにやることが自由の国なのであって、悪魔と契約したのではないかという非人情さに満ち溢れている。アメリカで自由の国だと人生を謳歌する生活を送る人は富裕層だけであり、それ以外の人々は、ただ搾取されるだけの養分に過ぎない。そしてその搾取のシステムが実によくできている。義理や人情は一片も存在せず、全てをただ金に変換する悪魔的システムが構築されている。このへんはリベラル愛国者であるマイケル・ムーアの一連のフォルムに詳しい。まとめて言うと、現状のアメリカ社会の問題のすべての淵源は新自由主義の徹底およびマネーゲームにある。「Sicko」をみれば絶句すること必定である。アメリカは、傍目にウォッチングするには興味深くこれ以上なく面白い国であるが、同時に、絶対に住みたくないと思わせてくれる国でもある。

全然この本の紹介をしてないじゃないかと怒られそうなのでこの辺でやめる。

本書では、「アメリカにゃあ絶対に住みたくない」国であることが、尋常ならざる医療費(介護費・介護負担)と保険制度の面から語られる。著者は日本人だが、おそらくアメリカが好きなのだろう。だからこそ、大好きなアメリカを憂いているのである。マイケルムーアと同じだ。そして、日本の国民皆保険制度が奪われずに存続されていくこと、医療現場の歪みがなくなることを切望している。

本邦の国民皆保険も、その制度の維持の上で様々な病根を抱えるが、たとえ問題があったとしても、国民皆保険制度があることがどれだけ幸せであるかは国民全員が理解しておかねばならない。どんなに優れたものを持っていたとしても、その価値に気づかなければ隙を作ることになり、狙っている連中に掠め取られてしまう。国民皆保険制度が崩壊した後に残っているのは、いまのアメリカの姿である。

ときおり、「アメリカ並になった」と、あたかも先進的なニュアンスを込められた例えを耳にしたりすることがある。もうお分かりのことと思うが、ここに好意的な意味はない。「地獄の一丁目に足を踏み入れた」がせいぜいのところである。「アメリカ並」でいいのは、人生を楽天的に生きるしたたかなポジティブさとか、大排気量OHVエンジンの底抜けのロマンとか、ステーキ肉のサイズぐらいのものだろう。それ以外は申し訳ないがNG。
 
新書だし読みやすい本なので2時間もあれば読める。ご興味があればどうぞ。
 
posted by ぎゅんた at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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