2015年11月13日
私とマニーの手用Kファイル
手に馴染むから
手用ファイルは、マニーのKファイルを愛用している。
他社製品への検討を兼ねて色々と触ってきたが、マニーのKが最も手に馴染む。相性が良い。SEC1-0にそのまま使用できる拡張性も良い(私はまだ所有していないが)。コストは中庸。国産。
いままで参加してくた限りのエンドの講習会では、どこの手用ファイルがいいと名指しはなかったものの、空気読むとジッペラーが推奨されていた気がする。しかし、少なくとも私が色々と使用してきた結果、現時点でのベストはマニーのKファイルである。加えて、この評価は特に#08Kと#10Kで不動である。
根尖へファイルを到達させろ!
感染根管治療においては、前医がネゴシエーションできていなかったり根尖部レッジがあったりすることが多い。すんなりネゴできないのが普通である。だからといって、ネゴシエーションさせないとやはり気分が良くないわけで、手用ファイルを駆使してなんとか根尖からファイルを通過させ、根管の交通を確認・確保したくなるのが歯科医の性である。
ネゴできない根管に対峙したときにまず念頭に浮かぶことは、
1.高度に石灰化している
2.レッジ等でファイルが引っかかって根尖に到達できない
3.GPが極めて緊密に充填されていてファイルをはじき返す障壁になっている
概ね、こんなところだろう。
たまにスーパーボンドでコアを適当に合着したのか穿孔部を塞いだのか知らないが、髄床底〜根管口がスーパボンドで埋まっていて眩暈と殺意を覚えることもあるが、幸い、そのようなケースは稀である。
高度に石灰化している根管は、単純に根管内部が石灰化物の添加で狭窄した隘路になっているなら、RC-Prepを付着した#08Kで押し引き(細かい上下運動)することでネゴシエーションできることがあるのでそれを狙う。ファイルは決して回転させてはいけない。
最初は「こんなの通らないって!無理無理無理無理かたつむり!」だった感触も、ファイルの細かい押し引きによって、次第にズッ、ズッ…と少しずつファイルが根尖に向かい始める感触が得られればしめたものだ。この時、ファイルを引き抜くときは食い込んでいるようで抵抗があるはずだ。そのまま少しずつ少しずつ、ファイルを進めていく。根尖付近まで到達したら初めて、ファイルを僅かに回転させて穿通を狙っても良い。
ファイルが根尖方向に向かっているけど、引き抜く時にファイルに抵抗がなかったり、EMRが、RootZXでいうところの、3.0以下にメーターが触れなければ完全な石灰化で根管が閉塞されているものと判断する。ファイルが到達するところまで水平拡大して、根管洗浄して根充になる。
根尖部にレッジがあることが考えられるならファイル先端にプレカーブを付与して根尖への道を探索することになる。どこかに本来の根管いファイルが落ち込む方向があるはずなので、それを探すのである。プレカーブをつけた#08か#10のKファイルを主に上下方向に動かして探す。ファイルは根管内では回転させたくない。ファイルを抜いて、カーブの方向を変えて、また探すことになる。かなり根気のいる作業である。ある程度の力を加えて穿通が可能なこともあるので、様々な方向に、強弱の緩急を組み合わせて探る。ファイルがどこかに食い込む感触が得られればウォッチワインディングで穿通を狙えたりするのでチャンス到来だが、そう簡単にはいかないの普通だ。エンドの達人は、この作業の嗅覚が鋭い。「あかない根管を」をあけるのは一種の職人技である。患者にとってみれば根尖を器具で触られて痛い思いをしたり、術後疼痛につながることもあるのでとくに感謝もされないことは皮肉である。
なお、「マニーのKファイルだからあけられる」という感覚はない。ただし、ネゴを狙って根管内と根尖部に何度も立ち向かってファイル先端がへし曲がり始めたり、金属疲労が蓄積してボロボロになっていっても、破折しないでくれるだけの妙に頼りになる強度を私は嬉しく感じている。記事冒頭の写真がそれである。折り紙のように根尖部で曲がっても、破断せずに根管から還って来る。この物性に依存して、乱暴なファイル操作をするべきではもちろんないが、破折しにくいファイルを使用しているという信頼感がある点が嬉しいのである。
硬くミイラのようになったGPは、GPソルベントやユーカリソフトで溶解除去を狙うこともあるが、ゲイツドリル等で機械的におおまかに除去したあとに#15Kファイルで穿通を狙うのがベターではなかろうか。根管壁とGPの間にファイルが入ればいいのである。このときは#10よりも#15のほうがコシがあってやりやすい気がする。
エンドチップで除去するのも良い方法だが、マイクロ下でないと除去の確実性はイマイチである。
この記事へのトラックバック
ネゴについては、完全同意致します。ワタクシはSEC使うので、チョット楽ちんですけど(笑)でもSECは抜髄でしか使わないので、リトリートメントが多い我が臨床では、出番が少なく、悲しいです。
GPソルベントは、ないよりましな装備の認識なので、当院の在庫のやつがなくなったら、次はクロロホルムかユーカリソフトかに変更を考えてます。でもあまり出番がないので、数年後かもしれません。GPの除去には溶解剤を使用することよりもマイクロ下での術者の手技の方が遥かに効果的です。持ってないくせにこんなこと言っても説得力ありませんけど。
SEC1-0は、注水下でのラスピング運動での根管拡大ができるのがいいですね。リトリートメントの時も使えそうな気がしますが、実際には使い所があるのですね。
ところで、抜髄時のネゴの時は、根管に初めて挿入するファイルをSec1-0で行うということでしょうか。それでネゴシエーションが達成できるなら、SEC1-0は素晴らしいです。拡大も兼ねるのでグライドパスもバッチリでしょう。つまり、コストが高くつくプログライダーを端折れるわけで、羨ましい話だなと…
いえね、つい最近、「プログライダーさん行方不明事件」があって、なくなく追加注文して5千円がすっ飛んだもので…
それはそうと、SECは初めての挿入で僕は使います。僕がリスペクトする清水藤太先生がそのやり方なので。これで穿通させ、のちに続くゲーツドリルの道しるべとするのです。でも、前にこれでFBにて議論になったのですが、ゲーツで根菅口を形成してからSECだという先生もおられ、これはまあ、好みの問題かと。
まあ、初めての挿入で使用するのですから、優しく、濡れ濡れで使用してください。・・・すなわち注水下での使用は必須ということですww
たいてい、何気無いタイミングで、返却してくれるので、年末の大掃除ぐらいにポロっと出てきそうな気がします。
清水藤太先生は、とあるご縁で知り合った先生に「エンドが好きな先生なら、とてもどころでなく勉強になるから、フォローしなよ!」と紹介を受けました。あまり表舞台に立たれない先生のようですが、世界トップクラスのエンドドンティストであることは間違ありますまい。俗な表現をすれば、日本の誇りです。
最近、サーモメカニカルオブチュレーションをCWCTに切り替えていくべきかと思案しているのも藤田先生の影響です。悪くはないのですが、抜去歯牙で何時トライしても根尖部の緊密な封鎖が怪しいのが払拭しきれないので。臨床上は問題ないのですが。
あと、この手法だと再治療になった時のガッタ除去が楽なのはとてもいいのですが、意地悪く考えると、見た目ほど緊密に根尖部に充填されてないのかなとも思ったり。
私の愛するデンツプライがそろそろ上市すると噂のサーマフィルの新型をみて最終判断待ちです(あと、機材購入費の貯蓄…)
自分のことばっか語ってすみません。
いつもありがとうございます。
>我々GPは自分で納得のできる許容ラインを決めてやらざるを得ない
本当にその通りですよね。そして許容ラインは常に微妙に変化し続ける。
臨床医の治療はいつも成功するわけではありません。自身の臨床結果を冷徹に再考・考察していくわけですが、納得の出来る許容ラインを決めていないと、判断基準すらもてなくなりますものね。
返信が遅れて申し訳ありませんでした。
私事ながら、悪性の風邪をひいて連休前から寝込んでいました。ちなみに親父経由ですアンニャロ