2015年01月17日

パックマック法の手順

みいたんの肉球.jpg
オブチュレーションガッタの色もピンクです

パックマック法(仮称)の具体的な手順を記事にして下さいとのメールがあった。
あくまで現時点の私が行っている手順ではあるが、と前置きの上で以下に記そう。

使用しているもの
1.ユニットの等速コントラ
2.ヨシダのパックマック(#25の21mmと25mm)
3.東洋のオブチュレーションガッタ(ソフト)
4.ストッピングキャリア
5.AHプラスジェット
6.ブローチ
7.17%EDTA
8.ビーブランドのキャナルクリーナー
9.ペーパーポイント(#30/#45/#60)

簡単に説明すれば「根管を洗浄して乾燥させたあと、シーラーを塗布した後にオブチュレーションガッタソフトをパックマックで送り込む」ものである。

細かくみていくことにしよう。


1.
当院のユニットはモリタのスペースライン630である。コントラ回転数は三段階に調整できるが、これはMAXで非注水で用いる。なお根充時にガッタの不要な冷却は無視したいので、本来はエアもカットさせる必要がある。ただ、スペースライン630はエアーのカットができないので、止むを得ずエアーありで行っている。新しいユニットを買うなら、エアをカットできるタイプにしたいところだ。

2.
NTコンデンサーとの違いはテーパーにしかないが、練習で触れた限り、パックマックの方が手に合っている感じがしたので選択。好みの問題。

3.
昔から垂直加圧根充に用いられている実績のあるGP。純度が高く、根尖より溢出しても最終的に吸収される。

4.
東洋が発売しているオブチュレーションガッターキットのヒートキャリアやホットスポットなどの専用器具を用いるべきであるが、なんだかんだストッピングキャリアが滅菌も利くので代用として使用している。根充直前に火で加温し、パックマック先端にGPを付ける。使い勝手はよくない。

5.
垂直加圧根充では、シーラーを含め根尖からの溢出が少なからず認められるので、組織刺激性が小さい方が良い。ユージノールを含有するタイプのシーラーを用いて垂直加圧根充すると痛みを訴えるケースが多い。この痛みはユージノールに起因する一過性のもので、一週間程度で収まるのだが、痛みを訴えられるのは分
理解してはいてもストレスである。AHプラスだと痛みがないわけではないが、経験上、軽度で済む。また、AHプラスは熱による硬化促進や次亜塩素酸の影響を受けないこと、非ユージノールであるからレジンの重合阻害も起こさないことも魅力的である。

6.
ブローチは、ブローチ綿栓根管内を拭き上げるために用いる。ブローチ綿栓は滅菌が望めないことから現在では否定された手法だが、それは根貼や根管乾燥用いる場合であって、キャナルクリーナーを付けた綿栓で根管内を拭き上げる行為は否定されまい。ペーパーポイントで拭き上げるのはどうしても力加減が難しく頼りないのである。

7.
ブローチ綿栓で拭きあげた後に、EDTA、次亜塩素酸ナトリウム、EDTAで根管洗浄を仕上げる。次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、過去の経験から事故が怖いので、私はキャナルクリーナーを愛用している。一回目のEDTA洗浄の後、キャナルクリーナーを根管内に満たし、最低でも1分放置する(この間に根充の準備)。

8.
ペーパーポイントで根管の水分をとり、根管乾燥とする。号数分を用意するとコスト増加なので、30.45.60の三種類を用いている。

9.
AHプラスをペーパーポイントに少量とって、根管内に塗布する。

10.
パックマック先端に加温軟化させたオブチュレーションガッタを少量とって、根管内に輸送、フットペダルを踏んでガッタをフローさせて充填する。回転数は3000-4000rpmぐらいであろう。ペダルを軽く踏み、送り込んだ瞬間に少し踏み込んで回転数をあげて根管内からパックマックを引き上げる。ストッパーは作業長マイナス0.2mmに合わせる。オーバーにビビって作業長マイナス1mmにするとアンダーになりがち。このへんは術者に依る感覚的な世界だと思う。

11.
プラガーで加圧する。

12.
確認デンタルを患者さんに見せながら、根充後の不快事項について充分に説明する。



他、注釈
・AHプラスジェットはシリンジタイプであり、一回使用量がどうしても多くなるので、無駄な消費を嫌う場合はチューブタイプを選択するべし

・EDTAは濃度17%でpHが中世に近いものがよい

・根管の乾燥に排唾管を利用した根管内バキュームが有用だが、スペースライン630には排唾管がない…

・プラガーでの加圧の際に、SYSTEM B等を用いてダウンパックすると、根尖部の三次元的な充填を実現する上で効果的かもしれない(未検証)
 
posted by ぎゅんた at 01:07| Comment(4) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめて
パックマックやNTコンデンサーは17、8年前に使用してましたがあまり予後がよくなくすぐに使わなくなりました

エンジンでコンパクションする際の根尖部の内圧はかなりのものと推察されますから知らないうちにクラックが入っていたのかな?といまは考えています

歯に優しく尚且つ確実に封鎖できる材料が出てきて欲しいと願っておりますがなかなかですね、、


Posted by さるきち at 2015年02月10日 22:12
さるきち先生
コメントをお寄せいただき有難うございます。

歯に優しく確実に封鎖できる材料の登場は歯科医の悲願ですね。今のところ最良の根管充填剤の歯髄を根充するなんて夢のまた夢なので、我々はいかに根管と根尖部の交通を遮断させられるかで悩まされるわけです。

根管内の有機質を機械的化学的に除去し、微小の残存細菌ごと封鎖して不活性化させる。そのためには、根管洗浄と根管充填に相応しい「器造り」も求められるわけで、冷静に考えると、ほんにもう狂気の世界というか、歯科医師しか触れることの出来ない聖域の孤独な戦いというか、エンドはホント不可思議です。

歯に優しく確実に封鎖できる材料は、今のところMTAセメントが最も有力な候補ではないかと思います。生体為害性の無い無機材料はツボに入ると強力なのです。MTAは保険で使えないので私は触ったことありませんけど…穿孔部の封鎖にはこれ以上の材料は無いと思うので使ってみたいんですけどね。いいわけがましいですね。
Posted by ぎゅんた at 2015年02月11日 00:28
MTAは根尖孔が広いようなケースの根充には良く使用しております
確かに治療成績は優秀ですが再治療がほぼ不可能になるのが泣き所です

無圧的にしっかり封鎖できて尚且つある程度容易に除去できる根管充填材、、早く開発されたら良いですね
Posted by さるきち at 2015年02月11日 21:43
さるきち先生

感染根管治療の成績不良の原因の多くが根充材の除去(の困難さ)にあると思われますので、除去できる時は簡単に除去できる根充材は欲しいのですが、現実的には難しいおでしょうね。そうでなければ、根尖切除-逆根充(MTA)への転身や、再根治(感染根管治療)はせず抜歯-インプラントに移行する趨勢はこのままだろうと思います。

日本に限っていえば、抜かずに治療して残して行くのが尊ばれるのは変わらないと思いますが、予後不良ならあっさり抜いてしまって歯槽骨のダメージを抑えてインプラントにするのも当然かなとも思ったりします。
Posted by ぎゅんた at 2015年02月12日 11:07
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