2024年02月26日
日本歯科医師会雑誌は勉強になります
今月の日本歯科医師会雑誌は、個人的に興味のあるトピックについての質の高い記事が多く、かつ「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」をわかりやすく要約してくれた資料まで付属しており欣喜雀躍した次第。神回ではなかろうか。
思うに、日本歯科医師会雑誌は毎月毎月、格式の高い学術記事を会員に提供してくれるありがたい存在である。もっと評価されるべきである。日歯会員になると当たり前のように毎月受け取ることになるからありがたみが薄いのかもしれない。商業誌の方がキャッチーで臨床家向きの情報が掲載されていると思いがちになるかもしれない。
開業医は商業誌から情報を仕入れる向きがあると思うし、かつては私もそうしていた。
しかし、ここ数年は商業誌を買うのをやめた。
日本歯科医師会雑誌を読めばかなりの勉強になると思いいたったからである。
ビニル封を解くまでもなく商業誌を机に積んだままにしている、というスタイルと袂を分かちたかった。
それでなくとも安くない年会費を収めているのだ。これは読まねば無作法というもの。
大切なのは情報の仕入れ先を手広くすることではない。
新しく得た情報を上手に頭にアップデートして自分の臨床を豊かにするよう行動することである。歯科医師は現役でいるかぎり、勉強し続けなくてはならない。勉強を通じて歯科医師としてのレベルを向上させていくことに成功させなくてはならないからである。
自分を頼って歯科医院の門をくぐってくる患者に常に最良の診療を提供できるよう尽くす気持ちを持ち続けていたいものである。
2024年02月25日
囲碁とか、どうやって勝つのこれ
百田尚樹『幻庵』を読み、思うところあって囲碁を打ち始めました。
碁盤上に石を打ち合うことで意識がまるで夢の中に入り込むような幻想的な体験ができるというのは魅力的だと思ったからです。
私は囲碁はおろか将棋すら満足にさせないし詩も詠まないし茶道もしらない。社会生活上の礼儀作法にしても疑問符がつくような振る舞いをする、およそ文化的素養のない凡夫。囲碁は歴史的なボードゲームであろうけれど、私はボードゲームなどオセロが少しできるくらいで、カードゲームとかポーカー麻雀とか、そういうのも全く遊ぶことができない。まことに不調法なのであります。
元来が無責任で能天気なので、そんなの知らんくとも生きていけるわい、娯楽ゲームを嗜めない身といえ世はこともなし、と虚勢を張って生きてきました。ただ、40も過ぎたおっさんの心にはコンプレックスが鬱屈しているのも事実でありまして、良い機会だから囲碁のお稽古だと思いねえ、と囲碁の本を手に取り、日本棋院監修のアプリ「囲碁であそぼ!」のインストールを機に囲碁に触れ始めました。自分自身の文化度が上がったような気がして嬉しい気持ちになりました。囲碁は、基本的なルールを理解することは難しくありません。ひとまず囲碁は、すぐに打てるようになります。
向き不向き、才能の有無など気にしない
囲碁が強くなるには、なにより子どものころから囲碁に触れる必要があるとか、囲碁にはハッキリと向き不向きがある(向かない人は遊ばない方が良い)とか、そういう評価が巷間にあるようです。多分、本当のことなのでしょう。しかし私はプロ棋士になるような強さを得ようとは思わないし、向いていないにしても囲碁の楽しさを味わえるほどには嗜めることはできるはずだと考えました。囲碁の向き不向きとは、プロ棋士になれる人物かどうか、ぐらいの、高度な領域での選別さをいうに違いないからです。そんなに敷居が高いゲームだったら、囲碁はとっくに廃れて、歴史から姿を消しているでしょう。
さて『囲碁であそぼ!』は対局は九路盤までで、十三路盤では対局できない仕様っぽいので物足りなさを感じました。本来の十九路盤は広すぎるので、まずは十三路盤で修行していきたいと考えたのです。
適当に探すと『みんなの囲碁』という無料アプリが見つかりました。これはFireOSでも動くので、出番がなくて暇を持て余しているFireHD10有効活用ができます。対局相手も対人とCPUが可能です。残念ながらオンライン対戦はできません。でも、これで十分です。CPUの棋力は14級〜三段まで選べます。囲碁の棋力がどのようなものかは皆目分かりませんが、挑戦しがいのある難易度設定がなされている、とはいえましょう。よおーし、やってやろうじゃねえか!
結果
13路盤コミ6目半で棋力14級のCPU相手に100戦100敗しました。私は胃が痛くなった。というか負け続けるストレスで髪の毛が落ちました。あまりの勝てなさ具合に激昂してFireHDを机に叩きつけてぶっ壊してしまう寸前でした。こんなUncontrollableな怒りを感じたのは歯科医師国家試験の勉強に追い詰められて精神的に不安定だったころ以来のことです。
なぜ勝てないのか?どうすれば良いのか?
囲碁は勝負事なので勝てば嬉しいし負ければ悔しいものです。負けて怒るのは、それだけ真面目に勝利を目指して打ち込んだから…とはいえ、目の前の勝ち負けに拘泥するのは上達のことを考えれば望ましい姿勢とは言えません。投資もそうで、勝ち負けで考えるのは非常に短絡的で底が浅い仕草です。毛並みの悪い投資家というやつです(勝ち負けにこだわるのはギャンブラーであり投機家であって投資家ではない)。
囲碁は大局観という人として重要な視点を育てるゲームである、と本に書いてありました。戦略的な思考を育てるこで、将来の展望を見据えながら複雑な問題を処理することができるようになる、と。勝てても負けても、なぜ勝てたのかを確認したり、勝敗の要因分析をしたり、よりスマートな打ち方はなかったのか考究することが前向きで良いものです。そうした知的な振り返りは、自身の成長を促したり成長を実感できることにつながるので、より囲碁を打つことが面白くなるのです。勝ち負けよりも、成長を楽しむ姿勢が良いと言われる所以です。
さて100敗した私は現時点で後顧するに、成長なんて微塵も感じておりません。
囲碁の面白さってなんだよ、一番易しい対戦相手にまるで勝てないのに成長もクソもねえよって感じです。
自分なりに、なぜ負けるのか、どうやったらCPU14級に勝てるようになるかを分析すれば──
1.相手の石を囲んで取ることに夢中になって、結局は自分の石を易々と取られる状況になっている
2.最終的に地の多い方が勝つので、広い陣地を確保しようと石をつなげていくが、打ち方のどこかに誤りがたくさんあって局面を覆される
3.定石をしらない(基本的な棋力がない)
4.詰め碁を解いていない(基本的な棋力がない)
5.石の生き死にを理解できていない
※どんな初心者向けの解説にもあるような「相手が離して打ったら、自分も離して打つ」「自分の石にツケてきたらハネかノビ」は遵守して打っている(つもり)
おそらく、こんなところだと思う。
ただ、1-5がそこそこできるなら、CPU10級であろうと負けないのではなかろうか?
ひょっとして『みんなの囲碁』のCPUが強すぎるのではなかろうか?
囲碁に覚えのある先生は、よかったら試して欲しいところです。
「え?こんな弱い相手にどうやって負けることができるんだ?ぎゅんた先生には脳みそがないことが明確になった。失望しました。ブログ読者やめます」となっても、それは私の不徳の致すところ也。ぐぬぬ
そんなわけで、私は囲碁が打てる人から上達のヒントが欲しいのである
本来は囲碁打ちの人に教えを請うたり囲碁教室に参加したり碁会所にいって指導してもらったりするのでありましょうが、そのような環境にないのです。当面は独学でCPU相手に挑むしかない。
患者さんに囲碁打ちがいれば嬉しいが、ドクターが患者に「あなたは囲碁が打てますか?」と聞くのは度を超えた振る舞いに思える。待合室に碁盤と碁石を置いておけば、患者同士が対局を始めだして解決の糸口になるかもしれないが、接触感染にうるさい昨今なのでアイデアはお蔵入り。
実物の碁盤と碁石を用意して、過去の名人たちの棋譜をひたすら並べまくって体当たりで打ち筋を理解していくのが一番よい稽古かもしれない。盤上で詰め碁問題を解くのもよさそうだ、和室に置くと様になる図でもある。
⇒高級囲碁盤セット
高級すぎる値段に泣いた
2024年02月18日
やったぜ16%のホームホワイトニング・ジェル
ホームホワイトニングは、10%の過酸化尿素を含有するジェルをカスタムトレーを利用して歯面に密着させて漂白効果を発現させていく術式が一般的である。ジェルの作用時間は一日2時間を上限として1ヶ月の期間を要する。
実は、この方法で患者の求める漂白効果を得るのは難しい。効果が得られないわけではないが、弱いのである。少なくとも漂白期間中は、着色をきたしやすい飲食物の摂取を完全禁止するぐらいの厳しさが求められるであろう。修行僧じゃあるまいし、一般人が水と豆腐だけみたいな食生活を1ヶ月も継続できるはずがない。
1ヶ月でホームホワイトニングの結果を確実に出したとしたら、どうすればよいのか?
その要諦は、過酸化尿素10%のジェルを就寝時に適応することである。
つまりは1日5〜8時間の適応をすることである。こんなことは、ホームホワイトニングを手掛ける臨床医の先生方には常識であろうと思われる。メーカーの指示通りに「1日に2時間」の用途を守っている限り、目立った漂白効果は得られないのである。過酸化尿素の濃度が35%ぐらいなら2時間の適応で漂白効果が期待できるかもしれないが、国内ではそこまでの高濃度のジェルは流通していない(海外から個人輸入することで入手可能)。
ホームホワイトニングのジェルは、色々なものを試してきた。
最近ずっと使用しているのはオパールエッセンスPF15%である。
同製品には10%濃度、15%濃度、20%濃度、35%濃度のジェルがラインナップされている。
私が試したところ、10%と15%では知覚過敏様症状の程度に差がなかった上に15濃度の方が漂白効果が確実に速く得られると思った。20%では知覚過敏様症状の発現が有意に増す一方で漂白効果が15%の場合とそう変わらなかった。35%は漂白効果が速やかに発現するが、濃度が高すぎることから就寝時に用いることができない。日中2時間までを上限に使用するか、ホームホワイトニングに慣れた患者さんのタッチアップ用に用いる。案外に35%濃度のジェルは人気がない。
畢竟、15%のジェルを使用するのが当院でのスタンダードになった。
オパールエッセンスPFは、ジェルの容量が微妙に少ないことを除けば優れたホームホワイトニング用ジェルだと思っている。
果たして今回、アンジェラスのホームホワイトニングジェルが発売された。しかも3g大容量の16%濃度。
一本当たりの価格も約800円なので材料費に悩まされる臨床家の強い味方。
オパールエッセンスとの差異は、ジェルの稠度や顔料、知覚過敏防止のための添加剤の有無などであろうか。
ただこれは、漂白効果に有意な差をつける因子とは思われない。
いま在庫にストックしてあるオパールエッセンスPF15%を使い切り次第、さっそく使用していきたいところだ。
2024年02月11日
オフィスホワイトニングはいまだに苦手意識
歯の漂白は、私はオフィスホワイトニングから臨床経験を積み始めた。
私が研修医だった当時は、歯の漂白といえばWalking-Bleachingを指したし、それを超えたところにある術式としてのオフィスホワイトニングはといえば松風ハイライトが唯一存在していた頃だった。ホームホワイトニングは、メジャーではなかったはずだ(記憶にない)。
その松風ハイライトは、歯牙表面を脱灰させて白くしているだけで歯質へダメージを与えているだけだ(それに、思ったより白くならない)という臨床評価が定まっていた。Walking-Bleachingは安定した漂白効果を示すが、オフィスホワイトニングは結果が不安定なのだ。だから、人気がなかった。結果が出にくい処置を自費診療で行うのは心理的にストレスが大きく楽しくないものだ。
保存科に在籍していたこともあって、歯の漂白は周囲の人たちから確かなニーズがあったし、個人的な関心もあった。なんとか歯を白くしたい。そういう気持ちがあった。しかし、どうすればいいのか。ホワイトコートとかいう、歯塗る白いマニキュアみたいなアプローチはとりたくなかった。
その後、ピレーネという商品がモリタから発売されていた記憶がある。こちらは歯質ダメージを抑えつつ歯を漂白させる設計を謳っていた。欣喜雀躍、大期待のマインドで使ってみたが、全く漂白効果は得られなかった。私は胃が痛くなった。俺は臨床センスがないのではないか?
オフィスホワイトニングには、メーカーが指示する手順の中に、なにか臨床的なヒントが隠されており、それ見つけないと結果をだせないのではないか。私はそういう仮説をたてて、自身や同僚を被験者にしてオフィスホワイトニングを繰り返して施術経験を積むことにした。
ピレーネ10分x3回を1セットとして3日に分けて3セット行うと、歯はわずかに明度を上昇させる漂白効果(第三者の目見て白くなったことが分かる)を見せた。しかし、漂白効果の範囲は上下3-3に限られるし、なにより労力の割にこれではコストパフォーマンスが悪すぎる気がした。それもこれは、普通の光照射器ではなく、波長を紫外線領域に近づけた特注の光照射を用いての結果であった。得られた結論は、光照射の波長は紫外線領域に近づけた方が結果が出るということであった。ただし、皮膚にあたると日焼け効果がでるリスクがあったので取り扱いは慎重になる。
その後、漂白ジェルに触媒の二酸化チタンを加えたり、化学反応を増強させるために温度を上げる工夫をしてみたりしたものの、目立った改善効果の手応えがなく、落胆してしまった。
海外の歯科材サイトを利用して、高い効果が期待できるオフィスホワイトニング用材料(ブライトスマイルとかオパールエッセンス・エクストラブーストとか)を取り寄せる手もあったが、使用材料を海外製に変えて有意な改善を期待する熱意もなくなっていた。というか、オフィスホワイトニングに飽きてしまった。
そして、当時は入金しても商品が届かない悪質な詐欺サイトが横行していたので購入にはリスクが伴った。実際、私は数万円をフイにしてしまった経験がある。爾来、海外の歯科材料を買うのは信頼のおけるスマイルUSしか利用していない。
現在のところ私にとってオフィスホワイトニングは、ホームホワイトニング前の「助走」として用いるものになった。これは、短時間での歯の漂白を特に期待するものではない。漂白対象とする歯牙に過酸化水素の漂白効果を与えることで、ホームホワイトニングの効果発現を少しでも早くするためのものである。幸いして、これは効果がある。
2024年02月01日
うおおアネジェクトU最高!
修理に出していたアネジェクトUがようやく帰ってきた。二か月ぐらいを要した気がする。コノヤローこいつ〜
使い込まれていない中古品のような外観になっており、ぶっ壊れて滲んでいた液晶部は鮮明で、スイッチのセンサー感度もばっちぐう(死語)である。小さすぎず大きすぎず、重すぎもしない慣れ親しんだ重量感が掌から伝わってくる。
早速、局所麻酔で役立ってもらった。かつての使い慣れていた感触がフィードバックしてくる。気分が高揚する。やっぱこいつは診療のパートナーって感じなんである。
さてこのアネジェクトU、もう新品で購入することはできない。
修理対応も、もうサポートが切れてしまうようだ。
次に壊れてしまったらどうしたらいいのだろうか?
そこは心配無用で、同じデザイン思想を受け継いだペン型の電動麻酔注射器をモリタが用意してくれているのだった。
⇒ニプロジェクトペン
ちなみに音楽は鳴らないようだ。
不評な機能だったのだろうか?俺は気に入っているのだが…