2023年05月12日

贔屓の技工士さんにサブスクしたいっ

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最近の動画のライブ配信では、配信者に対してリアルタイムでサブスク(投げ銭)をすることができたりする。サブスクをすると、コメント欄に「○○さんが✖︎✖︎円のサブスクをしました」みたいな通知が出るようになっていて、サブスクに気づいた配信者から謝辞やコメントがもらえたりする。配信者側はお小遣いが貰えて単純に嬉しいし、サブスクした側も特別な好意を持つ相手(推し)から特別な扱いを受けるわけですから嬉しいわけである。使い古された表現ですが win-win な関係というやつである。

これらをして私が思いついたのは、いつもお世話になっている歯科技工士さん(以下、テクニシャン)にサブスクができないものだろうか?ということである。

納品された歯科技工物が極めて良好な出来でセットできたとしたら、これを作製してくれたテクニシャンに「良いね!」したくなるのは、SNS全盛な世の中であることに関わらず人情というものであろう。

当院ではまだ導入していないが、口腔内スキャナーによるデジタル印象が一般化してくれば、歯科技工所との連携はより効率的になっていくだろう。歯科医院と歯科技工所との関係も濃密になるのではないか、と思う。従前の技工指示書にドクター側が文章で注文をつけている段階から、作成してくれるテクニシャンとオンラインで打ち合わせも可能になっているからである。リモートワークは、当然のように歯科医療現場でも活用できる(ただ、テクニシャンは奥手な人柄の方が多いと聞くので嫌がられるかもしれない)。

顔が見えている相手に気合の入った技工物を作ってもらえるというのは、臨床上、歯科医師冥利につきることであろう。これは良い流れのように思える。

我々は送られてくる技工物をセットするだけではなく、その先の、技工物を作成してくれたテクニシャンの存在を忘れてはいけない。自分で歯科技工物を作製するのであれば話は別かもしれないが、今時、そのような歯科医師は絶滅危惧種であろう。

技工所との付き合いによっては、自分の技工物は決まったテクニシャンが担当になってくれたりする。その場合、言葉だけではない謝意を伝えるべきではないかと考える。寸志というやつである。

しかし、いくら寸志といえど相手が恐縮するほど高額であってはならない。色々な面で迷惑をかけるからである。受け取る側が負担に思わず、嬉しさだけを素直に持ってもらえるようなものが相応しいと考える。

このあたり、急ぎの場面でタクシーを拾って命拾いならぬタイム拾いをしたような場合、会計時にわざと釣り銭が出るような支払いをした上で「お釣りはいいですので、運転手さんが取っておいてください」と言って立ち去る昭和的な男のマナーに通じるものがあると思う。ほんの数百数十円だけれども、もらう側は棚ぼた的な嬉しがあるので気分も良い。遠慮のいらない額だからこそである。次の客を拾ったタクシーは、気持ちの良い接客をするだろう。客も、良いタクシーを拾えたと気分が良いに違いない。小さな善意が転がって世の中が明るくなるのである。

まあこれは書生論に近いものだろうが、テクニシャンに小さなサブスクをすることが悪いことであるはずもない。

現状、素晴らしい技工物を気持ちよくセットできたからといってテクニシャンに「良いね!」することもサブスクを送ることもできない。IT全盛なのだから、本来は指先ひとつでできてもよさそうなものだ。でも、できないので仕方がない。私は、石膏模型と指示書を受け取りに来てくれる担当者に言伝のように頼んでいる。贈り物は500円のQUOカードがせいぜいである。なんらかの折にQUOカードを入手することがあるのだが、あいにく私はコンビニを利用することがないのでこれを使うアテがない。そこで嫁や友人に渡すことが多いのだが、その送り相手にテクニシャンが加わるだけである。なんの意図も気負いもないのである。

もっとも重要なのは、正確で美しい作業用模型を提供することである。

しかし、怠惰に生きる私はその使命を充分にこなしているとはいいがたい。そんな私の不調法をカバーしてくれるような素晴らしい技工物を納品してくれるテクニシャンにはいくら感謝してもしきれないのである。
 
posted by ぎゅんた at 16:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする