2022年12月23日

なにっメタルインレー修復

隣接面う蝕の治療といえばメタルインレー修復、そういう時代がありました。学生実習でも、隣接面う蝕の治療として間接法のメタルインレー修復を習ったものです。もう少し前の時代なら、窩洞に軟化させたインレーワックスを圧接してパターン採得して埋没・鋳造に回していたのかもしれません。

今はもっぱら、隣接面う蝕の治療の第一選択は接着性レジンを用いた直接法でありましょう。窩洞の大きさもその修復法も、全てはう蝕の大きさに決定づけられますが、接着性レジン修復の歯科材料としての向上とテクニックの発達によって、かなりの規模の窩洞であれ直接修復が可能になったように思います。それが無理ならCRインレーおよびCRアンレー修復でしょうか。保険診療で可能だからです。もっとも、私の拙い経験での所感では、CRインレーはメタルインレーよりも臨床成績は劣ります(脱離では破折してくる)。修復物が歯に対する人工臓器と考えるならば長期的に安定して機能してもらわないといけませんが、CRインレーはどうもそのへんの信頼感がないというか、安定性に欠けるからです。セラミックインレーは臨床経験が全然ないので偉そうなことを述べることができません。


とりあえず昨今はメタルフリー修復時代といえます。
週刊ポストあたりが歯科バッシングを目的に「金属性修復物は必ず二次カリエスを起こしてダメになる」みたいな論旨でかつ接着性修復を絶賛していた記事を出していたことがありますが、メタルインレーが二次カリエスの発生源だと思って治療している歯科医師は少ないと思います。

教科書通りに作成されたメタルインレーは、窩洞に吸い込まれるようにフィットします。実習であれ研修医時代の症例であれ、どんな歯科医師であれ「自分が形成した窩洞に見事にフィットするメタルインレー」の経験はあるものです。一方、CRインレーはなぜかあまりこういう動態をしない。隣接面窩洞を含める直接法の接着性レジン修復では、歯質とコンポジットレジンの境目にギャップがないかを強く腐心することはあれど、フィッティングについては意識しません。このときに意識することがあるとすれば、軟化象牙質を取り残さなかったかどうか、修復処置を始めてもよい口腔内の衛生環境であるかどうか、だと思います。

いずれにせよ、メタルインレー修復が将来的にニ次カリエスを起こすのだとすれば、インレー窩洞の形態に固執するあまりに軟化象牙質を取り残してしまったか、術者の口腔内う蝕リスクの見誤りが原因であるはずです。ここを誤ってしまえば、たとえ週刊ポストに礼賛される接着性修復であれ二次カリエスを生じることになります。根管治療でもそうですが、除去すべき軟化象牙質を取り残してしまっていることで良い結果が出せていないケースは少なくないようです。

もっとも、口腔内の歯科用合金はイオン化傾向うんぬん腐食うんぬんがありますし「銀歯」としての患者ウケの悪さも自覚しております。また、昨今の金銀パラジウム合金の価格高騰もあって、積極的に選ぶ修復技法ではありません。この人は咬合圧が強くてコンポジットレジン系では破折するな〜とか、患者さんが銀歯大好きマンだったとか、直接法コンポジットレジン充填をするには窩洞が浅くて広範囲とか、条件が揃ったときに検討します。

とまあ、こんな駄文を垂れ流していることからお分かりのように、メタルインレー修復は私のお気に入りです。
学生時代に歯科理工学と保存修復学でメタルインレーの理論を学んだ時、材料の効果膨張だの収縮だのを見事に計算して作り上げていることに感心した覚えがあります。埋没時、スプルー線にゆだまり付与の工夫とかにロマンを感じたものです。


※ボカした表現をしているのは、私はいまだに歯科金属アレルギーに対する明確な知見や指針を打ち立てられていないからです。オススメの教材があれば教えて下さい。免疫学は学生時代から苦手だったんじゃ…
posted by ぎゅんた at 17:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする