2022年02月18日

FANTAの「AF F-ONE」

fanta.jpg

愛用し続けているNiTiファイルは絞られてきました。いつものやつです。

・プログライダー(デンツプライ)
・バシロジック(BSAサプライ扱い)
・Waveone Gold(デンツプライ)
・AF F-ONE(FANTA)


であります。

以前はこの「私のお気に入りNiTiファイルリスト」にEdgeendo社のEdgeTaperEncoreがダントツNo1の勢いで君臨していたのですが、事情はよう分からんが生産をやめてしまいました。

バシロジックはその後継に使い始めました。
コストやファイルの切れ味、操作感のトータルバランスに秀でていて愛用し始めてるトコ。
バシロジックで拡大形成を終えた時に、もう少しテーパーが欲しいなあと思ったらWaveoneGoldで形成を仕上げて根管洗浄して、規格対応GPで根充します。

さて最後のAF FーONE、これは上海のFANTAというメーカーが製造・発売しているNiTiファイルです。
FANTAのことをどこで知ったかは覚えていませんが、なんだかんだ個人的な関わりもあって贔屓にしている会社です。AF FーONEだけでなく、様々なラインナップを取り揃えていますが、どうにもジェネリック・ファイルの域をでないものが殆どです。その中にあって私のお気に入りがAF FーONEなのです。これは刃部が半分フラットなユニークなデザインになっているにも関わらず鋭い切れ味があり抗破折性を有し、debrisが歯冠側に排出されます。先生方が使い慣れているロータリー系NiTiファイルで、特別な回転数やトルク設定もありません。多くの先生方はすぐに導入できる汎用性があります。確かな技術力を感じさせてくれるのでお気に入りなのです。

私が所有しているのは20/.04、25/04,25/06、35/.06です。メーカーサイトで紹介されているエッセンシャルキットが欲しくて仕方がない。多分、プログライダーは不要になります。



つい先日、FANTAの営業の人からFacebookを通じてメッセージがきて少し話をしました。
日本のマーケットにも進出したいと考えているとのことでした。

あくまで私個人のアドバイスとして……

私自身が購入したいから、AF をぜひ売って欲しいこと
日本の多くの歯科医院は歯科材料を通販業社を利用して購入しているので、その中の大手の会社に打診をしてみてはいかがだろうということ
日本の歯科医師はコスト意識に敏感なので、円安や輸送コストの問題はあれど、価格を下げてくれることは絶対であること

を伝えました。

もし私が利用するCiメディカルでAF FーONEが安価に購入できるようになればいうことはない。


FANTA Dental.inc
ラベル:AF F-One
posted by ぎゅんた at 23:53| Comment(7) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月14日

メタルボンド慕情

私は、金パラや銀合金の鋳造冠は好きではないが、金合金の鋳造冠(ゴールド冠)は好きである。ハイブリッド冠やジルコニア冠は好きではないが、陶材焼付鋳造冠(メタルボンド)は好きである。

昨今、このふたつの冠は「昔の時代の自費の被せ」とか「枯れた技術」とか言われる向きがあるようだ。確かに、私が歯科医師として働き始めた頃には、自費の修復物・補綴物はセラミックが流行っていて、メタルフリー修復の新時代を迎え入れていた頃である。ゴールド冠やメタルボンドは歯科医師の間でもウケの悪い空気が流れていた気がする。接着歯学の臨床現場への普及に伴って、メタルフリー更に加速していった気もする。銀合金や金パラを使った金属修復は「所詮ホケン」の「時代遅れ」な妥協的な技法であり、保険診療にはあたらないにしてもゴールド冠やメタルボンドもまた、古臭い、これ以上の進歩のない妥協的な技法であるとみなされていた。

“Confidence in Motion” は富士重工(スバル)のブランドのキャッチコピーであるが、この confidence は「信頼」という意味である。私には、ゴールド冠やメタルボンドは歯科臨床において信頼のおける補綴物に見える。ここには今も昔も関係ない。確かに古いけれども、実績のある技術に裏付けられ完成された補綴物だと思うのである。

私がゴールド冠とメタルボンドが好きなのは、個人的な思い込みにあるのではなく、歯科材料学の知見を上手に利用して成立しているからである。ゴールドが歯の修復物に向いている金属であることは、かつて金箔充填という技法があったように、金属の性格を考えれば自明のことである(しかしセラミックと違ってプラークを電気的に吸着させてしまう欠点はある)。メタルボンドは、金属の優れた強度と陶材の審美性を併せ持つが、焼き付け時にふたつの材料の熱収縮を計算ずくであるところに知恵と親しみを感じる。バッキングメタルがあるので透明性に欠けるのが決定だが、支台歯とは保持と合着で長期的にも脱離せず長持ちしてくれる信頼性は臨床医として変え難いメリットもある。安さが売りのエコノミーグレードのジルコニア冠に比べれば総合評価は比べるまでもない、と思う。

技工費の安さといえば、メタルボンドに関して思い出がある。
勤務医時代に、私が受け持っていた中国人のリーさん(仮名)である。小臼歯に痛みありで受診され、診断の結果、急性歯髄炎で抜髄になったのだが、歯冠補綴は本国に帰った時にメタルボンドを入れるから、治療は支台築造までで良いのだという。ひょっとして日本の安い保険診療を利用するハイブリッド診療か!と思い至ったが、たとえそうであれ、リーさんは日本の健康保険証を持って受診されている方なわけで、私のような木端の歯医者が国に対して意見することはなにもない。ちょうど中国の春節の季節であり帰国するとのことだったので、帰国して本国で冠をいれても不思議ではない。引き継ぎの治療になるから、バトンタッチする中国人の歯科医師に対して「これこれの理由で支台築造まで行ってあります。患者はメタルボンド補綴を希望しておられますゆえ、ご処置のほどよろしくお願いします。」というような内容の手紙を書いてリーさんに手渡した。その際に、中国ではメタルボンドはいくらなのか尋ねたら「こっちの価格で一万円もしないよ。中国、なんでも安いから良いヨ」と磊落に述べられたのが記憶に残っている。中国といっても広いし、リーさんが中国のどこで治療を受けるのかは知らないが、いずれにせよ日本のメタルボンドに比べれば格安なようである。俄には信じられないが、中国では医師の社会的地位が低いときく。追従して歯科医師の社会的地位も低いはずで、そうすると提供するサービスの価格も下がるわけであるから、中国では歯科治療のコストは低いのかもしれない。

さてそんなMade in Chinaメタルボンド、日本でも三和デンタルのような大手の技工所では扱いがある。実際に自分の両親の治療で使ってみたが、歯牙の解剖学形態の再現が甘いえうえ陶材の美しさに欠けるので、治療の質を求める先生方にオススメできるものではない。

リーさんの小臼歯に合着されたであろうメタルボンドが、果たしてどのようなクオリティのものであったのか、私は今でも気になるのである。
 
posted by ぎゅんた at 09:00| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする