2022年01月24日

ホイ迷惑電話、と

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とくに本文の内容と関係のないオシャレ画像

ここ1ヶ月ほど、診療中に「Googleマップのストリートビューで医院の写真を載せませんか」的営業電話が何度もかかってきておりました。こうしたセールス・コールに関しては、私は受付に問答無用でシャットアウトしてOKと指示してありますし、受付も慣れたもので断ってくれます。運がいいことに、たいてい私も実際に診療中だったりするので電話に出られないのです。

さて今回の、Googleサービスとか名乗る業者は、「受付のあなたではなく院長と話がしたいから取り次いで欲しい」と積極的な姿勢をみせたそうです。その時点でロクでもない電話であると馬脚を表します。

だいたい、こういうサービスは興味があったらコッチからアクセスするわけで、頼みもせんのに向こうから勝手に電話をかけてきて受付の仕事を奪うどころから回線を一本潰してくれるなんて迷惑電話に他なりません。世間の先生方も、私と同じ思いでお過ごしのことだと思います。

さてそんなクソ営業電話ですが、オミクロン株の全国的な流行が猖獗を極めている今日のこの頃、当院も例外ではなく患者さんからの自発的なキャンセルなどがあり私はヒマな体でありました。たまたま受付付近にいたときに限って鳴りやがるのが電話というもの。ディスプレイには0120のナンバー表記がありました反射的に受話器を上げてしまいました。そうです、こいつです。Googleを名乗る業者様です。

私の耳が悪いのもありますが、微妙に電話が遠くて発言内容が頭に綺麗に流れ込んでくれません。が、概ね向こうの発言を確かな解釈に下せば、以下のようであります。

・Googleマップに登録されている貴院の登録情報に病院の内外の写真を載せませんか
・撮影料は今キャンペーン中で、八万円のところ無料です
・電力会社に月に8000円以上支払っているという条件が必要です

こんなところです。
なんで急に電力会社が出てくるのか謎です。
通常おいくら万円のトコロ今なら無料!というのは昔ながらの通販トークですし、わざわざ写真を撮りにきておいて無料なんてウマ話なんてありません。なんだかんだ理由をつけて実費が発生するビジネスモデルなのだと推察できます。金を生むための仕組みがどのようなものかは興味が湧きますが、関わっても面白いことはありますまい。「こいつはカモ」リストに登録されて業界内で回されるかもしれません。

そんなわけで「要らん」と断って「迷惑電話」登録して終了です。

そもそも、Googleマップに登録されている情報は編集が可能なので、やる気さえあれば医院の写真や動画とかは自前で用意できるようになっています。私は興味もやる気もないので放置しているだけです。ネット上のSEO対策とかどーのこーのは、その昔、いーぱーく歯科でウンザリしたので食傷気味なのです。 
 
posted by ぎゅんた at 16:10| Comment(0) | 歯科医院について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月15日

口臭対策うがいとセラブレス

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「口臭ケアは見えないエチケット」と誰が言ったかは知らないが(マナー講師様か?)、口臭なんて、誰だって無い方がいいに決まっている。


歯科医師の考える口臭ケア(対策)は、少なくとも私が大学で習った知識を整理すると以下のようになる。

・口臭の原因の90%は口腔内細菌に賛成するVSC由来
・VSCに含まれる硫化水素は有毒である
・デンタルプラークの除去と舌苔の除去で解決する

しかし、これで口臭に悩む患者さんを救うことができるだろうか?
臨床経験のある先生方はお分かりであろうが、不十分と言わざるを得ない。

目下のことろ、概ね歯科で一般的に行われている口臭対策は
・徹底した口腔清掃
・齲蝕治療(軟化象牙質の除去)
・歯周治療
・口呼吸習癖をあらため鼻呼吸へ
・ブラッシング後にのマウスウォッシュの励行
・唾液量の改善のための口腔粘膜、舌、表情筋トレーニング
・プロバイオティクス

などではなかろうか。

こうした対策講ずることで病的口臭を生理的口臭のレベルに引き下げることはできる。
適切な効果があるし、善いことである。

しかし、なかにはそうならない人がいる。
口臭を減らすことはできても、一時的であったりする。齲蝕もないし、歯周炎も目立ってないし、唾液分泌にも異常がない。それなのに、全く「消えてくれない」種の、独特の口臭成分が残り続けたりするのだ。

現実的に歯科医師が悩むのは、こうしたケースであろう。私も、そうだ。
というより、実の娘がそうなのだ。

耳鼻科領域の話になるが、膿栓が原因なのだろうか?
と、扁桃腺んトコを覗いてみても存在するようには見えない……

ブラッシングをはじめとする口腔ケアでは、口臭の原因となる「なにか(分からない)」が除去しきれていないのではないか?

そう思って口腔清掃用スポンジで口腔前庭を含む粘膜面を拭いてみたり、PMTCの後にケア用ジェルを併用して歯肉マッサージをしたりと試行錯誤したが、確たる効果が得られたものかは曖昧であった。

そんな折、書店でみつけた『歯科医が考案 毒だしうがい』を自分や患者さんで実践したところ、即効性には乏しいものの、口臭を減らせることを確認できた。水だけでこれは凄い。口腔周囲の筋を強く動かすのでアンチエイジング効果もある。口腔前庭部を含めたうがいの灌流と、意図的な運動で唾液分泌が促されることで口臭が減るのではないか。とくに後者は、サウナで発汗を促すことで毛穴から老廃物質を排出させるデトックス作用を彷彿とさせる。口腔内全体から唾液の分泌が促されることで、清流な唾液の流れが整って口臭が減るのかもしれない。毒だしうがいという名称はちとアレだが、知っておくべきテクニックであることは間違いない。私は嬉しくて小躍りした。

だが欠点があった。
患者さんが継続してくれないのである。幼い子も、無理だ。

お手軽に始めるられるテクニックとは言え、口腔前庭に水をブチ当てる続けるこのうがいは、実践してみれば分かるがかなりキツイのである。んなもん、普段から口周りの筋肉を使ってなくて弛んでるからだろ!と言われれば二の句が継げないが、いずれにせよ、毎度のうがいでコレをするのは高い効果を知っていても案外にシンドイのだ。ちょっとは加減したり、サボってしまいたくなる。歯医者側でもそう思うのだから、患者さん側がどう行動するか、その結論は言うまでもない。しかし、それを責めることは決してできない。

「目の前のニンジン」ではないが、歯科医師の立場から口臭対策を第三者に提言するのであれば、効果があることは当然として、即効性まで備わったものであった方が良いようだ。経験上、即効性のあるものは概ね見掛け倒しだったりマスキング(誤魔化し)である場合が多いのだが、さりとてそれを理由に即効性を考慮しないのも頑迷固陋である。

世の中には口臭対策をグッズが溢れていて、その全て調べることもできないし試してみることもできない。
その中で、あくまで私自身が実際に使ってみて、他人に薦められそうな効果のあるものが見つかった。
それがセラブレス(記事冒頭の写真)である。

セラブレスはアメリカ製のマウスウォッシュである。
娘の口臭を消したい歯医者さんが開発したらしい。私は、親近感が湧いた。
その使用方法は、説明文を読むと以下のようである。

・キャップ一杯分で60秒間ブクブクうがいをしてすすぐ
・新たにキャップ一杯分をとり、30秒間ガラガラうがいをする
・5分間は飲食をしないこと

海外製マウスウォッシュは、とかく刺激が強かったりミント臭が異常だったりして毒々しい液体であることが多いようだが、このセラブレスは「薄く薬っぽい味のついた水」のようなもので口当たりは良い。低刺激性をうたうマウスウォッシュでも「辛い」と原液での使用を嫌がる私の娘も、このセラブレスは嫌がらなかった。頑張って60秒間、ブクブクうがいをしてくれた。うがいをしている時は、当然、口を閉じなくてはならないから「鼻で息をするんだよ」と鼻呼吸への意識を促すこともできる。これは、ありがたいことだ。30秒にのガラガラうがいは、うがいの時と同量を使用すると泡立ちが口から漏れて大惨事になるのでケチって半分量で良いと思う。

果たして、娘の口臭は劇的に減った。マスキングで誤魔化しているような効果ではない。気にならないレベルにまで口臭が「下がった」という感じだ。ちょっと驚いている。

幸いなことに、このセラブレスは通販で買える。
つまり、我々は口臭対策に悩む患者さんに「通販で買えるやつだけど〜」と紹介することができる。患者の目線からすると、普通に入手できる範囲のもので歯科医師のお墨付きがある製品を知ることができることは、嬉しいものなのだ。だから、感謝されるだろう。



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注意しておきたいのは、使用法である。
私は最初、iHerbというサイトで購入したのだが、次にAmazonで購入してみたものは日本語訳verのラベルが貼られていた。そのラベルに記載されている使用方法は、本来の使用方法と内容を異にしている。

抜粋すると、
<かんたんケア編>
オーラルリンス・キャップ約1/3でお口をすすいで吐き出します。
<しっかりケア編>
・タングクリーナー(別売)に歯磨き粉(トゥースジェル)を適量取り、舌の表面を奥から手前に優しく塗り広げます。
・歯ブラシにトゥースジェルを取り、歯・歯茎などを、丁寧にブラッシングします
・口内に残った余分なジェルを吐き出し、洗口液(オーラルリンス・キャップ約1/3)または水ですすいで吐き出します

と記載されている。
この方法は誤りとはいえないが、正規の使用方法を正確に伝えているとはいえないだろう。
そもそも、別売りのグッズの使用を示唆してくるあたりが抱き合わせ商法のようで気に食わない。なぜこのように改変したのか理解することができない。

中身は同じだと思うが、日本語訳版が気に食わないひとはiHerbでお求めになるとよいだろう。
こちらは、本国で流通しているそのままのものが手元に届く。

iHerbでは一定額以上の注文で送料を無料にできるが、送料を気にされるかたはAmazonで購入するのが楽で早いだろう。
ただし、こちらは日本語表記ラベルに差し代わったものが届くはずである。
肝心の中身は同じなので、使用方法だけに注意していただきたい。

先生方の口臭対策の福音になってくれることを願っている。




[Appendix]
ぎゅんたは
こんなもん使わんでも、もっとエエのあるで!
とか
口臭対策にはコレやで
とか教えてくれる頼もしい先生をお待ちしています。
posted by ぎゅんた at 20:37| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月14日

SEC1-0で狭窄根管のネゴシエーション


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ネゴシエーションの場面では、マニーの新品#8か#10を使用します


根管治療を開始するに際して、ネゴシエーションは誠に重要なステップである。それはとりもなおさず、Patencyを確保したいからである。

解剖学的に本来的な根管が大きめであったり、歯髄腔に二次的な変化がない根管なら、通常は根管に挿入された12号程度のストレートのSSファイルは自然に根尖まで到達する。この操作は、とにかく指で把持しているファイルを「回転させない」ことを強く意識して落ち着いて行えばそう難しいものではない。挿入したSSファイルは、根管壁をガイドに導かれるように根尖孔にまで到達するようなっているからである。ファイルに与えられるのは上下の「抜き差し」的な運動だけであり、回転させる必要性はないのである。

もし先生がファイルを回転させてネゴシエーションを行っているのが癖になってしまっている場合は矯正が必要である(私も最初はそうだった)。したがって、最初は違和感を覚えるかもしれない。けれども、ファイルを回転せずにネゴシエーションするのはそう難しい手技ではない。抜去歯牙で試してみれば、すぐに納得できよう。

ただ、我々が臨床で相手をする根管の大部分は、そう簡単ではない。再根管治療のケースのみならず、加齢や咬合の影響を受けて狭窄した根管であることが殆どだからである。いきおい、ネゴシエーションの難易度は高くなる。

高齢者でよく見られる、前歯部根面齲蝕を原因とする歯髄炎の根管治療では、処置前のデンタル写真上で歯髄腔が既に埋まってしまっているような所見を確認することが少なくない。場合によっては根管口を見つけることに難渋したりもするし、根管自体、完全に閉塞して消失してしまっているのではないか?と思わされることもある。私の経験上では、根管口はなんとか見つかることが多い。ただし、著しい狭窄根管であることからネゴシエーションの難易度が高いことがセットであることも多い。

この場合、指でネゴシエーションを行うのは骨が折れるチャレンジになる。#08Kのような細いファイルは、不用意な力加減や指の操作で容易にへしゃげてしまう。ファイルも、抵抗があってなかなか先に進まない。

上下の抜き差し運動のみでネゴシエーションを狙うわけであるが、著しい狭窄根管では、不安になるほどファイルが先に進まなかったりするので、いきおい、ファイルを回転させてリーミングの力でファイルを根尖に送り込みたくなる気持ちが術者に湧く。

その場合もバランスドフォースのような繊細な操作をすればレッジを形成することは避けられるが、いずれにせよネゴシエーションにかかる時間と労力は大きなものとなる。

本記事のタイトルのは、このシチュエーションに対する私の解答である。きっつい狭窄根管のネゴシエーションも、器械の力で楽に達成できるからである。ネゴシエーション自体の成功率も、手技の場合よりも遥かに高く期待値が高いことを確信している。SEC1-0が使えなくなったら、私はエンドができないかもしれない。


さてそのネゴシエーションのための使用法はシンプルである。

・根管を見つける
・新品の♯08KファイルをSEC1-0に装着する
・♯08Kファイルにエンドミニを噛ませてEMRと接続させる
・RCプレップ等の潤滑剤を付けて根管に挿入
・ペダルを踏んでSEC1-0を動作させつつ、ファイルが根尖に向かうようにゆっくり動かす
・ファイルは自然に根尖に到達して穿通してEMRが鳴る(ネゴシエーション達成)
・新品♯10Kに替えて同様の操作を行う

この後は♯12Kを指で操作してPatencyが得られていることを確認してからプログライダーでグライドパスの形成を行なっている。これらの手順は、慣れれば小さな労力であっという間に達成できる。

極端に強く狭窄している根管では、08Kであってもネゴシエーションに苦戦することがある。その場合は、ファイルが根管に食い込んでいる感触があることを前提に、根尖方向に押してファイルを強制的に進めることもある。おそらく、推奨されない使用方法であると思うのでここは術者の判断が問われる。



SEC1-0用いたネゴシエーションは確実性が高いが、調子に乗ってウェーイwwと乱暴な操作をすればファイルをへしゃげさせて無駄にしてしまったりファイル先端を折れ曲がらせtr破断させたりレッジを作ったりするので、過信は禁物である。色々な手用ファイルで試してきたが、マニーのKファイルが最も精度が高くファイル先端の靭性に優れてバランスが良い。ここは術者の好みもあると思うが、少なくとも私は手用ファイルはマニー製だけを愛用し続けている。



SEC1-0はこんな風に動作します。
パワーの細かな調整はあまり必要としません。ベタ踏みフルパワーで可。
そのかわり、独特の音と振動が出るので患者さんには予め説明しておこう。
 
ラベル:SEC1-0
posted by ぎゅんた at 14:01| Comment(12) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする