まとめ
・総合評価で「E-CONNECT Sの下位互換」
・同社のAF-CLを使ってのレッジ修正がやたら成功する
NiTiファイルを使い始めてから長くなります。その間、どのNiTiファイルをどう使いこなすか、そのことばかりに傾注していた気がします。肝心のNiTiファイルを動作させるエンドモーターは、案外に蚊帳の外だった気がするのです。もっとも、往時は選べるエンドモーターの種類が少なかったので、新しいヤツを買っておけばいいだろう、ぐらいのノリだったせいでもあります。
今はもう、自分のエンドで使うべきNiTiも種類も手法も、当面の確立をみておりますから器具や材料で迷うということは無くなってきております。今の若い先生たちは、エンドについては恵まれた時期にあるのではないかと少し羨ましく思う時があります。使うべき器材はバシロジックに固定して、器具材料を揃えて抜去歯牙で100本ほど練習すれば、あとはもう実戦で精度を高めていけばいい、そういうステージに直ぐに飛び込めるだろうからです。ほとんど詐欺みたいな難しい歯科医師国家試験をくぐり抜けて来ている先生方ですから、そう難しいことではありません。私のようなロートルなどすぐに追い抜いていって、質の高いエンドをバンバンこなしてくれることでしょう。これからの日本のエンド界隈は明るいのではないでしょうか。
それよりも、私個人に関して、診断力、エンド中に感染をさせないための隔離防湿、virgin-canalのネゴシエーションでの成功率、レッジが存在したり作ってしまった場合の対策、など基本的な領域での自分の不甲斐なさを痛感する場面が多いことが喫緊の課題です。
クソみたいな前置きが長いのはいつものことなので本題に移りましょう。
数年前から、上海のFANTAという会社のNiTiファイルに触れています。日本では馴染みがありませんが、アジア〜中東でシェアを伸ばしている会社のようです。Facebookでは精力的に活動している姿を確認できます。
中国の歯科材料というと、中国デンタルショーでお馴染みの闇市的なもの昔から有名ですが、現在は流石に酷いのは淘汰されたのか、案外にまともな品質に整ってきたようです。市場が成長して日本が貧しくなっただけでもありますが。
このFANTA、格安ゾロファイルを製造販売している会社かなと思いきや、まあそういう側面も持っているのですけれども、独特のユニークなNiTiファイルを持っていたりと侮れないところがあります。フラットデザインのAF F-ONEやレッジ修正目的としたAF-CLがお気に入りです。プロダクツが全体的にファンシー寄りなデザインも独自です。
ここ数年のうちにNiTiファイルだけでなく手用ファイルやエンドモーターなども発表しており、会社も順調に成長しているようです。上場はしていないようなので株を買って応援はできません。ちょっと残念。
そんなFANTAが、いつのまにかエンドモーター(SCM-011)も販売していたのを知りました。
私の愛用のエンドモーターはEigtheethのE-CONNECT Sですが、もしこれが故障してしまうとエンド臨床が途端に大ピンチに陥りますから、スペア器の用意が急務でした。この際、新たなエンドモーターを購入するのなら、贔屓にしているFANTAのヤツでもいいんじゃない?と考えたわけです。品質が悪いとは思えませんし、たとえ品質にアレなところがあったとしても、まあそれも「ネタ」になるか……ぐらいのものです。私は昔から天邪鬼なところがあって、集団の流れから少し離れた、ちょっと変わったことをしたがる習性(悪癖?)があるのです。
とりあえずスペアのエンドモーターは早めに用意しておきたい。
FANTAに問い合わせてみると、売ってくれることが分かりました。
なぜか分かりませんがクレカやPayPalでの決済ができずドル建てでの海外送金をお願いされました。銀行振り込みです。
Wise(旧TransferWise)というサービスを利用することで解決できました。微妙に胡散臭いサイトで身構えましたが本物でした。格安の手数料で海外送金したい先生は知っておくと良いかもしれません。お友達を紹介すると相手の手数料が無料になるコードとかもらえましたが、誰に紹介しろというのか。
さて荷物は国際郵便のDHLで届くので税関から確認電話があります。それから着払いなんで荷物受け取りの際に7千円ほど送料を支払って終わりです。
果たしてこの労力に見合う買い物かどうかを述べると、否だと思います。
FANTAへの問い合わせからドル振り込みからアレコレ、しかも個人の責任で全てやるというものですから推奨できるものではないと判断します。
日本の企業が扱ってくれると入手が楽になるのですが、医療機器は厚労省の中での利権が絡んでいるらしくてゴニョゴニョという噂があったり、このSCM-011を日本国内で売ろうにも「10万円越え?中国製の割にそこまでお得じゃなくない?」という価格水準に落ち着きますから、日本国内で販売される未来はこないと思われます。日本国内のエンド市場は規模も小さいですだけに尚更です。
youtubeで見つけた製品レビュー動画。日本語でOK
以下、SCM-011の特徴についての走り書き
・外観、重さ、取り扱いはE-CONNECT Sとほぼ同じ
・バッテリーはUSB充電式と現代風
・EMR機能内蔵
・回転数、トルク、オートリバースなどのカスタマイズとプログラミングが可能
・レシプロケーティング対応だが、なんとなく切削能力が悪い
・レシプロ運動時の角度のカスタムが可能
とりあえず抜去歯牙を対象に使ってみての感触としては、デンツプライのXスマートプラス以上E-CONNECT S以下という印象。コードレスのエンドモーターとしては平均以上の総合性能を有していると思われる。
更なる検証が必要と思われるので断定はできないが、このエンドモーターで同社のAF-CLを(30/-90°のカスタムアングルで)用いるとレッジ修正が極めて良好な成績を示す。もっとも、FANTAはこのエンドモーターで自社のAF-CLの性能の検証とブラッシュアップを行っていただろうから当然のことかもしれない。この理屈に立てば、同社のAF F-ONEやその他のFANTA製NiTiファイルをこのSCM-011にて使用すれば高いパフォーマンスを発揮すると考えられる。
問題は、FANTAのNiTiは、SmileUSでその一部しか購入できないことであり、つまるところ「まあ、そういう利点はあるかもしれないけどね…」で済んでしまう話ということである。
SCM-011とAF-CLのレッジ修正については、ちょっとした検証を行なってFacebook上で簡単な報告をしてみたいところだ。
citation
http://www.fanta-dental.com/
ラベル:SCM-011