2020年03月10日
よく聞く格言「人と違うことをやって成功しろ」、とは
新型コロナウイルスの感染拡大防止を受けて大規模な休校措置がとられました。
学童、学生たちは外出を禁じられた自宅謹慎みたいなものです。
することがなくて…とコッソリ外出してしまう子たちが後を絶ちませんが、これは仕方がない。彼らが外に出たい気持ちは痛いほどわかるからであります。風通しの良い人のいない場所であれば感染の心配もないので、川沿いの土手を散歩するとか、野外を走り回るとかは問題ないでしょう。子どもは風の子ってのは死語でありましょうが、やはり子どもは外で体を動かしているのが自然な姿です。まさか彼らはジムにいって利用者に感染を広げたりはしませんし、ましてやテロ行為に走ったりしません。まあ公共機関を利用してショッピングセンターに出かけたり、カラオケボックスに行ったりするのだけはやめて欲しいですが。
ほぼ全国で一律に行われた休校措置でありますが、これは同世代の学力レースで考えればアドバンテージを獲得できる一大チャンスと言えなくもありません。休校なので、おそらく自学自習が言い渡されていることでしょう。しかし、どう考えたって学校に登校して授業を聞いて宿題をやるよりも、勉強に向き合う姿勢は緩むに決まってます。意志薄弱な子は尚更のことで、この休校期間は家でひたすらゲームして遊ぶ悦楽ボーナスタイムに突入していることでありましょう。「人間は低きに流れる」生き物でありますから、この休校措置によって勉強に対して疎かになる子たちがどうしたって優勢となる。いくら暇があっても、勉強というのは基本的に子どもたちの暇つぶしの対象になりえません。
こうした時勢にあって、
・それはそれとして、勉強する
・学力でリードをつけるサービス期間じゃあ!猛勉強しとこ!
と、こう考えて机に向かう子こそが学力を伸ばします。極めて利口であります。世紀末でもマッドマックスな世界でもないのですから、社会でモノをいうのは暴力ではなく知力(≒学力)に他なりません。「勉強して良い大学へ…」というのは、世俗な文化においては常に馬鹿にされるフレーズの代表格でありますが、実は全然、間違ってはいないのです。利口な子は、早いうちにこれを見抜くはずで、それをして勉強に立ち向かえるのでしょう。
もっとも、もし私が彼らの立場であったとしたら遊び呆ける群のトップランナーに違いありません。過去の自分を鑑みれば確信をもって言えてしまうからです。哀しいことですが、私は低きに流れてしまう側の人種であったし、いまだってそうなのです。格好つければノンビリ回り道していたんだと言えますが(小声)。
さて、いま述べた内容を大人に当てはめて考えてみるとどうでしょうか。
それはきっと、隙間時間や自由時間があればスマホと睨めっこを始めるのではなく、己が必要としている事柄についての理解を深める活動(大人の勉強)に時間を費やすはずです。
現代人の大半は、暇つぶし=スマホいじり になっているハズですから、これを逆手にとってスマホを触るであろう時間を勉強の時間に変換してしまえば同世代同職種のライバルに能力的に差をつけることが間違いなくできるハズです。
…。
と、こんなことを書いておきながら「んなこたぁ分かってんだよ」とセリフツッコミを入れてしまいました。
私はガラケー族なんでスマホは持っていないのですが、代わりにiPad miniを手にとって無為な時間つぶしをしてしまってるなあと思っています。
一応、メモ帳でブログ記事その他の文章を書いたりはしているので、それが一種の知識整理なりに役立っているかもしれんとは思いますが、ご覧の通りのサボり具合です。
エンドの論文の抄録とかまたやろうかな。英語も、離れちゃうと扱いの勘が鈍るので、定期接触しないといけないんですよね。歯科医師でありながら、英語に全然触れてないのって世界でも日本のドクターぐらいじゃないのかと心配になります。
もう全然まとまっておらず終わる。
2020年03月09日
間接覆髄と直接覆髄
母校の保存修復の講座に属していたころ、接着歯学の勉強に携わる一方で覆髄について考察する場面が度々あった。
当時の歯髄保存的なう蝕治療といえば、やはり覆髄がメインではあったが割合に混乱が混じりではなかったかと回想する。う蝕検知液をガイドにう蝕影響象牙質の透明層を残すことを基本として、覆髄材を適応するのかしないのか、適応する場合はなにを覆髄材に採用するのか、適応しない場合はどうするのか。接着でシーリングしてしまえば予後が期待できるのではないか、などである。MTAセメントはまだ有名な存在ではなかった。過去の遺物になっている3-MIXが現れたのもこの時期だったように思う。もうちょっとしてから、ドックスベストセメントが登場した気がする。
歯学教育の現場での「覆髄」は水酸化カルシウムが基本であり、学生実習ではダイカルが汎用されていたように記憶している。臨床でも、概ねそうであった。ダイカルが有効な覆髄材であるかどうかは、当時から疑問が投げかけられてはいたが、実習通りに行えば覆髄処置そのものは成功率が高いであろうとの判断はあった。それはつまり、ダイカルの諸性能が云々ではなくて、ラバーダム防湿で患歯窩洞を唾液より隔離した状態で可及的に感染象牙質を取り除いた上で水酸化カルシウム製剤を貼付してGIC等のポリアクリル酸由来の微接着性を有するセメントでシーリングさが達成されることで歯髄を外来刺激より遮断させられるからである。この後の患部はおそらく、生活歯髄から感染象牙質側に象牙細管を通じてミネラル成分が到達する一方で細管内で結晶化が進行し、結果として歯髄の保存が達成される反応が進行するはずである。もっとも、臨床現場でラバーダム防湿下で覆髄をしている先生の姿はなかったという悲劇的なオチがこの話にはつく。
さて覆髄用水酸化カルシウム製剤であるダイカルは、ベースとキャタリストの混和泥が硬化後にすぐにその薬理的な作用が失われるとされている。これは、硬化後は覆髄材の姿を借りた接着阻害因子が残存することを意味している。せめて薬効が持続してくれるなら…と考えざるを得ないのである。
保険診療で覆髄を考えると、良い材料がないので…とはよく耳にしたフレーズである。頷ける意見である。ダイカルは持続的な薬効作用が望めない点で、接着性レジンでのシーリングするのも心理的に抵抗があったからである。サンドイッチテクニックというか、GICを覆髄を兼ねたベースにしてその上にCRというケースも見られた。
総括的に思い起こせば、覆髄の可能性を常に追求している先生は少なかったように思う。覆髄という処置に対する知識や関心はあっても、目の前の患者に施した「覆髄」が良好な結果を約束してくれない、という失望感を抱いていたといおうか。臨床上、自覚症状がでないだけで緩慢な歯髄ダメージの蓄積で数年後に歯髄失活と混戦病巣の存在が確認されることになった「覆髄ケース」が多かったのではなかろうか。体験的に「それ」が分かっているので、歯髄保存が難しそうと判断したら躊躇せず覆髄というステップをスキップして抜髄に踏み切っている考えの先生が多かったのではないか、とも思うのである。直接覆髄は余計にタチの悪い扱いで、露髄した時点で全部抜髄の流れが普通であった、今でも、そうかもしれない。
合理的な解答としては、保険診療ではラバーダム防湿下で患部の感染象牙質を徹底的に除去し、露髄した場合は露髄点大きさを確認し、露髄面を生食で洗浄して自然に止血するようなら直接覆髄、しないなら抜髄という単純な考えで良さそうな気がする。おそらくベターな覆髄材料はMTAセメントであろう。ことに直接覆髄に抜群の成績を示す実績があるからである。繰り返すが保険診療では使用できないので、直接覆髄は別の材料をーコンサバな水酸化カルシウム製剤かセラカルLCを使用せざるをえない。このうち、セラカルLCは感触が良い材料であり、直接覆髄を前にする保険医には福音となる材料だろう(高価だが…)。
ひところ提唱された、露髄面を含めた接着システムに応用は、現在では聞かれなくなってしまったし、その報告も聞かない。感染象牙質を残していてもその上部で接着性レジンのシーリングがあればう蝕病巣は進行が停止する、というシールドレストレーションの概念は(確か)否定されたので、その影響もあって廃れてしまったのかもしれない。悪くないテクニックだと思うが、個人的には光重合時の発熱が歯髄への大きなダメージになりそうで採用していない。露髄面へのレジン系材料は、せいぜい、セラカルLCの適応が限度ではなかろうか。
現在の私は間接覆髄には松風のテンポラリセメントソフトを、直接覆髄にはセラカルLCを採用している。
このうち、テンポラリセメントソフトに対しては個人的な思い入れがあるので、記事にしてみたいと考えている。
当時の歯髄保存的なう蝕治療といえば、やはり覆髄がメインではあったが割合に混乱が混じりではなかったかと回想する。う蝕検知液をガイドにう蝕影響象牙質の透明層を残すことを基本として、覆髄材を適応するのかしないのか、適応する場合はなにを覆髄材に採用するのか、適応しない場合はどうするのか。接着でシーリングしてしまえば予後が期待できるのではないか、などである。MTAセメントはまだ有名な存在ではなかった。過去の遺物になっている3-MIXが現れたのもこの時期だったように思う。もうちょっとしてから、ドックスベストセメントが登場した気がする。
歯学教育の現場での「覆髄」は水酸化カルシウムが基本であり、学生実習ではダイカルが汎用されていたように記憶している。臨床でも、概ねそうであった。ダイカルが有効な覆髄材であるかどうかは、当時から疑問が投げかけられてはいたが、実習通りに行えば覆髄処置そのものは成功率が高いであろうとの判断はあった。それはつまり、ダイカルの諸性能が云々ではなくて、ラバーダム防湿で患歯窩洞を唾液より隔離した状態で可及的に感染象牙質を取り除いた上で水酸化カルシウム製剤を貼付してGIC等のポリアクリル酸由来の微接着性を有するセメントでシーリングさが達成されることで歯髄を外来刺激より遮断させられるからである。この後の患部はおそらく、生活歯髄から感染象牙質側に象牙細管を通じてミネラル成分が到達する一方で細管内で結晶化が進行し、結果として歯髄の保存が達成される反応が進行するはずである。もっとも、臨床現場でラバーダム防湿下で覆髄をしている先生の姿はなかったという悲劇的なオチがこの話にはつく。
さて覆髄用水酸化カルシウム製剤であるダイカルは、ベースとキャタリストの混和泥が硬化後にすぐにその薬理的な作用が失われるとされている。これは、硬化後は覆髄材の姿を借りた接着阻害因子が残存することを意味している。せめて薬効が持続してくれるなら…と考えざるを得ないのである。
保険診療で覆髄を考えると、良い材料がないので…とはよく耳にしたフレーズである。頷ける意見である。ダイカルは持続的な薬効作用が望めない点で、接着性レジンでのシーリングするのも心理的に抵抗があったからである。サンドイッチテクニックというか、GICを覆髄を兼ねたベースにしてその上にCRというケースも見られた。
総括的に思い起こせば、覆髄の可能性を常に追求している先生は少なかったように思う。覆髄という処置に対する知識や関心はあっても、目の前の患者に施した「覆髄」が良好な結果を約束してくれない、という失望感を抱いていたといおうか。臨床上、自覚症状がでないだけで緩慢な歯髄ダメージの蓄積で数年後に歯髄失活と混戦病巣の存在が確認されることになった「覆髄ケース」が多かったのではなかろうか。体験的に「それ」が分かっているので、歯髄保存が難しそうと判断したら躊躇せず覆髄というステップをスキップして抜髄に踏み切っている考えの先生が多かったのではないか、とも思うのである。直接覆髄は余計にタチの悪い扱いで、露髄した時点で全部抜髄の流れが普通であった、今でも、そうかもしれない。
合理的な解答としては、保険診療ではラバーダム防湿下で患部の感染象牙質を徹底的に除去し、露髄した場合は露髄点大きさを確認し、露髄面を生食で洗浄して自然に止血するようなら直接覆髄、しないなら抜髄という単純な考えで良さそうな気がする。おそらくベターな覆髄材料はMTAセメントであろう。ことに直接覆髄に抜群の成績を示す実績があるからである。繰り返すが保険診療では使用できないので、直接覆髄は別の材料をーコンサバな水酸化カルシウム製剤かセラカルLCを使用せざるをえない。このうち、セラカルLCは感触が良い材料であり、直接覆髄を前にする保険医には福音となる材料だろう(高価だが…)。
ひところ提唱された、露髄面を含めた接着システムに応用は、現在では聞かれなくなってしまったし、その報告も聞かない。感染象牙質を残していてもその上部で接着性レジンのシーリングがあればう蝕病巣は進行が停止する、というシールドレストレーションの概念は(確か)否定されたので、その影響もあって廃れてしまったのかもしれない。悪くないテクニックだと思うが、個人的には光重合時の発熱が歯髄への大きなダメージになりそうで採用していない。露髄面へのレジン系材料は、せいぜい、セラカルLCの適応が限度ではなかろうか。
現在の私は間接覆髄には松風のテンポラリセメントソフトを、直接覆髄にはセラカルLCを採用している。
このうち、テンポラリセメントソフトに対しては個人的な思い入れがあるので、記事にしてみたいと考えている。