2019年11月21日
技工用のCRを直接法で使えってのかよ え───っ
今日はちょっと恥ずかしい内容の記事(いつものこと)
出入りの歯科材ディーラーさんが「先生がご愛用されているヤマキンのフローレジンが、いま半額キャンペーン中ですよ(さあ買え)!」と共にチラシを持ってきて知ったのがこの『ルナウイング』である。
はて、ヤマキンのフローレジンは『アイゴスフロー』からTMR-Zフィルに変わらなかったけ?
と思ったが、元気なヤマキンのことなので知らぬうちに新製品を出したのかもやしれぬ。贔屓にしているメーカーなので、キャンペーンも考慮してこれは購入の運びになってもよろしかろう。
ということで、その場で即断即決注文。チラシを見るとやたらとシェード表が複雑で「こんなの市井の臨床医が使いこなせるレベルなのだろうか?」と思わないでもなかったが、ちょうどA2シェードのフローを切らしそうになっていたタイミングであったので、なんかよくわからん表記ではあったがDA2HSという「レディッシュブラン明るめのA2」を注文した。
果たして届いたものは、フローレジンに特有のディスポチップをつけることもできない異形のカタチ。そう、賢明な先生方はもうオチが読めたと思うが、『ルナウイング』は技工用のフローレジンだった!これは使用できない「使えないフロー」でしかない(口腔内で用いたら薬事法違反とかそういう話になるから)。
能天気になって頭をボーッとさせていると、間違いを掴んでしまうという好例。
流石に間抜け過ぎる話であるが、私は愚かな人間なので自戒を込めて記事にした次第。
封を切ってしまうと返品が利かないのが辛いところ。ぐぬぬ。照射器の光重合のテスト材にでもするか。
新品としてもう一つが余ってしまった。
ラボ用の歯冠色用硬質レジン(フロアブル)の練習用として、このDA2HSが欲しい先生はメール下さい(半分マジ)。
2019年11月13日
コンポジットレジン修復を利用して正中離開の審美性を回復させる
接着歯学の台頭とその発展に並行して、非侵襲的で審美性の高い修復のトレンドが生まれ育っていったように思います。
昔はコンポジットレジンといえば、化学重合型で重合収縮も大きく、アメ色に変色していくもので審美性も名ばかり、その物性を考えれば臼歯咬合面に適応するのは避けるべきもの、のような扱いであったようです。
その当時は臼歯部の咬合面にはアマルガム充填がまだ行われていました(学生教育でも習った)が、一方で光重合型コンポジットレジンが市場に現れ始めており、また物性も向上し始めておりましたので、さながら「移行期」だったように思います。ちなみに私は臨床の現場に立ってアマルガム充填を行った経験はありません。前歯部の審美修復に限っては、この頃はメタルボンドやオールセラミック、歯質保存の観点からラミネートベニアが華やかだった頃だと思います。コンポジットレジンは蚊帳の外です。
さはさりながら今日では前歯部審美修復といえば、コンポジットレジンのダイレクト法を我々はまず考えます。材料物性と信頼性の向上もありますが、接着修復ですから歯質の保存が優先されるコンセプトであるのが大きいのです。便宜抜髄してオールセラミックというのは、安定した結果を約束してくれますが、歯質の犠牲を考えるとやはり第一選択にしづらいところがあります。
さて我々臨床医にとって、身近な前歯部の審美修復のひとつが正中離開の解消でありましょう。昔から、この正中離開を強制ではなくオールセラミックやラミネートベニアで解消する臨床例の報告がありました。一方、これを接着性修復–モダンコンポジットレジンで達成するテクニックも産まれました。
[卑近な症例]

前歯部正中離開の審美障害を主訴にした女性のケース。

申し訳ない程度にCRで正中離開の解消が狙われた痕跡があったが、既に変色と部分欠損と接着剥離があったので除去されている。
予め前歯部を単純印象しておき、模型上でワックスアップにより正中離開を解消させた状態でシリコンパテ印象材でモールドを作成しておく。手間ではあるが、これにより、充填作業をフリーハンドで挑むよりも容易かつ確実にする。
ベベルを付与した方が確実な接着と審美性の面で有利と考えられるが、正直なところ、このテクニックに自分自身が習熟していないので、ある程度の審美性の追求を犠牲に(歯質を切削しないことを「盾」に)表面をシリコンポイントでさっと撫でてペリクルを除去してリン酸エッチングするにとどめた。エッチング後はボンディングを行い、充填して形態を付与しつつ正中を埋めるよう頑張る。
これは重要だと思うので強調しておきたいのだが、このときに用いるコンポジットレジンは「エナメル用」で良いのである。裏打ちがないので透過を考えてボディ用やデンチン用の物を充填すべきでは、と考えてしまいがちなのだが、エナメル用で良いのである。
これはその昔(2008年ごろだった気がする)、札幌のコンベンションセンターで3M主催の『フィルティックシュープリームXT』の審美修復セミナーで青島徹児先生が述べられていたことにより知った知識である。
「ええ?エナメル色のCRだけでいいのかい!?︎(声:マスオさん)」と正直、聞き間違えたのではないか?と思っていたが、実際に試してみたら本当だった。という経緯もあって実に思い出深い。青島先生は偉大である。
余談だが、馬鹿な私はセミナーの席で当時の自分が愛用していたCR充填器にサインを入れてもらって有頂天になっていた。

そんなことはどうでもよくて、このケースで用いたCRは『フィルティックシュープリームウルトラ』のA2Eだけである。単に私が使い慣れているお気に入りのCRだからのチョイスであり、他のメーカーのエナメル質用CRでも無論にして問題ない。

形態付与も研磨もヘボで、しかもブラックトライアングル丸出しで恥ずかしい出来であるが、案外にシェードはマッチして、特に唾液で湿潤した状態だと不出来さを誤魔化してくれるので、それほど酷い結果には至らなかった。少なくとも施術前に比べて大きくマシになったので患者さんは大喜びであった。私は不満足だが、それは腕を磨いて次の正中離開のケースで挽回してやろうと思う。
昔はコンポジットレジンといえば、化学重合型で重合収縮も大きく、アメ色に変色していくもので審美性も名ばかり、その物性を考えれば臼歯咬合面に適応するのは避けるべきもの、のような扱いであったようです。
その当時は臼歯部の咬合面にはアマルガム充填がまだ行われていました(学生教育でも習った)が、一方で光重合型コンポジットレジンが市場に現れ始めており、また物性も向上し始めておりましたので、さながら「移行期」だったように思います。ちなみに私は臨床の現場に立ってアマルガム充填を行った経験はありません。前歯部の審美修復に限っては、この頃はメタルボンドやオールセラミック、歯質保存の観点からラミネートベニアが華やかだった頃だと思います。コンポジットレジンは蚊帳の外です。
さはさりながら今日では前歯部審美修復といえば、コンポジットレジンのダイレクト法を我々はまず考えます。材料物性と信頼性の向上もありますが、接着修復ですから歯質の保存が優先されるコンセプトであるのが大きいのです。便宜抜髄してオールセラミックというのは、安定した結果を約束してくれますが、歯質の犠牲を考えるとやはり第一選択にしづらいところがあります。
さて我々臨床医にとって、身近な前歯部の審美修復のひとつが正中離開の解消でありましょう。昔から、この正中離開を強制ではなくオールセラミックやラミネートベニアで解消する臨床例の報告がありました。一方、これを接着性修復–モダンコンポジットレジンで達成するテクニックも産まれました。
[卑近な症例]
前歯部正中離開の審美障害を主訴にした女性のケース。
申し訳ない程度にCRで正中離開の解消が狙われた痕跡があったが、既に変色と部分欠損と接着剥離があったので除去されている。
予め前歯部を単純印象しておき、模型上でワックスアップにより正中離開を解消させた状態でシリコンパテ印象材でモールドを作成しておく。手間ではあるが、これにより、充填作業をフリーハンドで挑むよりも容易かつ確実にする。
ベベルを付与した方が確実な接着と審美性の面で有利と考えられるが、正直なところ、このテクニックに自分自身が習熟していないので、ある程度の審美性の追求を犠牲に(歯質を切削しないことを「盾」に)表面をシリコンポイントでさっと撫でてペリクルを除去してリン酸エッチングするにとどめた。エッチング後はボンディングを行い、充填して形態を付与しつつ正中を埋めるよう頑張る。
これは重要だと思うので強調しておきたいのだが、このときに用いるコンポジットレジンは「エナメル用」で良いのである。裏打ちがないので透過を考えてボディ用やデンチン用の物を充填すべきでは、と考えてしまいがちなのだが、エナメル用で良いのである。
これはその昔(2008年ごろだった気がする)、札幌のコンベンションセンターで3M主催の『フィルティックシュープリームXT』の審美修復セミナーで青島徹児先生が述べられていたことにより知った知識である。
「ええ?エナメル色のCRだけでいいのかい!?︎(声:マスオさん)」と正直、聞き間違えたのではないか?と思っていたが、実際に試してみたら本当だった。という経緯もあって実に思い出深い。青島先生は偉大である。
余談だが、馬鹿な私はセミナーの席で当時の自分が愛用していたCR充填器にサインを入れてもらって有頂天になっていた。
そんなことはどうでもよくて、このケースで用いたCRは『フィルティックシュープリームウルトラ』のA2Eだけである。単に私が使い慣れているお気に入りのCRだからのチョイスであり、他のメーカーのエナメル質用CRでも無論にして問題ない。
形態付与も研磨もヘボで、しかもブラックトライアングル丸出しで恥ずかしい出来であるが、案外にシェードはマッチして、特に唾液で湿潤した状態だと不出来さを誤魔化してくれるので、それほど酷い結果には至らなかった。少なくとも施術前に比べて大きくマシになったので患者さんは大喜びであった。私は不満足だが、それは腕を磨いて次の正中離開のケースで挽回してやろうと思う。