根管治療前と根管充填後の写真、直近の数年経過後の写真となる。
根管治療によって、完全に理想的に患歯周囲組織が回復した!と評価することはできないにしても、歯槽骨の回復経過は明らかである。垂直加圧によって根尖に溢出していたAHプラスのシーラーは吸収されたのか造影性が失われたのか、あたかもダイナミックに移動したように見える。なお、遠心の2根は閉鎖根管と判断しており、Patencyは得られていない。
写真で比較してみると興味深いケースだが、私の拙い臨床経験から言えるのは、この根充法を採用したから治癒したとは思えないし、たとえシーラーや純度の高いガッタパーチャといえども根尖から溢出させることは慎むべきであろうということである。
根管充填後に良好な経過を辿ったのは、エンドの観点からみれば、機械的・化学的清掃が良好であったかであろうと考えるし、エンド外の観点からみれば、支台築造から冠の合着のプロセスが比較的問題のないレベルで達成された上で中心咬合時の早期接触およびバランシングコンタクトがなく経過を辿ることができたからであろうと考える。
たとえデンタル写真で見栄えの良い根充が得られても、その後に違和感が消失しきれずに再治療になったケースもあるし、根尖病変が消失しなかったケースも経験している。デンタル写真の見栄えは術者の期待を平然と裏切る。なんとなく見栄えの悪い「冴えない」像を見せる根充であっても良好な結果を導いている症例は数知れない。とはいえ、明らかに出来の悪い、見栄えの悪い根充をしても許されるということでは、無論にしてない。
よっしゃあ!これは綺麗な根充が得られただろう感触があるぞ!→確認デンタル→アレ、そうでもなかった……(でも経過は良好)
こうあれば良いのである。
必要最低限の機械的拡大を達成し、極めて良好な根管清掃を達成する根管洗浄を行い、コロナルリーケージに抵抗性のある加圧根充を行なってしまえば、基本的に患歯周囲の歯周組織は回復に向かうはずである。
もっとも、それが単純に難しいヨという話であり、「本当にそうなのか?より正しい見地はないか?」と術者を常に悩ませるエンドの奥深さに通ずる果て無き話であったりもするのですが。