2018年12月18日

CRモノブロック修復(?)


CR onlay_01.Jpg

良い手法か悪い手法かでいえば、きっと悪い手法なのであろうが、私はときおり、根充後の臼歯部に間接法でモノブロックとでもいうべき「CRアンレー」を装着することがある。とある席でこの手法について話したら「そんなことしても点数にならんでしょ(馬鹿じゃないのか?)」と大不評であった。

確かに保険点数で言えば、支台築造の点数がない上に KP(複)印象のCRインレーと同義同だからである。これを聞いただけで、多くの先生はその低い点数にウンザリするだろう。私も、する。

なぜなら、ラバーダムをかけて仮封を除去して髄腔内をレジンコーティングして、咬合関係を考えた上でアンレー形成して印象採得を行なって超硬石膏を注いで86+64+18の168点。CRアンレーを接着時に196+45+17=の258点であり、費やす労力に対して微妙な評価に他ならないからである。術式が同じなら、材料を硬質レジンなどではなくセラミックスでやりたいと考えるのが自然であろう。その場合、クオリティの差も歴然としている。

しかし、これは保険で可能という点で大きいのである。少なくともレセが返戻されたことはないので、算定要件に反したものではないはずだ。メタルフリー修復の一手といえば一手である。

私が学生だった頃、接着歯学の隆盛があった。接着を利用することで旧来の方法に比べて飛躍的な保存的処置が可能であることに私は興味を持った。その中で、間接修復にレジンコーティング法を応用して歯質保存的でかつ審美的な修復方法に私は強いインパクトを覚えた。また、国家試験対策でDESとかいう予備校のビデオ講義を受けた際に、保存修復の講義の中でCRインレーの単元のところで担当講師(歯科医師)が「これは、私も臨床でやることがあります。(患者さんに)とても喜ばれます」と発言していて自分もやりたいなあと気持ちが焦がれたこともある。

もっとも、こんな理念や気持ちは、研修医になってから打ち砕かれてしまった。誰もやっていなかったからである。少なくともCRインレーなど邪道!という雰囲気で満ちていた。悪名高い「最悪の18年度診療報酬改定」の年だったから、現場の先生方がピリピリしていたのかもしれない。

とにかく削って埋めろ!隣接面う蝕はメタルインレーにしる!失活歯は360度削ってFMCを合着しろ!問答無用だ!考えてないで手を動かせ!URAAAAAA!

と、このような塩梅であった。

こっそり目を盗んでCRインレー修復をやっていたものの、厚みと大きさを確保しないとすぐに破折するから、メタルインレーの比肩なき丈夫さに舌を巻いてばかりであった。小さなCRインレーはとにかく取り回しが悪くて神経質なのである。


CR onlay_02.Jpg

そんだかんだで色々あって、今はCRアンレーを「モノブロックで」選択することが年に数度ある程度になった。規模の小さいCRインレーは扱いが神経質なのでやらない(直接法で充填している)。

咬頭を含む規模の広範な実質欠損があり、太いマージンラインと修復物に可能な限りの厚みを確保できる場合に適応を考える。畢竟、根管充填後の髄腔を利用するケースが多い。

確かに点数は低いのだが、取り回しは容易で歯質保存的で、患者さんが喜んでくれる。金銀パラジウム各種金属の値段が高騰すればするほど、保険の間接修復では金パラが使えなくなるので、一見して点数が低くとも、この手法の存在が完全否定されることはないだろう。ラバーダム防湿下でセメンティングできれば、強力な接着力が発揮されることでエナメル質と象牙質とコンポジットレジンの渾然一体とした修復が可能となる。咬合圧負担の存在は予後の懸念事項だとしても、案外に信頼性のある修復方法のひとつではなかろうか。

posted by ぎゅんた at 23:40| Comment(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月09日

マスクで遊び心を演出


mask_01.Jpg

ひと昔前と違い、今の歯医者のユニフォームは白衣至上主義(?)ではなくなりました。

私はダークネイビーの上下スクラブを愛用しています。着心地が良くて楽だからです。保守的ないし権威主義的な考えの人は、白以外のユニフォームに難色を示すようです。患者さんが、白のユニフォームの方を好むかどうかまでは調査したことがないので分かりません。おそらく、よほど奇抜なカラーや組み合わせでなければ気にしないものと思われます。

私自身も研修医や若手の時分は白の上下ケーシー姿で診療にあたっていたものですが、それは単に自分の身分が大学歯学部所属であったことによる慣例的側面があります。教授助教授はワイシャツネクタイに長白衣の世界です(今は分かりません)。

目下、白以外のカラーの白衣(変な表現)やカラー・スクラブの方が主流になっているのではないでしょうか。また時間が経てば、白のユニフォームに回帰する流れが出てくるかもしれません。



小児用ユニフォームとして、私はFEEDの「歯newくんスクラブ(ウルトラマリン)」を所有しています。キュートな柄でありながら、おっさんが着てもギリギリ大丈夫なあたりが気に入っています。白のスクラブ・パンツと組み合わせます。1歳半検診や3歳2ヶ月検診時にも着ていきます。これを着ていると小児がパアッと心を開いてくれる、なんてことまでは実感できませんが、保護者の方からは「かわいい」と概ね好評をいただきます。

これに加えて私は、マスクにも可愛いものがないかと考えました。診察・治療で患児に顔を近づけるタイミングがあるなら、マスクの存在感は無視できないものがあるからです。

そんな折、Ciのセールでディズニー柄のマスクが出ていました。すわ「これだ!これで行けるに違いない」と欣喜して注文したわけですが、正体は子ども用マスクでした。要するに、大人が装着するには小さすぎるのです。小顔フェイスな女医さんならイケると思いますが、おっさんにはキツすぎる。注文前にキチンと確認をしないから、こういうことになるのであります。仕方がないので咳をしている来院小児がいたら提供することにしました。



ジョークアイテムの類だと思いますが、海外ではこんなマスクが存在するようです。

mask_02.Jpg

こんな濃いの使ったら泣かれそう……
 
posted by ぎゅんた at 23:53| Comment(0) | 歯科医院について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年12月03日

【FANTA】長さとテーパーでファイルの硬さがこんなに変わるってか あーっ?【AF F one】


AF F-one NiTi files_01.jpg

NiTiファイルは、基本的に号数とテーパーで性格が規定されるものである。

無論、ファイル材質の性格も反映されるが、最近のそれは繰り返し使用に耐えながら柔軟性があり、拙作能力も高い、と進化を遂げている。地味なので我々は気づかないが、おそらく技術的な進化のほどは高いはずである。

昔のNiTiファイルは硬質で繰り返して使用すれば前触れもなく破折したものであるから、極端な湾曲根管に使うのは緊張が走ったし、安易な使用にはリスクを伴った。

最近のNiTiファイルは柔軟性が高く破折しにくいものが多くなってきたように思う。例えば、ファイルに外力を加えても元の形状に戻らないような性格のNiTiファイルが目立っている、という印象だ。抗破折性も格段に向上しており、セーフティメモディスクで管理する限りはまず破折することはない、といって良い。加えてグライドパスや予備拡大を併用すれば、拡大形成に用いるファイルへの力学的負荷を下げられることから、より破折しにくくなる。言われてみれば、昔ほどNiTiファイルを使うときに緊張は覚えないな〜、とお感じになられる先生も多いのではないか。それは先生がNiTiファイルの取り扱いに習熟された面も大きいが、ファイルの物性向上による恩恵もまた大きいのである。


いつもの前置きはどうでも良くて、最近、私が気に入ったFANTAのAF F-one(25/.06)に、テーパーと号数の異なるラインナップがあることを知った。

これはNiTiファイルに於いて、ごく平凡なラインナップとなろうが、以下のようである。

20/.04: 21mm, 25mm, 31mm
20/.06: 21mm, 25mm, 31mm
25/.04: 21mm, 25mm, 31mm
25/.06: 21mm, 25mm, 31mm
35/.04: 21mm, 25mm, 31mm
35/.06: 21mm, 25mm, 31mm

この中で私は20/.04のAF F-oneに触れてみたくなった。私がスタンダードな拡大規格として採用しているウェーブワンゴールド:プライマリ(25/.07)の予備拡大に用いることができれば良いのではないか、と考えたからである。現状、この予備拡大にはEdgeEndoのEdgeGlidepath(16/.02←嘘っぽい)やEdgeTaperEncoreのX1(17/.04)を愛用しているのだが、AF F-oneでも行えるのなら、揃えるNiTiファイルをシンプル化できる面で有利である。

FANTAの担当者に問い合わせたところ、サンプルで20/.04の21mm、25/.04の25mm、35/.04の21mm、35/.06の21mmを送ってきてくれた。これで抜去歯牙で試用ができるの。随分と熱心だな、と感じるが、日本の先生にもFANTA製品を知って欲しいと考えているようだ(メイン・マーケットは中国本土と中東のようである)。

この会社のNiTiファイルのラインナップは様々に存在するのだが、使い勝手が良いと思える「他人に紹介したくなる」製品は、あくまで私個人の判断では少ない。これはやはり、安価なゾロ品メーカーであるが故の宿痾かもしれない。その中で、AF F-one はユニークで優れたNiTiファイルだと感じ入って気に入っている次第なのである。

AF F-one(25/.06)については、過去に記事にした通りであるが、硬質でありながら多少の湾曲にも平然と追従して(レッジを作らず)、かつ良好な切削能を有することを、ユニークなフラット形状で実現しているところが気に入ったのであった。サイズ違いのファイルが欲しくなって当然なのだ。


さて送られてきたサンプルに触れてまず強い違和感を覚えたのは、20/.04も25/.04も35/.04も35/.06も、私が使用してきたAF F-oneと異なり、ファイルに柔軟性があることであった。

AF F-one NiTi files_02.jpg
例えば、25/.06(左)25/.04(真ん中)のファイルに外力を加えると、こうなるのである。曲げると湾曲が付いたままバナナみたいになる。右は付属するオリフィス用ファイル(17/.12)である。

赤ライン2本が.06テーパーで、赤ライン1本が.04テーパー。確かに、テーパーは異なる。が、ここまで柔軟性に差があって良いのだろうか。

ちなみにオリフィス用ファイルも、わずかに曲がる(形状記憶される)。AF F-oneの25/.06だけがアイスピックのように硬く、常にストレート形状を保とうとする。

AF F-one NiTi files_03.jpg
号数は異なるが25/.06と35/.06でも試してみたところ、こうなった。
やはり柔軟性の存在は明らかである。

この柔軟性は、私がこのファイルに欲する性格ではない。なんでまたこんな。

軽くパニックを覚えた私は担当者に質問することにした。ファイルの材質が異なるのではないかと思ったからである。英語は苦手だが最近のGoogle翻訳は極めて精度が高いので簡単なやり取りならできるのである。メッセンジャーなので、撮影した画像を添付して送ることも容易。すごい時代だ。

しかし、帰ってきた返答は私を失望させた。

「ファイルの材質に差異はありません。私が送ったサンプルの長さは21mmです。またテーパーも異なります。04テーパーは06テーパーよりも薄いです(だから、柔軟性があってもおかしくないでしょう)。」

あ、はい

と言うしかない。

私のヘボ英語が原因で質問の真意を伝えられなかったのかもしれないが、長さとテーパーの差だけでファイルにここまでの物性変化は生じないと思うのだが。私が間違っているのだろうか。よくわからなくなってくる。

メッセンジャーで chat したFANTAの担当者は広報の人で技術者ではないから、細かな点で話が伝わらないのかもしれない。無料でサンプルをもらっている立場上、これ以上のシツコイ追求はマナー違反と考え、やり取りを打ち切った。



実際に使用してみると?
抜去歯牙で確認したのみだが、 湾曲根管に追従してレッジも作らず根管形成してくれる。悪くないNiTiファイルである……のだが、これならEdgeTaperEncoreの方で間に合ってしまう感がある。

硬質な感じのAF F-one(25/.06)が素晴らしい使用感であるだけに、後ろ髪を引かれる思いでモヤモヤする。心情的にはAF F-oneユニーク面白いNiTiファイルであることから贔屓したい気持ちがあるのだが。



まとめ
グライドパス形成にはプログライダー
その後の予備拡大にはEdgeTaperEncoreのX1
根管の拡大形成にウェーブワンゴールドプライマリ

この3つのステップにおいてが、このレシピが揺るがないので、後は根管の置かれた状況での機微をNiTiファイルの使い分けで補正するような感じになる。次はウェーブワンゴールドの代替品として、EdgeEndoのEdgeOneFireの導入を検討していきたいところだ。

ラベル:AF F-One
posted by ぎゅんた at 18:27| Comment(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする