2018年09月27日

緩いカーブのかかった根管は、やはりNiTiファイルでなくては形成ができそうもない


#15_necrosis-pulp RCT.Jpg

NiTiファイルを使用し始めて数年になるわけだが、それまでは手用ファイルで根管の拡大形成をしていたなんて、今となっては信じることができない。
私はいまやNiTiファイルが使用できないなら、エンドができない身体に調教されてしまったのである。

ネゴシエーションからグライドパスを形成後の拡大形成のシークエンスは、良いのか悪いものか、もはやNiTiを用いた機械的で作業的なものである。それをして、安定した術者の望み通りの結果を得ている。根管治療開始から根充までに要する時間は、過去の1/4ぐらいになっているだろう。エンドは治療時間が長かったり治療回数が多ければ良い結果に結びつくものではない(治療回数が増えるほど治癒から遠ざかっていくような感覚がある)から、一応はこれで良いのである。保険のエンドは時間当たりの診療報酬が極めて低いから、「根貼」だけの処置日を減らすだけで大きく違う。

あとは根管充填後の歯冠修復が自費になれば言うことなしすべて世は事もなし。

なお当院の患者さんのほとんどは根管治療後も保険診療を選択される模様。選ぶのは患者さんですからね。仕方ないね。


まとめ
ぎゅんたはNiTiファイルを使用し続けています。




記事冒頭の写真の治療概要は以下の通り

Procedure of mechanical Preparation

SEC1-0+10K:ネゴシエーション

12Kファイル :Patencyの確認とリカピチュレーション用

FANTA C-Path Rotary:17/08→13/02→16/.02

FANTA AF-F one:25/.06

Temporary seal:1week

WaveOneGold Primary:25/.07

WVC: WaveOneGold Primary Gutta-percha with Canal Resin Seal(sealer) only downpacking


Endo-Motor:E-CONNECT S

Irrigation of root canal

0.5% NaOCl
17% EDTA
Active irrigation:ENDOACTIVATOR・EDDY
Intra canal aspiraton:QUICK-ENDO SIT


※『キャナルレジンシール』は、Ciメディカルで購入したレジン系シーラーである。AHプラスのパクり類似商品と思われる。使用感も似たようなもん。
posted by ぎゅんた at 23:30| Comment(4) | 根治(回想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月17日

『E-CONNECT S』The cordless Endo-motor


E-Connect S_01.Jpg

昨今のエンドで欠かすことのできない存在がNiTiファイルである。ここ10年の間に一気にプレゼンス増してきた感がある。NiTiファイルは、道具であるから、術者が使いこなすことが必要となる。そのためにはエンドモーターが必要となるわけであるから、どのようなエンドモーターを採用するかは、徒や疎かにはできない。

本記事は、エンドモーター『E-CONNECT S』について紹介するものである。

結論:中庸な値段のコードレス式エンドモーターが欲しい先生にオススメ



コードレスのエンドモーターといえば『トライオートZX(モリタ)』が先駆者であったが
私が初めてNiTiファイルに触れたのは、歯科医師になって5年目頃に東海林芳朗先生のエンドセミナーに参加した時であった。NiTiファイルはデンツプライの『プロテーパー』で、エンドモーターは白水の『エンドミニ』であったと記憶している。

このセミナーで学んだ主たる事項は、歯牙と根管の解剖学的形態に習熟すること、根管に突っ込んだ最初のファイルはとかく回したくなるものだが決して回さずネゴシエーションをまず達成すること、ネゴシエーションした後にはファイルの道筋を確実にするためにグライドパスを形成すること、であったかに思う。作業長の決定と根尖孔の保護を重視することも学んだ。

NiTiファイルは、手用ファイルに代わって根管の拡大形成を行ってくれる道具であるだけで、『プロテーパー』の細かな使用法については教わらなかった。根管治療の重要な基礎の部分を学ぶことこそが眼目であったわけで、NiTiファイルどう使っていくかは、その上にあったのである。セミナー後、私のエンドには変化が始まっていったが、NiTiファイルを積極的に使用し始めることはなかった。当時の勤務先には『トライオートZX』が埃を被って鎮座していたが、NiTiファイルは用意されていなかった。抜去歯牙で練習しようと松風の『Mtwoファイル』を購入したのはいいが、『トライオートZX』は連動作動式であり、抜去歯牙での練習が満足にできず失望させられた(抜去歯牙で満足に練習できないのだから、臨床で使用することができなかった。ブッツケ本番は怖すぎるからである)。

結局のところ、NiTiファイルを臨床で積極的に使い始めるのは実家の歯科医院に戻ってからであり、その際のエンドモーターは白水の『エンドミニ』を使用していた。このエンドモーターは操作法がわかりやすく、堅牢で取り回しもフレンドリーな優れた製品であった(当時のベストセラー機だった気がする)。その後、NiTiファイル界隈ではレシプロケーティングの波が押し寄せ始め、色々と検討した結果、NiTiファイルは『プログライダー』と『ウェーブワンゴールド』、エンドモーターには『Xスマートプラス』という、一連のデンツプライ製品を採用することになった。NiTiファイルのコスト面から、その内容に細かな変更は加わっていったものの、大筋では今もこの通りである。

先日、Xスマートプラスのコントラヘッドの不調で、インサートしたNiTiファイルがすっぽ抜けて来る事態となった。コントラヘッドの新品購入で危機を乗り切ったものの、新たなエンドモーターの購入を検討する運びとなった。その候補は『E-CONNECT S(Eighteeth)』である。国内では取り扱いがないことから知名度が低いものの、海外では名が売れているエンドモーターのようだ。歯科材ディーラーからは『トライオートZX2』や『Xスマート IQ』の購入を勧められたが、パンフレットを読んでも製品コンセプトが理解不能だったのでやめた。



E-CONNECT S
E-Connect S_02.Jpg
簡単に特徴を述べると、内臓EMRと連動が可能なコードレス式の新型エンドモーターである。ユニークなのは、レシプロケーションの角度設定ができることであろう。一般的なレシプロケーション用NiTiファイルは『レシプロック』に倣ってCW:30-CCW:150となっているが、カスタマイズでCW:90-CCW:30に設定することが可能となっている。

もっとも、レシプロケーションの角度変更はメーカーの推奨使用法からは外れることが大半であるから、果たしてこの機能がどこまでの効力を発揮するものかは未知数である。純粋なロータリー用NiTiファイルを、その破折防止のためにアングル・カスタマイズで使用できる余地が生じることは確かであるから、積極的に利用することはなくとも、「今後の発展性」のために備えておいて損はない、というところだ。有益な「レシピ」が発表されたり、角度指定された新型NiTiファイルが発売される可能性があるからである。

内臓EMRを利用しない場合は、ほぼコードレスのエンドモーターとなる。利用する場合は、付属のリップフックとファイルクリップを備えたコードを本体と接続して連動させることになる。

この状態でファイルクリップに手用ファイルを把持して、根管に挿入すれば、『E-CONNECT S』をEMRとして利用できる。NiTiファイルを装着して根管に挿入すれば、根管内でのNiTiファイル先端の位置をロケートさせた状態で使用することができる。この場合、エンドモーターに設定してある「アピカルの位置」にファイルが達した際に、ファイルの動作を「ストップさせる」「逆回転させる」「ゆっくり動作させる」などの設定が可能となっている。また、NiTiファイルを根管に挿入した時点で自動で動作を開始するかしないか、根管よりNiTiファイルを抜き出した時点で動作を停止するかしないかも設定できる。これらは『トライオートZX(およびZX2)』にも備わる機能だったかに思うが、これを有益と判断するか、条件付きで作動させたいと考えるか、全く不要と判断するかは術者次第であるからカスタマイズさせることができる。

私はこの内蔵EMRとNiTiファイルとの連動に対して、さしたる有り難みを感じない。メーター表示されるディスプレイ画面が小さすぎるのも気になる。折角のコードレスをスポイルされたくない気持ちもある。目下、スタンドアローンの、純粋なコードレス式エンドモーターとして使用している。

エンドモーターに装着したNiTiファイルとEMRとの連動は、過去にも記載してきた通り、モリタの『ROOT ZX』と延長ファイルクリップである『ミニエンド』を組み合わせている。ミニエンドをNiTiファイルに把持する手間はかかるし手技上の煩雑さはあるのだが、もう体がこの方法に慣れてしまった。そのため、内蔵EMRと連動させると動作に強い違和感を覚えた。普段の自分の術式は、想像以上に習慣化されているものだと実感させられた次第である。頭の柔軟な先生なら、全く問題にならないだろう。


購入時のパッケージの中には、

・本体
・コントラアングル
・充電器兼スタンド
・本機充電用アダプタ
・EMRと連動させるために本体と接続するコード(リップホック+ファイルクリップ)
・ラバースリーブ
・スプレーノズル
・保証書
・説明書

が収まっている。
説明書は英語表記である。

NiTiファイルの操作については、基本的にはプリセットされた設定が「メモリー」として10パターン(M01〜10)備わっている。例えば、『レシプロック/ウェーブワンゴールド』はM3にプリセットされているので、購入してすぐに使うことができる(「M3」の表記を、分かりやすく「Reciproc」や「Wave one」に切り替えることも可:おおよそ一般的なNiTiファイルの名称が用意されている)。これらプリセットの設定は、カスタマイズによって回転数やトルク、正回転/レシプロ/逆回転の設定、先述の連動時のアピカル付近でのファイルの動きなどの設定ができる。

このカスタマイズ機能は概ね融通が利くようになっているので、たいていのNiTiファイルは問題なく使用することができるだろう。

残念なのは回転数の上限が1000rpmであるところで、これ以上の回転数を求めるなら『エレメントモーター(SybronEndo)』が必要となる。

ラバースリーブは、コントラアングルに被せて使用する。ラバーダムをしない場合にコントラアングルが口腔粘膜に触れるとEMRが不正確に触れるから、その防止には有効だ(勿論、エンドに際してラバーダムは必須という前提はいうまでもない)。



使用感
Xスマートプラスから乗り換える身分での感想となるが、いまのところ違和感なく使用できている。取り回しが極端に悪くなった/良くなったという、感覚の違いは起きていない。従前、使用してきたXスマートプラスは二軍落ちとなった。

『E-CONNECT S』はコードレスのエンドモーターの値段としては(おそらく)良いものであろう。実際に使用していないので断言はできないが、『XスマートIQ』『トライオートZX2』と十分に競合する器機ではなかろうか。デモ機に触れてから購入できない点は残念だ。

これから長期的に使用していく中で欠点や欠陥が生じる可能性も否定しきれないが、買っちゃったものは仕方がない。使用し続けていくだけである。

ラベル:E-CONNECT S
posted by ぎゅんた at 20:47| Comment(15) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月10日

(エアー・ソニック根管洗浄チップ)『EDDY』

EDDY.jpg
返品不可!(でで〜ん♪


ざっと触れてみた感じ

・注水で使用できない!
・チップ先端がフニャフニャですぐに折れそう
・タービンホースが2本備わるユニットでもなければ取り回しが面倒
・『エンドアクティベーター』より高機能なはずだが、実感がわかない
・コスト高すぎ問題(1500円/本)

というところ。

非注水でしか使用できないのは、正直、誤算だった(気づかなかった)。
手軽に水でジャバジャバできるものかと思っていたのだが。

根管内の消毒を達成するためにアクティブな根管洗浄法は必要だと考えるが、この『EDDY』を急いで用意すべし!というほどの魅力は感じない。使い始めて間もないので、まだ際立った評価が下せていない可能性もあるが、いまのところ他人に勧められる気はしない。

基本的な使い方は、このチップ(25/.04)を作業長よりオーバーさせることなく位置させて上下方向に動かしながら作動させるもので、根管内にはあらかじめヒポクロかEDTAなどの根管洗浄液を満たしておく必要がある。一回の作動時間は30秒を超えないこと、と説明書に明記されている。

私が所有するエアスケーラーはモリタのエアーソルフィーであるが、問題なく動作している(パワー設定は「小」)。

チップはポリアミド性であり、繰り返しの使用には耐えない(ディスポである)。



続く(かな?)
ラベル:EDDY
posted by ぎゅんた at 23:11| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月03日

うぎゃーっ Xスマートプラスのコントラが死んだー ぐわー


壊れたぞ.Jpg
注)こんな喜べません

その日は突然やってきた。

エックススマートプラスで使用しているNiTiファイルが、やたらに外れてくるのである。「所定位置で固定し忘れたか?」とNitiファイルの装着具合を確認しても異常はない。ただし、強く引っ張るとファイルがスポッと抜けてくるのである。新品のNiTiファイルでは抜けて来ないが、ある程度の使用回数を経たファイルでは固定が得られずスッぽ抜けてくる。

これでは怖くて使えないではないか。

デンツプライの営業マンに問い合わせたものの「代替機の貸出しはできません(新しいの買え)」と返事がきてファッ◯ン。とりあえず先端のコントラの部分だけを購入することで急場を凌ぐことができて安堵している。

とはいえ現物が届くまでの数日感は根管治療が満足にできなかったし、慌ててのコントラ購入で予期せぬ3万円が飛んだ。私の財布も飛んだ。

ぼくらも飛ぼう.Jpg


とりあえず、NiTiファイルが日々のエンド臨床に欠かせない道具となっている先生は、エンドモーターやエンドコントラの予備を用意しておくべきである。文章にしていて正直、「なぜ俺はこんな当たり前のことを……」と思うし、自分のアホさ加減を呪うばかりなのであるが、私と同じ轍を踏まないで欲しいと願う。


エンドコントラにせよエンドモーターにせよ、NiTiファイルをグリグリ、チキチキ動かすだけの機械であるから、早々に壊れるものではないのであろうが、いざという事態のためのバックアップは必要だ。さりとて、同じエンドモーターをもう1つ買うというのは、なかなか気がひける。私はいま新たに別のエンドモーターを購入してみようかと考えた。

日本でのエンドモーターというと、モリタの『トライオートZX』シリーズやデンツプライの『X-スマートプラス』がメジャーどころではないかと思う。

『トライオートZX』は、去年だかに後継機の「2」が登場し、なんでも「これ一本で穿通とグライドパス形成ができる」とか喧伝していた覚えがある。しかしパンフの訳わからん説明を噛み砕けば10/.02のスーパーファイルかエンドウェーブを使って穿通させるもので、その際のファイルの動きは正逆の往復運動みたいなものっぽい。こんなもんで穿通できれば苦労せんだろと、私は即座に嫌悪感を抱いて放置プレイしていた。どこかのデンタルショーでモリタブースの方が「これ大人気で納期が半年待ちなんですよ」とか誇らしげに自慢をされたが俺は知らん。

そもそも穿通用ファイル『スーパーファイル』は、その昔、購入してみたものの期待はずれで痛い目を見た経緯がある。穿通は、基本的には手用Kファイルを上下に動かす事だけで達成させるべきであると考えるし、目下、その動作をSEC1-0で機械的に行なっているが何ら不満は覚えていない。穿通後はファイルのPatencyを確実なものとし、その後のNiTiファイルによるシークエンスを約束するためにグライドパスを形成するだけである。エンドモーターが『トライオートZX2』でなくてはならない事情は、少なくとも私には当てはまらない。


E-Connect S.Jpg
目下、私がこれは良さげかもしれないと期待しているのがEighteethというメーカーの『E-connect S』である。コードレスで、EMR内蔵型で、レシプロケーション時の角度を設定できる特徴がある。

購入に際しては、現時点では通販しかない様子だが、怪しげな通販サイトしかないのが困る。

私にはその昔、入金後いつまでたっても製品が送られてこず、なんど催促しても無視された挙句ドロンされて恨み骨髄な経験がある。歯科材料の海外通販は、信頼できるお墨付きがない所以外は申し訳ないがNG。


それにしてもエンドモーターもまた消耗品なのだろうか。
使用頻度にも因るだろうが、概ね3年てトコ? 
 
ラベル:E-CONNECT S
posted by ぎゅんた at 22:53| Comment(4) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする