2018年08月31日

根管洗浄にEDDYの採用を考える


EDDY_01.Jpg

いつもお世話になっている歯科材ディーラーマンにEDDYについて資料請求したところ、このチラシを持ってきてくれた。

だってメーカーのサイトにアクセスしても英語ですし……


Cleaning of root canal is directly influenced by proper removal of debris and smear layer.
EDDYはエアスケーラーと組み合わせて使用する根管洗浄用チップに過ぎないが、プラスチック製で、動作時にキャビテーション(空洞現象)とアコースティックストリーミング(還流作用)を根管洗浄液(irrigants)に与えることで根管壁を洗浄するものである。

私が歯科医師になりたての頃、根管洗浄といえば「超音波スケーラーにエンドチップ」が金科玉条のごとく提唱されていたものである。何はさておき、エンドチップを根管に挿入して洗えばいい、みたいな感覚があったように思う。今にして思えば、Patencyの確保もなく、手用ファイルでテーパーが付与された根管形成が達成されていたわけでもない根管にエンドチップを挿入してジャバジャバやっていただけであったから、肝心の debris を洗い流せていたとは考えられないのであるが。

効果的で効率的な根管洗浄については、EDTAとヒポクロの組み合わせがゴールドスタンダードとなる時代になってから、ようやく理解が進んでいくことになる。それまでは「交互洗浄は時代錯誤なのは分かるけど、ウーン、だからと言って、どうしよう……(とりあえずエンドチップで洗っとく?)」と暗中模索で不真面目な体であった。

「超音波スケーラーにエンドチップ」は、現在でも否定される根管洗浄法ではないが、根管壁にチップを当ててはいけない点で厄介である。根管壁と接触すれば根管象牙質を削合してスメア層を発生させるし、根管の湾曲に追従できないからである。

私はエンドチップとは相性が悪いと感じていた(使い方が下手クソなだけ)ために、あまり使用することはなかった。Patencyを確保して細いゲージのシリンジ洗浄(IrrigantsにはEDTAとヒポクロ)、マスターポイント上下法で対応していた。

この頃は根管治療後の術後疼痛(Postoperative-Pain)に悩まされることが多くあったことから、根尖よりdebrisの溢出を避けるべく、吸引を併用した根管洗浄も取り入れるようになっていった(奈良の変態紳士先生にヨシダの『クイックエンド』を教えてもらった時期)。

その後、ラドル先生の根管洗浄に関する論文を読んで『エンドアクティベーター』が欲しくなったのでスマイルUSで購入して現在に至っている。

エンドアクティベーターはディスポの医療用ポリマーチップを使用しており、根管壁に接触してもスメア層を発生させないし、根管の湾曲への追従も期待できる。超音波ではないのでキャビテーションは期待できないが、適度な攪拌効果がある。日本ではマイナーだが、海外ではメジャーな器具っぽい。コードレスで取り回しは良いが、注水機能は存在しない。

EDDYは、このエンドアクティベーターの超音波版というか、進化版のような位置づけに思える。コードレスではないが、注水機能がつき、キャビテーション効果が期待できるからである。

肝心の根管洗浄に対して、EDDYにどれほどの効果があるものかが気になった。

オンラインで適当に見つた論文によれば、EDDYは、エンドアクティベータやPUI(超音波洗浄)と比べて優位に優れた結果を示すものではないが、これら"アクティブ"な根管洗浄は、30Gのイリゲーション・ニードルでの根管洗浄(陽圧洗浄)に比べてdebrisを優位に除去できたし、スメア層除去の面でもEDDYとPUIは優位に除去されることが明らかであった、としている。実験では、Irrigantsに3%濃度のヒポクロを用いている。EDTAを使用していないにも関わらず、EDDYとPUIはスメア層を優位に除去できたが、これは、超音波によるキャビテーションとアコースティックストリーミングによる効果であろうと考えられる、と報告している。

私が読み間違えていなければ、EDDYはシリンジで根管洗浄と比較してdebrisとスメア層除去に極めて有効であるものの、エンドアクティベーターと比べた場合に有意差はとくに認めない、ということになる。エンドアクティベーターを所有していればEDDYを購入する必要は高くはなさそうに思える。スメア層の除去は、素直に17%EDTAを適応すれば良いからである。

とはいえ、どんなものか実際に使ってみたい気持ちになるのが正直なところ。
サンプルはないので、購入して使ってみる他にない。 ぐぬぬ


※Urban.Kent, Donnermeyer.David, Schäfer.Edgar, Bürklein.S, Canal cleanliness using different irrigation activation systems: a SEM evaluation

この論文に名前を重ねていらっしゃるSchäfer.Edgar先生は、根管洗浄に関する論文(総論)を出しています。⇒PDF直リンク



なお価格
EDDY_02 (1).Jpg

1500円/本 也

おのれ
 
ラベル:根管洗浄 論文 EDDY
posted by ぎゅんた at 00:34| Comment(0) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月28日

(フロアブルレジン)『ネックスコンプフロー』 (韓国製)

NexcompFlow_01.Jpg

このメーカーとは馴染みも縁もないのであるが、Ciでセール売りされてたので、ものは試しと購入してみた。国内メーカーのフロアブルレジン比べて、明らかに安価である(セールでなければ、中庸な値段)。

さて、どんなものだろう。


安いCRはゴミである、と断言は出来ないが
過去にスポファデンタルというメーカーの『スーパーコア』というペーストレジンを購入したらダメダメだった経験がある。それ以来、ペーストレジンに関しては信頼と実績のあるメーカーのもので手に馴染むものを使い続けている(『シュープリームウルトラ』、『ハーモナイズ』)。

フロアブルレジンは、CR隔壁用に安価な海外製のものをストックしてある。値段が安いモノは使い勝手に問題はなくとも重合硬化後の見た目が柚子肌様というか、審美的にどことなく劣る印象がある。勿論、メーカーによって「そのへん」は様々だから、安くて使いやすくて仕上がりも良好な、バッチグウ(死語)なフロアブルレジンも存在するに違いない。もっとも、私はその存在を知らない。

「今時のCRなら、そんな性能に差はない」とばかりに、セールで安い都度購入したものを無盲目に使い続けている先生もおられると聞くし、国産の実績のあるメーカーのフロアブルレジンを使い続けている先生もおられる。審美的なCR修復は所詮はフロアブルレジンで仕上がるものではないから、自費はともかく保険のCRで高い審美性に拘泥する意味はない(だから、フロアブルレジンは安いやつで良い)、とする考えもある。

今のところ私はヤマキンの『アイゴスフロー』がお気に入り、というだけだ。そこには高い興味や関心はなく、NiTiファイルへのそれに比べれば熱量の差は歴然としている。

結局のとこり「術者の考え方次第である」という、極めて便利でお定まりの結論に落ち着いてしまう。実際のところは、フロー稠度や色調、テクノロジーの面で興味深い差異や長期耐久性の面で差が存在するに違いないが、それをどう評価判断するものか、確たる手応えもない。これは、ちょっと心許ないことだ。国内大手メーカーの製品を買っておけば、間違いはなさそうだが……



そんなわけでセールを機に購入してみた『ネックスコンプフロー(イントロキット)』
NexcompFlow_02.Jpg
届いたブツはダークシルバーな外観も相まって、ちょっとお洒落

開封に伴うドキドキ感は、通販消費者に与えられた特別なプレゼント。

↓OPEN
NexcompFlow_03.Jpg

……。



Ideal and reality.Jpg
thinking about that.Jpg



重要なのは品質である。見た目よりも、実際に使用してみて、「中身」で判断を下さねばならない。


実際に使用してみたところ、以下の点が気になった。

・使用後にチップ先端からレジンの「液だれ」が生じる
・シェードの明度が高め(色調が白っぽい)

液だれは、追加充填しようとした際の邪魔者であり、損をした気持ちにさせてくれるので好ましくない。硬化後のシェードが白っぽいのは、A系統(Reddish-Brown)の充填でアンマッチになる。


結論
韓国製にしてはお高い印象。性能は中庸。
セールでもなければ、コスト的に中途半端なので、無理して購入しなくて良さそう。

posted by ぎゅんた at 22:32| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月23日

再根管治療時に頼もしいレシプロックR40


rootcanal retreatment with Reciproc.Jpg
日本語でおk


「感染根管治療」もとい「再根管治療」では、基本的に軟化象牙質とガッタパーチャ(以下GP)をターゲットとして、その徹底除去が行われる。軟化象牙質はスチールラウンドバーやスプンエキスカを用いることで比較的、その除去も容易であるが、GPは細長くて見えない根管内に充塞されており、徹底除去は困難なタスクとなりがちである。もしマスターポイントをスポンと一塊で除去できれば、歯科医師は不可思議な多幸感と高揚感に包まれる。それは、理想的なGP除去のひとつの解に違いないが、常に狙ってできる手法ではないからである(緩い側方加圧根充であれば、ポイントと根管壁との隙間にHファイルを挿入して絡めて引き抜けることがある)。

再根管治療では、その性質上、根管充填されていたサイズ以上の根管内に機械的に仕上げることで感染源除去を達成しようとする。しかし機械的拡大のみでは、根管内細菌の約50%しか減少さえられないと考えられていることから、化学的・物理的な根管洗浄(根管の消毒)は必須である

根管内の細菌は根管に沿って集中して存在していると考えられ、そしてまた、根管洗浄はPatencyがなければ効果的でない。いずれにせよPatencyを確保して根管洗浄と根管の走行に沿った機械的拡大ができるようにする必要があり、また、そのことからGPの除去の達成を狙うものである。

手用インストゥルメントやゲイツバーなどで目視できる範囲のGPを除去して、ネゴシエーションを達成しPatencyを得る。それから、グライドパスを形成してNiTiファイルでGPの除去と根管内の有機質の機械的除去を図り、根管洗浄が効果的に行えるように整えていく。

「取りきれたようで取りきれていない」のが再根管治療時のGPであるが、私はレシプロ系NiTiファイル持ちいることで除去を狙っている。グライドパスを形成したら、まずベーシックな根管形態を求めるためにウェーブワン・ゴールドのプライマリで形成を終える。ここで確認デンタルを撮影する。根管にはまだGPがどっぷりと取り残されているのが常である。

それから、NiTiファイルをレシプロックR40に切り替えて根管内を攻める。レシプロックは比類なき切削性を発揮するレシプロファイルであると勝手に考えているからである。ヘルミッショネルズを名乗るネプチューンマンとビッグ・ザ・武道が得意のツープラトン「クロスボンバー」をブチかまして下等なマスク超人のマスクを剥がすように、レシプロックR40は、再根管治療時に根管壁からメキメキョとGPを除去してくれるのである。過去に「レシプロ系NiTiファイルは歯根破折を誘発する」と言われたのは、レシプロックのこの逞しい切削能があったがための印象論に端を発していたに違いない。



removal of obturation material from root canal.Jpg
根管内のGP除去に関しては、最近は「クロロホルム+XP-Endoシェイパー&フィニッシャー」の組み合わせが熱いようだ。一方、GP溶解剤を用いたくないと考える先生はファイルを用いた機械的除去に頼らざるを得ない。レシプロックを用いたGP除去はその福音となりうる。

GP除去を行う際のレシプロックの動かし方は、上下のペッキング運動とブラシアップであるGP行う。私はしばしば、根管内にヒポクロ満たしてレシプロックR40でGP除去を行う。根管壁からGPを絡め取ってくる手応えと共に除去されたGP塊が出てくるのを目にするのは快感だ。


ただの偶然に違いないが、破折ファイルまで根管内から除去してきたのには驚いた(術前の写真に破折ファイルの存在を疑わせる所見がないあったので)。写真は、ネゴシエーション前の、根管中央付近までの大雑把なGP除去でレシプロックR40を漫然と使用していた場面。

もっとも、レシプロックが破折ファイル除去に有効かといえば違うだろう。
GPの中か傍にたまたま存在した破折ファイルが一緒に出てきたにすぎない。

同じレシプロ運動をするウェーブワン・ゴールドは、レシプロックほどGPを除去してくれない。切削能は敢えて犠牲にしてファイルに柔軟性をもたせた設計にしたのかもしれない。

そんな控えめなウェーブワン・ゴールドが好き(……などと言いながら、別のNiTiファイルに浮気し始めてたりする)。



※過去、根管の「消毒」にあたっては、レーザー照射やイオン導入などが行われたときく。現在も行われているに違いない。ただし、その話題について耳にすることはない。効果がないわけはないと思うが、どのようなものだろう?Er:YAGレーザーの根管内照射は、私の環境では可能だが、取り立てて根管の消毒が果たせて治療成績が向上するものかどうか、なんとも言えない。感染根管治療にEr:YAGレーザーを照射することについての意義については、エンド界隈ではあまり真面目に考えられていないような気がする(違ったらごめんなさい)。
posted by ぎゅんた at 02:37| Comment(0) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月18日

FANTA AF-CL 〜 レッジかな?ファイルが根尖に到達しないぞ


image.Jpg

根管内の走行を保ったまま有機物を機械的に除去することを手早く規格的に達成することを目的に開発されてきたNiTiファイルは、いまやモダンエンドで欠くべからざる存在になっている。手用ステンレススチールファイルで根管の拡大形成を行なっている先生は、もはや少数派だと思われる。

「NiTiファイルが使えないなら、根管の拡大と形成ができない」
「NiTiファイルが使えないなら、根管治療をしたくない」
「手用ステンレススチールファイルでの治療法を忘れてしまった」

こういう声だって聞こえるはずだ。私のことだが。NiTiファイル依存体質エンドである。

これは多分、日本ではまだそれほど顕著でないにせよ、海外では明らかな趨勢であろう。海外のエンドの学会に出かけたら、併催の企業ブースが仁義なきNiTi商戦の鉄火場である様を目にできるはずだ。見学したい衝動に駆られる。

ただ、忘れてはいけないのは「道具は目的を安全確実に達成するために術者が適切に扱うこと」である。良いものは良いけれども、新しいものに飛びついていけば良いわけではない。自分のスタイルに合うNiTiファイルを常に探す程度の努力は続けるべきだが、無節操に新製品いとびつくまでの熱意は不要であろう。


いずれにせよ、NiTiファイルには根管治療における無敵万能感が存在するし期待されてもいるわけだが、大きな泣き所がある。それは"Apical Patency"が失われると大ピンチになることである。新品の10号Kファイルでネゴシエーションができたら、その交通性を喪失してはならないし、グライドパスを形成してその後のファイル操作を安全円滑に進められるよう取り計らう必要がある。

NiTiファイルもまた(乱暴に言えば)新品のKファイルのようなストレート形状のファイルに過ぎず、根尖まで達してくれないのなら根管の拡大形成上下、持て余すだけになるからである(ネゴシエーション用手用ファイルは回転させずに操作するからいいものの、NiTiファイルは根管内で回転やレシプロ運動を行うのである)。もしApical Patencyが失われれば、NiTiファイルは途端に扱いづらくなり、根管に挿入することがストレスに様変わりする。マジックポイントが切れた魔法使いが役立たずのジジイと化すようなものだ。

順調に行っていたと矢先のApical Patencyの突然の喪失は、大抵は攻略中の根管内にちょっとしたレッジを作ってしまったことに起因しているものである。なので、慌てずにファイルの挿入角度を変えてみたりプレカーブを付与した手用ファイルを用いると素直に根尖に向かう「方向」の存在を確認できるのである。

しかしストレートでテーパーの付与されたNiTiファイルに於いては、この対策法は途端に現実的でなくなる。通らない……と根管内を突いているうちに先端にダメージが蓄積してファイルをダメにしてしまうのが関の山である。漫然と操作すれば根管に更にレッジを形成したりするのも怖い。

すわ手用SSファイルに切り替えて残りを仕上げよう、と考えを切り替える先生は極めて真摯である。私はレッジを修正してでもNiTiファイルを使える状況にリカバリしたくなる。

今まではプロテーパー先端プレカーブを付与したものを手用ファイル様に操作し、レッジを乗り越えたところで上下運動させたりバランスドフォースを無造作に行なってレッジ修正を試みていた。うまくいくこともあれば、期待した結果が得られないこともあった。レッジを作ったらアウトやねん、と考えて、ネゴシエーションからグライドパスまでの作業を慎重に行う様になった。

それはそれでいいのだが、問題は、やはり自分の不注意が原因で「うまくいっていた」根管内レッジを作ってしまったり、再根管治療におけるレッジの存在である。修正できる術があるなら、それに越したことはない。



FANTA AF CL files.jpg

そんな中、FANTAという上海の根管治療器具メーカーが発売しているレッジ修正用ファイルである『AF CL』を入手した。

AF-CLは号数とテーパーの異なりがあり、以下のラインナップとなっている。

10/.06
10/.08
15/.06
20/.07
25/.08
30/.09
※ファイル先端にプレカーブが付与されている

使用順はケースバイケースで術者に一任されているようだが、基本的には号数の小さいものから使用してレッジ修正を図る仕様のようだ。

NiTiファイルであるから、エンドモーターに装着して使用することになる。仄聞するところによると、その動作は90/-30度のレシプロ150rpmで使用するらしい。ただし、この角度の組み合わせのレシプロケーションを実現するためには、Eigteethという会社の「E-connect S」というエンドモーターが必要となるようだ。え、なにそれ。

ということで「使い方」についてFANTAに問い合わせたところ「あなたが採用できる方法で構いません。ロータリーでもレシプロでも、どっちでも使えます!レシプロケーションの動作を実現するエンドモーターをお使いなら、それを使えばおk!」と心強い返答が得られた。ホントかお前それならとXスマートプラスの「Reciproc」モード(150/-30)で使用することにした。プレカーブの付与されたNiTiファイルをロータリー・モーションで用いるのは、たとえメーカー側が「大丈夫」と言っても、俄かには実行し難い気持ちが沸くために採用しないことにした。破折が生じるか、根管の走行を余計に破壊しそうで不安だからである。

まず、湾曲根管を模したアクリルの練習用根管模型で試用してみた。プログライダーでグライドパスを形成してからプロテーパーネクスト:X2を用いて意図的に根管にレッジを設け、手用10KファイルのPatencyを喪失させた(プレカーブを付与した10Kなら本来の根管にファイルを落とし込めるが、ストレートの10Kはレッジに引っかかって根尖に到達できない状態)。

最初にAF-CL:10/.06を作動させながら根管に挿入して行くと、ファイルはあっさりとレッジを乗り越えた。プレカーブが付与されていることから根尖方向へは抵抗があって進みにくい。レッジ部を乗り越えたところで、ファイルで潰すようなイメージでしばらく上下運動させてみた。引き抜いたあと、生じたdebrisを除去して10Kを挿入したが、まだレッジに引っかかってしまった。AF-CL:10/.08で同様の操作を行うと、レッジが潰れたためか10KのPatencyが回復した。レッジの規模が小さければ、高い確率で修正が可能っぽい手応えであった。

AF-CLを使用することで、debrisは少なからず生じる。レシプロ系NiTiファイルは、論文によってはロータリー系NiTiに比べてdebrisの根尖からの押し出し量が有意に多いと報告されていたりする(差はない、と報告する論文もあるし、少ないと報告する論文もある)。

レッジ修正後、試しにAF-CL:10/.06を根尖まで通過させてみたところ、果たして模型根尖部よりdebrisの明らかな溢出が確認できた。乱暴に操作すれば、レッジの修正と引き換えに多くのdebrisそ根尖より押し出すリスクのあるファイルと言える。とはいえ、それは他のNiTiファイルでも同様の注意事項でもあるのだが。

in vivo症例としては、ちょうど私の不手際で「Patencyが得られていたのにダメにしちゃった根管」を抱えていたものだから、タイムリーとばかりに試用する場面があった。果たして、練習用根管模型と同様、AF-CLの10/.06と10/.08で修正を達成できた。レッジ修正によって、NiTiファイルがまた使用できる根管に戻ったことを実感する瞬間は(ただのリカバリにすぎないにしても)快感である。


このAF-CLファイルは使用し始めて間もない。ビギナーズラックで上手くいっているだけかもしれない。また、細かな使い方の点で誤りがあるかもしれない。効果的な使い方や、簡易な症例報告ができればいいと考えている。目下、問題があるとすれば、スマイルUSで購入できるAF-CLが10/.06 と 15/.06 しかないことである。アソートで扱ってくれんかなあ。

ラベル:AF CL
posted by ぎゅんた at 18:00| Comment(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月10日

海外製NiTiファイル 〜 FANTA "AF MAX"


XPS and AF-MAX.Jpg
上:XP-Endo Shaper 下:AF MAX

見た目と機能的にFKGの『XP-Endoフィニッシャー(以下、XPF)』を想像させるNiTiファイルであるAF MAXであるが、色々あって現物を入手することができた。

使い方はXPFと同じで根管内の清掃を目的にエンドモーター:800rpm/1N.cmで使用すれば良いようだ。XPFが備える、温度に伴うファイルの形状変化機能は備わっていない。ファイルに湾曲があらかじめ付与されているから、根管内で回転と移動をさせることで意図的に根管壁に接触するよう設計されている。ちょっとズッコケ。

XPFの材質はフニャ◯ンみたいであったが、AF MAXは硬質でムチのようである。XPFはストレート形状のメモリ付きプラスチック・チューブに収まっている(冷却すると伸びるので収納できる)が、このAF MAXではそんな芸当はできない。

実際に根管内で動作させてみたところ、XPFに比べて「硬い」感じはあるものの、さほど違和感なく使用することができた。一方、動作時のファイルが備える「根尖へ向かう力強さ」が弱いように思えた(切削能がほとんどないからだと思われる)。


practice.Jpg
根管壁に赤墨が塗布された練習用プラスチック・エンドブロックで使用したところ、積極的に根管壁を切削する能力がない印象を受けた。写真の状態で、何度使用しても赤墨は除去されない。根管内の清掃を主目的とする、XPFに近い存在であると捉えて良さそうだ(なお、この後にXP-Endoシェイパー用いると、切削によって赤墨が除去される様を観察できた)。



まとめ
AF MAXはXPFの下位互換品のようなところである。機能と材質的にXPFに差をつけられているからである。実売価格が幾らのものかは分からないが、XPFに比べて確実に安価であることは間違いない。日本では発売されないと思われるが、通販でなら購入できる機会が来るかもしれない。あんまり売れないと思うけど…



おまけ
IFEA_11th in South Korea.jpg
直近のInternational Federation of Endodontic Associations(IFEA)の会場に、このファイルの開発会社であるFANTAがブース展示をするようなので、興味と行動力のある先生は10月にソウルに足を運んでみてはいかがだろう?

http://ifea2018korea.com/
 
私は英語も中国語も身振り手振りもアドリブも全てがダメダメダメ星人なので海外に出られません。日本でやってくれんか(暴言)
 
ラベル:AF MAX
posted by ぎゅんた at 23:17| Comment(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする