いつもお世話になっている歯科材ディーラーマンにEDDYについて資料請求したところ、このチラシを持ってきてくれた。
だってメーカーのサイトにアクセスしても英語ですし……
Cleaning of root canal is directly influenced by proper removal of debris and smear layer.
EDDYはエアスケーラーと組み合わせて使用する根管洗浄用チップに過ぎないが、プラスチック製で、動作時にキャビテーション(空洞現象)とアコースティックストリーミング(還流作用)を根管洗浄液(irrigants)に与えることで根管壁を洗浄するものである。
私が歯科医師になりたての頃、根管洗浄といえば「超音波スケーラーにエンドチップ」が金科玉条のごとく提唱されていたものである。何はさておき、エンドチップを根管に挿入して洗えばいい、みたいな感覚があったように思う。今にして思えば、Patencyの確保もなく、手用ファイルでテーパーが付与された根管形成が達成されていたわけでもない根管にエンドチップを挿入してジャバジャバやっていただけであったから、肝心の debris を洗い流せていたとは考えられないのであるが。
効果的で効率的な根管洗浄については、EDTAとヒポクロの組み合わせがゴールドスタンダードとなる時代になってから、ようやく理解が進んでいくことになる。それまでは「交互洗浄は時代錯誤なのは分かるけど、ウーン、だからと言って、どうしよう……(とりあえずエンドチップで洗っとく?)」と暗中模索で不真面目な体であった。
「超音波スケーラーにエンドチップ」は、現在でも否定される根管洗浄法ではないが、根管壁にチップを当ててはいけない点で厄介である。根管壁と接触すれば根管象牙質を削合してスメア層を発生させるし、根管の湾曲に追従できないからである。
私はエンドチップとは相性が悪いと感じていた(使い方が下手クソなだけ)ために、あまり使用することはなかった。Patencyを確保して細いゲージのシリンジ洗浄(IrrigantsにはEDTAとヒポクロ)、マスターポイント上下法で対応していた。
この頃は根管治療後の術後疼痛(Postoperative-Pain)に悩まされることが多くあったことから、根尖よりdebrisの溢出を避けるべく、吸引を併用した根管洗浄も取り入れるようになっていった(奈良の変態紳士先生にヨシダの『クイックエンド』を教えてもらった時期)。
その後、ラドル先生の根管洗浄に関する論文を読んで『エンドアクティベーター』が欲しくなったのでスマイルUSで購入して現在に至っている。
エンドアクティベーターはディスポの医療用ポリマーチップを使用しており、根管壁に接触してもスメア層を発生させないし、根管の湾曲への追従も期待できる。超音波ではないのでキャビテーションは期待できないが、適度な攪拌効果がある。日本ではマイナーだが、海外ではメジャーな器具っぽい。コードレスで取り回しは良いが、注水機能は存在しない。
EDDYは、このエンドアクティベーターの超音波版というか、進化版のような位置づけに思える。コードレスではないが、注水機能がつき、キャビテーション効果が期待できるからである。
肝心の根管洗浄に対して、EDDYにどれほどの効果があるものかが気になった。
オンラインで適当に見つた論文※によれば、EDDYは、エンドアクティベータやPUI(超音波洗浄)と比べて優位に優れた結果を示すものではないが、これら"アクティブ"な根管洗浄は、30Gのイリゲーション・ニードルでの根管洗浄(陽圧洗浄)に比べてdebrisを優位に除去できたし、スメア層除去の面でもEDDYとPUIは優位に除去されることが明らかであった、としている。実験では、Irrigantsに3%濃度のヒポクロを用いている。EDTAを使用していないにも関わらず、EDDYとPUIはスメア層を優位に除去できたが、これは、超音波によるキャビテーションとアコースティックストリーミングによる効果であろうと考えられる、と報告している。
私が読み間違えていなければ、EDDYはシリンジで根管洗浄と比較してdebrisとスメア層除去に極めて有効であるものの、エンドアクティベーターと比べた場合に有意差はとくに認めない、ということになる。エンドアクティベーターを所有していればEDDYを購入する必要は高くはなさそうに思える。スメア層の除去は、素直に17%EDTAを適応すれば良いからである。
とはいえ、どんなものか実際に使ってみたい気持ちになるのが正直なところ。
サンプルはないので、購入して使ってみる他にない。 ぐぬぬ
※Urban.Kent, Donnermeyer.David, Schäfer.Edgar, Bürklein.S, Canal cleanliness using different irrigation activation systems: a SEM evaluation
この論文に名前を重ねていらっしゃるSchäfer.Edgar先生は、根管洗浄に関する論文(総論)を出しています。⇒PDF直リンク
なお価格
1500円/本 也
おのれ