目下、私は根管洗浄を30Gのイリゲーション・ニードルによるシリンジ洗浄とクイックエンドを用いた吸引洗浄をメインに行なっている。
根管洗浄による disinfection のターゲット・エリアは根尖部1/3である。
ここを綺麗に洗浄するには、Patencyが確保されており、根尖部付近までイリゲーション・ニードルが到達し、積極的に吸い上げるなどして、根管内を満たした洗浄液を再び除去することが重要だろうと考えている。
私が行なっている根管洗浄に不足している要素は根管内を満たした洗浄液の撹拌であった。根管にヒポクロを満たした後にガッタパーチャポイントを挿入して上下運動させたりもするが、効果的な撹拌効果があるものか判然としない。下手したらポンプ作用で根尖にヒポクロを漏らしているかもしれない……私はもっとスマートな方法を欲していた。
エンドの根管洗浄といえば、超音波洗浄が主流であると思われるが、私は昔から超音波な器具と相性が悪い。エンドアクティベーターは超音波ではなく可聴域振動を利用するものである。ポジション・ペーパーかもしれないが、ラドル先生の論文に何度も登場するし、読んだら欲しくなったので購入に踏み切った。自由になる金が少ないと、欲しい気持ちをよそに高価な医療器具は時間をかけて揃えていかざるを得ない(ロールプレイングゲームと同じである)。それはそれで、購入した器具に十分に習熟した上で、さらに求めるところがあって次の器具に移っていける側面もあるから、一概にマイナスでもないのだが。エンドモーターと各種NiTiファイル、クイックエンド、セーフリラックスリムーバー、SEC1-0に続いて、ようやくエンドアクティベーターが仲間に加わった。
さてそんなエンドアクティベーターであるが、案外にシンプルな器具なのである。
医療用ポリマー製のチップを洗浄液を満たした根管内に挿入して動作させるだけだからである。
超音波ではなく可聴域振動をポリマーチップで起こすだけなので、キャビテーション効果は期待できない。根管形成して作り上げた「器」となる根管系の形態を損なうことなく(根管壁に物理的なダメージを与えることなく)安全に積極的に撹拌して、側枝をも含めて洗浄する(3D-disinfection)ことを狙った根管洗浄用器具なのである。
どのタイミングで用いるかは、ペーパーから察するに根充前のようだ(海外は即日根充が多いからだと思われる)が、貼薬-仮封前にも行うべきタイミングであろう。作業長から-2mmのところまで緩く収まるサイズのチップを選択し、使用中は2-3mmのストローク幅でポンピングを行う。チップの先端は、作業長から-2mmより先に到達させる必要はない。
スイッチを押すと「ぅヴぃ〜」とポリマーチップが鳴きながら振動する。撹拌は案外にジェントルなマナーを呈し、洗浄液が髄腔から飛び散るようなことはない。振動するチップが患歯をノックすると、患者さんはちょっと不愉快そうな顔をする。洗浄液が透明に泡立つ様は見ていて爽快だ。
ネゴシエーションが達成できなかった根管も、ヒポクロを満たして強制的に撹拌させることで最低限の消毒が達成できるだろう。単三電池一品で動作するような軽量シンプルな構造だが、頼りになる器具であることは間違いない。
エンドアクティベーターは耳目を引く際立った派手さがない地味な器具だが、SEC1-0と同じで間違いのないシンプルさが確かな信頼感につながっているイイモノ感に満ちている。口にしないだけで、愛用しておられる先生も多いのではないだろうか。私もその仲間入りだ。
ラベル:EndoActivator 根管洗浄