2017年11月21日

結合性シーラーに『ニシカキャナルシーラーBG』ちゃん!


canalsealerBG.jpg


出入りの歯科ディーラーに「先生、新しいシーラーです(買えやオラァ!)」と紹介されたのがニシカの「キャナルシーラーBG」である。キャナルシーラー・シリーズの最新作のようだ。"BG"はBioactiveGlassを意味するようだ。分類的にはMTAを40%含有する『MTAフィラペックス』と同じ結合性シーラーに属するようである。グラスアイオノマーなシーラーとか、フィラーを含むシーラーとか、ブルガリアとかいう意味ではないのである。11/24(Fri)から発売するらしい。

頂戴した抜粋資料より、シーラーが「密着性シーラー」「接着性シーラー」「結合性シーラー」3つに分類されると改めて知った(不勉強)。ひとまず私が使っているシーラーは『AHプラス』と『MTAフィラペックス』の2つ。どちらも普通以上に高価なので、代替品に変えるか、どちらかひとつに絞るかを考えていたところである。

代替品としては、(多分)AHプラスのライセンス品もしくはパクり品っぽい『Ci キャナルレジンシール』を、どちらかひとつに絞るなら『MTAフィラペックス』でエエかなぁ……と漠然と考えていた。そんなところのキャナルシーラーBGちゃん登場だったので、キャンペーン価格でディスカウントされるとの甘言もあって購入することにした。



MTA-Fillapex & AH-plus
MTAフィラペックスに関しては、造影性がちょい低いことと、生体親和性が低いと報告されている点が気にかかる。シーラーを根尖から押し出す意図はないにしても、ダウンパックによる根尖部GP加圧することで、シーラーが側枝に入り込んだり根尖部でパフを形成することはあり得るからである。材料に細胞毒性がない方が良いに決まっている。MTAフィラペックスの名の通り、「MTAな」シーラーを想像してしまうことから無条件に生体親和性が高いシーラーであると思いがちだが、報告を信じる限りそれは否定されている。ついでにAHプラスも生体親和性が低いシーラーであると述べられている。これは、困ったものだ。

シーラーに備わる物性によって根尖病変が治癒に導かれるとか良好な根充が約束されるわけではないことは自明であるが、操作性が良好で生体親和性が高くてコスト的に許容できるシーラーがあるなら、それに乗り換えれば良いのだろう。このキャナルシーラーBGが使いやすい満足のいくシーラーであることを願うばかりだ。




Claudia V. Bin, Marcia C. Valera, Samira E. A. Camargo, Sylvia B. Rabelo, Gleyce O. Silva, Ivan Balducci and Carlos Henrique R. Camargo : Cytotoxicity and Genotoxicity of Root Canal Sealers Based on Mineral Trioxide Aggregate.J Endod,38(4):495-500,2012

posted by ぎゅんた at 18:38| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月20日

テーパーのついたGPに『SPガッタパーチャポイント』


SPIDENT_06GP.jpg
Ciメディカルで購入可。60本で680円。韓国製はなぜにこうも安いのか


たとえ「もどき」であろうとも、根充法にCWCTを採用すると必要になるのがテーパーのついたガッタパーチャポイントであります。従来のラテラル根充に細工する感じで、ポイント束を根管口直下でヒートカット後にダウンパックでも良いのですけれど、気兼ねする心理的理由が2つあります。ひとつは、プラガーをメインポイントにのみ当てて根尖側へ加圧したい気持ちがあること。ふたつめは、根充操作という繊細で無防備な時間を可及的に短くしたいことです。根管形成後の器に「根尖側も含めてバッチぐう(死語)」なカタチに収まるテーパーのついたメインポイントはありがたい存在だからです。根充が苦手で好きでないから、なるべく楽したいというのがホンネだったりしますが、それは内緒。

さていつもお世話になってるCiメディカルにさりげなく登場したのがSPIDENTのテーパーガッタパーチャポイント『SPガッタパーチャ』です。.04と.06の、テーパーの異なる2種類がラインナップ。おそるべき値段ですが、大事なのは「自分の根充」とのマッチング。さてどうなるか。



結論
君は悪くないし、使いたけれど、ごめんよ……

「バカ正直テーパー」で、作業長のアペックスに達する前に根管口付近で引っかかってしまいます。

現在、採用している『ウェーブワンゴールドガッタパーチャ(Primary)』との比較エックス線写真を撮ってみました。

SPIDENT_GP and WaveOneGold_GP.jpg
『SPガッタパーチャ』は頭部でふとましくなっています。

造影性は似たような感じで、取り回しや使用感そのものはリンカイのダイアデントガッタパーチャポイントと大差ありません。頭の部分が太すぎてエンド用ピンセットで把持が難しいのも同じです。あいや困った。

ひとまずウェーブワンゴールドで形成した根管に挿入しても引っかかってしまうので、フレア形成が元々しっかり付与された感染根管の根充時にポイント先端をルーラーでアジャストして使用するぐらいしか使えなさそう。アクセサリポイントの併用を前提で.04テーパーのものを使用するとちょうど良いかも。
 
posted by ぎゅんた at 18:23| Comment(1) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月15日

【保険の白い歯】CAD/CAM冠の接着・合着操作【脱離しやすい?】


RelyXultimate.jpg
モンドセレクションみたいな権威?


この記事のまとめ
・今のところ、CAD/CAM冠が脱離しやすい印象は、幸いにしてない
・きっと内面のサンドブラスト処理が重要なんだわ!
・「キャドキャム」と発音するのが苦手で「カドキャム」と発音しており、失笑を買ったことがある。早口言葉苦手なんだよコノヤロー


小臼歯のHJCを愛し続けて10年。
これは真っ赤な大ウソ。
小臼歯に金パラ冠を合着することに嫌悪感があり続けていたことはホント。

このところ、小臼歯にはHJCではなくCAD/CAM冠を選択する症例が多い。HJCとCAD/CAM冠はどちらも健保適応であり、それぞれに特徴があるのだが、総合的な判断でCAD/CAMにメリットを感じているからである。

CAD/CAM冠を導入する前に懸念していた事項は以下のとおり。

1.早期の脱離
2.不適合による再製となった場合の費用
3.セメントをなにを用いるか?

幸いにして、今のところ早期脱離は経験していない。
CAD/CAM冠の脱離は、接着操作の不備に起因することが多いと思われる。接着操作をシステマティックに統一するとエラーが少なくなる面で有利だと考える。

私がセット前に行っていることに、なんら特別なことはない。内面にサンドブラスト処理をかけ、スチームクリーナーで吹き飛ばしてエア乾燥した後にセット操作に入るだけだ。

使用しているセメントならびに接着システムは、3Mの『リライエックス アルティメットレジンセメント』である。接着システムはこれだけで完結しているので、シランカップリング処理や、冠内面の化学的なクリーニング(「マルチエッチャント(ヤマキン)』や『イボクリーン(イボクラールビバデント)』など)は施していない。これらの役割を担うのが3Mのスコッチボンドユニバーサルアドヒーシブである。冠内面と支台歯にボンド液を塗布してエア乾燥させ、その後にセメントを塗布したCAD/CAM冠をセットするだけである。

デュアルキュア型であるから、支台歯に圧接直後に短時間の光照射を施すことです余剰セメントの除去操作に移れるものの、私は行っていない。「なんか浮きそう」な気がするからである。レジン強化型GICに代表される合着用セメントの場合と同様、化学重合が進行してある程度の硬化したタイミングで行っている。探針やデンタルフロスで余剰セメントを丁寧に残さず除去した後、最終重合の目的で光照射させている。

不適合で再製になった場合、ブロック代だけ負担しなくてはならない場合が多いようだ(考えてみれば、もっともである)。これを防ぐためには、適切な支台歯形成と印象採得、作業模型の変形を防ぐ石膏操作が重要である。
うーん教科書的。
 
posted by ぎゅんた at 15:41| Comment(10) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月10日

【デンツプライ】X-スマートIQ と ウェーブワンゴールドグライダー


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X-Smart IQ
いつもお世話になっているデンツプライの営業マン(いい男)が新製品で出ますよ〜とデモ品をもってきてくれました。お借りして使うことはできませんが、実機に触れれるのはいいところ。X-SmartPlusがコードレスになり、プログラムの切り替えをiPad miniで行う未来的インターフェースに仕上げられています。ちょいと重めだが、実際に使用すると「このズッシリとした重たさが無骨な頼り甲斐を感じることができてクセになると評判」らしいです。ほんとかそれ。

洗練された見た目、ビジュアル面で有利な患者説明用ツールの内臓、NiTiファイル掛かったトルクデータの集積などをiPad miniとアプリで管理する設計です。うまり、iPad miniを用意しないとコードレスのエンド用モーター(動くだけ)が真顔で鎮座するだけの結果になります。いまどき、歯科医ともなればiPad miniぐらい持ってるやろという、グローバルな電子デバイス事情に合わせたプロダクツであって抱き合わせ商法ではないのであります。確かに私みたいなガラケーおじさんでもiPad miniぐらいは持っていたりますけどね。EMRとの連動はまだないそうです。なくても別にエンドミニ(西連寺トレーディング・FEEDでお求めになれます)で力技で連動させられるので、私にとっては気になりません。とはいえ購入する予定はありません。いまあるXスマートプラスで事足りているからです。勤務医や代診の先生がいたり、訪問診療でエンドもやるぜな先生にはいいかもしれませんが、当院ではまだそれもありません。



WaveOneGold Glider
ところでグライドパス形成用NiTiファイルといえばプログライダーやHyflexEDM_GlidePathファイルがありましたが、レシプロケーティングのグライドパス形成用NiTiファイルが出たようです。いずれ出るだろうと思っていたので、特別に驚きもありませんし、『レシプロック』の方で先に同等品が出ていた気がします。

グライドパス形成用NiTiについては、色々と試した結果、「なんだかんだでプログライダーか……」に落ち着いています。太く直線的な根管ではNEXの15/.04を用いて、湾曲や細い根管でプログライダーを用いています。ウェーブワンゴールド・グライダーが果たしてプログライダーに代わる存在になるかは分かりません。レシプロケーティング・モーションは、ロータリー・モーションに比べて根尖側へ debris を送ってしまうことを避けられないようなので、無為な術後疼痛の発生を予防するうえでは、グライドパスをNiTiファイルで形成するならロータリー・モーションのものが良さそうに思えるし、そこまでレシプロケーティングに拘らなくても……とも思えるからです。

でもまあ、新しいモノ好きなので発売されたら試すことになるだろうと思います。



レシプロケーティング系NiTiファイルを用いた拡大形成では、根尖に debris を有意に押し出すのか?
posted by ぎゅんた at 16:37| Comment(4) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月02日

思うところあって購入したKerrのハーモナイズ トライアルキット


はーもないず.jpg

ペーストのコンポジットレジンには、私は長く3Mのシュープリームウルトラを用いている。

保険適応で操作性が良く、エナメル・ボディ・デンティンの使い分けができることと、ボディシェードのみの充填でも及第点の審美性を発揮してくれるからである。

加えてこのシュープリーム、8年ぐらい前に札幌コンベンションセンターで開催された3M主催の審美修復ハンズオンセミナーで(飛ぶ鳥にメンチ切ったら焼き鳥に化ける勢いの)青島徹児先生より使い方を学んだ経験があることも影響している。このセミナーでは自費用のシュープリームXTEを用いていたが、保険で使用できる範囲のもの(A2E、A3〜4B、A4D)でも使い方の基本は同じであり、やはり、及第点の審美性を発揮してくれることから気にいて使用してきたのである。自費でやるなら、さらなるシェード・バリエーションとティントを揃え、解剖学的なキャラクタライズを余すところなく施す芸術的仕上がりにしなくてはなるまい。


象牙質への接着システムやコンポジットレジン材料の進歩は止まったかのようで歩みを止めおらず、いまだ新たな材料が進化を遂げて市場に出てきている。

シュープリームウルトラは3Mのトンデモ・テクノロジーの集大成であり、いまだ第一線で使用できるポテンシャルにあふれているが、Kerrのハーモナイズの存在を知り食指を動かされた次第。私に限らず歯科医師は飽きっぽく浮気性な性分があり、良さげな類似品を発見すると使ってみたくてたまらなくなるのである。
とりあえずトライアルキット(エナメルシェード:A2 A3 デンチンシェード:A3 A3.5 の4種※内容量が通常4gのところ2gになっている)を購入してみた。



正中離開をCRで埋めてみよう.jpg

「前歯がだんだんと空いてきてすきっ歯になったので解消してほしい」の主訴で来院された患者さん。
賢明なみなさんはお分かりの通り、中年以降の方の正中離開ときたら、ポステリアストップの喪失によるフレアアウトを疑わなくてはならないし、その治療が優先される。

しかし「とにかくすきっ歯の解消だけしてくれ。保険な!」と強く望まれたなら、できることは限られる。荒廃した臼歯部の咬合関係に手をつけずに即席ですきっ歯を解消するとなれば、結局は接着を利用したコンポジットレジン修復で暫定回復を図るぐらいが関の山。歯質の犠牲がごく最小限で済むこと、気に食わなければ除去も容易であることから口腔内の状況変化に対して強いからである。

正中離開の解消にコンポジットレジンを用いる手法は、現在ではさほど珍しいテクニックではない。しかし、これを実現するには周到な準備と材料を使いこなす知識とテクニックが要求される。考究用模型でワックスアップをしてシリコンパテでモールドを作っておき、それを利用して口腔内で充填と賦形操作を行い、形態を回復させるべきである。

上記の写真は、来院当日に主訴の解決と「すきっ歯を解消するって、こんなイメージ?」と意識のすり合わせを行う説明を目的に行ったものである。手元に届きたてのハーモナイズトライアルキットがあったこと、セミナーで教わった青島徹児先生の「正中離開の時に使用するコンポジットレジンは、エナメル用のものを単独で用います」の発言を思い出したからでもある。どのみち説明用の応急措置でチャージもないので、チャレンジを考えた次第。

ボンディング材にスコッチボンドユニバーサルを使用し、コンポジットレジンはハーモナイズのA3エナメルのみを使用している。シリコンパテもクソもないので、セルロイドストリップスを利用してのやっつけ充填。正中の位置と肝心の形態がデタラメでブラックトライアングル目立つ結果であるが、本人は満足した様子。主訴の解決がまず患者さんの信頼関係を築く一歩であるなら(出来はともかく)、悪い結果ではない。仮歯を提供したようなものである。



ハーモナイズのペーストはわずかに柔らかい感じがしたものの、愛用のオプトラスカルプトパッドとの相性は悪くない。A系統の歯質溶け込むようにマッチングする色調と明度見事な印象。セルロイドストリップス(Kerr:Hawe Striproll)にネバっとひっつく点が残念だ。シュープリームウルトラはボディシェードメイドに明度と色調を合わせていく感じだが、このハーモナイズはエナメルシェードだけで妙に明度と色調がマッチする印象(違うかもしれんけど)。デンチンシェードを組み合わせたレイヤリングはまだ行っていないので機会を逃さずトライしていきたいところだ。

このハーモナイズは、保険で使用できるCRでありながらベースシェードのラインナップが豊富で、なんとトランスルーセントシェードも用意されている(アンバー、クリアー、グレーの3種)。保険で審美的CR充填を極限まで追求してやろうと意気込む先生の強い味方になってくれそうだ。4g入りで価格は安くなく高すぎずといったトコ。
 
posted by ぎゅんた at 18:44| Comment(2) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする