私はコア除去鉗子やダブルドライバーテクニックをメインに、メタルコアの着脱方向に力をかけることで除去させる方法を採用してきた。いうまでもなく、乱暴なコア除去操作は弾力や絶対的歯質量を失った患歯に破折を引き起こすものであり、着脱方向に一致した力で除去することでそれを予防するためである。二次カリエスの存在や、そもそもが不適合コアであった場合の除去はさして手間取ることはないものの、適合状態の良いメタルコアの場合は破折への恐怖を抱いた長期戦を覚悟して汗をかくことになる。それでいて除去の点数は32点が基本であるから、臨床医は涙目になるのが常である。
そんなおり、世界の佐久間先生に教えていただいた除去用器具がセーフリラックスリムーバーである(SmileUSで購入)http://www.smile-us.com/item1965.html
。クラウンリムーバーの動作を機械に担ってもらうようなコンセプトに思えるが、なかなかどうして、頼りになるのである。うまくいけば長いポストコアであれ数秒で除去できる(「会心の一撃」)からである。これは手動では達成できまい。前装冠やブリッジの脱離などにも使用できるようだが、目下、もっぱらメタルコアの除去用ツールとなっている。
単冠のキャストクラウン等はWAM-Keyリムーバー※や、スリット形成とマイナスドライバーでの除去で事足りることが多い(昔から慣れた手法であるから、その方法を採る)ものの、回収金属を積極的に稼ぐ狙いがあるなら、このセーフリラックスリムーバーでの除去が良いと思われるが、あまり上手くいったためしがない。
そんなセーフリラックスリムーバーも使い始めてから期間が経ち、少しずつ使い方が整理されてきた。
メタルコア除去時の私なりの使い方は以下の通りである。
1.何はともあれチップのツメを引っ掛ける必要があるから、コア体と歯質の境目を削除してツメが引っかかる場所を設ける。これには界面の接合の弱体化の狙いもある。
2.良好な引っかかりが得られているか、シミュレートする。
3.口の中に入れる前に「こんな音がして、歯に振動がありますヨ」と、わざと動作させて説明しておく
4.Let's do!
5.外れる(やったぜ) or 外れてこない
外れてこない、手応えがない場合
↪︎方向が悪いのではないか ?
↪︎メタルコアに力が加わっているか?
↪︎鬼のスーパーボンド合着?
↪︎界面接合の更なる弱体化のための切削が必要?
↪︎他の方法でのコア除去切り替える?
を考える。
ってなわけで卑近な二例
ア)急化perでコア除去感根処に踏み切らなくてはならないケース

こんなかんじからスタート

コアと歯質の境界を細いバーで削る、ツメの引っかかる場所の準備

「あらよ」ってな感じにツメを引っ掛けて動作。外れる場合は1〜3秒で外れる

「本日のエモノ」
イ)保存したい犬歯に、長くて太めのポストコアが入っているケース

打診痛++。浸麻して処置

舌側面観。コア除去鉗子でもよさそうだが、セーフリムーバーで除去を狙うことにした

コアと歯質の境界を削って、ツメの引っかかる箇所を設ける

秒殺。

やったぜ。
とまあ上手にできた症例を挙げたわけだが、上手にできなかった(苦戦した)症例もまた、存在する。
この除去器具は、外したい対象物にツメをがっちり引っ掛けて力を加えられるかどうかが勝負所である。引っ掛けられない場合は、使用をスンナリ諦めた方が時間を無駄にしないだろう(しかし、苦戦させられる戦いが予想されるが……)。
もっと除去の症例数をこなして、「こういうシチュエーションではこう使って除去するのだ」的ノウハウを蓄積していきたいところだ。
※ワムキーリムーバー

http://www.crossf.com/_userdata/wamkey.pdf
冠の除去に使用する。⇒製品紹介URL
No.1をメインに用いるのだが、使用しているうちにシャンクがへしゃげて先端が折れてしまった。
それ以来、No.2と3を使用している。モノの割に高価な気がする。