まとめ
10代の女の子が前歯に振り回されながら成長するドラマ。米国の歯科が(子どもの視点から)描写されている点で珍しい内容では。英語が苦手な日本人のために「英語市場」には様々なアイテムがあふれている。昔からも、これからも。それでもなお、英語が使えるようにならない日本人は、よほど英語と相性が悪いか真剣に勉強に取り組まないか、バカなのか。不思議なのは、英語自体への興味はだれしも強く有していることである。英語圏へのコンプレックスなのか憧憬なのか、学生時代に英語に苦労させられたことへの復讐心-征服欲があるのか。敵性外国語に触れるなどけしからん!と声をあげる人は時代錯誤である。小学校から英語教育が始まるのは英語偏重が過ぎるし意味がなかろうと思うので私は反対なのだが、いずれにせよ、日本人のなかで英語が堪能な人は少ないままである。できる人が羨ましい。うむ。
英語ができない私が何を論じても羊羹のビッカース硬さ試験みたいなものだが、英語ができなくても全く支障なく人生を歩んでいける恵まれた環境にあることが日本人の英語音痴の主原因であるように思う。英語はコミュニケーションのひとつの道具にすぎず、道具とは、使わねば腕が錆び付くし、使う機会がなければいつまでたっても使いこなせないままだからである。
私が昔から好きな英語初心者向けの読本に「ビッグ・ファット・キャット」シリーズがある。ヒタヒタと売れ続けるベストセラーであるから、どこの図書館の英語の一角にもあるのではないだろうか。
「
英語達人列伝」にもあったが、英語上達の秘訣は多読にこそあるとする考えは重要である。ただし、これを真似をしようにも、まずは英語が読めなくてはならない。そこにあって、多くの人にとって「英語を読む」といえば、学校教育が脳裏をかすめるだろう。中学高校のリーダーの時間や試験の長文問題が、頭に浮かぶ・萎える・やめるの三段活用が発動することになる(ならない人は英語ができる人だ)。
「ビッグ・ファット・キャット」シリーズは、とにかく英語の文章を楽しんで読んでいく(その結果として、英語に慣れていく)ことだけに特化させた作りになっており、読むと物語に引き込まれる面白さがある。学校教育の無味乾燥に近い英文とは一線を画し、「とにかくまず英語を読んでみる経験」を積む上で極めて良質的である。そして、英語に慣れ始めたら、是非とも児童書を手にしてほしいとの指南がある。英語圏の児童書は極めてクオリティが高く、大人が読んでも面白く、難易度調整が容易だからだという。特にペーパーバックが入手と価格の面でオススメされる。
ペーパーバックに代表される洋書は、不思議な質量感と魅力に満ちている。読めなくても、手元にあると特別な嬉しさを感じる質量がある。本と英語が好きな人であれば、この感情が理解できるだろう。本棚に置くと雰囲気が締まるのである。
エンドドンティストも登場するぞ! そのなかで紹介されていた「低難易度の児童書」が、この『Smile』である。
漫画だこれ!という驚きと、これなら読めそうだわいという安堵感、歯科が登場することへの興味が入り混じるステキ具青。米国の歯科事情が、その医療費の面はなんら語れてはいないものの、子ども視点で描かれるのは珍しいものかもしれない。
教科書な英語からちょっと離れた会話中心のテキストであり、文章量と英文解釈の難易度はそこまで高くない。直訳して意味を取っていくというより、英語の会話のリズムやテンポを楽しむ感じで読んでいくと良さそうだ。ああ、こういう会話をするのね、みたいな。
表面的ではあるが歯科の内容がふんだんに含まれているので、医院の待合室に置くとサマになりそうである。矯正専門の歯科医院とかは独自の瀟洒な雰囲気があるものだから、とくにマッチしそうだ。患者さんに「先生、ここのコレどういう意味?」と訊かれる
リスクは織り込み済みでなくてはならないが、なんとなるだろう。それぐらいの難易度の本。普段から論文を読まれている先生なら楽勝だろう。
私はそうではない。ガハハ がっでむ。