世の中の歯科用ユニットはモリタのスペースラインだけにあらず。様々な、メーカーごとの個性や思想が反映されたユニットがたくさん存在します。デンタルショーに足を運ぶとそこ家具屋のベッドコーナーよろしくユニットがずらりあって目移りしちゃうのは私だけではありますまい。でもたいていは、保守点検と慣れ・相性の面でいずれかのメーカーのユニットに揃えている医院が多いはず。それがモリタのスペースラインであるのが当院、というだけの話。
スペースライン(シリーズ)の特徴としては、PD診療を基軸とした設計ということでタービンやマイクロ、3wayシリンジ、バキューム等がヘッドレストのすぐそばにあります。この配置は昔のユニットでは一般的だったらしいのですが、いまではスペースラインぐらいにしか見られない様子。スペースラインに慣れていると麻痺しちゃって気づきにくいが、この配置、個人的にはあまり良くないように思う。ホースを戻すときに患者さんの髪を挟み込みかねないし、バキュームチップと接触してもおかしくない。一番恐ろしいのは、バーをつけた状態のタービンヘッドやコントラに術者の太ももが接触する事故のリスクが高いことである。ふとももあたりの服の生地は薄いのが普通だから、バーの種類にもよるが、平然と貫通する器具刺し事故は起こりうる。刺さらないにしても、軽く接触しちゃうことはたまにある。この接触事故、なぜかたいていゲーツドリルが犠牲になるのであります。

一度デンタルショーでモリタの人にこのことを伝えたところ、「先生、それはPD診療がなっとらんのです。スペースラインをさらに効率良く診療にお役立ていただくために、PD診療セミナーにご参加になられては如何でしょう?」と。まあそうかもしれんけど、なんだかなあ。合う人にはドンピシャなユニットなのでしょう、きっと。気に入ってますけどね。
ところで、この新ユニットのお値段は決して安くはない。数字だけで判断すれば、やや高くは感じる。さりとて、謎の100万円代ユニットに手を出す勇気はない。故障することなく、劣化せず、長期的に安定して使っていけるならランニングコストの面で高い評価ができよう。さて、どうなることやら。モリタのユニットはトヨタ車みたいなもんで堅牢故障知らずといわれるが、これもどうなのだろう。ユニット選びは悩ましいですね。