和田精密主催のとある勉強会に参加したおり、協賛企業であるトクヤマよりロハ(死語)でいただいた即重がこのキュアグレース(トライアル)である。気前がいいですな。
学生時代から実習で触れ始めた即時重合レジンは、プラ製部品の暫間修理に始まって仮封・TEK・個歯トレー・個人トレー・義歯と様々に姿を変えて働くユーティリティなアイテムであり続けている。
私の中で「即重」といえばGCのユニファストUである。ユニファストVが出て年月が経っているのに、未だにユニファストUが第一線で使用され続けている不思議(ユニファストUの在庫が切れ次第、Vに置き換わると聞いた記憶があるのだが)。ユニファストVは、Uと操作感が微妙に異なるので、それを嫌った先生がとても多かったのだろうか。即重は、わずかな使用感の違いが使用者の好みに大きく合致する材料なのである。もっとも、単にルーチンに使い続けている先生が多いだけかもしれない。うちの親父のことである。なんだかんだで私の手に馴染んでいるのもユニファストUである。
このキュアグレースは、低重合収縮と発熱反応の抑制に加え、重合硬化後のレジン切削時に発生する、即重モノマー特有のあの臭いを芳香で軽減させている設計になっている。実際に硬化したレジンを削合するとほのかにグレープの香りがする。試しにTekを作ってみる。混和泥の重合時の発熱は確かに小さく、重合収縮も抑えられている気がする。操作感にもクセがなく扱いやすい。カーバイドバーでトリミングしてもボソったり割れたりしない。悪くないんちゃう。
口腔内で吸湿したレジンは、とにかく臭いが酷くなるのが欠点だ。その臭いは激烈で、とくにTEK調整や義歯調整にあたった二日酔いのドクターを嘔吐させ続けてきた。このキュアグレースであれば嘔吐せずに済む!…かどうかは分からないが、多少はマシだろう。多分。
即時重合レジンで見過ごされがちなのはそのコストである。キュアグレースに限った話ではないが、即重は意外に値が張る材料だ。過去、学生実習や研修医時代にコストを気にせず遊び半分でユニファストUをアヘ顔で使いまくっていたものだが、もうジャンピング土下座でゴメンナサイとしか言えない心境。
ユニファストUとこのキュアグレースより安価な即時重合レジンも存在するが、まだ使ったことがないのでなんとも言えない。最安価の即重と最高価の即重だと、どれほどかの違いがでるのだろうか?