各メーカーから様々なKファイルが販売されている。
安いものから高いものまで様々だが、「ハンドKファイル」は、最安値の部類であろう。FEEDが取り扱っている。
術者と指と相性と
手用ファイルは術者の目となって根管内に挿入されるわけであるから、術者の手にいかに馴染んでいるか、また扱いやすいかどうかが問われる。高価なファイルであれば良いと一概には言えない。術者と相性の良いファイルが良いのである。
個人的に相性の良いKファイルはマニーのKファイルである。思えば学生実習のころからの付き合いだが、指に一番しっくりくる。手用ファイルを用いる場面の大部分は、ネゴシエーションや根尖部の探索、慎重な拡大形成にあるが、このうち、ネゴシエーション、ことにイニシャルトリートメント時のネゴシエーションがつとに重要である。初めて根管に触れる歯科医師の責任は極めて大きいのである。
ファイルを不用意に操作して、根管の本来の走行を破壊してしまうと、治療の難易度が跳ね上がる。細い穿通用ファイルを上下運動だけで根尖孔から通過させることでが理想的である。狭窄・閉鎖根管で、どうしても回転運動でファイルに推進力を加えなくてはならない場面もあるが、穿通用ファイルは、回転させず、上下運動だけで根尖孔から通過させたいところ。よほど意地の悪い湾曲のある根管でもなければ、なんとか達成できるはずだ。このネゴシエーション時に用いる穿通用ファイルこそ、術者が最も重要視すべき手用ファイルではないか。
ネゴシエーションのための穿通用ファイルになにを選定するか
色々と試してきたが、私はマニーの#10Kを第一選択にしている。単純に使い慣れていることとコスト面でバランスが良い(もう少し贅沢すれば、デンツプライのセンシアスフレクソファイルの#10に切り替えたいところだが高価である)。
たいていは#10Kで対応できるが、著しい狭窄根管では#08Kが必要になることがある。その場合、マニー製のものを用いている。#08Kは細く、すぐにへしゃげてしまうので使い捨て前提なところがある。一本、100円ちょっとやったけ…と思いながら、へしゃげた#08Kを交換していくのは、ケチな性分の私にはストレスだ。ディスポ感覚で使えるほどの格安ファイルを切望していたのは私だけではありますまい。
そんな折、FEEDより格安ファイルの取り扱いが始まったことを知った。
ひとまず試験的に#08のKファイルの21mmと25mmを一箱ずつ注文した。
実物はマニーのそれとそっくりである。言葉汚くいえば「中国製模造品」であるが、65円/本であれば文句をいうのも無粋。よほど品質が悪くなければディスポ感覚で使うことができよう。
結論から述べると、この#08Kはネゴシエーション用に採用できる品質ではなかった。マニーのそれと比べて明らかに太いのだ。狭窄根管のネゴシエーションに早速、用いたハンドKファイルの#08は、上下運動しようが錐揉み運動(watch-winding)させようがサッパリ捗らない。「だめっぽいなこりゃ だめっぽいっすね…」と、マニーの#08Kに切り替えたところ、わりかしアッサリとネゴシエーションできたのだった。実物同士をよくよく比較してみると、気のせいでは無いと思うが、ハンドKファイルのほうが針がふとましい。少なくとも私にとって、ネゴシエーション用にハンドKファイルの#08を用いることはできそうもない。#10Kは試していない。
ネゴシエーションという術者の責任の極めて大きなステップは、使い慣れた、指先の相棒というべきファイルでルーチンに挑むべきなのである。