根充によってシーラーが根尖孔から溢出すると、根充後に疼痛を訴えられることがある。特にユージノール系シーラーは強い痛みになる。最近のシーラーはレジン築造の普及に伴って非ユージノール系が主流になっているので、拘りでもなければ非ユージノール系のシーラーを選択すべきだろう。とはいえ、そんな非ユージノール系のシーラーであっても、根尖部から溢出すれば痛みが起きる点では変わりはない。
根尖孔をガッタパーチャで緊密に封鎖するためにはシーラーを併用する方法が一般的である。どのシーラー(製品)を用いるべきかは、なんとも言えないが、垂直加圧充填を行うことがある私はAHプラスを使用している。これは古典的なシーラーだが、いまだに世界中で使用されている点で実績がある。
シーラーが根充によって根尖から溢出すると確認デンタル写真上でパフとして写る。パフの規模が小さければ、根充の瞬間(シーラーが根尖孔からでた瞬間)に一瞬の痛み程度で術後疼痛はないまま経過することが殆どだが、パフの規模が大きくなると術後疼痛が大きくなりやすい。
拡大した(術者が機械的に触れた)部分までをシーラーとガッタパーチャが、それから先の、生理学的根尖孔から解剖学的根尖孔あたりの空隙にシーラー少し漏れて、小さなパフとして確認デンタルに写るぐらいの規模が望ましい気がしている。シーラーは異物なのだから、根尖から溢出させる量は少ないほうが良いに決まっている。決してオーバーさせてはいけないという考えもある。そのなかで私は、小さなパフが得られる根充が好きである。実際に優れた根管充填の証拠になるかどうかは別として、上手く根充が出来た達成感があるからだ。側枝までシーラーが入り込んでいる像が得られると本当に嬉しい気持ちになる。多分に術者の恣意的な感情である。
パフは大きくて目立っていれば良いものではないから、これぐらいの規模のものが理想的かなと思う。この程度のパフであれば、痛みは全くないか、ごく軽微な一過性で済む。
※ラテラル根充。形成があまり連続的でなく、根管口付近の充填が甘いのがイマイチ
拡大した(術者が機械的に触れた)部分までをシーラーとガッタパーチャが、それから先の、生理学的根尖孔から解剖学的根尖孔あたりの空隙にシーラー少し漏れて、小さなパフとして確認デンタルに写るぐらいがよさそうだ。無用な根充後の痛みも殆ど無くてすむ。
流れ出たガッタパーチャによるパフはよろしくはあるまい。溢出したガッタパーチャ表面にアスペルギルスがバイオフィルムを形成する可能性についての報告があるからである。溢出したガッタパーチャも、長期的にみれば吸収されていくのだろうが、存在感の大きな異物であるから、決して根尖からは出してはならないと考えておくべきだろう。
なお、根尖部の洗浄が不完全な場合に根尖からシーラーやガッタパーチャが溢出する根充をすると、感染源を根尖孔外に押し出すことによる術後疼痛がでることが多い。場合によっては根尖病変を形成させる医原性行為になりうる。根尖部から出してしまった「異物」を除去するためには、多くの場合、外科的アプローチを要することになる。そういう意味では、アンダーであれば根管からのリトリートメントが利く余地が残されている面で安全といえる。しかし、アンダーであるとすると、格好の良いエンドからは遠ざかる気がしてならない。拡大したところまで根充されておらず死腔があれば、将来の感染根管治療の予約チケットを渡すようなものだ。