2016年01月27日

Long time no see 綿栓根充

自発痛があって、打診痛もそこはかとなく認める。
そしてX-ray写真上で、歯髄に近接ないし接するう蝕病巣が存在する。

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例えば、こんな写真の右上5。この歯がズキズキ痛いです。そして、軽度の打診痛を認める。あ、生PZしたFMCの二次カリからの歯髄炎やな、と貴方はほとんど脊髄反射のノリで診断を下すハズだ(隣在歯4のperはひとまず主訴の部位と違うのでおいておいて)。

よーく写真を見ると、根管がいじられた形跡があるような不穏さがあるものの、まずやらねばならないことは除冠して根管にアクセスすることだ。浸麻して、除冠へ。きっと、冠の下はう蝕だろうと想像しながら、冠を撤去。するとそこには、セメント築造されたような支台歯が。生PZにしてはおかしくありませんかね。ZOEとおぼしきセメントを雑用エキスカでこじれば、う蝕まみれなもんだからゴボッと取れる。はたして、汚染されたセメントと軟化象牙質で満たされたような髄腔が現れた。変色した綿のような異物があるので、その端っこをピンセットで引っ張れば、汚染された綿栓が現れる。排膿や出血はなかった。前医は、綿栓根充して支台築造して、FMCを合着していた訳だ。抜髄と思いきや、感染根管治療になってしまった。誤診だ!そして綿栓根充に出会うのは久しぶりだ!

ここからは、初回時の感染根管治療で気をつけておきたいポイントを遵守して慎重に攻略を進めねばならぬ。下手をすると著しい術後疼痛をきたし、患者さんに苦痛を与えるばかりでなく信頼関係がスポイルされるからである。

今回の場合、自発痛があったことから、おおまかに考えられることは

1.残髄炎
2.根尖歯周組織の急性炎症

であろう。そして、その主原因は綿栓根充ではなく、う蝕によるコロナルリーケージにある。
根尖歯周組織に対して根管を無毒的にして生体の治癒力を発揮させる方向にもっていかねばならぬ。そのためには、根管内の感染性有機物の徹底除去が原則である。

攻略せんとする根管を前にすると、とかくファイルを突っ込みたくて堪らぬ気持ちになるものだが、その前に済ませねばならないポイントがある。ファイルで根管の攻略に入る前に、根管口から歯冠側の軟化象牙質を徹底的に除去するのである。これが不十分だと、根管内は常にリーケージに晒されるがままになってしまうし、細菌供給キャンプを根管口周囲に前線配置しているようなものだ。軟化象牙質はスプーンエキスカやラウンドバーを用いてゴリゴリゴッソリ徐々し、綺麗な象牙質に囲まれた根管口を確保しなくてはならない。この軟化象牙質除去の時点で、患歯保存の可否も決まってくる。健全歯質が多く残っている方が望ましいのはいうまでもない。苦慮するのが、軟化象牙質除去後に患歯が縁下残根に至ったケースで、この場合、抜歯するかMTMか外科的挺出をするかを検討する必要が出てくる。

軟化象牙質の除去が終わったら、いよいよ根管内部へと駒を進めていくことになる。ここでも、まだファイルを突っ込むことには慎重であった方が良い。ゲイツバーや、クラウンダウン用の号数とテーパーの大きいNiTiファイルでコロナルフレアを形成する要領で、まだ触れられる範囲の感染性有機物の除去を狙うのである。届く範囲での根管洗浄も欠かしてはならない。

根管をネゴシエーションすれば、必ず、根尖歯周組織に根管内の感染性有機物を押し出す。この時に押し出した感染性有機物が多ければ、当然、フレアアップや大きな術後疼痛につながる。ネゴシエーションの前に、できる限り根管内の感染性有機物を除去しておくことがポイントといえる。

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そんなわけで、冒頭写真の患歯は、綿栓を除去後にまず徹底的に軟化象牙質の除去を行った。結果、歯冠部は殆ど失われ、ペラペラな歯質が残るだけになったものの、縁下残根とまでは至らず安堵。髄空〜根管口付近の軟化象牙質も追求・除去していくと、頬舌方向に細長い瓢箪型の跡が現れた。ファイルで根管口の存在を探ると、狭窄で分かりづらいが、2根管であることを確認できた(まだネゴシエーションはしない)。

ゲイツバー#2で根管口直下の拡大と機械的清掃を行い、30Gの洗浄針が入るところまで挿入して水で洗い流す。ネゴシエーションの前に「さわれる範囲の徹底清掃」を行うことで術後疼痛を抑えることができるので、時間をかけてもかけすぎることはない。このステップをすっ飛ばしてファイルを穿通したところで、治癒には結びつかない(それどころか、大きな術後疼痛が出たり、臨床症状が消えないままになる)。ファイルを穿通しさえすれば臨床症状が即座に消失したり、根尖を治癒に導けるほど感染根管治療は甘くない。抜髄より遥かに難しい治療なのだ(保険点数が抜髄よりの低いのは不可解)。
 
posted by ぎゅんた at 22:31| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治(回想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月22日

GCゼネシス・フィル

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ゼネシス・フィルは、GCのエンド関連であるNEXシリーズの、Continuous Wave Condensation Technique(CWCT)用の電熱式根管プラガーである。元々はシステムBが元祖だと思われるが、その後、CWCT法がメジャーになるに伴い、類似の、コードレス化された器具が市場に出るようになった。このゼネシス・フィルもそのひとつのようだ。

加熱温度やプラガーのテーパーなどは、NiTiファイルの形成が規格的であるのと同様、どの製品であってもパッケージングは似たようなものである。歯科材料や器具は決して安いものではないし、故障しらずの堅牢さが求められる。安い製品だからと飛びつくと、操作性が悪かったりいざという時に故障したりするものだ。あまりに高すぎる場合はともかく、実績や評判の良い製品を選択すると間違いがないことが多い。ゼネシス・フィルの評価が高いの低いのか、なんともいえないが、ディーラー担当者によると、そこそこ売れた製品らしい。デモ機を借りるまでに順番待ちであったことを考えると、電熱式根管プラガーを買おうと思ったら、まず検討に加える製品のひとつだと思われる。購入に値する製品かどうか、気になるところだ。

このたび、GC大阪のご厚意に甘え、デモ機を拝借することができたので感想を記しておきたい。

実機は、ホワイト基調の外観でそれほど重くない。温度設定も150°、200°、300°が選択可能で、ボタンを押せば即座にプラガー先端が加熱され設定温度に達する。充電スタンドはLEDのアクセントがあり、プラガーチップを置いておけるシリコンの台がある。狭い場所に設置できることと、チップの置き場所がある点が気が利いている。

肝心の操作性および取り回しは、ややイマイチと言ったところで、バッテリーが内部に存在する以上、止むを得ないところでもあるが、おしりが重くてアンバランスなところがある。操作側の意識としては、プラガー側の頭の部分で細かく力を加減した作業を行いたいのにお尻が重くてシーソーよろしく「持っていかれる感」がある。ボタンの位置も、掌で持った感触よりもやけに前方に位置している感じがする。ボタンを押す感触は悪くないし、ボタンを押しっぱなしにして数秒すると通電がカットされる安全機構とビープ音は悪くないだけに惜しいところだ。

と、文句をつけてはいるものの、抜去歯牙でCWCTの練習(ウェーブワンゴールドで拡大した根管に.06テーパーのGP)を行っているうちにさして気にならなくはなったことは記しておきたい。致命的な設計ミスはないのである。安すぎず高過ぎず中庸な価格帯なので、デモ機を触って特に気にならなければ購入して間違いのない製品ではないだろうか。競合製品はモリタのダイアペンやヨシダのシステムBコードレスパックかな。
 
ちなみにゼネシス・パックには触れてません。
 

2016年01月17日

ウェーブワンゴールドと根管洗浄

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まとめ
・シリンジによる根管洗浄を行うなら、洗浄針も吟味しましょう
・抜去歯牙で根尖部での洗浄針の動態を確認しよう


抜去歯牙で練習だ!
充填物やう蝕病巣を除去し、髄腔穿孔と根管口明示、コロナルフレア形成を行う。
根面の歯石を除去しておくと見栄え的に綺麗で、練習後のコレクション栄えする(かもしれない)。

#10Kファイルでネゴシエーションしたら、作業長を決定する。
作業長は、ファイル先端が解剖学的根尖孔に達した長さから1mm引いた数値にまず決定する。この長さの作業長にウェーブワンゴールドプライマリが達するぐらいになったら、再度、同じ方法で作業長を測定する。長さが変化していることが多いからである。根管洗浄とリカピチュレーションは忘れずに行って、根管が閉鎖していないことと、レッジを形成していないことを確認しながら進めていこう。

再設定した作業長で、ウェーブワンゴールドプライマリがスカスカになるまで拡大する。具体的には、根管壁360度にブラッシングモーションかけるのである。この時、作業長を越えると根尖孔が大きく破壊されてしまうから、そうならぬよう十分に注意しなくてはならない。
ただ、ウェーブワンゴールドは根尖方向へのあらぬ掘削移動(ファイルが根尖方向へ持っていかれる力)が絶妙なバランスで控えめなので、注意深くやればそうそう事故らないはずだ。これぐらいまで拡大して、ようやくISO規格的な、(この場合なら)アペックスが#25でテーパーが7度の根管に仕上がってくる。

ここまで終えたら、シリンジ洗浄に移るとよい。根管内〜根尖部の削片が洗い流される様を観察するのである。

私が現在、根管洗浄に用いているのは3.0mLテルモシリンジ(ルアーロック)とデンツプライ洗浄針である。このデンツプライ洗浄針は、ラウンドエンドでダブルホール式になっている。フラットエンドのそれに比べて、根管壁にぶつかることが少なく、またデザイン上、根尖孔から洗浄液の溢出を最小限にできる点で優れているように思う。

ウェーブワンゴールド:プライマリで拡大した根管では、27Gの洗浄針であれば根尖から3mmぐらいまで洗浄針が到達する。根管洗浄で本当に洗い流したい部分は、それより先のアペックス付近であるから、これでは洗浄が不十分だ。ここで30Gの洗浄針を用いると、アペックス-1mmまで洗浄針が届くようになる。根尖孔が破壊されていなければ、洗浄針は根尖から溢出することはない。

ウェーブワンゴールド:ミディアムで拡大した根管は、#35/.06であるから、30Gの洗浄針はアペックスに達することになる。それでも、根尖孔が拡大されていなければ洗浄針は根尖孔外に突き出ることはない。

なお、洗浄針が細くなればなるほど、洗浄針の先端が外力で破損するリスクが高くなる。洗浄針の側面にふたつのホールを持たせているので、わずかな外力でも折れ曲がってしまう。根管内で破折したら目も当てられない。30Gはかなりセンシティブな扱いを要求される。


十分に洗浄できているのだろうか…?
シリンジを使用した根管洗浄は、例えアペックスまで届いたとしても、完全にデブリを除去できる保証はない。例えデブリを浮き上がらせたとしても、その時点で根管内から吸引されなくてはまた沈下してしまう。理想的には超音波でキャビテーションさせながら吸引する方法がベストであろう。ヨシダのクイックエンドが気になる今日この頃。




(おまけ)
記事中にあるデンツプライ洗浄針は、カタログ価格だと25本入りで5000円とある。殆どディスポ扱いになる消耗品のくせに、なにこの価格。4枚切り食パンじゃあるまいしスーパーセレブ!これはいただけぬ。もう少しコストを抑えなくてはなるまい。かといって、100本入り700円ぐらいのフラットエンドは悪魔的安さが魅力であるが、根尖部の洗浄に用いるには(個人的には)二の足を踏む。

おりしもそんな中、通販大手のCiデンタルにある「Ciイリゲーションニードル」のダブルホールが25本入りで1980円とある。パクリ品に思えるかもしれないが、その正体は同じだったりする。というのは、デンツプライ洗浄針もCiイリゲーションニードルも、どちらも製造元は韓国のシーケーデンタル社なのだ。デンツプライ洗浄針はブランド料が上乗せされているのかどうかしらないが、こればかりはCiデンタルで買わざるをえない。なおCiデンタルは我が石川県の企業。えこ贔屓する気持ちはありませんが、一応。

ラベル:根管洗浄
posted by ぎゅんた at 23:31| Comment(9) | TrackBack(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ウェーブワンゴールドとXスマートプラスについて

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うだる序文
数年前の自分のエンド臨床からは想像もつかなかったことだが、NiTiファイルはもうエンドに欠かせない道具になった。NiTiファイルは高価なので、保険診療のエンドの点数を思えば考えなければよかったとなるが、ケチな自分であっても高いコストを容認して使わざるを得ない。それだけのメリットがあるからである。

NiTiファイルを用いるのが確定路線であるなら、あとは自分のスタイルや信条、相性に合致した製品を選定し、その製品と心中する気概で使いこなして行くことである。言うまでもないが、揃えるNiTiファイルはシンプルにするべきだ。アレコレと種類を揃えても結局、使わないファイルがでてきて死蔵させてしまうものだからである。


NiTiファイルは何を使うのか?
結論から述べていくと、私はNiTiはデンツプライのウェーブワンゴールドに決めた。抜去歯牙で試せば試すほどにレシプロケーティング・モーションの凄さを実感したからである。

ロータリー・モーションのNiTiファイル群は、まだ在庫も抱えているが、目下のところ用いていない。ウェーブワンゴールドの説明書にてその使用が推奨されているプログライダーも、使用することをやめた。ロータリー・モーションで、破折のリスクを払拭しきれないからである。


ウェーブワンゴールドを用いての歩き方
説明書に忠実に従うと、#10Kの後にプログライダーグライドパスを形成してからウェーブワンゴールド:プライマリを挿入することになっているが、先述の通り、私はプログライダーを用いていない。

髄腔穿孔、根管口明示、コロナルフレアを形成したら、マニーの#10Kでネゴシエーションする。#10Kが根尖孔より穿通したら、抜かずに上下1mmの範囲でファイルの抜き差し運動を30秒間ほど行って根管の通路を確実にする。ウェーブワンゴールドの使用はここからである。もし、根管が極端に狭窄していればスモール(20/.07)を選択するが、基本的にはプライマリ(25/.07)から始める。

ウェーブワンゴールドは、動作させたら常に上下に動かすようにしながら、根管に挿入して拡大形成させる。キチキチキチ…と音を立てるファイルを力を抜いて抜き差し運動する。根管に刺した時に、根尖部に沈むような感触があるわけだが、そのままにしたり、根尖方向に押しつけたりしてはいけない。この抜き差し運動を四回ほど行ったらファイルを抜いて、根管洗浄して削片を洗い流す。ファイルに付着した削片の除去も忘れてはいけない(目の細かいスポンジに突き刺して除去すると楽)。そして、#10Kファイルでの再帰フィリング(リカピチュレーション)を行い、根管がつまらないようにする。これを繰り返して、根管を拡大していくのである。

最初は「ファイルが作業長までぜんぜん入らねえじゃねえか!」と感じるのだが、繰り返しているうちにいつの間にか作業長に達するようになっていく。クラウンダウン形成である。

ウェーブワンゴールドはレシプロケーティング・モーションで、レッジ予防に有効と考えていたが、それは本当で、レッジを形成しにくいことを実感している。ロータリー・モーションのNiTiでクラウンダウンを行うと、少なくとも私の経験では、レッジができがちであった(なので、プロテーパーネクストはフルレングスで使っていた。ロータリー・モーションのNiTiファイルはストレートな根管であれば、優秀な働きを示す。しかし、湾曲根管では破折とレッジ形成に神経質いにならざるをえなかった)。


今のところ考えつく、ウェーブワンゴールドの長所と短所を書き出してみよう。

長所
・ファイルの種類が4種類とシンプル
・レシプロケーティング・モーションがファイル破折とレッジ形成の予防に確実に寄与している
・ファイルがフニャッと柔軟
・レッジやトランスポーテーションを起こしにくいクラウンダウン形成の形をとれる
・ブラッシング・モーションで根管壁をちゃんと切削する
・歯髄をからめ取るように除去してくれることがある
・破折までの耐久性が極めて高い(個人的な感覚)

短所
・高価
・レシプロケーティング・モーションに対応した専用モーターが必要
・間違ってロータリー運動させたら即死
・細いストレートな根管なら、ロータリー・モーションのNiTiの方が形成が早い
・根管に挿入して動作させるごとに洗浄やリカピチュレーションが必須

おまけ
・Xスマートプラスはすぐに電池切れになる虚弱仕様



ウェーブワンゴールドに限らず、レシプロケーティング・モーションのNiTiファイルは独特な動きをするから、実践導入の前に抜去歯牙を用いて充分に練習を行い、ファイルの挙動の確認を行っておかなくてはならない。

posted by ぎゅんた at 00:54| Comment(2) | TrackBack(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年01月14日

目下のところの根管洗浄さん

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味噌汁の具はじゃがいもとワカメのコンビが好き

給食は、皆が席につき、「いただきます」の合唱をしてから食べることができた。それが終わるまでは、オアズケ待機である。あるとき私は、味噌汁の腕を目にして、黄土色の奔流に気づいた。味噌の細かな粒子が、熱による浮力対流で模様をえがいていたわけだが、私はその不思議な美しさに目を奪われたのだった。

根管形成にウェーブワンゴールドを用いるなら、(根管に挿入して引き抜いてきた)ファイルに付着する削片や根管内発生する削片をこまめに除去することとプロトコールに示されている。ファイルに付着した削片は、アルコールガーゼで拭ったあとにファイルスタンド等のスポンジに突き刺し抜き刺しすれば除去できる。一方、根管内に発生した削片はどうだろう。これは、洗浄で洗い流すほかになさそうだ。27Gの洗浄針を根管内に挿入し、洗浄液をゆっくり注入しながら上下運動させると、根管内から漏れてくる透明の洗浄液の中に白い削片がフワッと入り混じりながら飛び出してくるのが目視できる。不思議な美しさでもなんでもないが、それを見つめていると少しばかり幸せな気持ちになるのだった。


根尖部の洗浄が不十分であれば、それは根尖部の異物の遺残に他ならないから、緊密な根管充填は叶わないことになる。また、根管充填された根充材が永久に根尖部を封鎖し続けるとは思えない。封鎖がルーズになったとき、根尖部が洗浄されていて異物がなければ、生体の生命力の揺り籠の中に居続けられるのではないか。いずれにせよ、根尖部の根管洗浄は極めて重要なステップにある。

根管洗浄のテクニックや用いるIrrigants(洗浄液)はたくさん存在する。ここにすべてを記載することなどできやしないし、この方法がベストだと結論を出すこともできない。ヒポクロとオキシドールの交互洗浄を行っている先生も多いだろうし、その古典的なテクニックが全く無意味な根管洗浄かといえば、そうは思えない。交互洗浄なんてダメだよ!と断ずることができるほど、私は根管洗浄に明るくはない。
「現時点では、この方法を用いている」と述べることはできるけれども、分からないことばかりである。

根管洗浄に関して、これだけは無視できないんちゃう?的ポイント」なら挙げることはできる。
それは、

1.本当に洗浄したい部分は根尖部
2.その根尖部の洗浄は、かなり難しい
3.根尖部は穿通されて交通があり、最低でも25号以上、テーパー6度以上の拡大がないと満足に洗浄できない

こんなところである。
その上で、どの薬液を選択するのか、組み合わせるのか、濃度は、などが問われるし、一般的なシリンジ洗浄なら、その洗浄針の種類が、超音波洗浄を併用するかどうかの手法が問われてくる。

私が用いている根管洗浄のIrrigantsは以下の3種、

1.10%ヒポクロリット(次亜塩素酸ナトリウム水溶液)を使用直前に希釈
2.17%EDTA
3.機能水(次亜塩素酸水)

であり、メイン使用しているのは3.である。
ディスポシリンジと洗浄針を使用している。P-MAXとエンドチップによる超音波洗浄も用意はあるがあまり使用していない。あかなかった感染根管の洗浄とヒポクロ攪拌で用いる程度。

「洗浄」の基本は、とにかく大量の水で洗い流すことにあるから、水(水道水:塩素が含まれているから、悪くない洗浄液である)でジャボジャボと根尖部を洗い流すだけでもおそらく満足した結果が得られると思う。水ではなくてこの機能水を使う理由は、生体安全性が高く根尖部に溢出しても害がないうえに除菌力を有するからである。水か生理食塩水でも有意差はないだろうが、色気を出しているというところ。

ヒポクロの濃度に関しては様々な意見が飛び交っており、もうなんとも言えないが、論文や文献を渉猟すると2.5-5.0%あたりがいい塩梅ではないかとある。高い濃度になればなるほど扱いがシビアになり金属腐食性も強くなるので、安全性を考慮して1%以下で用いる先生も多いようだ。ただし、1%だと有機質溶解と消毒作用の点で弱いはずなので、頻繁に洗浄を行うことで新鮮な次亜塩素酸を常に供給する必要が出るのではないかと思う。一方、ネオクリーナーに代表される10%は濃度が高すぎる気もする。濃度が6%のピューラックスをそのまま用いるのがコスト面でも手間もかからず、ほどよい気がしている。

「根管拡大形成時は根管内にヒポクロを満たしておくこと」も大切だが、液体のヒポクロではなく、キャナルクリーナーをNiTiファイルに付着させて拡大することはある。ヒポクロはとにかく根管から口腔内への漏れや根尖孔外への溢出が怖い。ラバーダムをしていても油断ならぬ。

EDTAは根充前に用いるヒポクロとセットで用いる。
順序は、EDTA➡ヒポクロ➡EDTA である。
ヒポクロを根管内に満たしたらしばらく放置して発泡をみる。
発泡がないとニンマリ。
さあ根充だ!
 
ラベル:根管洗浄
posted by ぎゅんた at 19:31| Comment(4) | TrackBack(0) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする