2015年09月30日

【(株)セキムラ】オーラルガードU(小セット)

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こないだ富山で開催されたADI主催のデンタルフェアで見かけた製品。

・簡易防湿
・開口維持
・舌圧排
・誤飲(誤嚥)予防


これらを可能ならしめる診療補助器具である。
開口維持と簡易防湿を狙った診療補助器具としては(株)APTのZooシリーズが有名であるが、それをよりシンプル・コンパクトにした印象を受ける。

私は、しばしば開口維持にバイトブロック(Hagernoのミラホールドブロックのスモールサイズ)を用いる。
このオーラルガードUのバイトブロック部分も似た形状をしている。
Zooも愛用しているが、その目的はほとんど簡易防湿と舌圧排であり、開口維持と誤飲予防はあまり期待していないところがある。
それに比べると、このオーラルガードUはよりフレキシブルに使えそうな気がした。
指をくわえて欲しそうにしている私をみた担当者は「いま買うなら展示会価格ですよ」と耳打ち。
ケチで値引きに弱い私はその場で購入したのだった。
展示会価格はデンタルフェアの良心である。


さて、手元に届いたので早速、使用してみる。

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左右あるので、非作業側にバイトブロックを噛ませる要領でセット。吸引はバキュームに接続。当院ではモリタのスペースライン630(古い…)を使用しているが、バキューム口径にそのままフィットするのでアジャスターは必要ない。操作性は良い感じ。

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実際に使用するとこんなイメージ。
開口維持と舌圧排の効果はなかなか。
口腔内に溜まる水や唾液を吸いまくってくれるほどの吸引効果は乏しいが、小児のように「唾液の洪水」でもなければ問題ないだろう。口腔内の吸湿効果が容易に得られるのは大きなメリット。




弱点があるとすれば、

・誤飲防止に過度な期待は出来ない

ことである。
流石に作業側の咽頭側まではカバーできないからだ。これは、使用してみれば分かる。作業側の咽頭側はガラ空きだ!

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※画像はイメージ
ザルキーパーではないし頼りにはなるが、過度の期待は禁物だ。
メーカーもパンフに誤飲予防と表記していることから明らかである。



歯科用吸引・防湿器具 オーラルガードU

2015年09月17日

2級窩洞の充填にパロデント(デンツプライ) 〜 マトリックスの外し方

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パロデントは、臼歯2級窩洞を充填する際に用いる器具です。メタルマトリックスをバイタインリングで固定して隔壁を設け、窩洞を単純化して充填処置を行えるようにしてくれます。

2級窩洞の修復処置は、私が大学を卒業したてのころはまだ間接法のメタルインレー修復が主だった気がいたします。その一方で、接着歯学の台頭が、臼歯部の接着性コンポジットレジン修復を信頼あるものにしつつありました。このパロデントが上市され始めた時期もこの頃だったかのように思います。

記事冒頭の写真にあるパロデントのキットは他人より譲り受けたものだけに思い入れがあります。これは私が大学に籍を置いていたころ、北海道は空知郡南幌町のいしい歯科の院長からの頂き物なのです。「先生なら使いこなせるでしょう。どうぞ、差し上げますので使ってください」とポンと手渡してくれました。石井先生、その節はありがとうございました。使いこなせているかは分かりませんが、愛用しています。


というわけでパロデント
昨今の金パラの高騰とメタルフリー口腔内への気運の高まりもあって、使用頻度が増しています。2級窩洞修復では、齲蝕の規模が大きい場合は、間接法メタルインレーを選択せざるをえないわけですが、パロデントなら、窩洞の規模が大きい場合も(わりと強引ではあっても)コンポジットレジン充填で対応できる場面が多いです。医院経営的にも、患者さんの心情的にも、通院日数的にも、こちらのほうが望ましいものと思います。なお、真に優れたメタルインレー修復は、ゴールドインレーだけではないかと思います。

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A2フロー使用。明度が合ってませんね。厚顔無恥提示。

パロデント(およびそれに類する器具)での充填後のメタルマトリックスの抜き取りについて。充填後にフロスが抵抗あって通るようなコンタクトを付与すると、メタルマトリックスを歯間部から外しにくいことはないでしょうか?ピンセットでは滑りますし、指で取ろうにも滑って取れない、奥の手「ホウのプライヤー」で引っ張ってもびくともしない。そういうシチュエーションです。

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どうにかして取るには、おそらくホウのプライヤーでやるしか無いと思いますが、危険です。マトリックスが外れた瞬間に勢い余って指を切ることがあります(経験済。紙で指を切るような侮れなさ。痛い!)とにかく危ないので、これは厄介。マトリックス内面に分離剤を塗るべきなのでしょうか?

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皆さんご存知かもしれませんが、私はフロスを通すことで対処しております。
辺縁隆線部の形態が荒いとフロスが解れたり切れやすくなりますが、ワックスフロスならなんとか通ります。充填によりコンタクトが付与されていると流石にキツキツなわけですが、そのことがコンタクト付与の成功を裏付けてくれます。フロスが通った瞬間にマトリックスがプッと浮くように外れますから、あとは落ち着いてプライヤーで把持して撤去します。

充填後のマトリックスの撤去に苦労されている方の助けになれば幸いです。
私が知らないだけで、もっと楽で安全な方法があるのかもしれませんが…

とりあえずパロデントは当院の臼歯2級充填に大活躍中です。



余談
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デンタルショー等のデンツプライブースでは、いまはパロデントに代わりV4システムが登場しました。世代交代ですね。デモで触っただけですが、正当進化した感じをヒシヒシと受けます。こいつは優れモンだ!しかし「パロデントはもう古いですよ!」と一蹴されたのはちょっと寂しい。保険診療に見合ったコスト内で、実績ある器具で、キチンと使いこなせることが一番だと思います。習熟あるのみぞ。
 

2015年09月01日

モジュールプライヤーなぞクビにしてくれるわー

「セパレーター」ときくとアイボリー型とかエリオット型が思い浮かぶものですが、今回、記事で扱うのはセパレートモジュールについてです。

セパレートモジュールをMTMのひとつの手法に用いておられる臨床家は多いと思われます。
歯間分離、支台歯の傾斜移動防止、ちょっとした歯牙の移動・・・
頻用されるものでもないが、いざという時に使えると便利なグッズ。

そんなセパレートモジュール、どうやって歯間に設置するのかといえば、モジュール用のプライヤーを使うわけであります。プライヤー先端にモジュールを持たせて、開いて、歯間部に。

そう、こんな感じになりますよね
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だがしかし

このままモジュールを歯間部においたままプライヤーを外そうとすると、外れない。
外そうともがいたり、仕方なくモジュールをエキスカなどでプライヤーから外そうとすると…
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ずれてしまいます(怒)。下手なだけ


実家に帰省していた姉(矯正専門医)にモジュールプライヤーの使い方をきいてみました。
どうやらプライヤーもモジュールも安物がゆえに使い勝手が悪いとのことでした。確かに安物だが

とはいえ、使用するモジュールや挿入時の角度によってはプライヤーが使いづらいこともあるとのことで、フロスを利用したモジュール挿入法を教えてもらいました。


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長めに切ったデンタルフロスを、モジュールの穴に二回、通します。
フロスはギリシャ文字でいう「Ω」のようになります。

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(この写真だと分かりづらいですが)縛ります。縛らなくても出来るのですが、口の中で操作するうえでの安全上、縛ったほうがよろしいです。

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フロスを引っ張って、モジュールが開くようにしながら、歯間部に挿入します。
歯間部にフロスを通すのと似た感覚です。

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歯間部に設置できたら、モジュールがずれないように慎重にフロスを抜きます。
ワックス付フロスなら、問題なく出来るでしょう。


モジュールにフロスを通す手間はかかりますが、この方法のほうがプライヤーを用いるより簡単で確実にモジュールをセットできるのではないでしょうか。
 
posted by ぎゅんた at 06:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 根治以外の臨床 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする