2015年08月28日

NiTiファイルの国のプログライダーさん

proglider.jpg


Q.プログライダーさんを折って泣かないためには?

A.使用しない

…だと話が終わるので

A.ルールを厳守して用いる

ことが重要です。当たり前っちゃ当たり前なのですが。
奇抜な答えを期待した人ゴメンナサイ。



NiTiファイルは突然、予兆なく折れるものである。
一方、ステンレススチールは、ファイル先端に疲労や捻れ、伸びがあれば即座に姿を現すので破折リスクを把握することは容易い。こうした所見が見られても、根管内で無理に回転させなければ案外に折れなかったりもする。NiTiファイル全盛のエンド事情にあっても、ステンレススチールファイルの野武士的魅力は失われていない。

プログライダーは、グライドパス形成用のNiTiファイルである。プロテーパーネクストと同じくM-wireを用いている。この素材がどれほどファイルの破折防止に有益であるかは分からないが、プロテーパーネクストを使用している個人的な経験に限って言えば、「折れにくい気がする」の事実である。

NiTiファイルは前触れなく折れるものだから、ステンレススチールファイルのように繰り返し使用するのはリスクになる。理想的には使い捨てであろう。勿論、それは流石に贅沢な話なわけで、現実的には数回使用したら後腐れなく破棄するルールを設けることになろう。その際は、Raceにあるような、セーフティメモディスクを用いると管理しやすい。私はGCのNEXセーフティメモディスクを使用している。ケチ根性が出ると、特にストレートの根管に使用した時にはノーカウントにしたくなるが厳密にルールを守るべきである。限界回数を過ぎたファイルは練習用ファイルに回せばよい。

なお、明らかな湾曲根管(ネゴシエートしたファイルの先端が直角に曲がっているような強い湾曲)に用いる場合はファイルへの疲労が予測もつかないほど大きいので、新品を使うべきである。セーフティメモディスクの花弁が3枚残っているの状態で破折したことがある。
protapernext(separated).jpg


プログライダーは、手用ファイルでネゴシエーションした後にグライドパスを形成するためのNiTiファイルである。
テーパーが2-8.5度で、なんとなく貧弱そう(ゴボウ男)な印象を受ける。

実際に使用した感触からいうと、セーフティメモディスクを用いたうえで、より厳密な回数コントロールをするべきである。なぜなら、プログライダーは、グライドパスを形成する前の根管に(グライドパスを形成するために)挿入するNiTiファイルだからである。

プログライダーを使用する時にはかなりの緊張が走るが、根尖まで到達し、破折することなく無事に取り出せれば、その後はかなり楽になる。少なくとも、プロテーパーネクスト:X1がすんなり使用できるからである。


現時点での、プログライダーを使用する時のルール
・ひとつの根管に一回、使用したらセーフティメモディスクの花弁を1枚、千切る。
・湾曲がある場合は花弁を2枚、千切る。

つまりは、
・「贅沢に使うもの」
・ここぞという時にのみ用いる

ことになると思う。

コストが高い!保険で使っていられるか!という場合はNEXの10/.04で代用することもできよう。

余談だが、このファイルを強い湾曲根管のグライドパス形成に用いた時、ファイルの先端が伸びたことがあった。流石にテトリスのL字ブロックみたいな直角に曲がる根尖部ではそうなるのもむべなるかな。
GC NEX 10 04.jpg

NiTiは、ロータリー・ムーブメントよりもレシプロケーティング・ムーブメントで用いる方が破折防止とレッジ防止に良さそうと思う今日この頃。
 
posted by ぎゅんた at 20:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月21日

抜髄と根充。そしてシーラーにはやっぱりAHプラスちゃん!

AH-Plus(pulp-ectomy).jpg

抜髄症例では、歯髄を取りきったら即座に(その日のうち)に根充してしまうのが良いようである。
感染の機会を可及的に少なくしたいからである。

こうなると抜髄即根充が思い浮かぶが、いかんせん勇気がいるので私は採用することはまずない。理屈でいえば抜髄即根充が最善であろうが、そこまで自信をもてないのが正直なところだ。二回目に経過の確認と最終の拡大形成を終えて根管洗浄を終えてペーパーポイントで乾燥と出血がないことを確認としてから根充に移りたいのである。少なくとも、アクセスの容易な前歯部・小臼歯の抜髄症例では、二回目に根充ができることを目標にしている。大臼歯では、根充できる根管があるならさっさと根充してしまう。これは、手間かもしれないが、精神的にかなり楽になる。

抜髄の手技は、昔に比べてその内容に変更が加わってきた。

#10Kファイルでネゴシエーションした後に、NiTiファイルでグライドパスを形成するようになったし、プロテーパーネクストX2の拡大形成が済んだら根充へ移るようになった。プロテーパーネクストX2の先端は#25なので、アピカルシート形成の面でいえば不足しているが、抜髄根管ならあまり根尖部を大きく壊すことなく根充してしまっても良いとも考えられる。ただ、アピカルが#25だと満足な根尖部の洗浄が難しいし通常のマスターポイントでのラテラル根充での根尖部の緊密な封鎖がシビアそうなので、垂直加圧すべきと考える。


垂直加圧、と一言でいっても世には様々なテクニックが在る。
私がなんとかできるのは、

1.東洋オブチュレーションガッタソフトをNTコンデンサー(またはパックマック)を用いて根充する方法

2.フレックスポイントネオに東洋オブチュレーションガッタソフトをコーティングして根充するFPコアキャリア法(サーマフィルの変法)

3.大谷式オブチュレーションシステム


しかないのである(CWCTもできるようになりたいのだが、器具を揃える余裕がない)。
このうち、2.と3.は、プロテーパーネクストX2での形成で得られた#25./06の根管には不適なので、1.しか選択できない。コンパクターには、NTコンデンサーでもパックマックでもどちらでもいけるが、このような細めの根管や湾曲があったりする場合では、私はNTコンデンサーを使用している。

使用するシーラーはAHプラスで良いのではないか。
今まで、様々なシーラーを使ってきたが、若干のコストに目を瞑ればAHプラスが最も使用感の面で優れているように感じている。練和泥の稠度、効果時間、熱による変性を受けにくいこと、X線造影性、ユージノール非配合、根尖部より溢出しても、大きな痛みが出にくいことなど、選択したくなる性質が揃っている。

MTAを含有するMTAフィラペックスも魅力的な製品に映り、購入して使用してみたものの、使用感はあまり良くなかった。どちらのシーラーを選択するかで、治療成績に差が出る報告もない(ハズ)ので、使いやすい方を選べば良いのである。そして、これが一番の選択する理由になるが、AHプラスを用いた場合は写りのいい確認デンタル上像が得たすい気がしている。自己満と相性である。

posted by ぎゅんた at 05:12| Comment(7) | TrackBack(0) | 根治(回想) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月12日

(試用)アメロジェンプラス

出入りの歯科ディーラーの営業の方から「保険適用の審美的なCRが捨て値でありますが、いかがですか?」と紹介を受けたのがウルトラデントのアメロジェンプラスである。

保険適用コンポジットレジンは、基本的にシェードがシンプルで限られているのが普通である。シンプルなのはいいことだが、審美的な修復を求められた場合には向かない。透過性の異なるコンポジットレジンを組み合わる必要が出てくるからである。3級の打ち抜き窩洞や4級窩洞を、単一のコンポジットレジンで修復してみれば分かる。

当院で使用してるコンポジットレジンは、クラレのクリアフィルマジェスティES-2である(ボンディングシステムにはメガボンドFA)。比較的高価だが、単一で充填する分には色調がソコソコ安定して良い結果が得られる。自費用のコンポジットレジンとして、3Mのフィルティック・シュープリームXT(現行はXTE)を持ってはいるものの、使う機会のないまま使用期限が切れてしまった。

それはともかくとして、このアメロジェンプラス、2.5gシリンジで1200円というのは安いといえば安い。自費用CRのように、エナメルシェード、デンチンシェード、トランスルーセント、とレイヤリングを前提としたラインナップになっている。

エナメルシェードのペーストレジンが欲しかったところなので、試しにEN(EnamelNeutral)のみ購入することにした。

Image - 2015-08-10 17.53.53.jpg

市場に数多あるコンポジットレジンの中なら、どれをどう選択するか?

・値段が安い
・製品の評判が良い(ブランドがある)
・著名な先生が使っているから
・自分で触れてみて操作感が良い
・なんとなく


理由は様々あるだろう。

こういうのは、材料をどう使いこなすかが鍵であるから、術者の好みに合致した製品が相応しいものといえるのではないかと考える。そのことが術者のパフォーマンスを最大限に引き出せることに繋がるのではないか。要は、材料と相性がいいことを優先すればよいのである。

購入したアメロジェンプラスは、エナメルシェードだけである。期限の切れたフィルティックシュープリームXTのボディシェード(A3.5B)を組み合わせて、抜去歯牙で遊んで見ることにした。中切歯の切縁部を水平に落とし、それをコンポジットレジンで再現するのである。

歯冠の外径、舌側壁、唇側をアメロジェンプラスで。象牙質に相当する範囲をシュープリームA3.5Bを用いてトライ。

アメロジェンプラスは、フィラー含有量が76%であるためかTEGDMAが多いためかペースト性状はかなり柔らかめである。私の用いたインストゥルメント表面に傷があったのか、レジン離れも悪かった。私はペーストは硬いものが好みであり、それをすると、アメロジェンプラスのペースト性状は許容できない。柔らかいと、垂れたり伸びすぎたり、賦形性がイマイチなのである。かつ、インストゥルメントのレジン離れが悪いとイライラしてしまう。平筆とモデリングリキッド(クラレ)がなければ満足に形作れない始末であった。

硬化後は、コンポジットレジン用研磨ポイントで滑沢な表面に仕上げることができた。そのあとに松風のコンポマスターでサッと撫でると艶がでる。

Camera_20150724173139.jpg
こうしてみると歯冠切縁部の透過性が高くて透けてしまっているのが分かる。
アメロジェンプラス(EN)はともかく、内部に用いたシュープリームA3.5Bでは不透過性が不足している。この場合は、デンチンシェードのシュープリーム(A3Dとか)を用いればもう少し自然な感じになりそうだ。

アメロジェンプラスのボディシェードを組み合わせば良いだけの話でもあるのだが、ペーストの性状は同じだろうと想像すると使いたくない。冷蔵庫で冷やすと少し硬くはなる、いかんせんインストゥルメントで賦形しているうちにペーストがダレてきてしまう。ガッデム。値段とかお洒落なシリンジ、研磨性は悪くないのだが。



※モデリングリキッドは、レジン離れを良くし、筆の乗りを良くしてくれる便利なアイテムだが、口の中で使用することは想定されていないことに注意

2015年08月10日

空腹は健康の証

ブタさんの憂鬱.jpg

ここのところ2週間ほど、慢性的な体調不良で苦悶しておりました。
苦悶、という言葉が脳裏に浮かぶ時、私はいつも子どもの頃に訳もなく通わされた公文(塾)を思い出しますが、勿論、今回の記事の内容に関係ありません。

体調不良というと風邪を想起しますが、夏風邪と、食中毒と、カフェインの離脱症状のトリプルパンチが連続で重なり合あっていたような感じです。
病院にかかっていないので自己判断ですが、大きく間違っていないと思います。

寒気、発熱、悪寒、倦怠感、頭痛がまずあって、酷い下痢に見舞われました。詳述しても仕方がないので省きますが、食欲がこれほどまでになくなる経験は初めてでした。なにしろ3日食べなくても食欲が湧いてこない。食欲がないのは体が欲していない証拠(無理して食べる必要はない)とはいえ、流石に3日も続いたのは産まれて初めてのことだったので不安になります。面白いのは珈琲です。私は珈琲が好きで、裏返せばカフェイン中毒者なのでしょうが、日常的に2Lぐらい飲んだりすることはザラ。それなのに一切、飲みたい気持ちが湧きませんでした。珈琲は飲み物(水分補給)ではなく、食事の認識だったのかもしれません。新発見です。

脱水症状を起こすと熱中症の危険もあるので、スポーツドリンクを水で薄めたやつをこまめに飲んで過ごしました。普段、スポドリは一切飲みませんが、こういう状態の時にはありがたい存在ですね。口当たりがいいので、水だと飲みにくいのですが、スポドリだとまだ飲めるのです。味についてケチつけてる状態ではないのですが、アク○リアスよりポ○リの方が明らかに美味しく感じました。格が違います。

この頃から、風邪の症状は収まったはずなのに頭痛と疲労感に襲われました。どうもカフェインの離脱症状のようです。カフェインを摂取しようにも、珈琲を飲む気持ちは起きないのでそのまま放置しました。いずれ、珈琲の飲み過ぎ習慣は改めねばならぬと考えていたのでタイムリーといえばタイムリーだったのです。

下痢の症状がひと段落してから2日ほどで食欲が回復し、食事ができるようになりました。食事をすると、たいへん不思議なことに、全身から湧き出てくる「生きている感」「蘇った感」を感じ取ることができました。いままでなんとなしに考えていた「食べることは生きることである」「健康な口で食事ができることこそ、幸福」といった文言が頭を駆け巡ります。少なくとも私は、空腹で食欲が湧くということに、力強い生命力を覚えました。プチ断食やファスティングの考え(健康法)が世に浸透しつつありますが、素晴らしいことだと思います。空腹は「即座に腹を満たしなさい」という異常状態を表すものではないことを、身体で理解するチャンスだからです。それでなくとも、現代人は過食になっていますから…


今回の病気で得られたこと
・空腹は健康の証
・口で食事ができることの素晴らしさ
・摂った水分が尿として排泄できる嬉しさ
・カフェイン中毒からの離脱
・4kgほど体重が落ちた歓び

最後が一番、嬉しいかも。
人はとかく体調を回復すると現実的になるものである。



※公文の算数は、ひたすら単純計算の反復練習なので数学の地力は確実に鍛えられる点で良い。算数に於いて「計算が早くて正確」ということは、他人よりも速く問題が解けて点が取れることにつながりやすい。これが、できる、面白い につながる。少なくとも私は、算数は得意科目だった。
posted by ぎゅんた at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする