ガッタパーチャポイントが塊っぽく取れると気持ちいい(ですよね?)
まとめ
再根治時のガッタパーチャの除去は、ゆめゆめ油断ならぬ感染根管治療における除去の対象が感染有機質であることは論を待たない。従って、徹底した感染象牙質の除去を行うことになる。一方で根管充填材の除去も並行して行われる。その大部分はガッタパーチャとシーラーが対象となる。
…と頭では理解していても、なんとなく取り残してしまいそうな不安がつきまとう。絶対に完全除去を目指す気持ちに勢いがないというか。取り残しがあったとしても「まあ、やむを得んか…」と妥協してしまう自分がいるといおうか。
エンド自体が見えないところの手探り作業であるし、マイクロスコープは持ってないので根管内に取り残しがないかどうかの目視判断が困難だ。そして、ガッタパーチャを充填材として用いていることから、頭の中に「根管内に置いておくモノ」的印象がどうしても強い。いきおい、再治療となったら是が非でも完全除去しなくてはならないと頭で理解していても、わずかな除去があっても黙認してしまいそうな「甘さ」が生まれる結果となる。私だけの心理であることを祈るばかりだ。
そんなんだで、感根処時のガッタパーチャの除去は油断ならないステップである。昔から再治療時のガッタパーチャの除去は勘案されていたから、溶剤に始まり専用除去インストゥルメントが色々と登場してきた。それでも、完全除去を目指すのはいまだ容易ではないようだ(「これしかないぜ!」というテクニックがない。あったら知りたい)。ポイントを一塊で、ピンセットで引き抜けるようなケースだと楽で気持ちもよいが、現実はそんなに甘くない。
まず、ガッタパーチャを溶かして除去する方法には、溶剤か熱を用いる方法が存在する。
溶剤は
GPソルベント(ニシカ)
ユーカリソフト(東洋化学)
が一般的だと思われる。
昔は使っていたが、いまは用いることはほとんどない。それは、溶けた溶剤が根尖から漏れたら刺激が強そうなのと、「あんまり溶けない」使用感にある。
※1熱を用いる方法は、非注水の超音波チップやエアスケーラーのチップによるもの、ヒートエキスカやプラガーを用いる方法が考えられる。機械的除去の側面が強いと思うが、ヨシダのGPXやマニーのGPRもここに含めよう。
感染根管治療においては、まず根管にファイルを突っ込む前に、歯冠部・髄腔・根管口周囲といった目視可能ゾーンの清掃が優先される。入口が汚いままファイルで根尖をいじっても仕方が無い。食渣・プラーク・う蝕象牙質を徹底除去する。そして、根管口を明示して、ガッタパーチャの除去を開始する。
根管口が確認できるとファイルを突っ込みたくなるものだが、ここはグッと我慢の子である。ファイルを突っ込みネゴシエーションを狙うのは、根尖部まで可及的に綺麗にした後にしないと、根尖に無用な感染を送り込むリスクが高いからである(ガッタパーチャがリッチに詰まっている状況では、どのみちネゴシエーションも困難だが…)。
私個人の方法を述べると、まずゲイツグリデンドリル#2で少しズボッと穿つように食い込ませて取っ掛かりを設けたあとにGPX(#30)で大まかに除去を狙う。
少なくとも肉眼で覗ける範囲のガッタパーチャを徐々したのちに、マニーの#15Kを挿入して錐揉み運動で根尖部までファイルが食い込んで進むかどうか確認する。同時に、EMRがメーター値でいう3.0以下に触れていくかも確認する。食い込んで進んでいくならネゴシエーションが狙えるし、メーター値3.0以下なら閉鎖していないだろうと推測する。おおよその長さが分かれば、その長さの範囲でGPXやNiTiなどの機械的インストゥルメントで更に除去が狙える。
ネゴシエーションを狙う直前に充分に根管洗浄する。ネゴシエーションを狙うファイルはマニー#10Kか#15Kを用いる。
※2穿通した後にコスモデンタルサージ「根尖滅菌」を一回、通電しておく。
穿通できたら、長さを確認し、松風のMtwo10/.02及びデンツプライのプログライダー
※3 を一回通し、グライドパスを形成する。
ここまでの作業が滞りなく達成できれば一息つける。慎重にNiTiファイルで拡大していくと根管壁にへばりついたガッタパーチャの除去が効率よく可能になるからだ。
ゴリゴリと取れて頼もしい一方で取り残しの多さに愕然とさせられることがしばしばである。
ガッタパーチャの除去だけでなく、根管内の機械的清掃の様子をマイクロスコープ下で録画しておき、術後説明時に患者さんに見せるたらインパクトがありそうだ。患者さんに安心を与え信頼を得るツールとして、マイクロスコープが在るのである。
…と、マイクロエンドのセミナーで教わったことを偉そうに述べるわたし。おわり。
最近の一例根面キャップのまま自然提出してきたっぽい犬歯。
「ある程度、除去できただろう」の段階で撮った確認デンタル。
…。
穴があったら飛び込みたい心境にならざるを得ない。
両隣在歯相当部の歯槽骨に見られる影はボーンキャビティかもしれない。
徹底して拡大したあとに根充。ぽるけった先生に教わったFPコアキャリア法で行った(フレックスポイントネオ#60/東洋オブチュレーションガッタソフト/MTAフィラペックス)。
側枝っぽい部分にシーラーが充填されていないのが不満だが、根尖外への過剰な溢出はなく安堵。
※1
とある先生が「クロロホルムに比べると溶解作用が弱すぎる」と発言されていたのを思い出す。そんなに溶けたのだろうか?
※「2ファイルは食い込んでいるけれども、それ以上、進まない、穿通出来ない」場合に、マニーの#15リーマーを錐揉み運動で用いると穿通できることがある。不思議。
※3
新潟県胎内市新栄町歯科医院の佐久間先生より。抜去歯牙で心行くまで練習できました。本当にありがとうございました。愛してます