ここのところ、主に
抜髄根管の根充にAHプラス(デンツプライ・デトレイ)
感染根管の根充にMTAフィラペックス(アンジェラス)
のルールを適応して使い勝手を確認していたのだが、常に「使えている感」があるのはAHプラスである。使用しているプロテーパー・ネクスト(デンツプライ・メルファー)といい、デンツプライと相性がいいのかもしれない。しかし併用している根管拡大清掃補助剤はグライドでなくRc-Prep(プレミア)だったりする※。
MTAフィラペックスにて「使えている感」が乏しいのは、どうにもパフが得られにくいことに起因している。パフがあることは根尖部にて、シーラーやGPに根尖方向への圧力が加わったことを意味するからである。根尖部をギュッと封鎖して根管内と根尖外との交通を遮断することが根充の目的であるのなら、パフが映る写真を得たいと考えるわけである。確認デンタルでパフが写ると、良い仕事ができた気分になる。
「良い仕事」の共通点
パフが写ると単純に格好よくみえる。確認デンタルにおいて、写真うつりが良いことが根充の質の高さをすべてにおいて証明するものではない。しかし良い仕事というものは、すべからく綺麗だったり格好良かったり無駄がなかったりするものだ。思えば、学生時代の実習でも、腕の立つ連中は仕事ぶりが綺麗であった。例えばワックスアップの実習にしても、作業机上の作業スペースは汚れがなく極めて整然としていた。そして、颯爽と仕上げてしまう。一方、私の作業スペースは滴下したワックスや切り出したワックス屑、乱雑に散らばったインストゥルメント、延長実習と、ご想像がつく通りの正反対の有様であったものだ。どちらが優れたワックスアップパターンを作ったかはいうまでもない。
仕事のクオリティをあげようと思ったら、とにかく「美しい」仕事をすることに徹することである。これには過程も含まれる。
根治であれば、根管の原型に沿った拡大がなされ、根尖側枝を含む根尖部を緊密に封鎖している写真が得られる根充が美しい仕事といえるのではないか(同業者に自信を持って見てもらえる写真を得られている)。これは根治に限らない。充填も、形成も、抜歯も、歯周外科も、上手な先生の症例はすべからく美しいものである。そして、速い。私もそれを目指したい。
抜髄根管の根充にAHプラスを用いたケース
根尖部にパフが力強く写っている。「やっぱAHプラスや!」とガッツポーズをしたくなる一方でダメな点が散見している。
近心のう蝕を除去しておくべきだったし、根尖付近に側枝を思わせる存在があるがシーラーの侵入が不十分である。縁下付近の仮封も心もとない。
抜髄にあたり、患部の目立ったう蝕除去をした時点で、この歯は補綴処置になる(充填ではなく支台築造へ移行する)ことは分かっていたわけなので、冠部感染源である軟化象牙質は徹底除去しておくべきである。歯質や充填物の除去により患歯が残根化し防湿が困難になれば、爪が下を向いたクランプを用いてラバーダム防湿をせねばなるまい。
側枝へシーラーやGPを送り込む秘訣は徹底した根尖部の洗浄と、GPへの加圧にある。効果的な根管洗浄として、エンドチップを用いた超音波洗浄がある。しかし、機器準備や作業長合わせの手間、また、特に湾曲根管でのチップ破折のリスクを考慮すると扱いづらさを感じる。現実的なのは、パワー調節のできるエアスケーラーにエンドチップを装着して用いることだろうが、当院にはパワー調節の利かないKAVOのソニックフレックス2000しかない。なので、クラシカルな、シリンジを用いた洗浄を行っている。余裕がある時はP-MAXにエンドチップを用いて洗浄しているが、準備の手間の面で問題が大きい。さっさとエアスケーラーを購入したいところだが、他に購入すべき機器が山積しているのが現状だ。
仮封は、水硬性セメントとテンポラリセメントソフトを主に用いている。水硬性セメントは確実な封鎖のためには3mmの厚みが必要とされているし、強度的に不安定だ。少なくとも4壁性の場合に限って用いるべきだろう。この写真ではテンポラリセメントを用いるべきだが、水硬性セメントを用いている点で良くない。
良い仕事を思わせる、綺麗で恰好いいデンタル写真を撮っていきたいものである。
MTAフィラペックスを用いた根充ケース、失敗例の検証はまた次に。
※グライドに切り替えるか、コスト重視でSPIDENTのソフトプレップに切り替えるか逡巡中。適当計算すると、グライドはソフトプレップの1.7-1.8倍の値段設定。
Appendix
MTAフィラペックスはブラジル産
AHプラスはドイツ産
プロテーパーネクストはスイス産
RC-Prepはアメリカ産
ソフトプレップは韓国産