歯科医師なら、だれでも歯科用品通販会社を利用しているものであります。通販ですから、出入りのディーラーさんと異なり、顔の見える相手との取引ではありません。その代わり、相当に安く購入できる場面が与えられている面がメリットです。
そんな通販会社、まったく利用しない先生もいれば、消耗品に限って利用する先生も、とにかく値段優先で最も安いところに注文をかける先生もおられまして、その利用形態は様々ありましょう。私は、顔の見える相手から購入したい寂しがりやタイプ(それと、長年の付き合い)なので消耗品を除けば、殆どをディーラーさんから購入しています。案外に値引いてくれるので、場合によっては通販よりも安く購入できます。総じて、気持ちのよい取引で考えればディーラーさんの方が上です。ただしこれは、今回の記事の論旨に絡みますが、担当の方の人柄によるところが大きい。この人から買いたいと思えなければ、気持ちがノらないからです。
歯科通販会社のなかの大手に、FEED株式会社があります。本社は神奈川県横浜市なのですが、なんとこんな
ド田舎北陸の一地方にある当院に挨拶にこられました。現場の先生の声を聞きたい、意見をラインナップに反映させたい、より身近な業者になりたい、など。いってみれば、今後のFEEDは現場の声をエフェクティブに反映させる会社になりますよという姿勢の現れのようです。挨拶がてら…とのことでしたが、担当者の方が実に魅力的でつい話し込んでしまいました。お昼ご飯を摂る時間がなくなってしまったようで恐縮です。
この時も自分勝手な意見を担当者の方にアレコレぶつけたのですが、その場では口にしづらいことや後出しジャンケン的意見もあるわけでして、僭越ながらこの場でそれを記述してみようと考えた次第。
・FEEDに関して、一般歯科医はどう考えているか? 「高い」イメージが混在しているのでは。何と比べて値段が高いのかといえば、Ciメディカルに他なりません。
歯科医同士が、通販会社について俎上に載せることはあまりないと思います。あっても、「最近、購入した〜が良かったよ」とか「〜だと安く買える」とか、とかく製品ないし値段ありきです。利用した会社に対する意見が挙がることは稀です。これが、海外の会社を利用した時は入金から商品到着まで一抹の不安がつきまとう冒険の側面がありますから、商品が到着するだけで「信頼できる会社」認定になったりする。結局のところ、国内の通販会社のサービスの質が高いことが原因で、ユーザーが会社に関心を抱く意識が薄れている。悪い意味で慣れてしまっているのです。結果、その高いサービスを提供している割に、会社はユーザーから感謝もされなければ愛着をもたれることも乏しくなっている。根本には、歯科医院の台所事情の苦しさがあることがでしょうが…
FEEDがシェアの拡大を目論むなら、Ciを圧倒する低価格を実現することが特効薬になるでしょう。しかし、低価格実現の末に社員への給料の削減やサービス体制の劣化があっても、あるまじきことです。私はコンサルのコも知らないので無責任発言を続けますが、値段でかなわないなら、扱う製品の品質や独自製品をはじめとした品揃えで差別化を図ることになるでしょう。サービス体制の強化というのでしょうか。
・先生方がFEEDに望むことは?どのような製品を扱って欲しいか? もう少し安く…と言いたいですが、それも度を越せば消費者側の一方的な我儘です。適正な価格であれば(ボッタクリでなければ)文句は出ません。強いて言うなら、信頼感が形成されれば愛着に変わり、「ご愛顧」にクラスアップします。昔ながらの商売ライクな考えですが、私自身は、顔の見える相手からモノを買いたいと考えています。金銭のやり取りがある以上、そこには一種の契約があるわけですから、「カネ払ってモノ買った。終わり」は淋しく感じる。面倒くさい人間ですね。
こうした理由から、私は出入りのディーラーさんを通じて購入することが多いのです。紙コップや紙エプロン、グローブなどの消耗品は別ですけれども。FEEDに取り扱って欲しい材料があるとすれば、「One patient-One file」を気楽に行えるほど安い、使い捨て前提のニッケルチタンファイルですかね。
挨拶にこられた担当者の方とお話していてハッとさせられたのは、歯科業界に属していながらにして、歯科の専門知識に長けた人材は少ないのではないかということです。デンタルショー等で、企業ブースの担当者と製品について質問や談義することがあると思いますが、こちらの質問が的外れで素っ頓狂なものだったためか、相手が不勉強なためなのか、会話が成立しない場面にあわないでしょうか。逆に専門知識や業界知識に長けている人物だと、こちらの質問の意図も汲み取ってくれるし、裏技的な使い方や、(真偽はともかく)業界裏話を耳打ちしてくれたり、感心することしきりであったりする。このダイナミックなやりとりは、デンタルショーに足を運ばせる魅力のひとつではないでしょうか。
ふと私は、当院に出入りされているディーラーさんが誠実で勉強熱心であることを思い出しました。製品カタログの説明に必要な知識のみならず、「売り」にしている特徴のバックグラウンドにある専門知識まで知っている。そして、分からない点は素直に認め調べ直してくる。質問してくる。私も、分からないことを彼に質問したりする。診療の合間に、こうした人物とお話ができるのは、とかく閉鎖的な歯科医院という空間における清涼剤のようなものです。私が話好きなことに加えて患者がいなくてヒマという事情もありますが、それを差し引いても開業医は案外に孤独なものところがあるもので、屈託無くお話のできる相手を求めている先生は多いのではないでしょうか。純粋に話好きの先生もいれば、自身の有する知識を披露できる相手を求めている先生も、ただ愚痴をこぼせる相手を求めている先生も様々におられるはずです。無論、なんら会話を望まない先生もおられることでしょう。
ひとまず、私は今回の件でFEED株式会社に対して好感を抱きました。ありがたいことに知見も得られました。全国の歯科医院への挨拶まわりにより、現場の歯科医師の声を集め、それを反映し、より魅力と特色ある歯科通販会社となることを祈っております。