待合室には時間を潰すための配慮として、多くは読み物として本が置かれている。医院や診療所といった小さな医療施設では、待合室にどのような本が置かれているかが、医院のカラーに影響を与える。例えば、漫画雑誌やスポーツ新聞を中心に組み立てるとラーメン屋のようになるし、ファッション雑誌を中心に揃えると美容室のようである。ニュートンや日経サイエンスを置けば頭が良さそうであるし、海外の美術画報などを置けば身分違いの場所感を演出できそうだ。
さて歯科医院の待合室にどのような本を置くか?それは、医院の責任者次第である。新聞と週刊誌、漫画単行本をバランスよく置いている医院が多いのではないだろうか。新聞も雑誌類も置かず、テレビだけを設置している医院もあるかもしれない。掲示物がたくさん貼ってある医院だってあるだろう。「最近の人はスマホしかいじらないから」と一切なにも置かない医院もあろう。こうすると購読諸費用の節約のみならず、待合室をスッキリさせられることになろう。
私はいままで、新聞と院長が定期購読している雑誌を置いている歯科医院を数多く見てきた。雑誌は、たいていはゴルフかクルマ、そして週刊/現代/ポスト/新潮/文春らであった※。バイト先の休憩時間に、暇つぶしにクルマ雑誌拝借して読んでいるうちにクルマが好きになってしまったのは内緒だ。大きな病院クラスになると、万人向けに、ある程度広い範囲をカバーする「無難な」種の雑誌が置かれていたものであった。AERAやTarzanなどである。漫画本を置いてあるところもあったが、読み古された汚いものがほとんどであった。スタッフからの寄贈なのだろう。綺麗な漫画を置けばウケがいいのになあと思ったものであった。
さて、医院の改装を機に、待合室の本棚の収納力が増したので私は漫画本を導入することにした。目下、当院には中年〜高齢者の患者さんの来院が多いのであるが、それに迎合した雑誌類だけを置いても刺激がないからである。そして、私はもう少し来院される患者さんの平均年齢層を下げたいと思っている。小児から中年以下までの年齢層にウケがいいのはやはり漫画である。まさか漫画を読みに当院を選んで来院されることはないにしても、待合室に漫画が一切ないのは味気なかろう。私が子供の頃、行きつけの床屋の選定理由は、好みの漫画が置いてあるかどうかであった。待合室での時間つぶしと緊張ほぐしに有益なはずである。
実際に何を置くかを決めて行きたい。これは医院のカラーに影響を与えるところだから、ブレがないように決めたい。
1.低俗な類の内容や雑誌は避ける
2.健康雑誌を起き、健康への意識を啓蒙する
3.歯科と健康に関する情報を提供する
4,綺麗な漫画本を置く
と、こう考えた。
当院の理念は「歯を残すお口から全身の健康へ」なので、それを考慮にいれてある。なお、漫画本に限っては、この条件を緩めて娯楽的な路線をとることにした。「趣味に走っただけだろ」と指摘されたら言葉に詰まるかつまらないかのレベルにした。
雑誌は、
・今日の健康
・ヘルシスト
・サライ
・クラビズム(地方誌)
・女性セブン
を置いている。
これらは漫画本を手にしない中年〜高齢者に人気が高い。特に受けがいいのはサライと女性セブンである。
漫画本はかなり多いので、人気の高いトップ2に限って挙げると
1.そばもん
2.進撃の巨人
となる。理由は分からないが、ともかく、当院ではこのふたつが大人気である。これは是非とも読んで欲しいなあと置いた「コウノドリ」「ほたる 〜真夜中の歯科医」「いちえふ」は、いっかな読まることなく寂しい限りである。
この他、歯科に関する単行本や冊子を置いてある。イチオシは井上孝先生の歯科なるほどボウケン学である。なんと井上孝先生のサイン付きだ(エヘン)。これは、歯学部三年生の時に購入した思い出のある一冊である。あの頃は病理学に興味があって、鼻息荒くOral Pathology 3rd Edition Clinical Pathologic Correlations を購入したりしたものだ。原著の格式高い英語に負け本棚の肥やしになったのはいうまでもない。ちなみにこの本、患者さんに説明する時に用いると破壊力が高い。しかし「ここなんて意味の文章なんですか。」と尋ねられたら死亡 (・・;)
※
歯科医院は医療機関であるから、公序良俗に反する低俗なものは避けるべきである。例えば、ポルノ記事、ヌード写真等が掲載される週刊現代や週刊ポストは良くない。しかし週刊現代や週刊ポストに限っておっさんらに大人気であったりするのだが。当院も過去には週刊現代を置いていたのだが、医院改築を機にやめた経緯がある。別に患者さんから苦情は出ないのである。同様にゴシップ記事を中心にした女性誌も、品の面でみれば、これもまたよろしくない。ただし、これらもまた、おばちゃんらに大人気であったりする。