いざ垂直加圧充填を採用していこうと考えたとき、数多あるテクニックから、まずどれかひとつを選択しなくてはならない。
昨今の流行は、CWCTであるようだが、これ以外のテクニックも存在している。手持ちの成書らを参看した限りの、代表的なテクニックを挙げると
1.CWCT
2.NTコンデンサー法(コンデンサーを用いてウォームガッタを根尖に送り込むもの)
3.JHエンドシステム
4.オピアンキャリア法
5.オブチュレーション法
などがみつかる。
これらは、側方加圧の利点を応用したものであったり、シーラーとガッタパーチャの根尖外への溢出は容認の上で、根尖部の封鎖をはかるものであったりする。いずれにせよ、根尖部の三次元的な封鎖の達成を目的に考えられていることは共通している。
側方加圧は、スプレッダーを作業長マイナス2,3mmまで挿入して、得られたスペースにアクセサリポイントを挿入し、再度スプレッダーを挿入し、GPポイントを圧接すると同時に生じた隙間にアクセサリポイントを挿入して再度スプレッダーを挿入して…と、マスターポイント以外の隙間を可及的にアクセサリポイントで満たし、最終的に残るスペースをシーラーが満たすものである。
「側方加圧」充填と銘打っていながら、スプレッダーを根尖方向に挿入すること自体がGPポイントの垂直方向への加圧になっているのだが、その適切な加圧のためには、根管をフレアー状で滑らかな根管壁に仕上げなくてはならない。さもないと満足な加圧ができずにシングルポイント根充になるからである。
御託はさておき、ネット上で興味深いテクニックがあった。 thermomechanical technique とある。これは、ガッタコンデンサーという、Hファイルの刃を逆向きにつけたような形態のコンデンサーを用いたものである。
このような手順のようである。
1.形成と洗浄と乾燥が終わった根管に適したマスターポイントを用意する
2.シーラーに浸したマスターポイントをアピカルストップまで挿入する
3.マスターポイントを根管に挿入したあとに、スプレッダーでガッタコンデンサーが根尖から3mmの位置まで挿入できるスペースを設ける
4.挿入したガッタコンデンサーを8000rpmで回転させる
5.ガッタパーチャが熱で軟化するに伴って、ガッタコンデンサーは根管外に押し出される
とある。
これはGCのタックエンドに似ている。
タックエンドは、メーカーのカタログを参照する限り、スプレッダーを挿入して得られた隙間に、加温軟化したガッタパーチャをコンデンサーで填入する手法のようだ。なるほど、アクセサリポイントをチマチマいれる手間と時間を省略できそうなテクニックだ。
このサーモメカニカル法は、マスターポイントをコンデンサーで根尖方向に向かわせると同時に、熱で軟化したマスターポイント由来のGPで隙間を埋めようとするものである。軟化したガッタパーチャが回転するコンデンサーで根尖方向に送られる一方でコンデンサー自体は根管外に押し出される力が働くようである。もしこの通りにできるのなら、根充は簡単で手早く終えられるだろう。アクセサリーポイントをチマチマ挿入する手間と時間とコストが削減できるのだ。サーモメカニカル法と言っているが、古典的なMcSpadden method※ のことであろう。
コンデンサーは、有名どころがヨシダのNTコンデンサーとパックマック、そしてGCのタックエンドコンデンサーが存在する。このガッタコンデンサーはデンツプライ製だが、HPには情報がない(ハズ)。
デンツプライに問い合わせたところ、
弊社が取り扱いしております「メルファー ガッタコンデンサー」は根管充填材(ガッタパーチャ)を根尖に圧接するために使用するエンジン用の器具でございますが、現在、潟c潟^様から販売されております。
扱い規格は21mm、25mmの#25から#80まで、各4本入りで¥9,780となっております。
材質はステンレス鋼です。(価格は念のため潟c潟^様にもご確認ください。)
との返信があった。よくわからないが、買えるようだ。ステンレススチールのくせにNTコンデンサーやパックマックに比べ値段が高いのが気になる。
医院の引き出しを漁っていると、パックマックが出てきた。同じコンデンサーだから、似たような結果は得られるだろうと、はやる気持ちで抜去歯牙と根管模型でテストしてみたところ、現実は非情であることが判明した。
確かに、マスターポイントは根尖側に向かう力が加わることから、根尖にマスターポイントがギュッと、あたかもコルク栓のように封鎖してくれそうに見える。…のだが、その間、マスターポイントはコンデンサーに引きづられてブルンブルンと荒ぶってしまう。熱でマスターポイントが軟化して、溶解したGPが根尖側に流されて行くものかと期待するが、うまくいかない。自在にコントロールするのは極めて難しい印象を受ける。コンデンサーを根管壁に当てて積極的に摩擦熱を生じさせれば確かに溶解するが、根管壁を傷つけてしまったり、コンデンサーの破折を招くことになる。
このテクニックのメリットは魅力的だが、単純に難易度が高く使いづらい欠点が大きいのではないか(そうでなければ、もっと世で汎用されているだろう)。側方加圧充填の際、マスターポイントを根尖側に送るように意図的に加圧したい場合の小技としては有効かもしれない。
モノにすべきテクニックであるかどうかの最終結論を出すには練習が必要である。
その際には、パックマックでなく、ガッタコンデンサーを用いて練習するべきだろう。なお、パックマックとNTコンデンサーはニッケルチタン製である。
※教科書には、McSpadden method は#50以下の細い根管や湾曲根管には使用できないとある。