2014年10月27日

ガッタコンデンサーを用いた根充?

Gutta condensor.jpg

いざ垂直加圧充填を採用していこうと考えたとき、数多あるテクニックから、まずどれかひとつを選択しなくてはならない。

昨今の流行は、CWCTであるようだが、これ以外のテクニックも存在している。手持ちの成書らを参看した限りの、代表的なテクニックを挙げると

1.CWCT
2.NTコンデンサー法(コンデンサーを用いてウォームガッタを根尖に送り込むもの)
3.JHエンドシステム
4.オピアンキャリア法
5.オブチュレーション法

などがみつかる。
これらは、側方加圧の利点を応用したものであったり、シーラーとガッタパーチャの根尖外への溢出は容認の上で、根尖部の封鎖をはかるものであったりする。いずれにせよ、根尖部の三次元的な封鎖の達成を目的に考えられていることは共通している。

側方加圧は、スプレッダーを作業長マイナス2,3mmまで挿入して、得られたスペースにアクセサリポイントを挿入し、再度スプレッダーを挿入し、GPポイントを圧接すると同時に生じた隙間にアクセサリポイントを挿入して再度スプレッダーを挿入して…と、マスターポイント以外の隙間を可及的にアクセサリポイントで満たし、最終的に残るスペースをシーラーが満たすものである。
「側方加圧」充填と銘打っていながら、スプレッダーを根尖方向に挿入すること自体がGPポイントの垂直方向への加圧になっているのだが、その適切な加圧のためには、根管をフレアー状で滑らかな根管壁に仕上げなくてはならない。さもないと満足な加圧ができずにシングルポイント根充になるからである。

御託はさておき、ネット上で興味深いテクニックがあった。 thermomechanical technique とある。これは、ガッタコンデンサーという、Hファイルの刃を逆向きにつけたような形態のコンデンサーを用いたものである。
このような手順のようである。

1.形成と洗浄と乾燥が終わった根管に適したマスターポイントを用意する
2.シーラーに浸したマスターポイントをアピカルストップまで挿入する
3.マスターポイントを根管に挿入したあとに、スプレッダーでガッタコンデンサーが根尖から3mmの位置まで挿入できるスペースを設ける
4.挿入したガッタコンデンサーを8000rpmで回転させる
5.ガッタパーチャが熱で軟化するに伴って、ガッタコンデンサーは根管外に押し出される

とある。

これはGCのタックエンドに似ている。
タックエンドは、メーカーのカタログを参照する限り、スプレッダーを挿入して得られた隙間に、加温軟化したガッタパーチャをコンデンサーで填入する手法のようだ。なるほど、アクセサリポイントをチマチマいれる手間と時間を省略できそうなテクニックだ。

このサーモメカニカル法は、マスターポイントをコンデンサーで根尖方向に向かわせると同時に、熱で軟化したマスターポイント由来のGPで隙間を埋めようとするものである。軟化したガッタパーチャが回転するコンデンサーで根尖方向に送られる一方でコンデンサー自体は根管外に押し出される力が働くようである。もしこの通りにできるのなら、根充は簡単で手早く終えられるだろう。アクセサリーポイントをチマチマ挿入する手間と時間とコストが削減できるのだ。サーモメカニカル法と言っているが、古典的なMcSpadden method のことであろう。

コンデンサーは、有名どころがヨシダのNTコンデンサーとパックマック、そしてGCのタックエンドコンデンサーが存在する。このガッタコンデンサーはデンツプライ製だが、HPには情報がない(ハズ)。
デンツプライに問い合わせたところ、

弊社が取り扱いしております「メルファー ガッタコンデンサー」は根管充填材(ガッタパーチャ)を根尖に圧接するために使用するエンジン用の器具でございますが、現在、潟c潟^様から販売されております。

扱い規格は21mm、25mmの#25から#80まで、各4本入りで¥9,780となっております。
材質はステンレス鋼です。(価格は念のため潟c潟^様にもご確認ください。)


との返信があった。よくわからないが、買えるようだ。ステンレススチールのくせにNTコンデンサーやパックマックに比べ値段が高いのが気になる。


医院の引き出しを漁っていると、パックマックが出てきた。同じコンデンサーだから、似たような結果は得られるだろうと、はやる気持ちで抜去歯牙と根管模型でテストしてみたところ、現実は非情であることが判明した。

確かに、マスターポイントは根尖側に向かう力が加わることから、根尖にマスターポイントがギュッと、あたかもコルク栓のように封鎖してくれそうに見える。…のだが、その間、マスターポイントはコンデンサーに引きづられてブルンブルンと荒ぶってしまう。熱でマスターポイントが軟化して、溶解したGPが根尖側に流されて行くものかと期待するが、うまくいかない。自在にコントロールするのは極めて難しい印象を受ける。コンデンサーを根管壁に当てて積極的に摩擦熱を生じさせれば確かに溶解するが、根管壁を傷つけてしまったり、コンデンサーの破折を招くことになる。
このテクニックのメリットは魅力的だが、単純に難易度が高く使いづらい欠点が大きいのではないか(そうでなければ、もっと世で汎用されているだろう)。側方加圧充填の際、マスターポイントを根尖側に送るように意図的に加圧したい場合の小技としては有効かもしれない。

モノにすべきテクニックであるかどうかの最終結論を出すには練習が必要である。
その際には、パックマックでなく、ガッタコンデンサーを用いて練習するべきだろう。なお、パックマックとNTコンデンサーはニッケルチタン製である。


※教科書には、McSpadden method は#50以下の細い根管や湾曲根管には使用できないとある。
posted by ぎゅんた at 21:42| Comment(9) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月19日

根充の方法 〜 ラテラルさんとバーチカルさん

Root canal obturation.jpg

まとめ
側方加圧充填も垂直加圧充填もできるようになりたい!


 私を含めて、多くのドクターが側方加圧根充を実践されていることと思われる。根充の方法をテキトウ大別すると、糊剤根充、側方加圧根充、垂直加圧根充に分けられる。糊剤根充はいまでは乳歯や根未完成歯ぐらいにしか使用されない。糊剤ではなく固形の、ガッタパーチャを主とした根充がメインストリームで、これまたテキトウ大別すると側方加圧か垂直加圧かになる。

 そのなかにあって、側方加圧法に比べると垂直加圧には様々な手法が考案されている。側方加圧は誰がやっても同じ術式だ(決まりきっている)が、垂直加圧は術者によって多種多様である。ちょっと調べるだけでも、垂直加圧には様々なテクニックがあることに驚くだろう。最近のグローバルスタンダードはCWCTのようだ。垂直加圧法は、古くはシルダーの加温垂直法に始まり、オピアン法、JHエンドシステム、ダブルインジェクション法、他にマックスパーデン法、NTコンデンサー法など様々あり、更にそれらのテクニックを細かく改変した組み合わせた方法も存在するため、混乱をきたすぐらい多い。

 肝心の、側方加圧か垂直加圧かで根充の予後に差があるのかどうかは、エビデンス上では「ない」とされているようだが、私は垂直加圧の方が優れていると思う。根充の目的が「根尖部を緊密に封鎖することで根管内と根尖との交通を遮断する」ことにあるのなら、垂直加圧の方が確実に、三次元的に達成できると考えるからである。

 成績に差がなくても垂直加圧法を選択するエンドドンティストが存在し続けているということは、側方加圧法の欠点を嫌うエンドドンティストが多いのではないかとも思う。

欠点
1.根管の密閉度が劣る
2.側枝の封鎖が期待できない
3.時間がかかる
4.X線写真的に見栄えが劣る

このようなところだろうか。

 側方加圧では、側枝にせいぜいシーラーが入ることがある程度で、三次元的な封鎖は不可能とされている。垂直加圧であれば(どの方法でも)側枝にガッタパーチャを送り込めるわけではないが、側方加圧に比べれば、側枝の封鎖期待できるのは確かだろう。これは根尖の封鎖にこだわりがあると無視できないポイントだ。

 加えて、質の高い側方加圧充填は意外にも難しいものではないかとも思う。側方加圧は、作業長通りにマスターポイントが位置しており、アクセサリポイントが隙間なく挿入されていれば写真上は成功とみなされる。けれどもこれは、アピカルシートを確実に付与し、根管には十分なテーパーがあり、スプレッダーを駆使して側方圧を加えると同時に生じた隙間にアクセサリポイントを数種類、何本も詰めていかなくてはならない。垂直加圧に比べて操作性に優れたテクニックであるのは長所だが、反面、根充の肝心の目的である、「質の高い封鎖」がどこまで得られているかは不安が残る。実際には得られていなかったとしても、見かけ上は「それっぽくうまくできている」ように見えてしまう点も、考えによっては欠点である。ガッタパーチャポイントがセメントの海の中で固まっている状態であっては困る。


 ウダウダと書いてきたが、要は根充の目的を満たすことを考えたとき、側方加圧充填には不安を覚えること。また、理想的な側方加圧充填はかなり難しいのではないかということである。垂直加圧充填が全ての面において側方加圧よりも優れていることはないが、全ての根管の根充に側方加圧充填を採用し続ける必要性もない。例えば樋状根のように、側方加圧では明らかに対応に苦慮する場合は隙間なくガッタパーチャを満たすことのできる種の垂直加圧充填を選択すべきである。

 自分の臨床の引き出しを多くするためにも、側方加圧充填が満足にできるようになったら、垂直加圧充填もできるようになっておきたいものだ。尊敬する津久井先生の『臨床再考 う蝕治療からインプラントまで』の根治-根管充填の頁にも、側方加圧も垂直加圧のどちらも出来るようになっておくことが望ましいとの一節がある(津久井先生がどのような垂直加圧法をされているかは不明)。

posted by ぎゅんた at 21:30| Comment(0) | 根治(考察) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月13日

軟化象牙質の除去

MI stainless bur.jpg

まとめ
やっぱり軟象の除去にはラウンドバーだね!


 充填処置、抜髄、感染根管治療を問わず、感染歯質である軟化象牙質の除去は絶対の課題である。充填や根管内に意識がいってしまうと、案外にも取り残しを許してしまうステップでもある。自分は絶対に軟象の取り残しはない!と言い切り、実践できているドクターがどれだけいようか。

 軟化象牙質の取り残しは界面不良でもあるから、二次カリエスやコロナルリーケージの原因になる。根治に関していえば、感染源を取り残していることになる。

 根管治療は、根管内の炎症起因物質を、生体が許容できる範囲内において最大限に除去しのちに封鎖して、根管内と根尖との交通を遮断する(残存する細菌は非活動状態にもっていく)一連の行為と考えられる。従って、軟化象牙質は完全に除去しなくてはならない。一方で、軟化象牙質が多量に残存していても、根尖部をコルク栓のように緊密に封鎖さえできれば治癒するとも語られるが、これは接着歯学でいうシールドレストレーションのようなもので、軟化象牙質を取り残しても大丈夫だと結論づけるものではあるまい。どれほど上手に根管の拡大形成が行えようとも、炎症起因物質の取り残しは生じ得る※1 。これをカバーするのが根管内の化学的洗浄であり、根管と根尖の交通を遮断する根管充填である。
 アレコレ複雑に考えても仕方がない(間違っているかもしれない)ので、とりあえず我々は軟化象牙質は、取りきれる範囲で取り切る姿勢でいればよいのである。


 根管内の軟化象牙質の除去は、主に感染根管治療につきまとう課題である。これは、本来の根管の走行が確保できていれば、慎重に拡大して達成を図るもので、近年ではニッケルチタンファイル用いるのが主流である。簡単に述べているが、これは実に難しいステップであることは論を俟たない。

 充填処置にも共通するが、根管口から上部の、目視できるエリアの軟化象牙質除去は確実に行いたい。これはブラインド処置ではないので達成が図れるものだからだ。


 軟化象牙質の除去を考える時、一般的には

1.エアタービン:ダイヤモンドバーで除去
2.スプーンエキスカで除去

の組み合わせが多いのではなかろうか。

 私は昔から軟化象牙質の除去にスプーンエキスカを愛用してきた※2

 サクサクとフレークのように軟化象牙質を取る感触が好きというのもあるし、慣習になっていただけのところもある。手用器具なので小回りと自由がきくのが利点だが、刃物であるがゆえに、切れ味の悪いエキスカだと作業効率が下がることが欠点である。

 先日、ふと思い立ってラウンドバーで軟化象牙質の除去を試みた。ラウンドバーでの軟象除去は、コントラは重いし患歯より伝わる振動が不快なので敬遠し続けてきたのだが、それは間違いであったことに気づいた。除去の効率がスプーンエキスカに比べダンチ(死語)なのである。確かに振動は無視できないのだが、軟化象牙質をゴリゴリ除去してくれる。見た目が健全歯質に似ている急性う蝕の軟象も逃さず削り取ってくれる確かさは頼もしい限りだ。スプーンエキスカで一気呵成に除去するのも気持ちよいが、ラウンドバーでゴリゴリ根絶やしにするかのごとく軟象を除去するのもまた快感である。

 ラウンドバーはマニーのMIステンレスバーがよいだろう。滅菌に伴う錆に強い上に、(スチールに比べ切削能力が劣ることから)軟化象牙質を選択的に削除できるからである。とはいえ、スチールのラウンドバー用いても特に過剰切削になることはない。MI修復に伴う軟象除去にはMiステンレスバーを、根治に伴う軟象除去にはスチールバーを用いる程度の使い分けで十分であろう。


※1
ニッケルチタンファイルを駆使し、本来の根管の走行を保って拡大形成を終えたとしてもなお、根管内には触れられていない箇所が存在する。

※2
軟化象牙質の除去に際し、う蝕検知液を用いている人は少数派だろう。手間と時間がかかりすぎるからである。除去し切れたかどうかの確認に用いるのがせいぜいではないか。私の世代はMI全盛期であることから、う蝕処置時にはう蝕検知液を用いて、う蝕象牙質内層を決して除去せぬようにと教育された。一方で「軟化象牙質が除去できているかどうかなど感覚で分かるようになれ」と、う蝕検知液の使用を咎められることもあった。市井の開業医にバイトに出かけたとき、う蝕検知液を使用している人はいなかった。私もそのうちに使用しなくなった。

 
posted by ぎゅんた at 22:45| Comment(0) | 根治(実践的) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月05日

先天性風疹症候群(CRS)を根絶しましょう

rubella vaccine.jpg

7月ごろに接種していた風疹ワクチンの助成金が振り込まれた。
風疹ワクチンの摂取は自費だが、市によっては申請すれば助成金を受けられるようである。

風疹を予防することの重要性については、残念ながらあまり周知徹底がなされていないようだ。と、偉そうに言っているものの、私は慌てて予防接種に走ったクチなのだが。

なお、風疹ワクチンの重要性については、漫画「コウノドリ(4)」の風疹編を読まれると良いだろう。B肝ワクチンもそろそろ再接種にいかねばならんなあ。

posted by ぎゅんた at 23:59| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする