2014年03月15日

仮封に用いる水硬性セメント 〜 Ciのキャビシール

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根治の仮封には、テンポラリセメントやカルボセメント、できればベースセメントなど、液にカルボン酸を含む接着性あるセメントが望ましいと言われている。ただし、一級窩洞のような4壁性の場合は水硬性セメントでよいだろうと思う。この場合、長期封鎖性のためには仮封材の厚みは3mm以上が必要である。

さて、水硬性セメントだが、これは要は石膏である。うまく硬化するとエアスケーラーでは除去が困難なほど硬くなる。なるほど、厚みが確保された水硬性セメントなら良好な封鎖性が期待できるだろう。

さて、世の中には色々と水硬性セメントが売られている。勤務先ではGCのキャビトンを使用している。他に3M ESPEのキャビットGや松風のハイシールがある。ハイシールは松風自慢のHY材が配合された贅沢なセメントで、若干、高価である。

さて実家の歯科医院には水硬性セメントがなかったので、用意せねばとCiのカタログをめくると再安価のキャビシールが目に入った。使い慣れたGCキャビトンに比べ100円ほど安い。とりあえず揃えておけば良いかと考え、ピンクのキャビシールを注文したのであった。


キャビシール
・どうやらキャビシールのパクり品
・Made in Korea
・やけに硬い

半年ほど使い続けてきたが、これを買うならGCのキャビトンで良いのではという感想。最初から硬いのか空気中の水分を吸って次第に硬化してきているのか、とにかくセメントが硬く、操作性が悪いのが気にかかる。
仮封がすぐに脱落するなどの目立ったトラブルはありませんが、その操作性の悪さゆえにあまりオススメしません。キャビトンは柔らか過ぎる!とお感じの先生に向いているセメントかなと思います。
 
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2014年03月13日

局所麻酔について(勉強会用レジュメ)

ポイント
・良い局所麻酔とは、痛くなく麻酔効果を得られた麻酔のことである
・麻酔は、患者の安全管理の一環である


 麻酔を効かせるのは、治療上の痛みを無視したいからである。生体にとって「痛み」は侵害刺激に他ならず、防御反応としての筋の過緊張や拘縮、また内分泌系からはカテコールアミンの過剰分泌が誘発され、いきおい、生体の恒常性が破綻することになる。これは、患者が生理学的に不安定な状態になることから、治療の遂行が不可能になる。医学では昔から、手術に伴う痛みを減少させることや消失させることは悲願であった。19世紀中頃に歯科医H・ウェルズが笑気ガスを吸わせた患者無痛抜歯に成功した報は一大センセーショナルだったのである。それまでの歯科治療(殆どは抜歯)は無麻酔で行われており、阿鼻叫喚地獄絵図であった。

 即ち、歯科麻酔は、患者の安全のために行われるものである。麻酔によって侵害刺激を除去し、痛みに怯える患者の不安を払拭させることができれば、患者の恒常性が保たれるからである。

 一般に歯科で行われる麻酔とは局所麻酔のことを指し、更にそれは表面麻酔、浸潤麻酔と伝達麻酔とに区別されている。

表面麻酔:粘膜や皮膚に局所麻酔薬などを塗布あるいは噴霧し、知覚神経の終末部を麻痺させる方法。通称、表麻
浸潤麻酔:組織内に局所麻酔薬を注射し、浸潤させ、その部分の知覚神経終末を麻痺させる方法。通称、浸麻
伝達麻酔:知覚神経伝導路において局所麻酔薬を注射し、その末梢を麻痺させる方法。通称、伝麻

 歯科臨床で必要な麻酔の多くは浸潤麻酔で得られるので、殆ど「麻酔=浸潤麻酔」と捉えても差し支えないところがある。伝達麻酔は浸潤麻酔に比べて手技的に難しいことから、「麻酔が効けばいい」考えの元、浸潤麻酔に偏重している実態もある。ただし浸潤麻酔は、通常は歯肉を介しての神経ブロックであることから、麻酔液が同量である場合、伝達麻酔ほど強力に神経の支配領域を麻痺させることは出来ないし、炎症により組織pHが酸性に傾いている急性炎症時には奏功させづらい。注入する麻酔液の量を増やせば解決するものの、麻酔液の増加は身体負担の増加と局所内圧の亢進につながるため避けるべきである。浸潤麻酔だけでも臨床の多くのケースに対応可能だが、伝達麻酔を必要としない理由にはならない。

 無痛治療を可能にするための麻酔であるが、皮肉にも注射針を粘膜に刺さなくてはならない。この時のチクッとした痛みもまた、患者にとっては大きな痛みである(物理的な痛みもさておき、いつ針が刺入されるか分からない心理的不安も大きい)。痛い麻酔は、閾値を上げてしまうので期待した麻酔効果が得られなくなる。

 痛みが最小限で満足な麻酔効果を得られれば、安全な麻酔といってよいから、我々は痛くない麻酔を心がけることが大切である。

 成書に記載されている方法としては、
1.体温と同程度の温度にする(使用直前にカートリッジウォーマー等で麻酔液を体温程度の温度にする)
2.刺入前に、歯肉に表面麻酔を使用する
3.なるべく細い針を使用する(33G等)
4.薬液の注入速度はゆっくり
…などがある。これらを馬鹿正直に守っても普通に痛いので、より実践的な解説が望まれる。

 まず、体温と同程度の温度にすると痛みが少ないといわれているが、冷蔵庫から出したてのカートリッジでもなければ、室温保管のカートリッジと大差はない。減痛効果が無いわけではないが、カートリッジを掌で握り暖めておくだけでも十分である。

 表面麻酔は、エステル型の麻酔薬が高濃度で含まれている。最初の刺入部位に置かれるものである。重要なことは、塗布前の粘膜をエアで完全に乾燥させておき、塗布後は唾液に触れないまま最低1分間作用させることである。その後、刺入部の粘膜をシートを張る様に緊張させ、ベベルの向きを確認した針先をなるべく齦頬移行部に平行になるような向きでスッと刺入する。粘膜に針が入ったら、麻酔液をごく少量ゆっくり注入していく。麻酔効果は浸潤して得られていくので、組織内に暴力的に麻酔液をしみこませると痛い。なので、電動注射器のようにゆっくり注入するべきである。

 痛くない麻酔には長所が多いが、欠点は時間がかかることである。
posted by ぎゅんた at 21:22| Comment(0) | 局所麻酔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月12日

一本でシンプルに…VDW Reciprocあれこれ

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モクダ歯科商会にレシプロックについて問い合わせたが一週間が過ぎても返事がこない。
とりあえず自分で知り得た情報を以下にまとめよう。細かな間違いがあるかもしれないので鵜呑みにはしないでもらいたい。

レシプロックはジッペラーの親会社になっているVDWが開発したニッケルチタンファイルである。
これまでのニッケルチタンファイルは、その殆どが回転させて使用するロータリー型であったが、こちらはバランスドフォースの動きを再現した往復運動となる。ファイルは逆回転時に歯質を切削する設計になっている(正回転では切削されないので、正確にはReversed Balanced Forceか)。

使用には独自往復運動を可能にする専用のエンドモーターが必要となる。このエンドモーターは、デンツプライ扱いのXスマートプラスである。本来はレシプロック用のエンドモーター(Reciproc endo motors from VDW)が存在するのだが、認可の問題で購入できないらしく、同じ運動を可能としているXスマートプラスを採用しているとのことである。なお、Xスマートプラスの中身はナカニシ(NSK)製であり、日本製を逆輸入していることになる。

展示されていたReciprocEndoMotorsFromVDWに触れてみたが、Xスマートプラスに比べてヘッド部が大きく重たいのはマイナスだろう。Xスマートプラスの方が取り回しに優れていると思われた。

Xスマートプラスは、往復運動だけでなく、従来のロータリー運動も可能である。最大回転数はせいぜい1000rpmぐらいでヘッドの切り替えはできないようであるが、市場にあるニッケルチタンファイルのほとんどを使用することができる点で汎用性が高いエンドモーターである。レシプロックが気に入らなくても、他のニッケルチタンファイルを使用できるのだから。

レシプロックのような反復運動をするファイルには、他にウェーブONEがある。シンプルに一本ファイルで形成できることとXスマートプラス用いる共通点もあり、そっくりである。どちらが良いかは術者の好みではないだろうか。デモで触ってみた感じでは優劣はつけ難いものであった。実際に臨床で使っているうちに両者の違いが明らかになるのだろう。

現時点での個人的な考えからは、「これ一本で!」という極端にシンプル化された製品には少々不安がある。いいとこ取りをするとどうしても無理がくるからである。しかし簡単に思いつくメリットは、ファイルの種類が少なくて済むことから主義の単純化が図れることと、ファイル着脱交換の手間が減ることである。デメリットは一本当たりの単価が高い(約1700〜2000円/本)こととXスマートプラスを必要とすることだろう。

レシプロックにしろウェーブONEにしろ、バランスドフォースの動きを応用していることから、湾曲根管に強い気がするし、レッジの防止に有効かもしれない。破折に関してはなんともいえない。メーカーの指示通りの使い方を遵守し、余裕を持って使い捨てにするしかないと思う。

Xスマートプラスは、デモ機の貸し出しがないとのことなので、まずは白水貿易よりエンドミニのデモ機をお借りしてFKGレイスから練習する予定でいる。

余談だが、最近発売されたGCのNEXはFKGレイスのパクリリスペクト品のようである。使い方もレイスと同様のようだ。なのでレイスが気になるGC大好きな人向けのファイルといえそうだ。
 
posted by ぎゅんた at 13:34| Comment(2) | ニッケルチタンファイル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月10日

イメージングプレート(IP)のコスト削減にフラットバッグはいかがだろう?

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勤務先と、実家のデジタルデンタル撮影にはモリタのディゴラ オプティメU が採用されている。使い勝手や画像解像度に文句はないのだが、イメージングプレートの保護バッグのコストが欠点であった。モリタ扱いの正規のディスポだと一枚あたり20〜25円ほどするのである。これは正直に高いと言わざるを得ない値段であり、頭の痛いところであった。

さて先日のデンタルフェアで、株式会社フラットのブースでいただいたサンプル「口内法X線撮影IP専用保護カバー フラットバッグ」であるが、これが使い勝手が良いのである(むしろこちらの方が良いのでは?)。定価換算で一枚あたりのコストが12円になるのが最大の利点である。欠点はゴミが少し増えるところか。

これで浮いた分のお金は、みなさんの頭を悩ませる滅菌関連コストにあてることができるだろう。

posted by ぎゅんた at 20:01| Comment(0) | 歯科材料・機器(紹介・レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月05日

寝ゆる黄金の三点セットの破壊力

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まとめ
・朝が弱いドクターにこんな体操はいかがだろう
・睡眠時間を短くできるかもしれない


こちらのブログにも書いたが、ゆる体操「寝ゆる黄金の三点セット」が凄いのである。なにが凄いって、寝る前に実行しておくと朝の目覚めがスッキリシャープになるのだ。いまではやらずに寝ると朝寝坊しそうで怖いぐらいだ。

ゆる体操には、私オススメの「寝ゆる黄金の三点セット」以外にも色々とあるのだが、ものぐさ大王の私はこれしかやってない。そして、そんなものぐさ大王の私が毎日続けていられるほどローコストな体操である。寝ながらにして完結する体操なのだからこれ以上に楽な体操はない。

歯科医は、広いとは言い難い他人の口腔内を、緊張する姿勢をとりながら緻密な作業をし続ける人種である。腰を痛める職種であるとされるが、その原因は、治療時の当人の姿勢が悪いこと以外に、毎日の疲労の蓄積や運動不足も加わる。治療時にはなるべく無理な姿勢をとらないことを心がけ、運動不足にならない(筋肉を衰えさせない)ようにし、睡眠で疲労を回復させなくてはならない。「寝ゆる黄金の三点セット」は、正確なメカニズムは考案者の著書を参考にされたいが、睡眠による疲労回復を促進する効果があるようだ。端的にいえば熟睡を得やすくなる感じである。熟睡が得られれば、それは「質の良い睡眠」というわけで、普段よりも睡眠時間が短くなるものであるが、だとしても健康上の問題はないのである。

睡眠時間を短くして、その分を勉強時間に充てようと思う人は私を含めて多いと思われるが、いざ実行してみても、起きたところで眠いだけでとても勉強にならなかったり、そもそも起きる意思が湧かなかったりと失敗ばかりなのではないか。眠いものは眠いのであって、当人の意思が弱いのではなく、脳と身体の生理的要求にすぎない。であれば、熟睡を得ることに尽力するほうが近道である。そしてまた、「寝ゆる黄金の三点セット」は確実に熟睡を得やすくしてくれる体操であることを確信している。

早起きで睡眠時間を削ることができたら、安心して早朝の勉強に充てよう。一年でどれだけの自由時間が得られるものかワクワクするではないか。

 
posted by ぎゅんた at 23:14| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする