以前から気になっていたインストゥルメント、それがワムキー。正体は除冠専用器具。
今も昔も除冠に関しては色々と思うところがあった。ありていに言えば苦手意識があり、楽に手早く達成できる道を常に探さねばならぬと考えていた。
つい先日のデンタルフェアで、45000円がDVD付で30000円の特別プライスだったので購入を決意。それでも高ぇよハゲな価格だが、えてして医療用品は高額なのである。
さて除冠について、私なりに思うところをダラダラ述べていこう。
補綴冠の除去は、基本的には冠を左右に押し広げて支台歯との間のセメント層を破壊することで保持を喪失させて達成するものと考える。お馴染みのマイナスドライバーやクラウンスプリッティング・プライヤーはこのため用いられる器具である。この従来の手法は、熟達してくると安定して早く除冠が達成できるテクニックであるが、除去された冠はひしゃげることが殆どだから仮歯には利用できなくなる。また、左右に広げる力が働くので、たいていは隣在歯に圧力が加わる。その時の感触は決してよろしくないし、場合によっては痛みを訴える。除冠時、冠をこじると患者さんは眉間に皺を寄せることを皆、周知のはずである。患者さんは訴えないだけで不快なのである。
タイトルにあるWAM-Keyであるが、冠にまず穴をあけるところから始まる。開けた穴にワムキーを差し込みひねることで冠に脱離方向への力が加わり、セメント層破壊と共に外れるものである。穴を開ける場所は頬側から、支台歯と冠とのセメント層を狙っておよその位置である。なので、支台歯の形態を予想して穴を開けなくてはならない。うまくいけば、キーを捻るとプッと冠が浮いて除去が可能であり、そのまま仮歯として利用可能である。加えて、隣在歯に特別な力が加わらないので、従来の方法に比べて患者さんは痛みを感じにくい点で優れている。
土曜日、購入したWAMKEYを友人の歯科医院に持参して除冠実習を行った。
まずDVDの動画を再生してみたが、このような類のメディアの常としてサッパリ面白くない。なので早々に実習に移ることにした。技術色が強い場合は座学よりも体当たりで理解を得ようとしたほうが早いものである。
結論としては「あっても無駄にはならない器具であるが、予期していたほど簡単に除冠できない器具」というところ。練習でこれなので実際の除冠の場面ではどうなることか一抹の不安が残る。除去できる時はできるし、仮歯として再利用できるが、期待していたほど簡単に扱えるモノではない。
こじっただけでプッと浮いて除去が可能になることもあれば、何度もトライしなくてはならない場合と差が大きい。最初に冠に穴を開ける手順上、ワムキーで除去できなければ従来法に切り替えればいいだけであるから、まずはワムキーでの除去を試みるようにはできる。ワムキーでの手応えが悪ければ即座に従来法に移ればよいだけである。また、スーパーボンドで合着(接着)されている場合は、ワムキーでの除去は困難である。接着を引き剥がすように破壊するには最も力が必要だからである。この場合は従来法で接着を壊すようにして除去することになろう。ひとまず必要なのは、更なる練習と実戦導入である。実際の臨床に用いると嘘のように好結果を出す場合があるものだ。
余談-メタルコアの除去
コアの除去に関しては、私は兼松式のコア除去鉗子を愛用しているが、ワムキーも応用できそうだ。
メタルコアと歯質の境目にワムキーを挿入してこじるとテコの作用で除去が狙えるからである。